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「リンパ形質細胞性鼻炎」
「リンパ形質細胞性鼻炎」は、最近「リンパ球形質細胞性鼻炎」とも呼ばれることがあり、以下調べてみました。
- King, L. G. (2004). Textbook of Respiratory Diseases in Dogs and Cats. St.Louis, SAUNDERS.
“Chapter39 Lymphoplasmacytic rhinitis”
- Lymphoplasmacytic rhinitis
PubMed 検索にて33件ヒットし、うち22件にタイトルに犬か猫が含まれていた(検索日:2018.3.14)
例)
- Windsor RC, Johnson LR, Herrgesell EJ, et al. Idiopathic lymphoplasmacytic rhinitis in dogs: 37 cases (1997-2002). J Am Vet Med Assoc 2004;224:1952-1957.
- Windsor RC, Johnson LR, Sykes JE, et al. Molecular detection of microbes in nasal tissue of dogs with idiopathic lymphoplasmacytic rhinitis. J Vet Intern Med 2006;20:250-256.
- Mercier E, Peters IR, Day MJ, et al. Toll- and NOD-like receptor mRNAexpression in canine sino-nasal aspergillosis and idiopathic lymphoplasmacytic rhinitis. Vet Immunol Immunopathol 2012;145:618-624.
「Lymphoplasmacytic rhinitis」は、獣医学では確立している用語と考えられるが、人医領域の用語ではない。
問題は、日本語訳ですが、
1)King, L. G. (2004). Textbook of Respiratory Diseases in Dogs and Cats. St.Louis, SAUNDERS.の翻訳本の、犬と猫の呼吸器疾患、インターズー、2007では、「リンパ形質細胞性鼻炎」と翻訳されている。
- 日本獣医学会疾患名用語集に、「リンパ形質細胞性鼻炎」 も 「リンパ球形質細胞性鼻炎」も記載なし。
- 医学中央雑誌にて(検索日:3.14)、
「リンパ形質細胞性鼻炎」 検索にて0件
「リンパ球形質細胞性鼻炎」 検索にて以下の2件のみ
【ミニチュア・ダックスフンドの呼吸器疾患を再考する】 リンパ球形質細胞性鼻炎(解説/特集)
光線力学療法により治療を試みたリンパ球形質細胞性鼻炎の犬の1例(会議録/症例報告)
- Author:大崎 智弘(北海道大学 獣医外科),高木 哲, 櫻庭 義彦, 星野 有希, 奥村 正裕, 藤永 徹
- Source:北海道獣医師会雑誌 (0018-3385)50巻8号 Page88(2006.08)
- Lymphoplasmacytic=「リンパ形質細胞性」と考え、検索すると、
医中誌 173件(ヒト 169件、獣医 4件)。獣医では「リンパ形質細胞性リンパ種」が全て
例)ネコの全身転移を伴う皮膚リンパ形質細胞性リンパ腫(Cutaneous Lymphoplasmacytic Lymphoma with Systemic Metastasis in a Cat)(英語)(原著論文/症例報告)
- Author:Kagawa Yumiko(North Lab), Yamashita Tokiaki, Maetani Shigeki, Aoki Yuko, Sakaguchi Kanako, Hirayama Kazuko, Umemura Takashi, Taniyama Hiroyuki
- Source:The Journal of Veterinary Medical Science (0916-7250)73巻9号 Page1221-1224(2011.09)
- Lymphoplasmacytic=「リンパ球形質細胞性」と考え、検索すると、
医中誌 12件(ヒト3件、獣医9件)
例) 【ミニチュア・ダックスフンドの呼吸器疾患を再考する】 リンパ球形質細胞性鼻炎(解説/特集)
結論
- 「Lymphoplasmacytic rhinitis」では、獣医学では確立された臨床用語だが、ヒトでは使用されない語
- 獣医学の唯一の呼吸器学の教科書として発刊されたKing, L. G. (2004). Textbook of Respiratory Diseases in Dogs and Cats. St.Louis, SAUNDERS.の翻訳本の「犬と猫の呼吸器疾患、インターズー、2007年」にて「リンパ形質細胞性鼻炎」と訳された
- ヒトでは、「Lymphoplasmacytic」は、一般に「リンパ形質細胞性」と訳されており、「リンパ球形質細胞性」とは呼ばない
- 「Lymphoplasmacytic Lymphoma」に限っては、獣医学でもヒトでも「リンパ形質細胞性リンパ種」と訳されている。
- 「リンパ球形質細胞性」は、最近獣医領域で使用されている。
私の意見
2007年「犬と猫の呼吸器疾患」発刊当時は、ヒトにちなんで「Lymphoplasmacytic」は「リンパ形質細胞性」と訳されたと思いますが、「犬と猫の呼吸器疾患」の絶版に伴い、その本の獣医学の呼吸器疾患の教科書としての普及や意識や価値が薄れ、いつのころからか、「リンパ球形質細胞性」という新語が登場し、それに対しあまり疑問をもたれずに使用されてきているように思います。英語では、「Lymphoplasmacytic rhinitis」の一語で統一されております。ヒトでは、従来より「Lymphoplasmacytic」は「リンパ形質細胞性」と訳されることが一般的であり、「リンパ球形質細胞性」という語は使用されておりません。私の考えとしては、用語選択の基準として、日本獣医学会にて拘束がない限り、人医の大きな流れに合わせるべきと考えています。例えば、医中誌にて「リンパ球形質細胞性」として検索すると、人医の分野の同様の疾患や概念が検索されないので、疾患や病態の比較検討のための文献検索に支障が生じると思います。私としては、「犬と猫の呼吸器疾患、インターズー、2007」で訳された、「Lymphoplasmacytic rhinitis」=「リンパ形質細胞性鼻炎」と訳すのがふさわしいと思います。
その考えから、私は学会講演や勉強会や院内診断名には、従来より「リンパ形質細胞性鼻炎」を使用しております。
城下
最終更新日:2018年3月14日