気管支鏡検査一覧
症例529
【症例529動画】 りりちゃん。トイプードル オス 10歳、体重2.80kg。原発性気管虚脱グレード4のため気管内ステント留置を行い、3ヶ月目の定期的気管支鏡検査。
経過詳細
初診日:2015年12月7日
気管支鏡検査日:2015年12月7日
手術日:2015年12月7日(手術内容:気管内ステント留置、症例512)
退院日:2015年12月11日
診断:原発性気管虚脱、気管支軟化症
除外された疾患:心臓弁膜症、咽頭虚脱
治療方針:ステントの管理および気管支軟化症の管理のため、在宅ネブライザー療法、減量(目標体重2.40kg)、気管支拡張薬および去痰剤の投与
3月17日にステント留置し、その後3カ月目の定期的気管支鏡検査のため来院がありました。
問診にて、1週間前より咳が増加しているとのことでした(連日/1日3-10イベント/1イベント>2分=咳スコア9)。体重管理が徹底できない。ご高齢のお母様が毎日こっそりおやつを与えてしまう。
身体検査:体重2.80kg(先月より約10%増加)。咳が多かった。
胸部X線および透視検査:後肺野間質陰影増加。気管内ステントの状態良好で位置移動なし。
CBCおよび血液化学検査:異常なし。CRP0.05mg/dl。
動脈血ガス分析:低酸素血症(Pao2 65mmHg)
気管支鏡検査前評価:咳の増加は体重増加による気管支軟化症の一過性進行を疑いましたがX線や透視ではよく評価できませんでした。Pao2>60mmHgで気管支鏡検査実施基準を満たしていたので、内視鏡検査所見にて精査することにしました。
気管支鏡検査所見:ステントの上皮化は良好。肉芽組織形成なし。わずかに粘液停滞あり。気管分岐部以降に多発性気管支軟化所見あり、呼気時には
ほぼ全ての葉気管支が虚脱していた。粘液に細菌陰性。気管支鏡検査概要は以下のとおり。
最終評価:体重の増加が気管支軟化症を悪化させ、今後この傾向が持続すれば不可逆性の気管支軟化症、すわなち気管支拡張症に進行し、痰産生咳は執拗かつ持続性となり、きわめてQOLが悪化することは必至なのでステント留置の意味がなくなってしまう。
治療方針:入院管理にて体重を目標値まで落とし、気管支軟化症の進行を止める。
飼い主の選択:入院管理を希望する。
入院治療:食事は減量サポートのドライフードのみ、ネブライザー療法(生食、GM, メプチン、ビソルボン)、ブリカニール0.01mg/kg SC 1日2回
経過
2週間の入院で咳は軽減(連日/1日1-3イベント/1イベント30秒以下=咳スコア7)、体重は2.30kg、胸部X線検査にて後肺野間質影は著明に減少、Pao2 71mmHgに増加し、本日3月31日退院となった。自宅では体重を2.40kg以下に維持するよう指示。在宅ネブライザー療法、およびベラチン1mg錠 1/4錠1日2回、ビソルボン錠1/2錠 1日2回を継続。