犬・猫の呼吸器臨床研究会

犬・猫の呼吸器臨床研究会VeRMS Study Groupについて

この度、21名の有志発起人から、犬・猫の呼吸器臨床研究会を立ち上げました。対象は、犬・猫の鼻から肺までの気道の疾患です。呼吸器臨床の基本と基礎から見直し、臨床初学者からベテラン先生まで、呼吸器をよく理解し親しんでいただき、「呼吸器症状を呈した動物が来院したら、どう考え、どうしたらよいのか」ということを会内で共有していきたいと思います。一方で、人と動物で共有する呼吸器難病の解明や治療にも臨床獣医師の立場で取り組んでいきます。特に、

短頭種気道症候群(ヒトの睡眠時無呼吸症候群や乳幼児突然死症候群と関連)

猫のびまん性肺疾患(ヒトの特発性間質性肺炎と関連)

気管支鏡を用いた診断と治療(ヒトの気管支鏡治療手技と関連)

の3つについて深く探求し、より新しい情報を勉強会で報告したり、臨床研究を学会報告や論文投稿します。学生や動物看護師の入会も歓迎しております。ぜひ新しい視点で一緒に犬・猫の呼吸器を勉強していきましょう。隔月の勉強会の対象は獣医師、動物看護師、動物医療に関する企業、医師になります。当日会員でない方の参加もOKです。

犬・猫の呼吸器科 院長 城下 幸仁

当研究会の主な開催

1)犬・猫の呼吸器勉強会 隔月

2)年次大会 年1回開催

研究班活動

研究会発起人メンバーにて、上記3テーマに関してそれぞれ研究班を構成しました。重要かつ関心のある文献を随時研究会に報告し、当研究会のサイトに公開しております。一部の論文PDFは研究会内で共有しております(タイトル名に(PDFあり)を付記)。PDF閲覧希望の会員は、研究会事務局まで連絡ください。

入会のご案内

入会費 3000円

年会費

一般会員(獣医師) 8000円

学生・動物看護師 3000円

団体会員(大学研究室単位)15000円

賛助会員(関連企業) 30000円

入会希望の方は、研究会事務局(kokyuki_jimu@terucom.co.jp)までご連絡ください。

会費納入のご案内を連絡いたします。会場に受付は設置しますが、会場内での入会はできません。あらかじめご了解ください。

 

次回開催のお知らせ

第6回 犬・猫の呼吸器勉強会

日時

令和元年10月7日(月)19:00−21:00

会場: スマートレンタルスペース 貸し会議室belle関内601

神奈川県横浜市中区蓬莱町1-1-3 belle関内601.  最寄り駅, JR根岸線『関内』駅より徒歩1分、市営地下鉄ブルーライン『関内』駅より徒歩3分

内容

開会のあいさつ 城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

1 呼吸器総論

犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅢ 身体検査(視診、聴診、触診、打診)

城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

7年以上呼吸器専門診療を継続してきた経験に準じて作成した犬・猫の呼吸器科の診療データベースのシートを用い、麻酔を行わない一次検査の手順による診断アプローチを紹介し、今後当研究会での呼吸器診療の診療基準の試案を検討していく。前回に引き続き、身体検査(視診、聴診、触診、打診)の手順について紹介する。今回は、努力呼吸の身体検査から解説を始める。

2 研究班報告

未定

3 症例報告・臨床研究

座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

演題募集中

閉会のあいさつ 城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

症例報告・臨床研究の演題提出希望者は9月7日までに、演題名、発表者名、所属を勉強会担当(上田 1109ueda@gmail.com)に連絡ください。発表者は会員である必要がありますが、共同発表者のその限りではありません。募集要項は以下の通りです。

1)症例報告:来院経緯、症状の動画データ、身体検査・血液検査・X線検査・透視検査・動脈血ガス分析などの一次検査所見、鑑別疾患リスト、CT検査、気管支鏡検査、鼻鏡検査、BALF解析や病理診断、確定診断、内科治療または外科治療、治療転帰、などの詳細データが全て揃っているもの。用語や基準はSA Medicine連載中の「犬・猫の呼吸器を診る」に従います。 2)臨床研究:呼吸器学に関する知見。体裁は自由。他の学会で発表したものでもよいです。 1)2)とも発表10分、議論10分。1回開催につき、1〜2演題とさせていただきます。演題やスライド資料は当サイトで公開いたします。

参加費: 研究会会員は無料。非会員は①事前登録・事前振込3,000円(開催4日前までに振込完了)、② 事前登録・当日払い4,000円、 ③ 事前登録なし・当日払い5,000円

連絡事項

  1. 非会員参加の場合、原則として事前申し込みをお願いします。9月31日までに研究会事務局(kokyuki_jimu@terucom.co.jp)にご連絡ください
  2. 各講演内容は研究会会員にYou Tubeにて限定公開いたしますので、録画いたします。質疑応答時は録画を中止しますが、Web上で画像掲載しますので会場後方より写真撮影します。あらかじめご了承ください。もし、動画撮影や後方からの会場の写真撮影に不都合あれば申込時に事前にお知らせください。座席位置を配慮いたします
  3. 講義中の動画撮影や写真撮影はお控えくださるようお願いします
  4. 閉会後、同会場内で15分ほど質疑応答する予備時間を用意しております

これまでの開催

第5回 犬・猫の呼吸器勉強会

日時

令和元年8月12日(月)19:00−21:00

会場: スマートレンタルスペース 貸し会議室belle関内601

神奈川県横浜市中区蓬莱町1-1-3 belle関内601.  最寄り駅, JR根岸線『関内』駅より徒歩1分、市営地下鉄ブルーライン『関内』駅より徒歩3分

内容

開会のあいさつ 城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

1 呼吸器総論

犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅢ 身体検査(視診、聴診、触診、打診)

城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

7年以上呼吸器専門診療を継続してきた経験に準じて作成した犬・猫の呼吸器科の診療データベースのシートを用い、麻酔を行わない一次検査の手順による診断アプローチを紹介し、今後当研究会での呼吸器診療の診療基準の試案を検討していく。前回に引き続き、身体検査(視診、聴診、触診、打診)の手順について紹介する。今回は、異常呼吸音のストライダーから解説を始める。

2 研究班報告

短頭種気道閉塞症候群の臨床評価-主観および客観評価の文献レビュー

布川智範(ぬのかわ犬猫病院)

短頭種気道閉塞症候群(BAOS)の最近の報告をレピューする。2015年に咽頭虚脱が短頭種で起こることが報告され、それ以降咽頭部の評価に関する報告が行われてきている。また咽頭部の閉塞と関連する睡眠時無呼吸症候群は獣医領域で疾患として認知されてこなかったが、その重要性が認識されてきている。最後に短頭種気道症候群の症状の重症度、治療反応の評価方法は主観的であり、文献により異なるため評価が難しい。BAOSのgrade分類を模索している最近の流れを紹介し、議論できればと考えている。

3 症例報告・臨床研究

座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

犬の原発性気管軟骨腫の1 例

稲葉健一(犬・猫の呼吸器科)

前医のX線検査にて気管内腫瘤状陰影を認め、精査希望のため8歳齢の雄のチワワが当院呼吸器科に来院した。ストライダーや呼吸困難症状は認められなかった。X線および透視検査にて胸郭前口部気管に結節陰影を認め、気管気管支鏡検査にて気管腹側より発生する表面平滑な硬い多結節隆起病変を認めた。通常の生検鉗子では硬く組織採取不可能であったのでホットバイオプシー鉗子を用いた。わずかに得られた組織より病理検査にて軟骨様組織が確認され気管軟骨腫が疑われた。術後一過性に皮下気腫と喉頭麻痺が生じたが、支持療法にて改善した。術後35日の気管気管支鏡検査にて、十分に気管内径が確保されていることが確認されたため退院となった。犬の原発性気管腫瘍は稀であるが、そのうち気管軟骨腫はさらに稀であり文献的考察も含め報告する。

閉会のあいさつ 城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

開催状況:休日にもかかわらず、たくさんの参加がありました。本日はWeb会議の技術を一部導入し岡山理科大病理研究室の三井先生を愛媛からアドバイザーとして勉強会にご参加いただきました。しばらく試行期間をおいて一般会員もこのシステムを用いて勉強会に参加できるように考えております。

勉強会議の様子

まず、城下から主に視診での呼吸器疾患へのアプローチで異常呼吸音のストライダーとゴロゴロ音について具体的な症例の画像や所見を紹介しつつ解説いたしました。

つづいて、ぬのかわ犬猫病院の布川智範先生から、最近の短頭種気道閉塞症候群(BAOS)の臨床評価に関する文献レビューを行なっていただきました。この分野は、近年の画像解析技術や全身プレチスモグラフィを用いた呼吸メカニクス解析技術の進歩に伴い獣医呼吸器学のトピックになっております。主に、咽頭気道の動的構造評価、運動不耐性評価、睡眠呼吸障害を客観化してグレード分類や重症度評価を試み、有用な指標を模索していたり、外科手術評価を行う流れになっています。まだ客観的指標はリサーチレベルで検討されていますが、それを照合する臨床評価基準は一律でなく、緻密な測定をしたり、運動負荷の前後の異常呼吸音や体温上昇の影響を試みるなど根気強い評価法が基本となっています。CTやMRIは鎮静や麻酔が咽頭気道を虚脱させるので、上気道評価にはバイアスが加わってしまいますが、軟口蓋の厚さが重症度と関連があるかもしれないという研究は評価されました。また、症例から切除した軟口蓋組織で末梢神経傷害が生じていることも分かっており、それも咽頭閉塞と関連があるかもしれないということでした。しかし、現段階では共通のBAOS臨床グレーディングのgold standardはなく、研究ごとに基準を設けていることが現状のようです。治療効果判定や病態解析の研究では客観的基準を設定することは必要条件とされており、当研究会でも、再現性の高い「臨床評価基準」を探してみたいと思います。

最後に、犬・猫の呼吸器科の稲葉先生から犬の原発性気管軟骨腫の1例について症例報告がありました。胸部X線検査にて気管胸郭前口部腹側に固定した結節陰影がみつかり精査を進めました。気管支鏡検査では明らかに気管狭窄を生じるほどの隆起病変を認めましたが、通常の生検鉗子では固くて全くつかむことができず、減容積による気道開存と病理組織検査目的を兼ね、高周波処置具のホットバイオプシーをもちい生検を行いました。切除するには十分な出力と通電時間が必要でそのため採取した標本の周囲のほとんどは熱変性を受けてしまいました。しかし、わずかに残った組織から、異型性が確認されず軟骨腫と判断しました。犬の原発性軟骨腫は報告が少なく稀です。気管管状切除と吻合が理想的治療でしたが、僧帽弁閉鎖不全と蛋白漏出性腸症の合併症があり周術期管理に不安あり、今回の気管支鏡下減容積のみにて経過観察となりました。幸い、気管狭窄の症状はその後生じませんでした。

参加者(順不同、敬称略): 三井一鬼(岡山理科大 愛媛県今治市、Web会議にて参加)、合屋征二郎(日本大学)、谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院 兵庫)、上田一徳(横浜山手犬猫医療センター 神奈川)、菅沼鉄平(ほさか動物病院 神奈川)、山下智之(上大岡キルシェ動物病院 神奈川)、田畑達彦(ダクタリ動物病院東京医療センター 東京)、飯野亮太(いいのペットクリニック 北海道)、明石依里子(代官山動物病院 東京)、布川智範(ぬのかわ犬猫病院 神奈川)、侭田和也(JASMINEどうぶつ循環器病センター 神奈川)、横井慎仙(関水動物病院 神奈川)、松田岳人(くりの木動物病院 神奈川)、山下弘太(ダクタリ動物病院東京医療センター 東京)、田中啓之(武井動物病院 東京)、小川浩子(小川犬猫病院 神奈川)、草場翔央(Sho Animal Clinic 神奈川)、徳田智(日本動物高度医療センター東京病院 東京)、杉井太市郎(アポロどうぶつ病院)、佐藤浩(獣医総合診療サポート)、鏑木絵莉/片寄早紀恵(麻布大学小動物外科研究室)、城下幸仁/稲葉健一(犬・猫の呼吸器科)。

合計24名。

賛助会員:テルコム株式会社、(株)ジェイエスピー

最終更新日:2019年8月14日(城下幸仁)


第4回 犬・猫の呼吸器勉強会

日時

令和元年6月17日(月)19:00−21:00

開会のあいさつ 城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

会場: 相模原市立市民・大学交流センター(セミナールーム1)

内容

開会のあいさつ 城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

症例報告・臨床研究

座長:城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

1. 若齢猫に発生した鼻腔内形質細胞腫の1例

◯谷口 哲也1)2), 藤原 亜紀1), 田村 恭一3), 浅田 李佳子1), 長谷川 大輔1), 藤田 道郎1)

1) 日本獣医生命科学大学獣医放射線学研究室、2) 兵庫ペット医療センター東灘病院、3) 日本獣医生命科学大学獣医臨床病理学研究室

[はじめに]猫の髄外性形質細胞腫(EMP)の発症は稀であり治療経過や予後についての報告は少ない。[症例]症例は雑種猫の避妊済み雌、3歳5ヶ月齢、漿液性鼻汁とくしゃみを主訴に来院。MRI検査で鼻腔内に軟部組織を認め、初回の病理組織検査ではリンパ形質細胞性鼻炎と診断され、2度目の病理組織検査でEMPと診断された。治療中に汎血球減少症を認めたため、骨髄穿刺を実施し、EMPに関連した血球貪食症候群が疑われた。症例は放射線療法で鼻腔内の腫瘤に退縮を認めたが、腎臓への転移を認め死亡した。[考察]本症例では2度の病理組織検査によってEMPの診断に至ったことから、リンパ形質細胞性炎症の鑑別としてEMPを考慮する必要がある。鼻腔内EMPは放射線療法がEMPを局所制御できる可能性が考えられたが、EMPは完全切除ができない場合、遠隔転移することが示唆された。また悪性腫瘍関連血球貪食症候群が生じたと考えられた。

2. 爪床メラノーマの肺転移切除後に長期生存している犬の1例

◯布川智範 嶋田竜一 池田博和(ぬのかわ犬猫病院)

[はじめに]肺腫瘍は原発性腫瘍と転移性腫瘍に分類され、その多くは転移性である。その治療は、外科療法・化学療法・分子標的薬・吸入療法の報告はあるが、十分な検討はされていない。[症例]バーニーズ・マウンテン・ドック、15歳、避妊雌。爪床メラノーマのため右前肢第5指を摘出。マージン(−)、転移はなく、補助治療は行わずに胸部レントゲン検査で検診をしていった。手術後第1150病日に左後肺野領域に結節性陰影を認め、CTで左肺後葉に肺腫瘤が認められたため、外科的に左肺後葉部分切除を行った。副葉の胸膜に微小な結節が認められ、こちらも摘出した。病理検査は肺、胸膜ともにメラノーマの転移であった。肺転移切除後第485日の胸部レントゲン検査では新たな転移病変は認められていない。[考察]転移性肺腫瘍の外科的な治療効果を検討するのに、症例数を増やして検討していく必要があると考えられた。

3. 喉頭蓋の後傾に対し喉頭蓋部分切除術を実施し良好な経過が得られた犬の1例

稲葉健一(犬・猫の呼吸器科)

持続性ストライダーを呈した5歳の雌のポメラニアンが来院し、透視検査および喉頭鏡検査より喉頭蓋の後傾と診断した。まず喉頭蓋固定術を実施したが、第6病日に縫合糸の断裂が生じ再発したため、第9病日に喉頭蓋部分切除術(V字状)を実施した。術後よりストライダーは消失した。術後2か月後の喉頭鏡検査において喉頭蓋の切除面は良好に上皮化されていることが観察された。現在術後45ヶ月が経過しているが誤嚥や嚥下困難もなく、良好に経過している。

4. 咳嗽と喀血を呈した猫の気管支疾患の1例

稲葉健一(犬・猫の呼吸器科)

発作性咳嗽、喀血を呈する4歳齢の去勢雄の雑種猫が精査希望のため来院した。胸部X線検査にて右中肺野に境界不明瞭な浸潤影及び右後肺野に間質影、両側後肺野に気管支壁の肥厚像を認め、動脈血ガス分析は正常範囲であった。気管支鏡検査にてRB4V1に出血あり、吸引後に赤色の拍動性結節病変を認めた。これが喀血の原因と考えられたが出血が懸念され生検は実施しなかった。気管支肺胞洗浄液解析で好酸球増加(22.2%、正常10%)と好中球増加(59.7%、正常4.0%)を認め、培養では細菌陰性であった。好酸球/好中球性混合型の猫の気管支疾患と診断し、プレドニゾロンの全身投与、気管支拡張剤の吸入療法を開始した。咳嗽、喀血は速やかに消失し、肺野異常影も改善し、現在治療開始より6ヶ月間、良好に経過している。猫の気管支疾患に喀血を伴うことは稀であり、拍動性気管支結節病変の関与が示唆された。

閉会のあいさつ 城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

 

開催状況

谷口先生

布川先生

稲葉先生

全体風景

今回は、症例報告4題について、参加者と議論いたしました。いずれの演者も本研究会にて積極的に活動されている先生方で、日頃呼吸器臨床に専心的に取り組まれております。

1題目は兵庫ペット医療センター東灘病院勤務で、日本獣医生命科学大学獣医放射線学研究室の研究生も兼務されている谷口先生から、猫の鼻腔内形質細胞腫の一例の報告がありました。形質細胞腫は、一般に予後不安定と言われておりますが、その全貌はよくわかっておりません。報告された症例は、画像、病理、血液内科学など集学的に特異的診断アプローチが進められ、悪性の性質をもつ腫瘍と判断され、化学療法と放射線療法を試みられ、一時は少し状態の改善がみられたのですが、貧血や腎臓転移なども生じ、残念ながら転機不良の経過をたどりました。会場からは、リンパ腫と本症例で診断された形質細胞腫との差異、検体採取法について質疑がありました。内科学や腫瘍学の分野が多いに関連しますが、「形質細胞腫」自体の診断や分類が明瞭になるにはまだ時間がかかるようです。

2題目は横浜のぬのかわ犬猫病院の布川先生から、15歳のバーニーズ犬にてメラノーマの孤立肺転移病巣を片肺換気下胸腔鏡補助下に最小限の肋間切開創にて肺部分切除にて摘出をおこなった報告でした。片肺換気の方法や、胸腔鏡所見など丁寧に詳しく提示され、また肺転移腫瘍病巣切除に対する根拠についても文献考察を十分にされていました。動物の領域でも、人のように転移病巣を早期発見し切除する時代が来るのかもしれません。すばらしい報告でした。会場からは、片肺換気の気道確保法について質問があり、これまでの経験から最善と考えられる、気管チューブをご紹介いただきました。

3題目は犬・猫の呼吸器科の稲葉先生から、執拗なストライダーを示した喉頭蓋の後傾への行なった喉頭蓋部分切除について報告がありました。喉頭蓋の後傾の病態、その術式を選んだ根拠、誤嚥が起こりにくい理由、予後について説明がありました。会場からは、これまでの第一選択術式と考えられてきた喉頭蓋固定術の是非、切除法、温存的対処法について質問がありました。演者経験から、従来法の喉頭蓋固定術は高確率で失敗し再発したり、誤嚥が起こりやすいと考えられると回答がありました。本術式は、簡便でかつ術後経過良好であり、基本的に咽喉頭運動において合理的であることが考えられることから、さらに例数を増やしその長所を検討すべきと思われました。

4題目も犬・猫の呼吸器科の稲葉先生から、喀血を伴った猫の気管支疾患の一例について報告がありました。主症状は慢性発作性咳でした。気管支鏡検査にて、気管支のある部位に拍動性の赤色結節病変が認めらましたが生検は大量出血のリスクが高いと考えられ、動脈瘤病変を疑いました。また、慢性発作性咳については、気管支肺胞洗浄液解析から好中球/好酸球混合型の気管支疾患と診断されました。気管支疾患の治療のみ行いましたが、幸い経過良好で喀血の再発は認められませんでした。会場からは、赤色結節病変は腫瘍性病変の可能性があるのでは、という指摘がありました。また、猫の気管支疾患という診断名に馴染みがないとの指摘がありました。本疾患名は、唯一の犬・猫の呼吸器疾患の教科書であるTextbook of Respiratory Diseases in Dogs and CatsのChapter53に、Feline Bronchieal Diseases/Athmaという記述があることを示し、なおかつ、この猫の気管支疾患は、BALF所見によって好酸球型、非好酸球型、混合型の3タイプがあり、これらは症状や治療反応が異なるので、予後が異なることを、城下より補助的に説明しました。猫喘息、Feline Asthmaは、好酸球型の猫の気管支疾患と同義となります。

参加者(順不同、敬称略):合屋征二郎(東京農工大学獣医外科学研究室 東京)、谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院 兵庫)、上田一徳(横浜山手犬猫医療センター 神奈川)、菅沼鉄平(ほさか動物病院 神奈川)、山下智之(上大岡キルシェ動物病院 神奈川)、田畑達彦(ダクタリ動物病院東京医療センター 東京)、近藤絵里子(ペット家族動物病院西五反田店 東京)、飯野亮太(いいのペットクリニック 北海道)、明石依里子(代官山動物病院 東京)、布川智範(ぬのかわ犬猫病院 神奈川)、侭田和也(JASMINEどうぶつ循環器病センター 神奈川)、横井慎仙(関水動物病院 神奈川)、松田岳人(くりの木動物病院 神奈川)、山下弘太(ダクタリ動物病院東京医療センター 東京)、中野秀哉(動物病院川越、埼玉)、田中啓之(武井動物病院 東京)、小川浩子(小川犬猫病院 神奈川)、草場翔央(Sho Animal Clinic 神奈川)、関敬泰(ピジョン動物愛護病院わらび院 埼玉)、徳田智(日本動物高度医療センター東京病院 東京)、杉井太市郎(アポロどうぶつ病院 埼玉)

合計21名

賛助会員:(株)ジェイエスピー、フクダエムイー工業(株)

最終更新日:2019年6月19日(城下幸仁)


第3回 犬・猫の呼吸器勉強会

日時

平成31年4月8日(月)19:00−21:00

内容

開会のあいさつ 城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

1 呼吸器総論

犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅢ 身体検査(視診、聴診、触診、打診)

城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

7年以上呼吸器専門診療を継続してきた経験に準じて作成した犬・猫の呼吸器科の診療データベースのシートを用い、麻酔を行わない一次検査の手順による診断アプローチを紹介し、今後当研究会での呼吸器診療の診療基準の試案を検討していく。今回より、身体検査(視診、聴診、触診)の手順について紹介する。

2 研究班報告

犬・猫の気管支鏡検査−麻酔法、体位、気道確保、BALの手技、合併症に関する文献レビュー

菅沼 鉄平(ほさか動物病院)

犬と猫の気管支鏡検査について1985~2015年までの主要な報告や獣医呼吸器学テキストから11の資料の記載内容をまとめたものを報告する。今回は気管支鏡検査時の体位、気道確保の方法、麻酔法、BALの手技、合併症についてまとめ、現在の獣医療での傾向を確認した。気管支鏡検査は呼吸器疾患診断で重要な役割を担っているが、検査による循環や呼吸状態への変動をきたす可能性もあるため、今回のレビューにてその手技を見直し改善点を議論する契機にしたい。

3 症例報告・臨床研究

口咽頭内の腺扁平上皮癌と診断された_キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルの1例_

明石 依里子(昭島動物病院、現:代官山動物病院)

腺扁平上皮癌は、人において、はじめは高悪性度の粘表皮癌とされていたが、その浸潤性の高さと予後の悪さ、そして形態的な違いから、独立した腺癌と扁平上皮癌の組織学的な形態を持つものとして2004年から新たに「粘膜上皮から発生し、扁平上皮癌と真の腺癌の性質をもつ腫瘍」と定義され、WHOに分類された。その生物学的動態は悪く、リンパ節転移や遠隔転移の率が高く予後不良とされている。犬における腺扁平上皮癌の報告は少なく、特に口咽頭腫瘍としての発生は報告数が限られている。そのため、その生物学的動態は悪いとされているものの、特性や病態は不明な点が多く、認知度も低いのが現状である。今回、その口腔咽頭腫瘍としては稀な疾患である腺扁平上皮癌の犬の1症例を経験し、知見を得たのでその剖検による病理組織的結果を中心に報告する。

閉会のごあいさつ  城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

開催状況

平成最後の勉強会となりました。年度が変わり、ご多忙の中多くの先生方にご参加いただきました。今回は、参助会員の企業の株式会社東京メニックス、株式会社ジェイエスピー、フクダエム・イー工業株式会社の方々もご参加あり、ICU装置や動物監視システムなどの呼吸器患者の診療にはとてもありがたい装置の紹介がありました。今後もぜひ研究会にご助力いただければと思います。

まず冒頭に、本研究会の監査役のテルコム株式会社の小林さんからNPO法人の説明があり、私からも研究会のNPO法人化を目指したい旨をみなさんにお伝えしました。NPO法人とは公認の社会貢献活動のための法人です。手続きは煩雑で活動目的は指定され、経理状況も公開が義務付けられ、規模は小さくても社会信用度が高い法人形態です。臨床獣医師として、動物のみならず医学にも貢献できるような活動や研究をアピールしてきたいと考えています。NPO法人化については、私と小林さんとで進め、折にふれ進捗状況を会員のみなさんにお伝えします。

今回は、まず城下が総論として、犬・猫の呼吸器疾患のアプローチとして、身体検査についての話題を始めました。呼吸数、BCS、カフテスト、胸部タッピングの意義と解釈について述べ、異常呼吸音のうちスターターについて動画を交えながら説明しました。

次に、ほさか動物病院の菅沼先生から犬・猫の気管支鏡検査の手技や合併症の文献レビューについて口演してもらいました。7Fr以下の気管チューブを使用するような猫や小型犬での適用に制限があり、より安全かつ効果的な方法を確立する必要性を述べました。議論では、各施設でこのサイズの動物への気管支鏡検査の適用の選択には慎重にならあるを得ないとの意見が多かったです。本邦では小型犬や猫が多く、この問題解決は不可欠と考えます。本研究会では、その解決法としてラリンゲルマスクの適用を上げており、今後その成果を報告していきます。

最後に、代官山動物病院の明石先生から、旧所属の昭島動物病院で経験したキャバリアの咽頭腫瘍について報告がありましした。結果としては、予後不良でその動態がよく知られていない珍しい腺扁平上皮癌と判明しましたが、術中の気管切開部への気管チューブの処置中に、急に徐脈になり、徐脈は急性進行性でアトロピンに反応せず、数10秒ののちに心停止となったとのことでした。死因解明のため、剖検が行われましたが、心肺に死因に結びつく原因はみつからなかったということでした。状況から単純に迷走神経刺激とは考えられないというのが大方の意見でした。術前の低栄養状態より術中低血糖の可能性や、空気塞栓が心臓冠動脈に流入したのかもしれないとの意見もありました。腺扁平上皮癌は、剖検によりリンパ節全体を採取し、深部まで免疫染色を含め詳細に病理組織学的に精査して診断にいたりました。通常キャバリアでみられる扁桃扁平上皮癌の一部は腺癌との合併があるのかもしれないと考察でした。咽頭腫瘍の対処、その病理学所見、術中事故など多くの問題を投げかける症例報告でした。いずれにしても、キャバリアの咽頭腫瘍は慎重なインフォメーションのもとで診療を行う必要がありそうです。

参加者(順不同、敬称略):

山谷吉樹(日本大学生物資源科学部獣医学科 神奈川)、青木卓磨(麻布大学外科学第一研究室 神奈川)、上田一徳(横浜山手犬猫医療センター 神奈川)、菅沼鉄平(ほさか動物病院 神奈川)、山下智之(上大岡キルシェ動物病院 神奈川)、福田大介(まるふく動物病院 群馬)、田畑達彦(ダクタリ動物病院東京医療センター 東京)、近藤絵里子(ペット家族動物病院西五反田店 東京)、飯野亮太(いいのペットクリニック 北海道)、中森正也(乙訓どうぶつ病院 京都)、谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院 兵庫)、明石依里子(代官山動物病院 東京)、吉田健二(ファミリー動物病院 千葉)、布川智範(ぬのかわ犬猫病院 神奈川)、櫻井智敬(とも動物病院 神奈川)、中野秀哉(動物病院川越 埼玉)、森本望美(相模原どうぶつ医療センター 神奈川)、小川浩子(小川犬猫病院 神奈川)、草場翔央(Sho Animal Clinic 神奈川)、小野和徳(花岡動物病院 神奈川)、横井慎仙(関水動物病院 神奈川)、松田岳人(くりの木動物病院 神奈川)、高安聡(麻布大学5年生 神奈川)、徳田智(日本動物高度医療センター東京病院 東京)、松田有梨(ドルフィンアニマルホスピタル 埼玉)、杉浦洋明(DVMsどうぶつ医療センター横浜 神奈川)、岩上慎哉(みかん動物病院 神奈川)、長谷川英公(相模原どうぶつ医療センター 神奈川)、赤沼康子(東京動物医療センター 東京)、中島ちひろ(アニマルクリニックこばやし 埼玉)

合計30名

賛助会員:(株)ジェイエスピー、(株)東京メニックス、フクダエムイー工業(株)

最終更新日:2019年4月11日(城下幸仁)


第2回 犬・猫の呼吸器勉強会

日時

平成31年2月11日(月)19:00−21:00

内容

開会のあいさつ

1 呼吸器総論

犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチⅡ 問診

城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

小動物の呼吸器診療は観察に始まり観察に終わる。獣医領域では呼吸の動的評価を数値化し客観評価することがまだ困難であり、一定した系統的な手順で診療を進める必要がある。今回から、7年以上呼吸器専門診療を継続してきた経験に準じて作成した犬・猫の呼吸器科の診療データベースのシートを用い、麻酔を行わない一次検査の手順による診断アプローチを紹介し、今後当研究会での呼吸器診療の診療基準の試案を検討していく。今回は、診察の第一歩である問診の手順について紹介する。

2 研究班報告

今回は演題がありません。

3 症例報告・臨床研究

死後検査における呼吸器

三井 一鬼(合同会社ノーバウンダリーズ動物病理)

緻密なネットワークによって生命を維持している臓器・器官・細胞に生じた変化を具体的かつ包括的に知り、死因追究や病態把握を通じて人と動物の科学や社会に貢献するのが死後検査である。当社にて6年間で201頭の動物(大半は犬と猫)の死後検査を行ったところ、135頭において肺に直接死因や主病変が存在し、他の臓器系を凌駕していた。診断名としては肺水腫(PE)が最多で、び漫性肺胞傷害(DAD)や各種肺炎がこれに続いた。本講演においては呼吸器の死後検査手技を説明し、実際に遭遇した肺病変について、病理発生機序、臨床情報、病理肉眼像、病理組織像を包含して紹介する。また、PEDADの概念と原因(長い鑑別診断リスト)を説明する。今後、臨床医と病理医が動物の呼吸器疾患の病態把握や診断のためにどのように協力できるか・すべきかのベースを提供するのが、本講演の最大の目的である。

閉会のごあいさつ  城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

開催状況:

会員、非会員あわせて計27名のご参加がありました。ご多忙のところ、ご参加ありがとうございました。

まず、城下から呼吸器疾患へのアプローチの問診の手順の要点について、犬・猫の呼吸器科で現在運用している診療データベースを用いて、注目すべき重要な徴候とグレーディングを中心に解説しました。このような診療基準は、定型的なものがなく、まず当研究会にて提案し議論していきたいと思っております。

次に、豊富な動物の剖検経験をお持ちの合同会社ノーバウンダリーズ動物病理の三井先生から肺の病理について解説していただきました。三井先生は北大を卒業後、米国で病理学を勉強され、米国獣医病理学専門医となられました。これまで民間の病理医として活動されてきましたが、4月からは岡山理科大に大学教官として就任されます。ますますのご活躍をお祈り申し上げます。講演では、統計的に死因には肺水腫とDADが関与することが多いので、呼吸器臨床医の連携をとりたいと強く主張されました。病理検討は呼吸器臨床には不可欠であり、三井先生は呼吸器病理にとても強い関心をお持ちで、研究会の強力なパートナーになってくれそうです。研究会としては、肺病理検査にはぜひ三井先生に依頼し、動物の肺疾患の実態調査をお願いしたいと思います。

犬・猫の呼吸器科 城下

参加者(順不同、敬称略):

谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院 兵庫)、山谷吉樹(日本大学生物資源科学部獣医学科 神奈川)、青木卓磨(麻布大学外科学第一研究室 神奈川)、上田一徳(横浜山手犬猫医療センター 神奈川)、菅沼鉄平(ほさか動物病院 神奈川)、山下智之(上大岡キルシェ動物病院、神奈川)、田畑達彦(ダクタリ動物病院東京医療センター、東京)、近藤絵里子(ペット家族動物病院西五反田店、東京)、飯野亮太(いいのペットクリニック、北海道)、中森正也(乙訓どうぶつ病院 京都)、明石依里子(代官山動物病院 東京)、布川智範(ぬのかわ犬猫病院、神奈川)、櫻井智敬(とも動物病院 神奈川)、侭田和也(JASMINEどうぶつ循環器病センター 神奈川)、二平泰典(クローバー動物病院 東京)、早部裕紀(東京動物医療センター 東京)、赤沼康子(東京動物医療センター 東京)、三井一鬼(ノーバウンダリーズ動物病理 東京)、横井慎仙(関水動物病院 神奈川)、吉田健二(ファミリー動物病院 千葉)、松田岳人(くりの木動物病院 神奈川)、高安聡(麻布大学4年生 神奈川)、岩上慎哉(みかん動物病院 神奈川)、吉川裕稀(相模原どうぶつ医療センター 神奈川)、中島ちひろ(アニマルクリニックこばやし 埼玉)、渡邊建(たてる動物病院 日野)、長谷川英公(相模原どうぶつ医療センター 神奈川)

計27名

最終更新日:2019年2月14日 (城下幸仁)


第1回 犬・猫の呼吸器勉強会

日時:平成30年12月10日(月)19:00−21:00

会場:相模原市立市民・大学交流センター(セミナールーム1) 最寄駅:相模大野駅

内容

開催のごあいさつ  城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

犬・猫の呼吸器臨床研究会発足の経緯と活動方針について説明いたしました。

1 呼吸器総論

犬・猫の呼吸器疾患へのアプローチ1 呼吸器臨床の体系と鑑別疾患リスト

城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

呼吸器疾患を体系的に理解するための基本的な知識について述べた。犬・猫の呼吸器を上気道、中枢気道、末梢気道・肺実質の3区分に分けた。末梢気道・肺実質疾患は、人の呼吸生理学で用いられている肺の模式図を用いて、さらに、閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、肺水腫、肺塞栓症、気管支肺炎、誤嚥性肺炎にカテゴリー分類される。上気道疾患、中枢気道疾患、および末梢気道・肺実質疾患の6つのカテゴリーにおいて、その特性、病態、初期治療法について概説し、最後に、鑑別疾患リスト(計83疾患)を提示した。公開動画はこちら

2 研究班報告  座長: 城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

獣医臨床における 咳のグレーディング評価

谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院)

咳嗽を呈する疾患はアレルギー/炎症、心血管系、感染症、腫瘍、外傷および身体異常にカテゴリー 分類できる。咳嗽は臨床経過(急性あるいは慢性)、咳嗽の性状(湿性、乾性、あるいは痰産生 性)、咳嗽の持続時間(単発性あるいは持続性)、発症契機(飲水、興奮、睡眠時など)および 環境要因(夜間、屋内、季節など)を聴取することで疾患のカテゴリー分類を容易にする。獣医 療において咳嗽を評価した報告はなく、人医療においては咳嗽の重症度は主観的評価法として VAS(Visual Analogue Scales), CSS(Cough Severity Score), CSD(Cough Severity Diary), HRQOL(Health Related Quality Of Life)が用いられ、客観的評価法として咳嗽感受性検査およ び咳モニターが用いられている。今回の報告で獣医療における咳嗽ガイドラインの作成に寄与で きればと思う。公開動画はこちら

3 症例報告・臨床研究  座長: 城下幸仁(犬・猫の呼吸器科)

無菌性化膿性肉芽腫により重度気管狭窄を生じた若齢犬の1例

稲葉健一(犬・猫の呼吸器科)

症例はポメラニアン、オス、7か月齢。来院1カ月前からの呼吸困難、胸部異常影、遷延性咳嗽を主訴に来院。初診時は沈鬱状態、呼気性喘鳴様の咳嗽あり。血液検査にて白血球およびCRPの増加あり、動脈血ガス分析にて問題なし。胸部X線・透視検査にて固定性の胸部気管狭窄、右前肺野無気肺あり。気管支鏡検査にて胸部気管の管外性圧迫あり(最狭窄部1mm以下)、気管ブラッシング標本にて細菌培養陰性。気管外腫瘤状病変の管外性圧迫による気管狭窄(化膿性または肉芽腫性病変、好酸球性疾患、リンパ増殖性疾患などを疑う)と暫定診断した。免疫抑制量のステロイド療法を実施するも治療反応乏しく、第14病日に自宅にて死亡した。死後の剖検にて、管外腫瘤は無菌性化膿性肉芽腫と判明した。通常、化膿性肉芽腫はステロイド療法や免疫抑制療法により改善が認められることが多いが、本症例では効果なく、救命のための手段を検討する必要がある。公開動画はこちら

閉会のごあいさつ  城下 幸仁(犬・猫の呼吸器科)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

開催状況:

ご多忙の中、会員28名、非会員7名、計35名のご参加がありました。犬・猫の呼吸器臨床研究会になって初めての勉強会でしたが、おかげさまで盛況に終わることができました。

まず、城下から呼吸器診療のゴールとなる83疾患名をあげました。今後、原則的にこれら各疾患リストに従って、鑑別疾患を考えていくシステムとなります。各疾患に対し、問診や身体検査からアプローチする方法を診療基準案として提案いたしますので、会員の皆さんと議論を進めて診療基準を完成していきたいと思います。

次に、兵庫ペット医療センター東灘病院で呼吸器診療を担当している谷口先生から、「咳」のグレーディングについて、咳の機序から文献レビューを行なっていただきました。獣医臨床では咳の程度の評価法や指標は確立していないとのことでした。咳の客観的定量検査は現段階では非現実的なので、問診での評価基準があると有意義と考えられます。

症例報告では、犬・猫の呼吸器科の稲葉先生から、若齢犬の犬の気管狭窄の1例について提示がありました。胸部気管の管外圧迫性狭窄は猫ではよく認められ、リンパ腫であることが多いのですが、この症例ではリンパ腫でなく、無菌性化膿性肉芽腫でした。非常に稀なケースです。臨床経過や発症機序ともいまだ不可解な点が多いのですが、難治性気管狭窄のひとつの鑑別疾患として念頭におくべきと考えられました。

開催後の懇親会でも20名ほどの参加があり、情報交換や親睦を深めることができました。今後、本研究会が、小動物の呼吸器診療の基盤作りに貢献できることを切に願っております。

犬・猫の呼吸器科 城下

参加者(順不同、敬称略):谷口哲也(兵庫ペット医療センター東灘病院 兵庫)、山谷吉樹(日本大学生物資源科学部獣医学科 神奈川)、青木卓磨(麻布大学外科学第一研究室 神奈川)、上田一徳(横浜山手犬猫医療センター 神奈川)、菅沼鉄平(ほさか動物病院 神奈川)、山下智之(上大岡キルシェ動物病院、神奈川)、山中一大(フェンネル動物病院 東京)、福田大介(まるふく動物病院 群馬)、田畑達彦(ダクタリ動物病院東京医療センター、東京)、近藤絵里子(ペット家族動物病院西五反田店、東京)、飯野亮太(いいのペットクリニック、北海道)、中森正也(乙訓どうぶつ病院 京都)、明石依里子(代官山動物病院 東京)、松永典子(ラーク動物病院 大阪)、布川智範(ぬのかわ犬猫病院、神奈川)、山下弘太(ダクタリ動物病院東京医療センター 東京)、櫻井智敬(とも動物病院 神奈川)、侭田和也(JASMINEどうぶつ循環器病センター 神奈川)、中野秀哉(動物病院川越 埼玉)、田中啓之(武井動物病院 東京)、森本望美(相模原どうぶつ医療センター 神奈川)、小川浩子(小川犬猫病院 神奈川)、草場翔央(Sho Animal Clinic 神奈川)、関敬泰(ピジョン動物愛護病院わらび院 埼玉)、海老澤崇史(世田谷通り動物病院 東京)、二平泰典(クローバー動物病院 東京)、早部裕紀(東京動物医療センター 東京)、赤沼康子(東京動物医療センター 東京)、大島綾華(日本大学動物病院 神奈川)、松田有梨(ドルフィンアニマルホスピタル 埼玉)、田中千賀((株)AVS 東京)、三井一鬼(ノーバウンダリーズ動物病理 東京)、合屋征二郎(東京農工大学獣医外科学研究室 東京)、横井慎仙(関水動物病院 神奈川)、池田彬人(第1種放射線取扱主任者、獣医腫瘍科認定医Ⅱ種)

最終更新日:2018年12月14日 (城下幸仁)