気管支鏡検査一覧
症例558
【症例558動画】 クルミちゃん。ヨークシャーテリア メス 9歳、体重1.84kg。興奮時喘鳴があり、1ヶ月前に原発性気管虚脱グレード4と診断し気管内ステント留置を行いましたが(症例547)、10日後に症状が再発し再検査となりました。 最終診断は、原発性気管虚脱グレード4。
経過詳細
患者名:クルミ
プロフィール:ヨークシャーテリア、9歳、メス
主訴:興奮時喘鳴
症例547の継続診療です。
問診:前回ステント留置で退院後5日間は調子がよかったが、その後興奮時喘鳴が再発した。安静時は安定している。
身体検査:体重1.84kg(BCS3/5)。来院時は咳も喘鳴もなかった。
頭部/胸部X線および透視検査:胸部にてステント前方虚脱形成あり。ショートニングの影響と考えられた。
評価および予後について飼い主へのインフォーメーション:前回の処置後、ご説明しておりましたが気管内ステントのショートニングが生じていました。ステントの前方追加で気管を安定させることができると思います。
飼い主の選択
病状は理解した。気管内ステント追加留置を受ける。
気管支鏡検査(7月14日)
1) 肉眼所見: 喉頭直下から既存ステント前端まで気管虚脱がありました。既存ステント内には粘液停滞が少量認められ、ステント内にわずかに肉芽組織形成がみとめられたに過ぎませんでした。気管分岐部前からは気管は呼吸相を通じて開存し、動的な気管支虚脱(気管支軟化症)は認められませんでした。
2) 気管支ブラッシング:ステント内粘液を採取。微生物検査にて有意な起炎菌は分離されなかった。
二次検査評価:ステントを前方追加処置可能と判断されました。
Ⅱ 気管内ステント留置
既存ステントと同径のVetStent-Trachea Ф10mmX32mmのサイズのステントを用い気管内ステント留置を行いました。既存ステントに障害を与えないように慎重に時間をかけ、できるだけ喉頭直下10mm以内に追加ステントの前端が位置するように展開を行いました。ステントの気管内展開時間は約11分間でした。
麻酔管理概要:
前処置 ABPC20mg/kg+アトロピン0.05mg/kg SC
鎮静 ミダゾラム0.2mg/kg+ブトルファノール0.2mg/kg IV
導入 プロポフォール IV to effect (<5mg/kg)
維持 フォーレン0.5-1.0%、プロポフォール持続投与0.2-0.4mg/kg/min
気管支鏡検査中はラリンゲルマスク#1.0にて気道確保にて自発呼吸。気管チューブは使用せず。
気管支鏡検査12:02−12:07、気管内ステント留置12:19−12:31、抜管(ラリンゲルマスク)13:03
経過
留置直後より喘鳴は劇的に改善しました。翌日、一般状態良好で喘鳴なく、咳もなく、元気に退院しました。自宅ではネブライザー療法を継続しました。さらに1ヶ月後の再診でも、この期間全く喘鳴や咳なくとても元気に自宅で過ごしていたとのことでした。胸部X線でもステント全体は虚脱部全体をカバーし良好な位置に保持されていました。