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鼻鏡検査

内視鏡を鼻の穴や口から入れて、鼻腔から咽頭の病気を詳しく調べる検査です。

前部鼻鏡検査と後部鼻鏡検査

外鼻孔から細径軟性鏡や硬性鏡を挿入して観察する方法と口から軟性内視鏡を反転挿入し咽頭鼻部から後鼻孔周辺を観察する方法があります1。前者を前部鼻鏡検査(anterior rhinoscopy),後者を後部鼻鏡検査(posterior rhinoscopy)と呼びます2
ともに気管内挿管し全身麻酔で行います。猫、小型犬、短頭種などは前部鼻鏡検査なら外径2.5-3.0mmの軟性鏡が必要となりますが、後部鼻鏡検査なら外径5.5mmの汎用軟性ビデオスコープが適用できます。

検査の適応(呼吸器内視鏡ガイドライン1より一部改変)

診断可能な疾患を表1に示しました(文献1、一部改変)。
適応、禁忌、合併症および検査前に必要な術前検査を表2にまとめました。

表1 | 鼻鏡検査で診断できる疾患

感染性鼻炎
鼻咽頭内異物
鼻咽頭狭窄
鼻咽頭ポリープ、腫瘍
真菌性鼻炎
リンパ形質細胞性鼻炎

表2 | 鼻鏡検査概要

適応 くしゃみ、スターター、鼻汁、逆くしゃみ、声室の変化、ストライダー
合併症 鼻出血、粘膜腫脹、呼吸刺激、チアノーゼ
禁忌 麻酔リスクの高い症例、血液凝固能低下、頭蓋内圧亢進
術前検査 心電図、CBC・血液化学、胸部X線、凝固時間測定

検査適応例

  • 1ヶ月以上、鼻汁やくしゃみが続いている
  • 異物が鼻の中に入った可能性がある
  • 鼻詰まり症状が数ヶ月以上続いている
  • 高齢になってから逆くしゃみ症状が頻繁にみられる
  • CT検査で鼻腔や鼻咽頭腔に結節や腫瘤を疑う所見や、構造異常がある

以下が当てはまる場合、検査の適応になりません。

  • 出血傾向がある
  • 1歳未満のチワワやパピヨンで週1−2回程度の逆くしゃみがある
  • 軟口蓋過長症

当院での前部鼻鏡検査の実施法

当院では、先端部外径3.1mm、有効長600mm、チャネル径1.2mmのヒト用の軟性気管支ビデオスコープ(OLYMPUS BF-XP290, オリンパス)を使用しています。

図1 | 前部鼻鏡検査。検査重視の場合は図のように伏臥位で実施し、処置・手術重視の場合は側臥位・透視ガイド下にて行う。

内視鏡挿入前に、痛みや違和感、出血、粘膜炎症を軽減するためにスコープ挿入前に、口咽頭にカット綿やガーゼを詰め、ボスミンとキシロカイン等量液2~5mlを鼻腔内に注入し外鼻孔を綿花で塞ぎ、10分間静置します。前部鼻鏡検査は、伏臥で顎を手術台の上とほぼ平行になるくらいにあげて頭部を固定し、スコープを挿入します(図1)。

鼻粘膜生検は鼻出血を伴うことがあるので、鼻腔内全体を十分観察後に病変部位を同定してから生検を実施します。ブラッシングは微生物検査と細胞診検体を採取するが、生検のあとに実施します。処置を重視する場合、横臥位、透視ガイドに操作し、頻繁に透視下にスコープの位置を確認しながら行います。症例を図2に示しました。

図2 | 前部鼻鏡検査所見4例
A :フレンチブル オス 11歳、イネ科植物様の鼻腔内異物。
B :Mダックス メス 10歳、2ヶ月前よりレッチングあり、右上顎犬歯レベルで鼻腔内に潰瘍と乾酪壊死あり。歯科疾患関連性鼻炎。
C : 雑種猫 オス 17歳、4ヶ月前より重度スターターと粘液性鼻汁、左鼻腔内に多発結節性腫瘤状病変で閉塞、鼻腔腺癌。
D :シーズー メス 1歳、4ヶ月前より慢性鼻汁と鼻出血。頭部MRI検査にて鼻腔内腫瘤状病変を認めた。前部鼻鏡検査にて左鼻腔内は腫瘤状病変で閉塞。異物による反応性肉芽腫。

鼻腔の狭い猫や体重が1kg未満の子犬や超小型犬では、前部鼻鏡検査に外径1.9mmの硬性内視鏡(Karl Storz 64301 BA, HOPKINS®
Forward-Oblique Telescope 30°,diameter 1.9mm, length 10cm)を用いています。

当院の後部鼻鏡検査の実施法

図3 | 後部鼻鏡検査。シベリアン・ハスキー、10歳、雌。咽頭鼻部、後鼻孔問題なし。
A : 生検監視を後鼻孔に進めているところ
B : Aと同時に撮影した頭部X線画像。

同様に、先端部外径3.1mmのヒト用の軟性気管支ビデオスコープ(OLYMPUS BF-XP290, オリンパス)を使用しています。横臥位、透視ガイドに、スコープを軟口蓋尾側縁を超えるとところまで進め、穏やかにスコープを180°反転させてスコープ先端が透視下で鼻咽頭腔内に入るように操作し、画面に鼻咽頭腔がみえたら、スコープ先端を後鼻孔に近づけ、十分に後鼻孔がみえたら透視を終了します(図3)。
標本は、ブラッシングまたは生検鉗子で採取できます。

比較的小型の動物では内視鏡チャネルに生検鉗子を挿入すると180°の反転ができなくなり、鼻咽頭内や後鼻孔観察が困難となり、猫や小型犬ではブラッシング細胞診しかできないことがあります。症例を図4、5に示しました。

図4 | 後鼻孔部異物を内視鏡下に摘出した例。トイ・プードル 5歳 メス、体重3.85kg。3日前より草を摂食してから急にレッチング、逆くしゃみあり。後鼻孔に長さ7cmの草が滞留していた。

  • 後鼻孔に異物確認
  • 生検鉗子で異物把持
  • 異物除去後の後鼻孔所見
  • 摘出した異物。

図5 | 後部鼻鏡検査所見4例。
A :雑種猫 メス 15歳、持続性スターター、鼻咽頭狭窄。
B :パグ オス 15歳、睡眠時無呼吸症候群、悪性メラノーマによる後鼻孔閉塞(矢印)、鼻咽頭碧内にも浸潤がみとめられる(矢頭)。
C :雑種猫 メス 7歳、4ヶ月前より重度スターターと粘液性鼻汁と開口呼吸、B細胞型悪性リンパ腫による後鼻孔閉塞、表面は壊死。矢印は外鼻孔から挿入した8Frネラトンチューブ。
D :ポメラニアン メス 14歳、1ヶ月前より連日逆くしゃみと鼻汁/くしゃみ、歯科疾患感染性鼻炎に伴い鼻咽頭に粟粒状粘膜病変を示すリンパ形質細胞性鼻炎。

参考文献

  • 日本小動物内視鏡推進連絡会呼吸器内視鏡分科会委員. 呼吸器内視鏡ガイドライン. 東京: 日本小動物内視鏡推進連絡会事務局; 2011.
  • Padrid PA, McKiernan BC. Tracheobronchoscopy of the Dog and Cat. In: Tams TR, ed. Small Animal Endoscopy, 2nd ed. St.Louis: Mosby; 1999:377-396.