Blog-Dr城下の呼吸器雑記帳

X線検査について

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肺疾患の評価は、肺野異常陰影のパターン認識と分布をみます。胸部X線検査のlateral像1枚と胸部X線DVまたはVD像1枚撮影します。肺野を評価するための適正な露出条件は、側面像にて肩甲骨に重なる部分で胸椎背側棘突起が識別でき(図05)、背腹像にて心基部と重なる椎体部分が識別できる(図06)ことにあります。肺野評価であれば、最大吸気時に撮影します。 撮影は閉口の状態で行います。びまん性陰影(図07)か限局性陰影(図08)かみます。陰影の程度にかかわらず、一般にびまん性肺疾患は機能障害が大きくなります。

肺野異常陰影の表記分類について図09に示しました。間質陰影(間質パターンともいう)は肺胞領域の含気を残して間質の炎症、浮腫、線維化、結節病変を反映した陰影です。通常、肺血管走行は識別可能な程度のX線不透過性を示しびまん性に広がります。肺胞浸潤影(浸潤影、肺胞パターンともいう)は逆に肺胞の気腔領域に広く液体が「浸潤」した状態を反映した陰影で、この浸潤液は肺胞間の連絡孔Kohn孔を介し隣接気腔に流出進展し小葉内および肺葉内に次々と広がっていきます。したがって、境界不明瞭、融合性、斑状等の性格をもつ限局性あるいはびまん性X線不透過性陰影です。浸潤領域の中を走行する気管支のガスは滞留拡張し周囲の不透過領域に対しコントラストが生じ、air bronchogramが肺野異常影中にみられます。気管支パターンは、気管支粘膜およびその周囲の間質の炎症や浮腫、気管支内分泌物貯留を反映した陰影であり、縦断面でtram lineと呼ばれる2本線像や、横断面で輪状陰影やperibronchial cuffingとよばれる円形状にみえます。ただし画像だけでは気管支壁内の粘膜病変なのか、壁外の間質病変なのか鑑別はできません。ですから、「気管支パターン」のみを所見として強調することは避けた方がよいと思います。同時にスリガラス様陰影や網状または細網状陰影など間質陰影の要素を探すことができれば「気管支パターン」は壁外病変であると判断できます。びまん性透過性亢進は肺胞壁の破壊によって生じた肺気腫と考えられ(図10)、限局性境界明瞭な透過性亢進所見はのう胞または空洞性病変と考えられ、気管支拡張症や肺吸虫症かもしれません(図11)。

X線検査は呼吸器疾患診断に非常に重要であることには間違いありませんが、主観評価であるという重大な欠点があります。異常陰影を偶発的に生じたアーティファクトと思いこんだり、加齢性所見と判断したり、偽間質陰影と考えたり、正常範囲として見落としてしまったり、読影者によって差がでたり、結局は画像だけでは最終判断を下せないことが多々あります。そのような場合、同時に動脈血ガス分析の客観データが加わると、異常画像の真偽を明確にすることができ、「やはり異常所見だったか」と再認識できます。間質性肺疾患の場合、よくこのようなことが起きます(図12)。

最終更新日:2015.11.10