Blog-Dr城下の呼吸器雑記帳

Prolonged cough or subacute cough?

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Textbook of Respiratory Disease in Dogs and Cats (SAUNDERS, 2004)には、「Acute and Chronic cough」という章があり、そこでは、「A cough can be classified as acute or chronic. Coughing is considered chronic if it persists for 2 months or longer.」とだけ記載され、Acute cough(急性発咳)の持続期間の定義がなされず、いきなり2ヶ月以上経過した咳をChronic cough(慢性発咳)と呼ぶ、とされています。 一方、人では、咳嗽は持続期間により分類されています。3週間以内の咳嗽を急性咳嗽、8週間以上続く咳嗽を慢性咳嗽といいます。3週間以上8週間未満の咳嗽は遷延性咳嗽と呼んでいます。持続期間で咳の病態が異なるので、診断の際、重要な情報となります。私は、急性、遷延性、慢性発咳を、十分認識してから診療にとりかかるべきだと思っています。 遷延性咳漱は、subacute cough(亜急性咳嗽)という同義語があります。 そこで、遷延性と亜急性のどちらを使用すればよいのか困りました。感覚的には、診察時に、咳が4週間続いていればそのとき、遷延性咳漱といい、すでに4週間で咳が終息したら、「その咳は亜急性咳漱であった」というような使われ方をするように思います。

出現頻度からみると、

Yahoo 完全一致検索(検索日2015.8.26) 「prolonged cough」約38,200件 「subacute cough」約4,120件 →prolonged coughが圧倒的に多い。

医中誌検索(1977-、検索日2015.8.26) 「遷延性咳漱」:0件、「亜急性咳漱」:0件 →検索用語に含まれていない。 「prolonged cough」7件 「subacute cough」4件 →両者は検索用語に含まれ、ほぼ同義として扱われている。 和文検索にあった要約文には、 「咳嗽は持続期間により分類されている。3週間以内の咳嗽を急性咳嗽、8週間以上続く咳嗽を慢性咳嗽という。3週間以上8週間未満の咳嗽は遷延性咳嗽、subacute cough(亜急性咳嗽)と呼んでいる。本邦における遷延性・慢性乾性咳嗽の5大原因疾患は、咳喘息、アトピー咳嗽、かぜ症候群後咳嗽(感染後咳嗽)、胃食道逆流による咳嗽、心因性咳嗽である。遷延性・慢性湿性咳嗽の原因の大部分は、副鼻腔気管支症候群である。・・・」(藤森勝, 鈴木栄, 成田一. 【咳の新しい捉え方】咳嗽の治療薬. 成人病と生活習慣病(1347-0418)2010;40:1229-1238.) などのように、同義語として使用されることもありました。

PUBMED検索(検索日 2015.8.26) 「prolonged cough」1014件 「subacute cough」180件 →学術的にも、prolonged coughが圧倒的に使用されている。

獣医療で、人と同様に、急性発咳は持続期間を3週以内としてよいのか、という議論がありますが、経験上、2週間以内で多くの感染性の急性発咳はほぼ終息するので、私は現在、急性発咳は2週間以内と分類しております。

結論:咳は、持続期間で、急性、遷延性、慢性に分ける。獣医療では、急性と遷延性の定義がまだ確立されていないが、2週間以内を急性、2-8週間以内を遷延性、8週間以上を慢性発咳と呼ぶことにする。遷延性発咳(Prolonged cough)の同義語として、亜急性発咳(Subacute cough)という語があるが、使用頻度は少なく、一般には前者が使用されているので、当院呼吸器科では、遷延性発咳(Prolonged cough)を使用する。

更新日:2016年11月2日