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喉頭および気管気管支鏡検査

気管支鏡検査アーカイブ

VB#487-ヨシトメミコ150815BS2-RB2内粘液症例487 みこちゃん。マンチカン 10ヶ月齢 メス、体重2.6kg。来院経緯と主訴:2ヶ月齢時に伝染性鼻気管炎になり、抗菌剤治療等で1ヶ月ほどで症状が緩和したが、現在も鼻/くしゃみや鼻づまり症状が続いている。発作性の咳のような症状も1日数回あり、苦しそうにしている。2015年8月15日、精査希望のため呼吸器科受診。 既往歴:なし。 問診:2ヶ月齢時のFVR発症時は常に鼻汁/くしゃみと結膜炎症状があった。症状が緩和してからは、くしゃみ/鼻汁/スターターは1日おき程度に1日1-2回続いている。発作性に頸を伸展して5秒間位続く咳が毎日1日1-2回生じる。このような症状以外は特に問題なく過ごしている。 診察時徴候:呼吸状態は安定しスターターも認められなかった。 臨床検査所見:血液ガス分析、CBC/血液化学検査、X線および透視検査とも異常所見なし。鼻鏡検査にて鼻咽頭粘膜の凹凸不整あり、この部分の擦過細胞診にて大小リンパ球の著しい増加が認められた。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にてRB2内に粘液貯留あり。この粘液のブラッシング細胞診にて好中球、上皮細胞、大リンパ球(矢印)あり。気管支肺胞洗浄液解析(RB2。5ml×3回。回収率59.0%)にて、性状はほぼ透明だが粘液小塊が2片あり、総細胞数は軽度増加250/mm3 (55-105/mm3)、細胞分画ではマクロファージ25.8%(正常82%)、リンパ球0.5%(正常2.7%)、好中球67.8%(正常4.0%)、好酸球6.0%(正常10%)、好塩基球0.0%(正常0%)であり、腫瘍細胞なく、慢性活動性炎症パターンが認められた。 確定診断:リンパ形質細胞性鼻炎および慢性気管支炎。 鼻腔、RB2内粘液、気管支肺胞洗浄液にて細菌培養陰性。 最終治療:フルナーゼ点鼻1日2回両鼻1スプレーずつ。 転帰:状態良好のため検査当日退院。経過観察中。

ワタナベリン1508013BS-喉頭の異常運動3ー呼気時動的喉頭狭窄症例486 りんちゃん。ラブラドールレトリーバー 13歳 メス、体重33.1kg。 来院経緯と主訴:東京動物医療センター(東京都杉並区)より診療依頼を受けました。主訴はレッチングと運動不耐性。2015年8月13日、精査希望のため呼吸器科受診。 既往歴:尿道憩室(11歳齢時、外科整復)、左後肢の皮膚の粘液腫または粘液肉腫(12歳齢時、外科切除。現在化学療法中)。問診:以前は30-60分間散歩できたが今年から15分歩くとすぐにパンティングが生じ歩くスピードが落ちる。しかし、座り込んだり立ち止まることはない。最後にドッグランに行ったのは7ヶ月前の真冬で10分間は走り続けていたが休憩しながら、その後再び走っていた。坂道を上ることは可だが、3年程前から40-50cmほどの段差を飛び上れなくなった。パンティングから高調ストライダー(ヒーーヒーーいう)を示し動かなくなったりチアノーゼを示したりしたことはない。安静時、睡眠時に呼吸障害なし。 診察時徴候:努力性呼吸なし。嗄声様パンティングが続いていた。 臨床検査所見:血液ガス分析にて問題なし(Pco2 29mmHg, Po2 96mmHg, AaDo2 19 mmHg)、CBC/血液化学検査にて白血球数減少(5500/mm3)、CRP増加なし(0.05mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて喉頭周辺に構造異常なく、披裂軟骨の動きあり、頸部気管にやや扁平化と動的虚脱あり。胸部にて問題なし。喉頭および気管気管支鏡検査所見:呼気時動的喉頭狭窄あり、深呼吸時に披裂軟骨外転あり。浅麻酔下、自発通常呼吸で、披裂軟骨の外転運動はほとんど認められなかったが、喉頭麻痺症例によくみられる吸気時の喉頭口の内転(奇異運動)は全く認められなかった。頸部気管では軽度の膜性壁の伸長が認められたに過ぎず、気管分岐部以降の可視範囲に異常なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2。25ml×3回。回収率66.7%)にて細胞数増加なく、細胞分画ににも異常なく、細菌培養陰性。 確定診断:喉頭の異常運動(「呼気時動的喉頭狭窄」 ”Dynamic laryngeal narrowing on expiration” 、症例459、463と同様)。 最終治療:現在特異的治療がありません。片側披裂軟骨側方化術は喉頭内転運動を強める可能性があり矛盾します。体温を上げないような対症療法(夏期には、冷房、外気温30℃以上の外出制限、通風など)を日頃より行うようにお願いしました。

#485-ムクノキシロ150809BS-ステント内症例485 シロちゃん。雑種猫 11歳 メス、体重5.36kg。来院経緯、主訴、問診:2015年8月9日、気管内ステント留置後15ヶ月の経過観察。症例467と同じ症例で2.5ヶ月経過。最近発作様の吸気努力とのどのあたりからの異常呼吸音が多い。 診察時徴候:肺野正常呼吸音の増大あり。 臨床検査所見:Spo2 99%以下、CBCにてPCV30%、X線および透視検査にて肺野スリガラス状陰影あり。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて喉頭口周囲が発赤腫脹のため狭窄し内径が約3.0mm程度に減少。ステント留置された気管内には大小約7-8カ所の反応性肉芽組織が形成されていた。肉芽組織付近のブラッシングを行い微生物検査に供した。 確定診断:喉頭炎とステント内反応性肉芽形成。 呼吸器症状初期安定化のための処置:ICU管理(温度23℃、湿度70%、酸素濃度25%)にて安静。広域スペクトルの抗菌剤投与。ネブライザー療法1日2回。 最終治療:微生物検査結果を受けて決定予定。 転帰:現在入院中にて呼吸状態、全身状態とも良好。

#484−イワナミココア150801BS症例484 ココアちゃん。ヨークシャーテリア 13歳 メス、体重1.46kg。来院経緯、主訴、問診:2015年8月1日、原発性気管虚脱に対し気管内ステント留置後38ヶ月の定期検診。ネブライザー療法を生理食塩液のみで1日2回継続し、咳は全くなく、とても元気にしているとのことであった。 診察時徴候:一般状態良好。良く走り、鳴いていた。 臨床検査所見:血液ガス分析にて問題なし(Paco2 32mmHg, Pao2 91mmHg)、CRPわずかに増加(1.05mg/dl)、X線および透視検査にてステントの位置および前後に気管虚脱形成なく良好。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にてステントと気管粘膜との一体化良好、粘膜停滞なし、肉芽組織形成なし。ステント内ブラッシングにて細菌陰性、気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 5mlX3, 回収率37.3%)にて異常認められず細菌陰性。 確定診断:問題なく経過良好。 最終治療:特異的処置なし。 転帰:検査後覚醒良好のため当日退院。

VB#483-ヤマダカボス150731喉頭症例483 かぼすちゃん。フレンチブルドッグ 3歳 オス、体重7.60kg。来院経緯と主訴:動物病院川越(埼玉県川越市)より診療依頼を受けました。1年程前から発作性上気道閉塞症状あり。2015年7月30日、精査加療希望のため呼吸器科受診。 既往歴:とくになし。 問診:発作症状は、先ずうめき声をあげて後ずさりし、前肢をのばしてお尻を持ち上げ、「猫の伸び」のようなポーズをとるようになる。いつも左側に頭を少し傾ける。後ろ足にとても力が入っている様子あり。その後、パンティングしながら、落ち着きなく、目は見開き、ふらふらと力なく歩く。発作後は、気管支拡張剤と頸部を保冷剤で冷やして様子をみている。一度、発作が生じると落ち着くまで1時間程度かかる。これまで外鼻孔狭窄整復術1回、軟口蓋切除術2回、を実施したが、2-6ヶ月後に同様症状が再発。1ヶ月前から発作症状が頻発している。睡眠時無呼吸なし。飲水後ムセ、gagging/retchingなし、咳なし。 診察時徴候:BCS3/5、口吻部に膿皮症あり発赤、舌なめずりが多い、診察台上でストライダーなし。 臨床検査所見:血液ガス分析にて過換気(Paco2 26mmHg, Pao2 106mmHg)、CBC/血液化学検査/CRP測定にて異常なし(CRP0.05mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて小下顎症、喉頭降下、顎下軟部組織増加、咽頭背側壁粘膜余剰あり深い吸気時に動的咽頭虚脱あり、鼻咽頭尾側部は不鮮鋭で間隙なし。胸部にて肺野透過性問題なし。前部鼻鏡検査にて右鼻腔発赤あり、ブラッシング細胞診にて特異的炎症細胞なく、起炎菌検出されず。口吻の膿様の落屑よりStaphylococcus intermedius 1+が分離された。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて咽頭粘膜の余剰ヒダが披裂軟骨背側に触れ喉頭口を部分的に閉塞していた。このヒダ状部は比較的固かった。披裂軟骨小角結節部の一部接着があり、喉頭虚脱ステージ2を確認した。披裂軟骨外転不良。その他の可視範囲の気管気管支樹に肉眼的異常なし。 確定診断:短頭種気道症候群、喉頭虚脱ステージ2、披裂軟骨背側部を部分閉塞する咽頭粘膜余剰ひだあり。 最終治療:一時的気管切開下に軟口蓋を誤嚥しない程度に拡大切除。 転帰:術後3日目に気管切開チューブ抜去。入院期間中、一過性に鼻汁増加ありStaphylococcus intermedius 1+が分離された。術後、発作症状なく、スターターやストライダーはほとんどみられず、経過良好のため5日目に退院。自宅看護には、鼻腔/咽頭/喉頭粘膜の安定化のため在宅ネブライザー療法(FOM、ボスミン、ビソルボン、生食)、分離菌に感受性あるFOMを全身投与。それ以外の治療なし。現在、在宅にて経過観察中。

オオタキリョウマ150725BS-Post

症例482  龍馬ちゃん。ラブラドールレトリーバー 15歳 オス、体重27.75kg。来院経緯と主訴:矢敷動物病院(相模原市)より診療依頼を受けました。主訴は10日前から運動後ストライダー、チアノーゼ、持続性パンティングあり、次第に悪化し、来院3日前は1時間30分続き矢敷動物病院に緊急入院となりICU管理となった。2015年7月23日、精査加療希望のため呼吸器科受診。 既往歴:特になし。問診:3年前より腰萎が始まったが歩行は十分可能で発症前は20分以上歩いていた。飲水後や摂食後吐出なし。誤嚥性肺炎歴なし。 診察時の徴候:来院時待合室にて高調ストライダー、チアノーゼ、持続性パンティングあり起立不能。 その他の臨床検査所見:血液ガス分析で重度の低酸素血症(Pao2 58mmHg)、白血球数増加(27400/mm3)、CRP正常(0.45mg/dl)、X線および透視検査にてびまん性肺胞浸潤影および吸気時咽頭が著明に拡張。陰圧性肺水腫を伴った重度喉頭麻痺と暫定診断し、まず2日間ICU室にて酸素加冷温管理(FIO2 0.25, 22-23℃)。状態安定を確認後、二次検査を行った。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて喉頭口を閉塞する結節病変なく、披裂軟骨小角結節の外転はみられず、吸気時喉頭口が狭窄する奇異運動あり。肉眼範囲で気管気管支樹内に異常なし。最終診断:陰圧性肺水腫を伴った重度な後天性特発性喉頭麻痺。 最終治療:左側披裂軟骨側方化術および術後終日ICU管理(FIO2 0.25, 22-23℃)。 転帰:術後9日目に、室内気で15分持続歩行可となり、胸部X線検査にて肺胞浸潤影消失、Pao2 79mmHg と著明な改善を示した。術後12日目で外に20分以上散歩できるようになり退院した。入院期間は合計14日間であった。帰宅後も食欲旺盛、吐出なし、飲水後ムセなし、嗄声様パンティングは認められるが活動性は極めて改善した。

#481−イトウユメ150724喉頭 BS-喉頭症例481 ユメちゃん。ラブラドールレトリーバー 12歳 オス、体重24.6kg。 来院経緯と主訴:昭島動物病院(東京都昭島市)より診療依頼を受けました。4ヶ月ほど前から吐出や、飲水摂食後に咳があった。2015年6月30日、吐出後に誤嚥性肺炎あり、同年7月9日に頭部レントゲン検査にて喉頭に異常陰影あり。同年7月24日、精査希望のため呼吸器科受診。主訴は慢性発咳と喉頭部異常陰影。 既往歴:股異形成(1歳未満)、アトピー性皮膚炎(3歳齢時〜)、馬尾症候群(7歳齢時)、肘変形性関節症(7歳齢時)、顎下過誤腫(12歳齢時、切除)。 問診:昨年夏より嗄声が始まったように思うがその後進行なし。散歩時に嗄声様パンティングあり。2015年3月頃より食後5分から3時間経過してから吐出したり嘔吐がみられるようになった。食後直後にはない。鎮静処置後、覚醒遅延があった。同居犬なし、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:嗄声あり。聴診にて咽喉頭に気道狭窄音なし。カフテスト陰性。 臨床検査所見:T:38.2℃、P:100/分、R:panting。血液ガス分析にて問題なし(Paco2 32mmHg, Pao2 93mmHg, AaDo2 19 mmHg)、CBC/血液化学検査にてBUN増加(31.2mg/dl)、CRP正常範囲(0.55mg/dl)、X線および透視検査にて喉頭内腹側に不明瞭な軟部組織陰影あり、喉頭の前後運動ないが披裂軟骨の外転運動は認められず、胸部に異常なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて喉頭に結節病変なし。外側喉頭室内部が浮腫状を呈していたのでこれが喉頭腹側の軟部組織陰影増加に寄与したと思われた。披裂軟骨小角結節から楔状結節部にかけ発赤浮腫あり。左側披裂軟骨外転なし、右側は外転あり。可視範囲の気管気管支樹内に肉眼的異常なし。 確定診断:片側喉頭麻痺。 最終治療:喉頭外科手術非適応のため対症療法。テーブルフィーディングや喉頭炎に対するネブライザー療法。 転帰:検査当日退院可能。現在経過観察中。

VB#479, EBP, M Duchs 5y F, カワグチマロン150719BS症例480 マロンちゃん。ミニチュアダックスフンド 5歳 メス、5.6kg。 来院経緯と主訴:兵藤動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。主訴は難治性の慢性発咳。2014年12月より咳が続き、様々な内科療法に反応しない。2015年7月19日、精査希望のため呼吸器科受診。 既往歴:僧帽弁閉鎖不全疑い(2014-、ACEI投与中)。 問診:咳は、連日、1日10-20回、興奮時に多く一度に20-30秒程度続き、最後に痰を吐き出す仕草(terminal retch)がみられる。安静時にもたまに生じることがある。寝起きや夜間に咳はほとんどない。興奮後、喘鳴(ゼーゼーいう)を示し立ち止まって苦しそうに座り込むことがあり。白い粘稠な液(咽頭液)の喀出がよくみとめられた。嗄声なし。体重が昨年4.9kgであったが、現在5.7kgにまで増えた。オーナー喫煙あるが、室内で換気扇のもとで喫煙している。4歳齢の同居犬(Mダックス,4歳)あり、今でもいっしょに遊び、走る。完全室内飼育、定期予防実施。慢性呼吸困難の生活支障度はⅠ。 診察時徴候:BCS4/5。来院時興奮して、「シャーシャー」という連続性異常呼吸音が続き、乾咳が断続的に続いた。嗄声なし。閉口安静時に呼気努力あり。カフテスト陰性。胸部タッピングにて咳誘発なし。閉口時の肺野聴診にて弱いクラックルあり。 臨床検査所見:、T:38.1℃、P:118/分、R:90/分。血液ガス分析にて軽度の換気血流比不均等を伴う軽度低酸素血症(pH7.39、Pco2 32mmHg, Po2 79mmHg, AaDo2 32 mmHg)。 CBC/血液化学検査にて正常範囲だが末梢血好酸球数4.5%(639/mm3)、CRP増加なし(0.15mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて構造的および透視で確認できる咽喉頭協調運動に問題なし。胸部にて肺野透過性良好であり、明瞭ではないが気管支パターンがあり、透視にて気管支虚脱あり。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて喉頭は発赤し、接触刺激に過敏に反応し喉頭痙攣あり。気管粘膜は全体的に発赤していた。気管気管支樹内の可視範囲に粘稠な黄白色の小粘液塊が散見された。気管ブラッシングにて気管内の小粘液塊に対し実施。細胞診にて多数の好中球と好酸球も散見された。微生物検査にて起炎菌は分離されなかった。気管支肺胞洗浄液解析(BALF解析、RB2、10ml×3回、回収率48%)にて性状は白色小粘液片を含む白色透明。総細胞数は著明に増加1226/mm3 (正常 84-243/mm3)、細胞分画ではマクロファージ26.2%(正常92.5%)、リンパ球2.8%(正常4.0%)、好中球67.4%(正常2.0%)、好酸球3.5%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)。腫瘍細胞なし。マクロファージは巨大化した泡沫状が優勢。慢性活動性炎症パターン。微生物検査にて起炎菌は分離されなかった。ステロイドを含む内科療法があった経緯を考慮すると、好酸球性肺疾患が基礎にあったことが考えられた。  確定診断:慢性喉頭炎と慢性好酸球性気管支肺症。 最終治療:ステロイド抗炎症量を長期継続。 転帰:現在経過観察中。

#479−タナベダンボ150717-Postope症例479 ダンボちゃん。ヨークシャーテリア 8歳 メス、体重4.5kg。 来院経緯、主訴および問診:症例474で急性咽喉頭炎と喉頭麻痺と診断し、初期治療にて入院および在宅治療含め3週間経過し、2015年7月17日に再受診となった。運動後ストライダーが軽減したとのことであった。 診察時徴候:過度な興奮時以外にストライダーは認められなくなった。 臨床検査所見:CRP測定にて0.15mg/dl(7月2日退院前、0.7mg/dl)。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて咽喉頭炎はほぼ消退した。しかし、依然として喉頭麻痺は認められた。 確定診断:喉頭麻痺。喉頭虚脱は認められなかったので外科療法適応と考えられた。  最終治療:左側披裂軟骨側方化術。  転帰:良好。術直後は運動後ストライダーが認められたが、ネブライザー療法を続け術後5日後には次第に消失してきた。術後9日目に退院。翌々日、急遽飼い主様のご都合で飛行機で長崎まで輸送することになったが無事到着した。

VB#478, CB, オキリッキー150716BS症例478 リッキーちゃん。アメリカンショートヘアー 8歳 メス、体重4.66kg。来院経緯と主訴:小林動物病院(平塚市)より診療依頼を受けました。1ヶ月ほど前より吐くような仕草を伴い咳が始まり、動物病院受診にてびまん性胸部異常陰影を指摘され、肺炎と暫定診断され内科治療を行ってきたが改善がみられず、2015年7月16日、精査希望のため呼吸器科受診。主訴は慢性呼吸困難とびまん性胸部異常陰影。 既往歴:とくになし。 診察時徴候:BCS4/5、努力呼吸あり。Purringが続き、聴診困難。診察後興奮し努力呼吸悪化および頻呼吸(64/分)。カフテスト陰性。  問診:咳は2015年5月の終わり頃から突然始まったように思う。当初より、連日、1日2-3回、食事を与えようとするときによく生じ、一度に5-6回続く。次第に体重が減少し(5.4kg→4.3kg)、6月14日に動物病院受診、びまん性胸部異常影あり1週間入院治療したが異常影は改善せず。その後も状況不変。7月6日、小林動物病院受診。咳、頻呼吸、努力呼吸を示していた。これまで、抗生剤、ステロイド、気管支拡張剤等を使用してきたが症状改善なく、7月10日より在宅酸素療法開始。使用時間は24時間、酸素濃度30%。酸素室内では呼吸安定するが、室内気環境にて、頻呼吸、努力呼吸あり。異嗜の傾向あり、よくビニール片が便中にみられる。同居猫1頭(8歳、ソマリ)あり、受診前はその同居猫と息を切らしながらよく遊んでいた。完全室内飼育、定期予防実施。慢性呼吸困難の飼い主の主観評価はⅡ/Ⅴ。高いところに上ったあとに頻呼吸になる。 臨床検査所見:T:38.5℃、P:126/分、R:44/分。血液ガス分析にて軽度の低酸素血症、換気血流不均等分布あり(pHa7.32、Paco2 35mmHg, Pao2 74mmHg, AaDo2 34mmHg)。CBC/血液化学検査にて白血球数増加(20500/mm3)、BUN軽度増加(34.7mg/dl)。X線および透視検査にて頭部にて構造的および透視で確認できる咽喉頭協調運動に問題なく、胸部にてびまん性不整形肺胞浸潤陰影あり、気管支軟化所見なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて観察開始時に喉頭周囲に多量の泡沫状粘液が喉頭を覆っていた。可視範囲の気道粘膜全体は肥厚していた。気道異物なし。右後葉気管支(RB4)から黄白色粘稠分泌物が深部より湧出あり。気管支ブラッシングをLB2D2(左側不整形浸潤陰影部に相当)にて実施。細胞診にて上皮細胞塊のみで異型細胞やリンパ球や好酸球など特異的炎症細胞なし。微生物検査にて起炎菌は分離されず。その後、RB4にて黄白色粘稠分泌物をブラッシングにて採取し、微生物検査にて2菌種分離(Coagulase negative Staphylococcus 1+, Corynebacterium sp. 1+, ともに感受性あり:CEX, CFPM, IPM, DOXY, MINO, AKK, GM, CP)。  経気管支肺生検をLB2D2(同)にて透視ガイド下に実施。肺組織標本と同時に多量の粘液が採取され、病理組織検査にて非腫瘍性、非好酸球性、非リンパ球介在性疾患であり、気管支腺増生と組織球の顕著な浸潤が認められた。   気管支肺胞洗浄液解析(LB1V1、5ml×3回、回収率68%)では、回収液の性状はうすい白色透明であり、総細胞数はやや増加550/mm3 (正常 84-243/mm3、犬)、細胞分画ではマクロファージ90.5%(正常92.5%)、リンパ球0.0%(正常4.0%)、好中球9.2%(正常2.0%)、好酸球0.0%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)で、腫瘍細胞なく泡沫状マクロファージ主体であり、慢性活動性炎症パターンを示し、微生物検査実施にて細菌培養陰性であった。  確定診断:猫の気管支肺疾患。特異的原因は検出されなかったが末梢気道内に気管支腺増生と粘液貯留あり、慢性呼吸困難の直接の原因と考えられた。 最終治療:在宅酸素療法(FIo2 25%,  1日6時間)、IPV療法(週1回 15分/回。ネブライザ薬剤には生理食塩液10ml+メプチン吸入液0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml、操作圧15psi, wedge圧30cmH2O, パーカッションレベルEasy-MID position)、抗菌剤(CEX 20mg/kg PO 1日2回)、抗炎症量のステロイド療法(プレドニゾロン0.5mg/kg PO 1日1回、長期継続)。 転帰:検査翌日退院。IPV 療法1回目終了後、治療前よりよく動くようになり、積極的に高い所にのぼるようになった。現在、経過観察中。

VB#477−コシフラン150712BS症例477 フランちゃん。チワワ 12歳 オス、体重2.68kg。来院経緯、主訴、問診:2015年7月12日、症例469から1ヶ月後の経過観察。前回気管支鏡下のステント前端肉芽にAPCを実施したがまだ咳が続いているとのことであった。 診察時徴候:短く乾いた咳が続いていた。肺野、頸部気管、咽喉頭聴診とも気道狭窄音なし。 臨床検査所見:Spo2 100%、WBC 8000/mm3、CRP0.0mg/dl、X線および透視検査にてステント前端部のステント前端の結節陰影は縮小していた。心陰影拡大(VHS13.0)。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にてステント前端左側に柔軟な肉芽組織が残っていたが1ヶ月前に比べ縮小。前回と同様に、ステント内に粘稠な粘液停滞がみとめられ、やや粘稠性増加していたがブラッシングにて細菌陰性。左主気管支の管外性圧迫は前回気管支強検査時よりさらに圧迫性狭窄が進行していた。 確定診断:ステント内粘液停滞、ステント前端反応性肉芽形成(1ヶ月前よりやや縮小)、左房拡大による左主気管支の圧迫は次第に進行しており持続性咳に関わっていると考えられた。  最終治療:ステント内粘液吸引および肉芽に対しAPC追加処置。 転帰:検査当日退院可能。かかりつけ医には循環器管理を引き続きお願いした。現在、検査から1ヶ月以上経過したがやはり持続性咳があるとのことであった。一般状態は良好だが、咳の時間が長く気になるので、ネブライザー療法に去痰剤を増量して、咳が減少するか試すことになった。

ホリコシクララ150709-術直後症例476 クララちゃん。チワワ4歳メス、体重1.9kg。来院経緯、主訴、問診:譲り受けた1.5歳齢時から吸気性異常呼吸音があり苦しそうにしている。近医で軟口蓋過長の可能性あるといわれたが、2015年6月13日、精査のため東京より飼主様の希望で呼吸器科受診。主訴は吸気性異常呼吸音、大きないびきと睡眠時無呼吸、走り出すとレッチングあり。既往歴なし。 診察時の徴候:肥満(BCS5/5)、診察台上にて高調ストライダー、ときおりレッチングあり。 臨床検査所見:血液ガス分析にて問題なし(Paco2 38mmHg, Pao2 91mmHg)、CBCおよび血液化学検査にて異常なし、CRP正常(0.5mg/dl)、X線および透視検査にて構造的咽頭閉塞(喉頭降下、咽頭周囲軟部組織過剰、舌根の口咽頭への後退、全周性軟口蓋過剰)あり。吸気時に喉頭蓋の後傾が明瞭に認められ、吸気性異常呼吸音と同期した。暫定診断:喉頭蓋の後傾(epiglottic retroversion)。喉頭虚脱の疑いもあり、7月9日に内視鏡検査結果に応じた手術実施予定となった。 喉頭および気管気管支鏡検査所見(2015年7月9日):肉眼所見にて披裂軟骨小角結節のわずかな外転は認められたが喉頭虚脱あり。可視範囲の気管気管支樹に異常なし。 最終診断:喉頭蓋の後傾(epiglottic retroversion)および喉頭虚脱  最終治療:一時的気管切開下に喉頭蓋のV字状部分切除、喉頭虚脱に対しては-20%の体重減量。 転帰:術後2日目で気管切開チューブ抜去、術後3日目で異常呼吸音や高調ストライダーは消失、術後4日目で退院。術後10日目の再診時に自宅で呼吸はほぼ正常となりとても元気になったとのことであった。術後16日目の時点で自宅での睡眠時にいびきはとても小さくなり、熟睡できるようになった。現在、減量治療中だが経過は極めて良好。

VB475-ホシカワパピー150705喉頭 BS症例475  パピーちゃん。パピヨン 10歳 オス、体重3.86kg。来院経緯と主訴:  東京大学動物医療センター内科系診療科(東京都文京区)より診療依頼がありました。かかりつけ医はくまごろう動物病院(埼玉県上尾市)です。2015年1月に室内で突然ふらつき失神発作あり。その後も摂食時や暑さで息が苦しそうになりチアノーゼになった。東大にてCT検査を含めた上気道精査を行ったが軟口蓋過長ではないと判断され、2015年7月5日、呼吸器科にて精査となった。主訴は失神転倒歴と摂食時チアノーゼ。 既往歴:頚椎椎間板ヘルニア疑い(2013年、起立不能)、耳血腫(2013年)。 問診:いびき(レベル1/5)、低調スターター、漿液性鼻汁、単発性咳が4-5年前から間欠的にみられるようになり、ジャーキーを食べているときや、仰向けになるとチアノーゼとなり苦しそうになった。3年前に外に散歩中に失神転倒が1度あった。今年の1月、室内でおとなしく寝ていたところ突然起き、上を向きながら口をパクパクしながら歩きだし、突然失神して倒れた。同じ日に3回生じた。その後も食事を飲み込みにくそうにしたり、暑い日に舌色が悪くなることがあった。涼しくするとこのような不安定な呼吸器症状は落ち着いた。そのようなこと以外は全く問題ないようであり、生活支障度はⅠと思う。しかし、暑くなるとⅣになる。睡眠時、よく顔を上げ頸部をのばす仕草をする。同居犬あり、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:BCS4/5、常に舌を出している。持続性開口呼吸。猪首。流涎あり。鳴き声が高調でおかしい。カフテスト陽性。聴診にて、咽喉頭にて最強の呼気時優位の気道閉塞音あり。心雑音なし。温度22℃、酸素濃度25%のICU管理にて睡眠可だが、ときどき顔を上げる。体を起こしているときは、疲労のためか頭を下げてはもとに上げる動作を繰り返していた。 臨床検査所見:T:38.1℃、P:124/分、R:20/分。血液ガス分析にて中程度の低酸素血症、急性呼吸性アシドーシス、換気血流不均等分布あり(pHa 7.35、Paco2 41mmHg, Pao2 64mmHg, [HCO3-]a 22.1mmol/L, BE a -2.9mmol/L, AaDo2 38 mmHg)。CBC/血液化学検査にてALP1785U/L。CRP増加なし(0.05mg/dl)。X線および透視検査にて、頭部に構造的咽頭閉塞(舌根の口咽頭への後退、咽頭周囲軟部組織増加)あり、喉頭陰影増加も認められた。透視で呼気時咽頭閉塞/吸気時咽頭拡張が認められた。胸部に後肺野に間質陰影増加し、心陰影拡大(VHS11.5)が認められた。 確定診断:喉頭虚脱および咽頭虚脱(陰圧性肺水腫あり、咽頭気道閉塞症候群Ⅲa+bと診断され、ただちに永久気管切開術が適応)。  最終治療:永久気管切開術。 転帰:3週間後経過良好のため退院。現在、在宅ネブライザー療法を含めた自宅管理中で経過良好。元気に動き回っている。

VB#474−タナベダンボ150627BS-喉頭のみ症例474 ダンボちゃん。ヨークシャーテリア 8歳 メス、体重4.5kg。来院経緯と主訴:1ヶ月前の夜間執拗なレッチングが突然始まり、その後ストライダーが止まらなくなった。1週間前に動物ERセンター文京(東京都文京区)にて喉頭麻痺と診断され、呼吸器科にて精査加療をすすめられた。かかりつけ医はhanaペットクリニック(東京都文京区)です。2015年6月27日、精査加療希望のため呼吸器科受診。 既往歴:レッグペルテス病(2007.大腿骨頭切除術実施)、尿石症(ストルバイト)、胆石症および腎結石(2015.6.21. ERセンターのCT検査にて発見された)。  問診:若齢時より興奮時ストライダーがあったが気になる程ではなかった。何度か手術を受けたがその度に獣医師から「喉頭が狭い」と指摘されていた。嗄声はなかった。6月1日夜間、急にレッチングと咽頭液喀出が頻回生じ、その後ストライダーが止まらなくなった。発症時のど周囲が腫れていた。ステロイド投与で落ち着いた。発症時から声が出なくなり、嗄声様パンティングすることが多くなった。嗄声様パンティングはステロイド投与で緩和されたが、投与中断で再発した。直前の5月までは全く問題なく、嗄声もレッチングもみられなかった。今回の症状は突然起きたように思う。現在、自宅で異常呼吸音は生じているが走ったり、高いところに飛び上がったりしており、慢性呼吸困難の生活支障度の評価*はレベルⅠと思う。いびきはごく軽度、咳はみられず、ときどき勢いよく水を飲んだときにgagging/retchingが生じることがあった。熱中症なし。右前腕部を舐める癖があり。同居犬あるが(ヨークシャーテリア、8歳)呼吸症状なし、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:BCS4/5、T:38.3℃、P:92/分、R:36/分。嗄声様パンティングが続く。聴診にて咽喉頭にて最強の高調気道狭窄音あり。カフテスト陽性。 臨床検査所見:血液ガス分析にて問題なし(pHa 7.40, Paco2 33mmHg, Pao2 85mmHg, AaDo2 23 mmHg)、CBC/血液化学検査にて異常なし、CRP増加(CRP2.5mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて構造的咽頭閉塞なく、10分間横臥位にて断続的に透視検査を行ったがヒレツ軟骨外転なし、喉頭蓋の後傾もみられなかった。軽度の動的頸部気管虚脱あり。肺野異常影なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見喉頭は著しく発赤腫脹していた。声門裂内粘膜も浮腫を呈していた。周囲の咽頭も発赤が重度でありラリンゲルマスクの接触刺激に容易に過敏に反応し咽頭および喉頭痙攣が認められた。その際、食道液が逆流し喉頭粘膜を刺激していた。プロポフォール持続点滴にて咽頭粘膜反応を安定化させ、喉頭を再度観察したところ、披裂軟骨の虚脱は認められず、強い自発呼吸があるものの披裂軟骨小角結節の外転なくむしろ内方に引き込まれる奇異運動が認められた。検査中、眼瞼反射を維持し、覚醒直前まで観察を続けたが、披裂軟骨小角結節の外転は確認できなかった。咽頭スワブの微生物検査にて 確定診断:急性咽喉頭炎および喉頭麻痺。 最終治療:ネブライザー療法(生理食塩液20ml+ボスミン外用液0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ゲンタマイシン0.5ml/回、1日2回)。急性咽喉頭炎消退後、片側披裂軟骨側方化術実施予定。 転帰:検査後入院管理。周囲気温を25-27℃以下に維持し安静、ネブライザー療法1日2回にて5日目にCRP0.7mg/dlまで減少し退院。その後、在宅にて安静維持およびネブライザー療法を2週間継続後、再診予定となった。

オカゾエアンディ150621BS−喉頭麻痺, Tie-back後症例473 アンディちゃん。スタンダードプードル 11歳 オス、体重25.4kg。 来院経緯、主訴、問診:症例452(ベルどうぶつクリニック(町田市)の院長先生のご愛犬で喉頭麻痺と診断)が3.0ヶ月経過し、2015年6月21日、3週間前から運動後ストライダーがみられるようになり苦しそうになることがあるとのことで再診。 診察時の徴候:持続性高調ストライダーあり。 臨床検査所見:血液化学検査にて肝酵素上昇(GPT230U/L, GOT471U/L, ALP3252U/L)。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて3ヶ月前と同様に披裂軟骨小角結節の外転なく、深吸気時に内転が認められた(奇異運動)。 確定診断:特発性喉頭麻痺  最終治療:左側披裂軟骨側方化術。 転帰:手術翌日退院。術後管理はベルどうぶつクリニックに依頼。10日後抜糸にて来院。透視検査にて3ヶ月前(症例452)でみられた異常呼吸音と動的頸部気管虚脱はほとんど消失した。術前は下を向いて苦しそうに飼主の後から歩いていたが、術後は飼主の前を引っ張るように元気に歩くようになったという。ベルどうぶつクリニックの岡添院長によれば、肝臓疾患のために長期にわたってメトロニダゾール250㎎をSIDで飲んでいたが、この薬剤は中枢神経や末梢神経障害がおこすことがあるそうです。そのため、スタンダードプードルで珍しい特発性喉頭麻痺になってしまったではと考察されていました。そのため現在は、食道や後肢など全身の末梢神経障害の進行を阻止する意図で、メトロニダゾールの投与を中止しているそうです。

VB#472−イトウチェリー150618BS-気管内粘稠粘液症例472 チェリーちゃん。ラブラドールレトリーバー 10歳 オス、体重25.4kg。来院経緯と主訴:かまくらげんき動物病院(鎌倉市)より診療依頼を受けました。かかりつけ医はゼファー動物病院(八王子市)です。1.5年前より痰産生性咳が続いており、10種類近くの抗菌剤治療を行ってきたが反応せず、2015年6月18日、精査希望のため呼吸器科受診。主訴は難治性の慢性痰産生性咳。既往歴:季節性の皮膚炎(2011-)、脾臓に結節病変(脾摘実施。同時に胃固定術実施)、股関節炎(2015.4- 左後肢に股異形成あり)。 問診:咳は、連日、1日10-20回、安静時および睡眠時に突発し、散歩時に少ない。咳はのどに何かからまったような強い咳を5-6回続け最後に痰を吐き出すような仕草をする。黄緑色の喀痰を喀出することもあれば、喀出なく咳を繰り返すこともある。これまで数種類の抗菌剤を使用してきたが、症状消退せずCRPも3.0-4.0mg/dlを推移していた。2ヶ月前から股関節炎が悪化し、CRPが5.0-6.3mg/dlまで上昇した。1年前にかまくらげんき動物病院にて咽頭スワブに緑膿菌が分離され、感受性ある抗菌剤を投与して咳が緩和されてきたが、次第に耐性が獲得され使用できる抗菌剤がなくなってきた。末梢気道まで気道全体の状況を把握しなおすことを提案され、呼吸器科にて気管支鏡検査を希望することになった。1-2歳からとても大きないびき(5/5、床越しに聞こえる)があったが、2-3ヶ月前からいびきがなくなってきた。2-3ヶ月前に咳が続いたあとに咽頭液の喀出が認められ、1日1回続いている。嗄声なし、飲水後gaggingなし、興奮後ストライダーなし、食前などに流涎が多くなってきた。股関節炎のためか、歩行可能だが疲れるとすぐに横になってしまう。同居犬なし、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:BCS3/5、努力性呼吸なし。右口角から流涎あり。左後肢負重を嫌がる。聴診にて正常呼吸音増大なし、呼吸副雑音なし。カフテスト陰性、胸部タッピングにて咳誘発あり。 臨床検査所見:T:37.7℃、P:72/分、R:16/分。血液ガス分析にて問題なし(pH7.40、Pco2 37mmHg, Po2 85mmHg, AaDo2 20 mmHg)。CBC/血液化学検査にて異常なし。CRP増加(3.25mg/dl)。X線および透視検査にて、頭部に構造的問題なく、透視で披裂軟骨外転が明瞭に認められた。胸部に肺野異常影認められず。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:喉頭鏡にて喉頭の発赤腫脹、咽頭気道粘膜面はやや凹凸不整だが正常範囲内であった。咽頭スワブの微生物検査にてG群Streptococcus 2+を分離し、AMK, GMに対し十分な感受性を示さなかったが他の抗菌剤に感受性を示した。気管気管支鏡検査時には浅麻酔下では接触刺激に過敏に反応し喉頭痙攣があった。気管内は頸部気管を中心に広範囲に発赤し、壁面には気管全体わたり黄白色粘稠粘液が付着し、ブラッシングを大行ったが微生物検査にて起炎菌を分離しなかった。気管分岐部以降に肉眼的異常は認められなかった。気管支肺胞洗浄液解析(RB2、25ml×3回、回収率76%)にて、性状は白色透明。総細胞数は正常範囲内241/mm3 (正常 84-243/mm3)、細胞分画はマクロファージ89.5%(正常92.5%)、リンパ球5.5%(正常4.0%)、好中球4.5%(正常2.0%)、好酸球0.5%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)で腫瘍細胞なく泡沫状マクロファージ主体であり、慢性活動性炎症パターンを示し、微生物検査にて起炎菌を分離しなかった。気管支鏡下治療:気管内に付着した粘稠粘液をサクションチューブを用いてできるだけ吸引除去した。 確定診断:慢性喉頭気管炎。 最終治療:長期在宅ネブライザー療法(生理食塩液20ml+ クロロマイセチン局所用液5%+ボスミン外用液 0.1% 0.5ml+ビソルボン吸入液0.2% 0.5ml/回、1日2回)。 転帰:検査当日退院可能。退院後、かかりつけ医のゼファー動物病院(八王子市)にて大腿骨の骨肉腫が判明し、断脚を決断されたそうです。長期間のCRP増加は骨肉腫の進行が関係していたかもしれません。術後、経過良好で元気に3本足で歩いているとのことです。骨肉腫と慢性喉頭気管炎との関連は不明ですが、断脚後も痰産生咳は続いているようなので別疾患として考えています。

#471, Laryngeal Collapse, Pag 6y F, ID6403 ハリムラアンコ150611症例471 あんこちゃん。パグ 6歳 メス、体重6.60kg。5.55kg。 来院経緯と主訴:まつもと動物病院(東京)より診療依頼を受けました。幼少時からいびきが大きく、散歩時にすぐに音量の大きなストライダーを示す。2015年3月26日、精査希望のため呼吸器科受診。主訴は運動後重度ストライダー。  既往歴:頸部皮膚の化膿性肉芽腫(2015.3.7-加療中)。 問診:いびきは1歳未満より床越し(2階から1階)で聞こえる位大きい(レベル5/5)。いびきの大きさは変わっていない。日中傾眠あり。寝起きは悪く、睡眠時無呼吸を1日1回程度確認される。散歩ではすぐにパンティングやストライダーを示し座り込む。場所が変わるとすぐに開口しストライダーが始まる。鼻汁、くしゃみ、咳なし。これまで食欲元気が2日以上減退したことはない。同居犬1頭(雑種)あるが呼吸問題なし、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:BCS5/5、猪首。一般状態は良好。来院時、持続性ストライダー。外部冷却で開口呼吸がおさまった。安静呼吸で持続性吸気努力あり。立位安静時のSpo2 98%。聴診にて咽喉頭部で最強の、低高調混在の音量の大きな気道狭窄音があり。 臨床検査所見:T:38.1℃、P:128分、R:40/分。血液ガス分析にて軽度の換気血流比不均等のみで著変なし(pHa7.38、Paco2 39mmHg, Pao2 80mmHg, AaDo2 27 mmHg)。CBC/血液化学検査にてWBC増加(20900/mm3)、CRP増加(2.20mg/dl)。X線および透視検査にて、頭部で吸気時咽頭閉塞、咽頭周囲軟部組織増加、喉頭降下、吸気時に高調気道狭窄音を伴った著明な喉頭後退運動、喉頭陰影増加あり。胸部で、心陰影拡大、気管虚脱/気管支軟化症なく、肺野透過性良好。 暫定診断および処置:重度短頭種気道症候群であり、重度喉頭虚脱を引き起こしている可能性が高い。外科手術が適応だが、できるだけ安全かつ効果的な手術実施のためにまず体重を5.5kgまで減量させて咽頭開存を図ってから、外科的上気道整復を図る。 経過:2015年6月11日、初診から3ヶ月経過し体重が5.50kgまでに減量に成功した。いびきやストライダーは減少し、透視検査でも咽頭閉塞が軽減した。次の段階の内視鏡検査および外科的上気道整復を実施することになった。 鼻鏡検査所見:鼻甲介骨形成異常による閉塞なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:喉頭鏡検査にて、軟口蓋過長、反転喉頭小嚢、披裂軟骨小角突起の接着を確認したがわずかに喉頭口に間隙が認められた。気管気管支鏡検査時には、披裂軟骨小角突起を被う余剰咽頭粘膜ヒダを確認した。気管径が小さいと感じた以外に肉眼的に異常なし。  確定診断:喉頭虚脱ステージ3および重度短頭種気道症候群   最終治療:一時的気管切開下に外鼻孔狭窄整復術、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術。  転帰:経過良好。2日後、気管切開チューブを抜去できた。術後4日目、廊下を走ってもストライダーが全く生じなくなり、経過良好のため退院。自宅にて、喉頭虚脱治療として在宅ネブライザー療法を継続することになった。

サイトウダイズ150607喉頭-固定糸除去後症例470 ダイズちゃん。チワワ 10歳 オス、体重2.54kg。来院経緯と主訴:2014年7月に気管虚脱を管外ステント術と喉頭麻痺手術を受けてから、レッチング(グエーという強い空嘔吐の仕草)、飲水障害、摂食障害が続いている。2015年5月31日、精査加療希望のため東京より飼主様の希望で呼吸器科受診。 既往歴:なし。 問診:1歳齢頃よりボランティアより保護。保護時の体重は1.7kgだった。その当時から起きているときも眠っているときも舌が出ていた。幼少時からくしゃみが多く、粘漿性鼻汁を出していた。すぐに去勢手術を行ったがそのあとから体重が増加し2-3年で2.5kgになった。6歳頃より散歩途中からストライダーがよく生じるようになり、次第に悪化してきた。咳はなかった。その当時いびきはなかった。2014年(9歳齢)になって、夜間断眠が頻回みられるようになり、水を飲んではストライダーが生じていた。気管虚脱と診断され、2014年7月に気管外ステント術を受けた。同時に喉頭麻痺傾向があったので口腔側から矯正手術も行ったとのことだった。術後、ストライダーは消失したが、レッチングを繰り返した。はじめは食欲ありドライフードを食べていた。症状は次第に進行し、2015年4月に咽頭液喀出を伴うようになり、2015年5月中旬から水を飲まなくなった。アイスクリームやWetフードを与えてもレッチングするようになった。毎日散歩可能だが人に反応せず家ではじっとして動かない。声は正常と思う。レッチング時の症状はかなり苦しそうになってきた。同居犬なし、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:BCS5/5、診察中傾眠あり。猪首。顎下軟部組織過剰。舌が常に口腔外に出ていた。単発性咳がときおりみられた。努力性呼吸なし。聴診にて咽喉頭領域にて最大の吸気時優位の低調気道狭音が聴取された。心雑音なし。カフテスト陰性。胸部タッピングにて咳誘発なし。 臨床検査所見:T:39.0℃、P:104/分、R:16/分。血液ガス分析にて軽度の低酸素血症を伴った慢性呼吸性アシドーシス(pHa 7.45、Paco2 41mmHg, Pao2 72mmHg, [HCO3-]a 28.1mmol/L, BEa 4.2mmol/L, AaDo2 28 mmHg)。AaDo2<30mmHgであり肺内要因は主因ではなく、上気道閉塞に伴う軽度の陰圧性肺水腫によるAaDo2の開大と考えられた。CBC/血液化学検査にて白血球数増加(17800/mm3)、CRP増加(4.6mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて著明な構造的咽頭閉塞(喉頭降下、咽頭周囲軟部組織増加、舌根の咽頭内への後退)あり、小下顎症が部分的には関わっていると考えられたが、咽頭背側壁の軟部組織は喉頭披裂軟骨を被覆するほど増加しており、吸気呼気とも咽頭閉塞が著明であり咽頭周囲軟部組織増加が、主要な構造的咽頭閉塞の要素と考えられた。しかし、透視にて吸気時咽頭閉塞/呼気時咽頭拡張の傾向がみられ、咽頭拡張筋群の代償能が保たれていると思われた。構造的咽頭閉塞は、意識が入眠レベルになるときにもっとも重度であり、睡眠呼吸障害を示唆した。明瞭ではないが、透視観察下では披裂軟骨の外転運動はわずかながら認められた。胸部にてスリガラス状陰影あり。心陰影は不鮮鋭で陰影拡大(VHS11.5)。喉頭直下7-10mm程度から胸郭入口部の気管は十分開存しており、透視にて気管気管支軟化症所見はみられなかった。 暫定診断と暫定処置と経過:咽頭気道閉塞症候群ステージ2と咽喉頭炎と暫定診断し、入院にて冷温酸素管理下のICU管理、ネブライザー療法を7日間実施後、体重はレッチングの減少とCRP2.1mg/dlにまで減少したことを確認し、2015年6月7日、気道安全確保のため気管切開下に咽喉頭の観察のため内視鏡検査を行った。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて右側喉頭の楔状突起と甲状舌骨間にナイロン糸が一糸ループ状に縫合されており、その周囲で咽喉頭粘膜は発赤していた。気管内は管外ステントが良好に縫着され気管径を保っていた。気管内に少量の喀痰が認められたのでブラッシングにて採取した。培養にてStaphylococcus intermedius 1+が分離され、ABPC, CEX, IPM, CP, FOMに感受性を示した。喉頭虚脱も認められたが、披裂軟骨の外転がわずかに認められた。そこで、永久気管切開は回避し、咽喉頭内のナイロン糸を抜去し咽喉頭炎の緩和を試みることにした。咽頭スワブの微生物検査にてStaphylococcus intermedius 2+、G群Streptococcus 2+、Escherichia coli 2+、Klebsiella pneumoniae 1+が分離され、4菌種ともに感受性を示した抗菌剤はIPM、CP、FOMであった。 気管切開チューブを留置して検査を終了した。 確定診断:慢性咽喉頭炎、喉頭虚脱、咽頭気道閉塞症候群ステージ2。  最終治療:Jetネブライザー(咽喉頭をターゲットとし肺水腫予防のため超音波ネブライザーは不適と判断した。生食5ml+クロロマイセチン局所溶液5% 0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml)、抗菌剤(FOM 31.25mg/h PO 1日2回)投与。 転帰:検査後一時的に咽喉頭炎症状の悪化がみられたが支持療法を徹底し、感受性ある抗菌剤判明後次第に症状は改善した。入院15日目、一般状態は回復したので退院となった。自宅にて、在宅Jetネブライザー療法(生食5ml+クロロマイセチン局所溶液5% 0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml/回、1日2回以上)、在宅酸素療法(酸素濃度25%、温度22-23℃に維持、24時間)、ホスミシン錠250mg 1日2回1/8錠(12.5mg/kg)ずつ、食事はWet食を少量ずつ、体重減量(目標2.0kg。1日100kcalに制限)を継続。現在、退院後約2ヶ月が経過し、まだ飲水できず、食後にレッチングあるが、受診前に比べよく走るようになったとのこと。診察時の咳も減少した。Spo2 98%を示し自宅でも室内気で呼吸変化なしとのことで在宅酸素療法は中止し、室内気で部屋全体の冷房管理に切り替えた。現在、経過観察中。

VB#477-コシフラン150606BS症例469 フランちゃん。チワワ 12歳 オス、体重2.50kg。 来院経緯、主訴、問診:終日咳が続く。食欲元気あり。原発性気管虚脱に対し気管内ステント留置を行い12ヶ月が経過。1.5ヶ月前に胸部X線検査にてステント前端に軟部組織濃度の結節陰影があり気道を閉塞し喘鳴症状があった。抗菌剤療法を続け、喘鳴症状はやや緩和したが、ステント反応性肉芽組織形成の可能性あり気管支鏡検査にて、2015年6月6日に精査となった。 診察時徴候:非痰産生性で短い乾いた咳が続いていた。 臨床検査所見:CBC/CRP測定にて異常なし。 X線および透視検査にてステント前端の結節陰影は縮小していたがまだ背側から5.6mmだけステント内方側に突出あり、心陰影拡大(VHS13.0)。  喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にてステント前端左側に柔軟な肉芽組織あり。ステント内に粘稠な粘液停滞がみとめられたがブラッシングにて細菌陰性。左主気管支の管外性圧迫は前回気管支強検査時より進行。 確定診断:ステント内粘液停滞およびステント前端反応性肉芽組織形成。さらに左主気管支の管外性圧迫あり持続性咳となったと考えられた。 最終治療:ステント内粘液吸引および肉芽に対しAPC処置。 転帰:検査後覚醒良好のため当日退院。3週間後再診にてまだ咳減少はないとのことだったが、胸部X線検査にてステント前端の結節陰影はやや縮小していた。

VB#468-フジクラピー150605BS症例468 ピーちゃん。ポメラニアン 13歳 メス、体重4.06kg。来院経緯と主訴:さづきペット診療室(川崎市)より診療依頼を受けました。1年半前に亜急性気管支炎と診断し治療後、咳なく経過良好であったが、1ヶ月前から間欠的に咳が始まり10日前から急に悪化して終日強い咳となった。2015年6月5日、精査希望のため呼吸器科受診。主訴は急性発咳。  既往歴:股関節形成不全症のため歩行障害あり。ソケイヘルニアおよび陰部より持続性粘液(2015.2-、経過観察中)。 問診:1ヶ月前から朝の散歩、興奮時、動き出すときに数回の咳があった。5月27日頃から急に咳が悪化してきた。咳は音量が大きく、持続性、30秒に20回位の速さで生じ、発症から1週間位は終日、断続的に咳が生じていたので、夜間眠れなかった。食欲、元気はあった。1年半前同様、咳発症前から涼しい環境でも持続性パンティングが生じていた。6月2日から2日間抗菌剤(ビクタスSS錠)を投与してから、幾分か咳の程度、頻度が減少してきた。同居犬なし、完全室内飼育、定期予防実施。  診察時徴候:BCS4/5、パンティングが執拗に続き、1分間に10-20回位の頻度で持続性の音調の大きな咳が続く。陰部より持続性分泌物あり。ソケイヘルニアあり。低調スターターを認めることがあった。努力呼吸なし。  臨床検査所見:T:38.8℃。血液ガス分析にて急性呼吸性アルカローシス、中程度低酸素血症、重度のAaDO2開大(pHa 7.52、Paco2 23mmHg, Pao2 61mmHg, [HCO3-]a 18.7mmol/L, BEa -2.0mmol/L, AaDo2 61 mmHg)。CBC/血液化学検査にて白血球数著明な増加(93900/mm3)、ALP>3500U/L。 CRP増加(1.1mg/dl)、X線および透視検査にて、頭部で軟口蓋過剰のため咽頭閉塞あり。胸部にて気管気管支軟化症、後肺野に強い間質影あり。肝腫大および腹腔容積増大により胸膜腔内制限あり。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて、喉頭虚脱ないが軟化傾向あり、持続性咳によると考えられ。気管虚脱ないが、気管分岐部前は発赤。左主気管支内に小さな白色粘液があり、RB3とLB2V1に気管支虚脱が認められた。 気管支ブラッシングをLB2V1にて実施したが細菌培養陰性、気管支肺胞洗浄液解析(RB2、10ml×3回、回収率36.7%)にて、性状は半透明だった。総細胞は数著増825/mm3 (正常 84-243/mm3)、細胞分画は、マクロファージ89.7%(正常92.5%)、リンパ球1.0%(正常4.0%)、好中球9.1%(正常2.0%)、好酸球0.2%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)で、腫瘍細胞なく泡沫状マクロファージ主体であり、慢性活動性炎症パターンを示したが、細菌培養陰性であった。  確定診断:急性/亜急性気管支炎。子宮蓄膿症などの子宮疾患が二次的に間質性肺疾患を生じ執拗なパンティングを生じていたと考えられました。 転帰:検査当日、パンティングは継続してみられたが歩行可能であり覚醒良好であったので退院。退院後数日、子宮蓄膿症が判明し、かかりつけ医のさづきペット診療室(川崎市)にて卵巣子宮全摘出術を緊急実施したとのことであった。その後も呼吸症状が継続したが、自宅管理で治療中。

#467, Thirteen months after stenting, DSH 11y F, ムクノキシロ150524BS症例467  シロちゃん。雑種猫 11歳 メス 、体重5.0kg。 来院経緯と主訴:2015年5月24日、症例450の2.0ヶ月後の経過観察。FOMを含んだネブライザー療法を継続してほぼ咳は消失した。 問診:元気食欲あり。 診察時の徴候:受診時一般状態良好。頸部気管部の聴診にて気道狭窄音なし。 その他の臨床検査所見:PCV30%。 喉頭および気管気管支鏡所見:ステント後端部の肉芽組織は消失していた。粘液停滞とステントに多数の乾酪状小塊物が認められた。ステント内に小さな肉芽組織が認められ、喉頭気管再建術部はステントのメッシュを超え結合組織が増加し内径が3.6mmとなっていた。乾酪状小塊物を含む粘液をブラッシングし微生物検査に供した。次に乾酪状小塊物を吸引カテーテルにて吸引除去した。 最終診断:ステント内肉芽組織および細菌コロニー形成。 治療:ステント内部肉芽組織と再建部結合組織部に対しAPCを実施。転帰:検査当日退院可能。在宅ネブライザー療法を継続。帰宅後1週間、今まで寝起きにあった咳も消失し、さらに咳がなくなったとのことだった。

VB#466-タマキアンジュ150523BS症例466  アンジュちゃん。トイプードル 1歳齢 メス 体重2.86kg。来院経緯と主訴:ガルシア動物病院(東京)より診療依頼を受けました。主訴は、2ヶ月前から安静時、睡眠時、仰向け時にフガーフガーといって呼吸が苦しそうなることがあり、次第に頻度が増加してきた。突然強い咳もすることがある。2015年5月23日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 問診:いびきなし。 診察時の徴候:診察時に顎下を軽く圧迫すると低調スターター(ズッという)  その他の臨床検査所見:血液ガス分析で軽度の低酸素血症(Pao2 74mmHg)、CRP 0.0mg/dl。頭部X線および透視検査にて傾眠状態になると正常のトイプードルに比して軟口蓋が厚く咽頭閉塞が生じた。しかし、意識清明下の通常呼吸では咽頭気道は広がり、その較差が大きいように思われた。胸部x線検査にて後肺野に淡いスリガラス状陰影あり。喉頭鏡検査では喉頭蓋と軟口蓋の重なりは正常であり軟口蓋過長を認めなかった。前部鼻鏡検査にて鼻腔内および鼻咽頭内に粘膜病変も閉塞病変なく、咽頭内口は十分開口し鼻咽頭から喉頭は明瞭に認められた。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:軽度の喉頭炎が確認され、可視範囲の気管気管支樹内に問題はなかった。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率53.3%)も行った。肉眼性状はほぼ透明で、総細胞数わずかに増加(285/mm3, 正常84-243/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ95.2%(正常92.5%)、リンパ球2.0%(正常4.0%)、好中球1.5%(正常2.0%)、好酸球1.2%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)を示し特異所見なし。だが、喉頭口に接する咽頭粘膜にヒダ状の余剰部があり、この部分がヒレツ軟骨小角突起に接触していた。内視鏡検査後、喉頭関連性の咳と短時間の逆くしゃみが連続して生じた。  最終診断:ヒレツ軟骨背側部の咽頭粘膜余剰、慢性喉頭炎、逆くしゃみ。軟口蓋は切除する必要はなく、興奮時から入眠時に咽頭粘膜がしわ状になり喉頭に接し咳が生じ、そのとき反動で生じる咽頭閉塞が逆くしゃみを誘発し、症状を増悪させていたと考えられた。幼齢期の逆くしゃみへの感受性増加が本症状の増悪に関わっていると考えられた。 最終治療:1.5歳程度まで成長を待つ、咽頭閉塞を悪化させないよう体重を増やさない。 転帰:検査後、状態良好のため当日退院。現在経過観察中。

VB#465, Laryngeal Collapse, ノタキチャチャ150521-BS症例465  チャチャちゃん。パグ 6歳齢 メス 体重5.86kg。来院経緯と主訴:はな動物病院(栃木県)より診療依頼を受けました。主訴は、1ヶ月前から呼吸が苦しそうでグーグーいい、何かのどに引っかかったような強い咳を頻繁にする。 2015年5月21日、精査加療希望のため呼吸器科受診となった。 問診:1日中動かず、散歩で歩くとすぐに苦しそうになり立ち止まり帰宅しようとする。 診察時の徴候:来院時、持続性ストライダーと吸気努力あり。ICU内(温度20℃、酸素濃度25%)では静かだが、ICU外に出すとストライダーが始まった。  その他の臨床検査所見:CRP0.0mg/dl。中程度の低酸素血症を伴った急性呼吸性アシドーシスを示し上気道閉塞所見を示したが、AaDo2 <30mmHgであり陰圧性肺水腫は起きていたとしても十分可逆的であり手術適応であった(pH7.29、Pco2 46mmHg, Po2 68mmHg, AaDo2 27mmHg)。頭部透視検査で、頭部にて吸気時喉頭後退、喉頭陰影増加、胸部にて淡いスリガラス状陰影あり。鼻鏡検査にて鼻腔および鼻咽頭に異常なし。  喉頭および気管気管支鏡検査所見:舌根肥大が著明であり、十分に舌を牽引しないと喉頭を観察することができなかった。喉頭全体は著しく浮腫を示し、左右のヒレツ軟骨楔状突起が会合していた。ラリンジアルマスクを進め軽く声門裂を押し進めると喉頭は開き、声門下腔をみることができた。しかし、ラリンジアルマスクを手前にもどすとすぐに喉頭は虚脱し閉塞した。したがって喉頭は軟化し内方に虚脱していた。反転喉頭小嚢、ヒレツ軟骨小角突起の接着、ヒレツ軟骨楔状突起の会合、喉頭浮腫が認められ、重度喉頭虚脱(ステージ3)の構造を示していた。さらに、ラリンジアルマスクを手前に戻すと、咽頭粘膜の余剰部分がヒレツ軟骨小角突起部分を覆っていた。気管から気管分岐部にかけて異常はなかった。  最終診断:喉頭虚脱ステージ3   最終治療:舌根肥大によって生じた喉頭虚脱であり上気道整復術は適応外と判断し、永久気管切開術を行った。   転帰:抜管後問題なく覚醒。術直後から尾を上げながら振ってよく歩いた。動画に術後3日目の様子を示した。院内廊下を何度も走りながら往復するほど活動性が改善した。現在入院にて経過観察中。

VB#464-喉頭-アライアルファー150510喉頭症例464 アルファーちゃん。シェルティー 9歳齢 オス 体重6.20kg。来院経緯と主訴:どうぶつの総合病院(埼玉県)より診療依頼を受けました。主訴は、2ヶ月前から続く食直後の吐出、レッチング、慢性発咳。喉頭から上部気管の疾患を疑われているとのことであった。2015年5月10日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:2ヶ月前に急に嗄声、咳、レッチング、食後や飲水後の吐出が始まった。抗生剤やステロイド投与でも改善せず。食欲はあるが食後に咳に伴い吐出してしまうようになった。流動食や水でも同様であった。現在、咳が減少してきたがレッチングはよくみられ、数日に1回嘔吐がある。  診察時の徴候:一般状態は良好だが、ときおりレッチングがみられた。その他の臨床検査所見:血液ガス分析にて酸素化と換気に異常ないが代謝性アルカローシスあり、頭部X線検査にて喉頭部の鮮鋭度低下。 前部鼻鏡検査にて鼻腔、鼻咽頭、咽頭内口に粘膜異常なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼的に、喉頭蓋服側の血管怒張、喉頭周囲に多量の粘液付着、喉頭発赤、声帯ヒダの腫脹あり。可視範囲内の気管気管支樹内に肉眼的異常を認めなかった。 喉頭周囲の粘液を微生物検査に、喉頭粘膜生検標本を病理組織検査に供した。 最終診断:慢性喉頭炎。急性咽喉頭炎から慢性化したと考えられた。一般に急性咽喉頭炎は、吸入刺激物質、細菌性中内耳炎の下行性感染、胃酸熱傷などが原因と考えられています。 最終治療:在宅ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ボスミン外用液0.5ml+ビソルボン0.5ml、1日2回)。 転帰:検査後、抜管後問題なく覚醒。状態良好のため当日退院。現在経過観察中。

VB#463-ヨシカワウオッカ150509喉頭症例463 ウォッカちゃん。オーストラリアン・シェパード 11歳齢 オス 体重19.45kg。 来院経緯と主訴:兵庫県より飼い主様ご希望で受診。主訴は、3年前から夏の睡眠時にパンティングが続き、眠れないということであった。今までいくつかの動物病院を受診しているが原因不明といわれた。2015年5月9日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 問診:夏の夜に持続性パンティングと呼気性異常呼吸音が生じ睡眠呼吸障害あり。症状は暑い季節の夜のみであったが、昨年より運動後にも同様症状が認められるようになった。昨年から少し運動しただけですぐにハーハー、ゼーゼーいうようになっている。いびきなし。 診察時の徴候:診察台上で起立可能。 その他の臨床検査所見:血液ガス分析で肺機能正常だが急性呼吸性アルローシス(pH 7.52, Pao2 100mmHg, Paco2 21mmHg)、CRP 0.0mg/dl。頭部X線および透視検査にて披裂軟骨の動きは不明瞭、鼻咽頭から口咽頭に閉塞病変の陰影は認められず。胸部x線検査にて後肺野に細網状陰影あり。前部鼻鏡検査にて左右鼻腔内および鼻咽頭内に閉塞病変なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:チオペンタール投与による浅麻酔下(5mg/kg IV)にて覚醒まで喉頭運動をまず確認したところ、呼気時に声門裂に動的狭窄が認められ、可視範囲内の気管気管支樹内に肉眼的異常を認めなかった。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 25mlX3, 回収率42%)も行った。肉眼性状はほぼ透明で、総細胞数増加なし(265/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ97.2%(正常92.5%)、リンパ球0.2%(正常4.0%)、好中球1.8%(正常2.0%)、好酸球0.8%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)を示し特異所見なし。現在、微生物検査中。 最終診断:喉頭の異常運動(「呼気時動的喉頭狭窄」 ”Dynamic laryngeal narrowing on expiration” )。 症例459と同様で現在調査中の喉頭疾患。本症例の場合、この閉塞性喉頭疾患によって高体温となり持続性パンティングが生じたと考えられた。 睡眠時と運動時にこの動的喉頭狭窄が生じるようだがその機序は調査中。 最終治療:1)体温上昇しないように常に通風環境下におく、2)気管支拡張剤を含んだネブライザー療法(生食20ml+メプチン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml、1日2回)。喉頭内転筋の過剰収縮が気管支拡張作用とともに得られるかは不明だが、試してみることにした。 転帰:検査後、抜管後問題なく覚醒。状態良好のため当日退院。現在経過観察中。

ヤマモトリュウ150503BS-RB2狭窄症例462 リュウちゃん。雑種猫 14歳齢 オス 体重6.78kg。来院経緯と主訴:おかの動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。主訴は、4ヶ月前から続く持続性スターター(鼻詰まり)と慢性鼻汁。2-3年前より月に2-3回の発作性発咳あり猫喘息疑いで発作時のみプレドニゾロン5mgを内服していた。2015年5月4日、精査加療希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:1年前から鼻汁が始まり、4ヶ月前から次第にスターター(スースーいう鼻詰まり症状)と鼻汁が悪化し、食欲低下。 診察時の徴候:体重減少(4ヶ月前は8.0kg)、持続性高調スターターあり。 その他の臨床検査所見:軽度の低酸素血症(Pao2 81mmHg、正常88−118mmHg)、AaDo2の開大(33mmHg、正常20mmHg未満)。頭部X線検査にて鼻咽頭道の狭窄と呼気時咽頭拡張、胸部X線検査にてびまん性スリガラス状陰影。前部鼻鏡検査にて鼻咽頭背側壁に、白色および表面が凹凸不整な扁平隆起病変が確認され、この粘膜病変は生検鉗子で容易に崩れやすかった。ブラッシング標本の細胞診にて少数のリンパ球様細胞が認められた。 喉頭および気管気管支鏡所見:肉眼的には可視範囲内の気管支粘膜は全体的に肥厚し、体格に比して気管支内径が細く、極細径気管支ファイバースコープ(外径2.5mm)を使用した。気管支肺胞洗浄液は末梢気道が狭く虚脱しやすく十分に回収できなかった(RB2, 5mlX2, 回収率12%)。その回収液は淡い赤色透明、総細胞数正常(203/mm3, 正常55-105/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ14.5%(正常82%)、リンパ球6.8%(正常2.7%)、好中球75.0%(正常4.0%)、好酸球3.5%(正常10%)、好塩基球0.0%(正常0%)。腫瘍細胞なし。慢性活動性炎症パターン。微生物検査中。 暫定診断:慢性気管支炎と鼻咽頭内腫瘍、暫定処置:在宅ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ビソルボン0.5ml+ボスミン0.5ml+デキサメタゾン0.25ml、1日2回)  最終診断:– 最終治療:– 転帰:検査翌日、無事退院。経過観察中。

オクムラグレ150428BS-右中間幹

症例461 グレちゃん。トイプードル 6歳 メス 2.16kg。来院経緯と主訴:赤坂動物病院(東京都港区)より診療依頼を受けました。主訴は、5週間続く遷延性咳漱。抗生剤や鎮咳剤やネブライザー療法でもコントロールできなかった。同居犬3頭あるが他は無症状。2015年4月28日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:肉芽腫性脳炎(1.5年前からプレドニゾロンとプロカルバジンにて治療中)、子宮蓄膿症(1年前、全摘術)、慢性膿皮症(4ヶ月前から抗生剤と薬用シャンプーで加療中)。 問診:咳は痰産生性、連日、1日10回程度、1回に4-5回連続する。とくに飲水後や食後に鼻汁やくしゃみをともなって咳が多い。夜間に多く、1週間前は熟睡できないほどであった。受診時に70%ほどに減少。 診察時の徴候:軽度の運動失調(肉芽腫性脳炎のため?)、全身の皮膚は発赤熱感帯び多発性小膿疱あり。 その他の臨床検査所見:CRP17mg/dl。血液ガス分析異常なし(Pao2 87 mmHg、Paco2 32mmHg)。X線および透視検査で頭部、胸部とも異常なし。抗核抗体および犬リウマチ因子はともに陰性。 喉頭鏡および気管気管支鏡所見:喉頭発赤軽度、肉眼的異常なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 5mlX3, 回収率37.3%)も行った。肉眼性状は透明。総細胞数増加なし(176/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ68.8%(正常92.5%)、リンパ球0.8%(正常4.0%)、好中球30.5%(正常2.0%)、好酸球0.0%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)。ほぼすべてが泡沫状マクロファージ。慢性活動性炎症パターン。気管ブラッシングおよび気管支肺胞洗浄液からともにBordetella bronchiseptica +2が分離され、ERFX, OFLX, CPに感受性を示した。 最終診断:亜急性気管気管支炎。長期間の免疫抑制療法による日和見感染と考えられた。  最終治療:ERFX5mg/kg SCまたはPO 2週間、およびネブライザー療法(生食20ml+クロロマイセチン局所溶液0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+メプチン吸入液0.5ml、1日2回2週間)。次に経過みつつ1日1回に漸減。 転帰:状態良好のため検査当日退院。現在経過観察中。

披裂軟骨背側の咽頭粘膜余剰症例460 デニーロちゃん。トイプードル 12歳 オス 5.48kg。来院経緯と主訴:成城こばやし動物病院(東京都世田谷区)より診療依頼を受けました。主訴は、2年間続く慢性咳漱。咳は連日、1日20回以上あり。気管虚脱の疑いがあるとのことだった。2015年4月27日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:夜間や安静時に咳はない。アレルギー検査陽性。抗菌剤、プレドニゾロン、気管支拡張剤等を投与してきたが、改善がなかった。 診察時の徴候:軽度肥満(BCS4/5)。Gagging(空嘔吐あり)。リードを引いたとき、抱き上げたときに4-5回続く咳がみられる。一般状態は良好。 その他の臨床検査所見:CRP0.15mg/dl。軽度低酸素血症(Pao2 77 mmHg)、換気正常(Paco2 35mmHg)、AaDo2の開大(32mmHg)。X線および透視検査で構造的咽頭閉塞(舌根の口咽頭への後退:長い矢印、咽頭周囲軟部組織増加:短い矢印2本)、動的頸部気管虚脱、後肺野に間質影増加。 喉頭鏡および気管気管支鏡所見:喉頭発赤、披裂軟骨小角突起背側を覆うように咽頭粘膜余剰ヒダあり。気管全長にかけ膜性壁伸長と軽度気管虚脱、気管分岐部以降に虚脱等肉眼的異常なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率27.7%)も行った。総細胞数増加なし(90/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ98.0%(正常92.5%)、リンパ球1.5%(正常4.0%)、好中球0.2%(正常2.0%)、好酸球0.2%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)。ほぼすべてが泡沫状マクロファージ。慢性炎症パターン。微生物検査にてAcinetobacter baumannii 1+を分離し、CEX, OFLX, ERFX, AMK, GM, FOMに感受性を示した。日和見感染と思われた。 最終診断:気管虚脱グレード3、咽頭気道閉塞症候群、慢性喉頭炎、気道感染あり。 治療:体重減量(-10%)、ERFX5mg/kg PO 14日間。 転帰:検査後回復良好、翌日退院。現在経過観察中。

エバラハナ150425BS-呼気時声門裂狭窄症例459 ハナちゃん。ラブラドールレトリーバー 10歳 メス 26.35kg。来院経緯と主訴:プリモ動物病院相模原中央(相模原市)より診療依頼を受けました。主訴は激しい運動後の呼吸困難。2015年4月25日、精査加療希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:4ヶ月前から嗄声と喉頭性発咳がみられるようになり、猫を追いかけようとした後に突然呼吸困難となった。のどが詰まったような苦しい症状を示した。これまでに4回生じ、次第に呼吸困難時間が延長し最近では15分続いた。いびきなし。診察台上で起立可能だが後肢は震えた。  診察時の徴候:受診時パンティングが続くが、様々な検査を行っても高調ストライダー(ヒーーヒーー)を示すことはなかった。聴診で咽喉頭部に最強の高低調混在音あり。 その他の臨床検査所見:Pao2 92mmHg, CRP 0.15mg/dl。頭部X線および透視検査にて披裂軟骨の動きは不明瞭。胸部x線検査にて肺野異常なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:チオペンタール浅麻酔下(5mg/kg IV)にて両側披裂軟骨小角結節の外転がみられず、呼気時に声門裂腹側にて動的狭窄あり。可視範囲内の気管気管支樹内に肉眼的異常を認めなかった。診断:喉頭麻痺があるが、通常みられない喉頭の異常運動がみられた。声門裂狭窄は生じておりこれが運動後の呼吸困難の原因と考えられた。 治療:後天性特発性喉頭麻痺の術式に準じ左側披裂軟骨側方化術を行った。側方化術後の喉頭観察(イソフルラン1%、プロポフォールCRI0.2-0.4mg/kg/minにて維持麻酔)にて右側披裂軟骨の外転が運動がみられ、術前確認されたときより強い呼気時声門裂の動的狭窄が生じた。最終診断:喉頭の異常運動(動的喉頭狭窄? Dynamic laryngeal narrowing?)。 転帰:気管チューブ抜管後、静かに覚醒し上気道閉塞は生じなかった。術後3日間入院にて安静管理とし、散歩でもとくに呼吸困難は生じなかった。ところが、3日目の退院時に飼い主にあったとたん急に驚き、うれしくなって興奮し、「のどが詰まったような」症状が生じた。しかし、チアノーゼまでには至らなかった。声門裂を側方に開口するよう固定しているのでそれが喉頭閉塞を阻止していると考えられた。その後自宅で4日間リラックスして過ごし、その間は、毎日3kmの散歩を2回行い特に心配になるような呼吸状態にはならなかったとという。現在、呼吸の自律神経性調節異常などの面から調査中。緊急時には、効果のほどは不明だが、喉頭固有筋の過剰収縮に対し、気管支拡張薬のMDI(サルタノールインヘラー)を開口呼吸時の口腔内に1スプレー噴射するよう指示しているが、まだ使用経験はないとのことだった。

Veterinary Bronchoscopy#458, Bronchomalacia, Chronic cough, Chihuahua 13y M, ID6413カノウノーティー症例458 ノーティーちゃん。チワワ 13歳 オス 2.56kg。来院経緯と主訴:代々木公園動物病院(東京都)より診療依頼を受けました。主訴は、6ヶ月間続く慢性咳漱。2015年4月24日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:4年前から僧帽弁閉鎖不全症のためACEIを継続投与していた。 問診:2週間前からは睡眠時以外はほぼ常に咳あり、気管虚脱の疑いがあるとのことだった。抗菌剤(CAM)、鎮咳剤、ネブライザー療法(GM, デキサメサゾン、ビソルボン、メプチン)を行ってきたが咳が改善しなかった。幼少時より大きないびきあり(レベル4/5)。来院の2週間前から強いくしゃみあり。 診察時の徴候:肥満傾向(BCS4/5)。持続性痰産生性の咳が続いていた。 その他の臨床検査所見:CRP0.2mg/dl。軽度低酸素血症(Pao2 68 mmHg)、換気正常(Paco2 33mmHg)、AaDo2の開大(43mmHg)。X線および透視検査で構造的咽頭閉塞、動的頸部気管虚脱、後肺野に間質影増加、呼気時気管支虚脱、心陰影拡大(VHS11.0)あり。鼻腔ブラッシングにてリンパ球など特異的炎症細胞は認められず、起炎菌も分離されなかった。 喉頭鏡および気管気管支鏡所見:喉頭虚脱や喉頭麻痺なし。気管全長にかけ膜性壁伸長と軽度気管虚脱、気管支虚脱が左主気管支/RB3/RB4/LB2に認められたが明瞭な粘液停滞所見はなかった。LB1V1にて気管支ブラッシングを行ったが細胞診で異常なく、起炎菌も分離されず。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 5mlX3, 回収率42.7%)も行った。総細胞数増加なし(90/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ95.0%, リンパ球1.2%, 好中球 3.8%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%であり、泡沫状マクロファージ主体であり、微生物検査にてPseudomonas aeruginosaE.coli を分離し、ともに有意であり、2菌種とも感受性を示したのはCAZ, CFPM, IPM, AMK, FOMであった。CAMおよびGMは十分な抗菌効果がみられなかった。 最終診断:気道感染を伴った気管支軟化症、動的頸部気管虚脱、原発性気管虚脱グレード3。 治療:体重減量(-10%)、長期在宅ネブライザー療法(生食20ml+ホスミシンS耳科用3% 0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+メプチン吸入液0.5ml、1日2回。ホスミシンは2ヶ月間使用予定)、ホスミシン錠250 1日2回1/4錠ずつ/14日間、胸郭周囲の筋力を増加するため運動促進、循環器治療を継続、鎮咳剤やステロイドを使用せず薬剤で咳を止めず喀痰軟化を図り痰喀出を和らげる。 転帰:検査後回復良好のため当日退院可能。現在経過観察中。

アライラブ150419BS-気管分岐部の粘稠分泌物

症例457 ラブちゃん。ラブラドールレトリーバー 5歳 メス 30.0kg。来院経緯と主訴:越谷動物医療センター(埼玉県越谷市)より診療依頼を受けました。主訴は慢性咳漱と胸部異常影。2015年4月19日、精査希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:幼齢時より4年間安静時に痰産生咳を毎日4-20回以上続いている。 診察時の徴候:努力性呼吸なし。一般状態は良好。聴診にて呼吸副雑音なし。 その他の臨床検査所見:CRP0.5mg/dl。軽度低酸素血症(Pao2 73 mmHg)、換気正常(Paco2 37mmHg)。X線および透視検査で直径2−8mmの類円形の気管支拡張所見がびまん性にみられた。 喉頭および気管気管支鏡所見:喉頭は発赤し、声門裂に粘膿性粘液が付着していた。気管、左右主気管支さらに葉気管支入口部の所々に褐色粘稠分泌物が付着、貯留していた。気管尾側部から左右主気管支にかけ粘膜は発咳、凹凸不整を示し、右主気管支や葉気管支入口部は拡張していた。左右の後葉(RB4とLB2)以降は、粘膜は平滑化し、可視範囲で著明な気管支拡張は認められなかった。LB2V1に粘液が多かったので気管支ブラッシングを行い、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌1+が分離され、GMとCPに感受性を示した。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 25mlX2, 回収率30%)も行った。総細胞数は増加(820/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ0.5%, リンパ球0.0%, 好中球 99.4%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%であり、腫瘍細胞は認められなかった。起炎菌は分離されなかった。 最終診断:びまん性気管支拡張症。若齢から発症しており線毛運動不全などの先天性要因が考えられ、二次感染管理を含む長期気道管理が必要。 治療:長期在宅ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+メプチン0.5ml、1日2回)。排痰促進のため運動奨励。  転帰:翌日退院。経過観察中。2週間後、自宅でネブライザー療法を継続しているがとても協力的で気分がよさそうとのことだった。

モリヤマジル150418BS 喉頭術前症例456 ジルちゃん。ラブラドールレトリーバー 12歳 メス 26.5kg。来院経緯と主訴:水野動物病院(東京都)より診療依頼を受けました。主訴は持続性高調ストライダー。2015年4月18日、精査加療希望のため呼吸器科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:4ヶ月前より興奮時ストライダーあり、次第に悪化し、2週間前に高調ストライダーからチアノーゼを発症した。以後、安静時でも高調ストライダーがあり、毎日2-3回チアノーゼを発症している。数年前から床越しに聞こえるほどの大きないびきあり(レベル5/5)。 診察時の徴候:持続性の嗄声様パンティングあり。歩行可能。 臨床検査所見:Pao2 77mmHg, CRP 0.10mg/dl。頭部透視検査にて披裂軟骨運動なし。胸部x線検査にて右後肺野に直径34mmの境界明瞭な孤立結節陰影あり。 喉頭気管気管支鏡検査所見:チオペンタール浅麻酔下に両側披裂軟骨小角結節の外転がみられないのみならず、喉頭虚脱に至っていた。可視範囲内の気管気管支樹内に肉眼的異常を認めなかった。最終診断:喉頭虚脱を伴った後天性特発性喉頭麻痺。治療:軟口蓋切除術および左側披裂軟骨側方化術。気管切開術を実施した。 転帰:術直後、起立可能。術後2日で気管切開チューブ抜去。術後6日目から散歩にて立ち止まらなくなった。術後7日目、高調ストライダーやチアノーゼは生じず、一般状態はほぼ改善し、退院となった。術後10日目、癒合良好であり抜糸完了した。頸部に漿液腫が生じ14ml貯留液を抜去した。一般状態はとても良好であった。術後15日目、漿液種は消失していた。一般状態、呼吸状態とも良好とのことだった。

ホリウチウーロン150410BS LPB内に白色粘液塊

症例455 ウーロンちゃん。Mダックスフンド 10歳 オス 5.60kg。来院経緯と主訴:王禅寺ペットクリニック(川崎市)より診療依頼を受けました。2015年4月10日、精査希望のため呼吸科受診となった。 既往歴:特になし。 問診:11ヶ月続く難治性慢性鼻汁/くしゃみ。2日に1回、粘稠な鼻汁が出る。発症当初から逆くしゃみと単発性咳も連日のように続いている。4ヶ月前に歯石除去と上顎側で数本抜歯を行った。 臨床検査所見:胸部X線写真にて気管支パターン、Pao2 90 mmHg、CRP 0.70 mg/dl、後部鼻鏡検査にて左後鼻孔部に灰色粘稠粘液小塊が停滞し、前部鼻鏡検査にて両側腹鼻甲介表面に粘稠粘液が多量に停滞(微生物検査中)、腹鼻甲介尾側部粘膜は発赤腫脹し粘膜面凹凸不整あり粘膜生検とブラッシングを行った。細胞診では上皮細胞塊のみでリンパ球など特異的炎症細胞認められなかった。生検標本は病理組織検査中。 気管支鏡検査所見:喉頭発赤と痙攣、胸部気管と左右主気管支内に多数の粘液小塊あり。右主気管支内の粘液をブラッシングにて採取し、細胞診にて上皮細胞のみで特異的炎症細胞はみられなかった。微生物検査中。暫定診断:慢性特発性鼻炎  暫定治療:長期在宅ネブライザー療法(生理食塩液20ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5mlを1日2回)。 最終診断:慢性特発性鼻炎  最終治療:在宅ネブライザー療法(生食20ml+GM0.5ml+ボスミン0.5ml+ビソルボン0.5ml/回、1日2回)。  転帰:検査後入院。翌日鼻出血は完全に消失したことを確認し退院。経過観察中。

VB#454-マエノイチゴ150409BS-RB3D1の粘液貯留

症例454 いちごちゃん。コーギー 11歳 メス。アニマルメディカルセンター(埼玉県吉川市)より診療依頼を受けました。主訴は7年間続く慢性咳漱と運動後喘鳴。 2015年4月6日、精査希望のため呼吸器科受診。 症状:幼齢時に重症肺炎、4歳齢時より運動時後喘鳴や咳が始まり、6歳齢時に運動不耐が悪化した。その後小康状態であったが1週間ほど前から咳が増加してきた。受診時、運動時に痰産生咳と呼気性喘鳴をしきりに繰り返していた。呼気努力あり。一般状態は良好。 その他の臨床所見:CRP0.45mg/dl。中等度低酸素血症(Pao2 69 mmHg)、換気正常(Paco2 34mmHg)。X線および透視検査で多発性に軟化をともなった気管支拡張あり、後肺野には吸気時に約3cmまで拡大する囊状拡張病変があった。 気管支鏡所見:喉頭は発赤。末梢気道域全体に褐色粘稠分泌物が貯留しており、全ての葉気管支は拡張していた。とくに副葉気管支は囊状拡張し、近傍の区域気管支(RB3D1)に褐色粘稠粘液が充満していたので気管支ブラッシングを行った。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 20mlX2, 回収率25%)を行った。細胞に乏しく(9/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ26.0%, リンパ球0.0%, 好中球 72.0%, 好酸球 2.0%, 好塩基球 0.0%であり、腫瘍細胞は認められなかった。細胞診では、BALFおよびブラッシングとも特異性炎症は認められなかった。微生物検査にてBALF中に起炎菌が認められなかったが、気管支ブラッシングにてG群Streptococcus 1+を分離し、GMを除くほぼ全ての抗菌剤に感受性を示した  最終診断:びまん性気管支拡張症。比較的若年齢で発症しているので先天性要因もあるかもしれない。長期管理が必要と考えられる。  最終治療:長期在宅ネブライザー療法(生食20ml+ビソルボン吸入液0.5ml+メプチン0.5ml+クロロマイセチン局所溶液0.5ml、1日2回)、気管支拡張薬(ネオフィリン錠100mg 1日2回1錠 内服)、去痰剤(ビソルボン錠 1日2回 1錠 内服)、バイトリル(ERFX)5mg/kg PO 1日1回、14日間。  転帰:気管支鏡検査後、中程度の腎機能異常とCRP増加(8.1mg/dl)あり。5日間の入院経過観察を行ったがそれらに対し著明な改善がみられなかった。次第に下痢が生じたり元気消退してきた。これまで手作り食を与えてきたということで、入院ストレスや食事があわないことによる体調不良と判断し退院とした。帰宅後、ただちに元気回復し、排便も正常となった。退院後2週間が経過し、かかりつけ医にて通院にて治療し、次第に腎機能は回復してきた(BUN 53→30mg/dl、Cre3.3→2.4mg/dl、CRP0.84mg/dl)。一般状態は良好とのことであった。

イヨベジェリー150329BS-postope症例453 ジュリーちゃん。ゴールデンレトリーバー 13歳 オス。症例408にて後天性特発性喉頭麻痺と診断してから7ヶ月経過。前回内視鏡検査後起立困難となり、1週間運動失調が続いた。2015年3月29日、外科手術希望のため再受診。 症状:冬の間は比較的呼吸音に問題なかったが、暖かくなってくるとゆっくり歩いただけで高調ストライダーを示すようになった。段差の低い10段位の階段の上りは可能だが、下ることができない。2週間前にトリミング中ストライダーおよびチアノーゼが再発した。来院時に嗄声様パンティングが続いていた。その他の臨床所見:歩行可能だが、診察台上で両側後肢にナックリングあり。Pao2 92mmHg, CRP 0.0mg/dl。胸部x線検査にて肺野透過性良好。 喉頭気管気管支鏡検査所見:7ヶ月前と同様に、浅麻酔下に両側披裂軟骨小角結節の外転みられず。喉頭虚脱に至っていなかった。最終診断:後天性特発性喉頭麻痺。治療:片側披裂軟骨側方化術。気管切開術は不要であった。 転帰:術後12時間、伏臥のまま起立不能。上体を持ち上げ補助すると起立可能となり10分程度外を歩き続けられた。散歩中、嗄声様パンティングあるが積極的に歩いた。在宅看護可能と判断し術後翌日退院となった。術後7日間、自宅で以前と同様に生活可能で散歩にて目立った運動失調なく良好に経過した。術後11日目抜糸終了した。朝の起立補助が必要だが、一度起立するとよく歩き、小走りも可能とのことだった。

オカゾエアンディ150327BS-吸気時の声門裂の奇異運動-1症例452 アンディちゃん。スタンダード・プードル 11歳 オス 30.0kg。来院経緯と主訴:ベルどうぶつクリニック(町田市)のオ岡添院長先生ご自身が飼われているということで診療依頼を受けました。主訴は散歩時の異常呼吸音。 2015年3月27日、精査希望のため呼吸器科受診。 既往歴:馬尾症候群+椎間板ヘルニア(2年前より温存対処)、夜間gagging/retchingが続き上部消化器および胸部および腹部CT検査実施し胃の運動性低下と気管支拡張症の可能性を指摘された(1年前)。慢性肝疾患(内科療法継続)。 問診:2ヶ月前から散歩時や興奮時のみにゼーゼーいう。鳴いたあとに短い強い咳をする。いびきなし、睡眠可能。チアノーゼ歴なし。診察時の徴候:歩様異常なし、嗄声様パンティングあるが吸気度努力にならない。診察台上で起立可。大腿筋量十分。その他の臨床検査所見:Pco2 23mmHg、Pao2 101mmHg、CRP 0.15mg/dl。透視検査にて披裂軟骨外転不明瞭および動的頸部気管虚脱、頭頸部および胸部X線検査にてほぼ問題なし。喉頭気管気管支鏡所見:喉頭に器質的異常なし。チオペンタール浅麻酔下に吸気時に声門裂開口が認められず、深呼吸時に声門裂は内転する奇異運動が認められた。 最終診断:後天性特発性喉頭麻痺。 治療:チアノーゼが生じていないとのことなのでしばらく過度な興奮を避けて様子観察。 転帰:検査直後パンティングと高体温が生じ起立不能。30分間冷やしたタオルを当て通風にて管理し呼吸は正常に回復し、起立し歩行し始めた。即日退院。

タケフーイ150321BS-処置前-ステント前端肉芽症例451 フーイちゃん。ヨーキー 9歳 メス 3.12kg。来院経緯と主訴:原発性気管虚脱と診断し気管内ステント留置後30ヶ月経過のため、2015年3月21日、定期検診のため来院。症例420の6.0ヶ月後。 症状:一般状態良好。走っても高調ストライダーなし。散歩途中に数日に1回痰を出すような仕草あり。その他の臨床所見:嗄声なし。Pao2 74 mmHg、CRP 0.40mg/dl。胸部X線異常なし。気管支鏡所見:喉頭虚脱あるいは喉頭軟化症、ステント前端に小さな肉芽形成あり、気管ステント内に粘液停滞あり。気管内ブラッシングにて細菌検出されず。最終診断:喉頭虚脱およびステント前端肉芽形成。治療:肉芽に対しアルゴンプラズマ凝固を実施。喉頭虚脱には覚醒過程においてスコープを喉頭内に残し覚醒してからスコープを抜去。自宅にて生理食塩液+ボスミン0.5ml+ビソルボン0.5mlを組成とするネブライザー療法を1日3回実施。転帰:即日退院。自宅で状態良好に維持。

ムクノキシロ150315BS-ステント後端部-処置後

症例450 シロちゃん。雑種猫 11歳 メス 5.0kg。症例434の4.0ヶ月後。症状:咳が増加。連日1日20回以上、ゴボゴボいう咳。口臭あり。元気食欲あり。2週間前から吸気性異常呼吸音が聞こえるようになった。その他の臨床所見:受診時一般状態良好だが、胸部X線写真にて左前肺野に浸潤影あり。貧血傾向(PCV25%)。気管支鏡所見:ステント後端部に膿性粘液停滞、気道の約70%を閉塞する肉芽組織形成あり、ステントに白色小塊状物付着。気管ステント内ブラッシング標本にてPasteurella multocida 1+, G群 Streptococcus 1+を分離した。ブラッシング中、Spo2 90%以下に落ち、100%酸素吸入下でもSpo2 92%以下であったので、安全を考慮しAPCによる肉芽処置を行わなかった。最終診断:ステント内反応性肉芽組織形成、膿性粘液停滞。肺浸潤影は細菌性気管支肺炎と考えられた。治療:起炎菌に対し感受性あるERFX 5mg/kg PO, FOMをネブライザー薬剤に混じて投与。転帰:検査後6日間入院。肺野陰影の改善を確認し退院。自宅でERFX内服とネブライザー療法を継続。2週間後再診時に咳なし、吸気性異常呼吸音なし、胸部X線写真にて左肺野浸潤影減少していた(症例467に続く)。

タカハシナナ150301BS 喉頭-著しい喉頭狭窄

症例449 ナナちゃん。雑種猫  14歳齢 オス 体重4.54kg。ぽっとまむ動物病院(埼玉県)より診療依頼を受けました。1ヶ月前から異常呼吸音、1週間前から呼吸困難悪化のため持続性開口呼吸、流涎と口臭、摂食不能、睡眠障害が生じるようになり、体温低下(34℃台)および起立困難になってきた。症状:受診時、持続性開口呼吸と著明な吸気努力にて横臥状態、高調の吸気性異常呼吸音を伴っていた。 その他の臨床所見:Spo2 73%(room air下)。透視検査にて吸気時咽頭の著しい拡大、胸部X線検査にて肺野にスリガラス状陰影。緊急気管切開に迫られた。喉頭鏡および喉頭気管気管支鏡所見:喉頭気道は固く狭窄し、披裂軟骨の外転もみられなかった。先の細いメッツエンバウム剪刀を用い硬性鏡観察下に強制的に喉頭気道を広げてみた。すると、喉頭気道内にマス病変は全く認められなかった。喉頭内のやや隆起した粘膜の一部を生検したが、正常粘膜と組織診断された。切皮して喉頭周囲を観血的に観察し、喉頭周囲に白色扁平隆起病変が認められた。生検の結果、扁平上皮癌と病理組織された。 暫定診断:喉頭麻痺。喉頭周囲腫瘍により喉頭に分布する神経障害(前後喉頭神経由来神経とも)が生じたと考えられた。治療:検査後、気管切開チューブを留置しICU管理(温度23℃、湿度80%、酸素濃度40%)で経過観察 転帰:術後3日目に呼吸困難は消失し、睡眠するようになり、術後4日目では普通に鳴くようになった。現在入院管理中。

ニシナハナ150226BS 喉頭-側方化術前症例448  ハナちゃん。ラブラドールレトリーバー 11歳 メス 31.65kg。湖南動物病院(山梨県)より診療依頼を受けました。症状:2ヶ月前から興奮時ストライダーあり、次第に頻度程度増加。来院の4-5日前から散歩に出るとすぐにストライダーを発症しチアノーゼになる。その他の臨床所見:若齢時より隣の部屋にいても聞こえる大きないびきあり(レベル4/5)。安静時呼吸数40回/分以下。昨年夏(半年前)より後肢にわずかにナックリングの徴候がみられ始めていた。診察台上で起立可だが両後肢ふるえあり。大腿筋量十分。Pco2 35mmHg、Pao2 84mmHg、CRP 0.55mg/dl。透視検査にて喉頭領域の透過性低下および動的頸部気管虚脱、胸部X線検査にて肺野ほぼ問題なし。喉頭気管気管支鏡所見:披裂軟骨楔状突起および小角突起部分の接着および発赤浮腫あり、チオペンタール浅麻酔下に吸気時に声門裂開口が認められず、深呼吸時に声門裂が閉鎖したまま大きく喉頭全体が後退した。軽度の反転喉頭小嚢が認められたが、喉頭内に腫瘍性病変は確認されなかった。気管気管支樹に異常なし。 最終診断:喉頭虚脱を伴った後天性特発性喉頭麻痺。 治療:片側披裂軟骨側方化術。披裂軟骨は軟化し牽引糸の強い張力に耐えられなかったので、緩く輪状軟骨に縫合固定し、甲状軟骨-披裂軟骨縫合を追加した。術中内視鏡観察にて、声門裂をやや開口できた。転帰:抜管後ただちに持続性ストライダーが発症したので急遽、一時的気管切開術を追加実施した。若齢時よりいびきがあり、睡眠時に機能的咽頭閉塞が生じているのかもしれない。また、術後喉頭粘膜腫脹がみられたのでこの腫脹を消失させることも、気切チューブ抜管に必要な条件となる。術後3時間、嗄声様パンティングが続いた。その後1日2回喉頭浮腫治療のためネブライザー療法を実施した。術後6日目に気切チューブ閉塞試験にてかなり興奮してもストライダーが生じないことが判明したので抜管した。術後経過中、散歩では積極的に走り、いくら走ってもストライダーにならなかった。階段の上り下りも可能であり、やはりストライダーにならなかった。術後11日目に抜糸を行ったが、頸部皮膚のたるみがとても多かったことと気管切開も行ったためか、頸部外側の術創が開き、局所麻酔にて再縫合した。術後14日目に呼吸状態良好のため退院。その後自宅で頸部圧迫包帯の交換とネブライザー療法を継続した。帰宅後も毎日散歩で元気に歩くようになり、呼吸困難にならなくなった。かかりつけ医にて無事抜糸を終了し、術後2ヶ月を経過し、散歩は朝夕20分位、嗄声様パンティング(ゼエゼエ)あるがやはりチアノーゼにならず、さらに歩きたがるとのことだった。

Veterinary Bronchoscopy#447-RB3部軽度浮腫症例447 マウちゃん。エジプシャンマウ 1歳齢 オス 体重4.68kg。東京都世田谷区より飼い主様ご希望で受診。猫喘息を疑っているが確定診断を希望。症状:2ヶ月前より発作性咳が増加し、最近2週間で連日、1日に10-20回、一度の発作は15-30秒続き、次第に苦しそうになってきた。 その他の臨床所見:発作間期は問題なく、日常生活の活動性低下なし。食欲あり、くしゃみなどの上気道症状なし。現在表在性を含む寄生虫感染や皮膚および消化器系症状や脱毛性疾患なし。他動物と接する機会なし。殺虫剤/芳香剤/線香など刺激吸入物なし。1歳の同種の猫が同居しているが発作性咳症状はみられない。多飲多尿あり。いびきなし。軽度の低酸素血症(Pao2 76mmHg)、AaDo2の開大(41mmHg)。胸部X線検査にて左前肺野に境界不明瞭な肺胞浸潤影、および後肺野にスリガラス状陰影およびびまん性に気管支パターンあり。 気管支鏡所見:肉眼的には可視範囲内の気管支粘膜に軽度の発赤と浮腫ある程度。気管支ブラッシング(LB1D1)を行い細胞診では上皮細胞のみ、微生物検査にて細菌陰性。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率53%)では、回収液はうすい白色透明、総細胞数増加(720/mm3, 正常55-105/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ40.0%(正常82%)、リンパ球0.6%(正常2.7%)、好中球21.4%(正常4.0%)、好酸球37.8%(正常10%)、好塩基球0.0%(正常0%)。腫瘍細胞なし。好酸球性炎症パターン。微生物検査にて細菌陰性。好酸球増加性のⅠ型過敏症が確認されたのでアレルゲン検査実施し35/92種に陽性反応を示した。 最終診断:猫喘息。気道感染なし。 治療:アレルゲン回避とステロイド吸入療法を開始。 転帰:検査後状態良好のため当日退院。ステロイド吸入療法は初回から速やかに受入れ可能であった。 その後の経過:治療開始3ヶ月目の再診にて、ステロイド吸入療法はその後も協力的で問題なく実施可能であり、発作性咳は週に0-1回、一度に15秒だけ続くが繰り返さないとのことだった。ステロイド内服は一度も使用する必要がなかった。低酸素血症は完全に回復し(Pao2 96mmHg)、AaDo2も改善し(25mmHg)、すっかり元気になった。処方は、猫専用スペーサー(AeroKat)を用い、フルタイド50μgエアゾール120吸入用、1日2回1スプレーずつ。今後はかかりつけ医にて継続診療となり、呼吸器科では半年に1回定期検診となった。

コバヤシヨツバ150207BS 喉頭-処置前症例446 よつばちゃん。フレンチブルドッグ 6歳齢 メス 体重8.42kg。郡山東たんぽぽ動物病院(福島県)より診療依頼を受けました。 症状:2014.5.4興奮後ストライダーによりチアノーゼ、肺水腫を発症し入院治療となった。その後、散歩時や興奮時に吸気性高調異常呼吸音を伴うストライダーが頻発し、胸郭を大きく外方に広げる吸気努力を伴っていた。プレドニゾロン錠5mg 1錠とセファレキシン錠250mg 1/2錠を発症時投与し症状緩和させていたが、数週間前より次第に頻度および程度が悪化してきた。その他の臨床所見:呼吸困難発症以外は食欲元気あり。WBC低値(3100/mm3)、CRP0.10mg/dl。高炭酸ガスおよび低酸素血症(Paco2 42mmHg, Po2 76mmHg)、AaDo2開大は軽度。頭部X線および透視検査にて喉頭内を閉塞する遊動性のポリープ状病変陰影あり。吸気時に喉頭を閉塞し異常呼吸音と同期した。軟口蓋過剰および咽頭背側壁軟部組織過剰による咽頭閉塞あり。 喉頭および気管支鏡所見:喉頭は全体的に浮腫状を呈し、喉頭虚脱と過剰に伸展した反転喉頭小嚢により閉塞していた。気管上部には咽頭液と思われる白色分泌物が大量に流入しており、気道粘膜全体が発赤していた。 最終診断:喉頭虚脱ステージ3および過剰に伸展した反転喉頭小嚢。  治療:一時的気管切開術実施下に、軟口蓋切除術および喉頭小嚢切除術。切除したポリープ状に腫大した喉頭小嚢は腫瘍との鑑別のため病理組織検査に供した。 転帰:術後気管切開チューブ留置により問題なく覚醒。気管切開下には問題なく元気食欲あり。8日後、気管切開チューブが自然滑脱していたが努力呼吸なかったのでその日退院。在宅ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ボスミン0.5ml+ビソルボン0.5ml/回、1日2回)を継続してもらうことになった。1ヶ月後検診。歩いても走ってもストライダーにならず、いびきもなく調子よいとのことだった。1年後にも検診にて、やはり同様に興奮後ストライダーにならないとのことであり、飼主の初期症状改善度評価は5/5(完全に改善)であった。現在はネブライザー療法は1日1回で管理しているとのことであった。

 

サカイナツコ150201-BALF上に分離されたろう様油状物1 症例445 ナツコちゃん。雑種猫 9歳齢 メス 体重4.42kg。モリヤ動物病院(町田市)より診療依頼を受けました。症状:5ヶ月前に胸部異常影を指摘された。浅速呼吸あり。一般状態は維持しているが、先月さらにその胸部異常影が拡大した。その他の臨床所見:8年前に原因不明の腹部鈍傷により急性腹壁ヘルニアあり、2年間で2回外科整復術実施。そのため腹筋の筋力に障害あり慢性便秘症となり、数年間流動パラフィン強制投与にて管理してきた。浅速呼吸あり(100回/分)。Pco2 33mmHg、Pao2 82mmHg。胸部X線検査にて腹側中後肺野に浸潤影を一部伴う強い間質陰影あり(重力依存デンシティ)。気管支鏡所見:気道内は肉眼的にはほぼ異常なし。気管支ブラッシング(LB1V1)および気管支肺胞洗浄液解析(RB3, 10mlX3, 回収率40%)を行った。回収液は直後はうすく白濁していたが、時間が立つにつれ表面のろう様油成分と水に分離した。総細胞数増加(374/mm3, 正常55-105/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ70.5%, リンパ球0.6%, 好中球 28.7%, 好酸球 0.2%, 好塩基球 0.0%であり、巨大化した泡沫状マクロファージが優勢を占めた。腫瘍細胞は認められなかった。ブラッシング細胞診では上皮細胞のみで特記所見はなかった。ブラッシング、BALFとも微生物検査中。 暫定診断:外因性脂質性肺炎。 治療:流動パラフィン投与中止とステロイドの抗炎症量投与を検討。緩下剤はグリセリンに変更した。 転帰:検査後経過良好のため翌日退院。経過観察中。

 

VB#444-喉頭虚脱-タカハシルンタ150123喉頭 症例444 ルンタちゃん。トイプードル 8歳齢 オス 体重2.70kg。大崎動物病院(千葉県)より診療依頼を受けました。症状:数ヶ月前からいびきがときどきみられるようになり、3週間前から頻度増加、2週間前から睡眠時以外でもいびき様呼吸音がみられるようになり苦しそうになってきた。その他の臨床所見:意識清明で活発に動いているときには異常呼吸音は生じず一般状態良好。摂食、飲水障害なし。体重増加なし。興奮しやすくすぐにパンティングが生じる。血液ガス分析にてPco2 20mmHg、Pao2 112mmHg, AaDo2 14 mmHgを示し肺機能正常だが過剰に興奮し過換気。CRP 0.30mg/dl。咽頭虚脱疑いにてミルナシプラン1mg/kg POを試みたが効果なく、やはり睡眠できないとのことで4日後再受診。頭部X線および透視検査にて明瞭な構造的および機能的咽頭閉塞認められず。鼻鏡検査でも鼻咽頭内に閉塞病変は認められず。喉頭および気管支鏡所見:披裂軟骨小角突起が固く内転し喉頭虚脱を示した。披裂軟骨外転は十分あり喉頭麻痺は認められなかった。両側声帯ヒダ部分に小結節病変が認められた。炎症性ポリープと思われた。気管以降に異常なし。 最終診断:喉頭虚脱(喉頭麻痺を伴わない)。 治療:永久気管切開術。 転帰:術直後より呼吸困難改善し終日熟睡。翌日、元気に動き回るようになった。2週間後、元気に退院。現在自宅管理にて様子観察。

 

キムラエル150116BS-喉頭観察-術前 症例443 エルちゃん。ラブラドールレトリーバー 12歳 オス 22.5kg。矢敷動物病院(相模原市)より診療依頼を受けました。症状:5ヶ月前から興奮時ストライダーあり、次第に頻度増加。一昨日、呼吸困難が止まらなくなった。呼吸器科に来院時、高調ストライダーが止まらなくなっていた。その他の臨床所見:歩様不安定。診察台上で起立不可。全身的に筋量低下。しかし活動的。ストライダー発症中、透視検査にて咽頭が著しく拡張し喉頭が大きく後退、Pco2 36mmHg、Pao2 80mmHg, CRP 3.90mg/dl。胸部X線検査にて肺野ほぼ問題なし。気管支鏡所見:喉頭に器質的構造異常なし。披裂軟骨小角結節部は著しく発赤し、左右結節部の間隙は縮小、狭窄し、結果として声門裂は縮小していた。吸気時に両側披裂軟骨外転なく、ときに吸気時に声門裂が接着した。 最終診断:後天性特発性喉頭麻痺。 治療:片側披裂軟骨側方化術。披裂軟骨は内方に強く変位し側方化にやや抵抗が生じた。転帰:術後経過良好。入院中、当初階段を上り下りできなかったが1週間経過でスムーズに上り下りができるようになり、歩様も当初より軽快になった。軽い運動で嗄声様パンティグが生じるが立ち止まることはなく動き続ける事ができ、非常に激しく興奮すると短時間ストライダーが生じる始めるが休ませるとすぐにストライダーは消失した。2週間後、元気に退院した。

 

VB#442症例442 ブブちゃん。パグ 9歳 メス 7.42kg。埼玉動物医療センター(埼玉県)より診療依頼を受けました。症状:呼吸困難。2週間前から吸気/呼気性努力性呼吸、吸気時高調異常呼吸音、呼気時低調異常呼吸音。3ヶ月前に睡眠呼吸障害とストライダーあり短頭種気道症候群代償不全期と診断し内科的咽頭拡張療法と減量治療をしていた。その他の臨床所見:CRP5.9mg/dl。Pao2 87 mmHg, AaDo2 22 mmHg。頭部透視検査で、頭部にて吸気時咽頭拡張および喉頭後退/呼気時咽頭虚脱、胸部にて異常影なし。 気管支鏡所見:吸気呼気とも喉頭虚脱、披裂軟骨楔状突起の接着と浮腫、喉頭周囲に分泌物過剰  最終診断:喉頭虚脱ステージ3および咽頭虚脱(短頭種気道症候群代償不全末期) 治療:永久気管切開術および頸部周囲皮膚整形術  転帰:術直後呼吸困難消失。頸部周囲の皮膚は予期以上に過剰であり、気管ろうが部分的に閉塞してきたので、術後13日目に皮膚整形術を追加実施した。その後、気管ろう周囲の皮膚の緊張度は安定し、ろう孔開存が保てるようになってきた。はじめの手術後33日目に術部は完全に安定し退院となった。自宅では体重維持とろう孔管理のための在宅ネブライゼーションを継続した。現在、術後7ヶ月経過しているが呼吸困難なく元気に過ごしている。

症例441 ナッツちゃん。雑種犬(プードルXパピヨン)9歳 メス 6.52kg。夕やけの丘動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。症状:慢性鼻汁/くしゃみ。10ヶ月前より粘液膿性鼻汁と逆くしゃみが1日0-2回続く。5ヶ月前に誤嚥性肺炎発症、その後から単発性咳頻発。 その他の臨床所見:カフテスト陰性。診察時に短く数回で終わる咳が数回あり。CRP0.15mg/dl。Pao2 85 mmHg, AaDo2 31 mmHg。X線および透視検査で、頭部にて咽頭気道領域の不鮮鋭化、胸部にて後肺野にわずかに間質陰影あり。後部鼻鏡検査にて左後鼻孔が粘液で閉塞し、前部鼻鏡検査にて両側鼻腔内に粘稠分泌物貯留していた。喉頭鏡検査では喉頭の明瞭な発赤が認められた。鼻粘膜生検の病理検査および鼻汁培養検査中。 気管支鏡所見:頸部気管は発赤。右主気管支内に白色粘液塊あり。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX2, 回収率32%)を行った。総細胞数正常(238/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ95.0%, リンパ球2.8%, 好中球 2.2%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%であり、腫瘍細胞は認められなかった。細胞診では正常範囲内であった。ブラッシング、BALFとも微生物検査にて細菌および真菌陰性。 最終診断:慢性特発性鼻炎。 治療:長期在宅ネブライザー療法。  転帰:検査当日元気に退院。経過観察中。

 

オオタニニーチェ141226喉頭ー術後 症例440 ニーチェちゃん。ラブラドールレトリーバー 10歳 オス 26.4kg。天王台動物病院(千葉県)より診療依頼を受けました。症状:2ヶ月前から月に2-3回、運動後に重度なストライダーあり、苦しそうにうつぶして動けなくなる。その他の臨床所見:安静時問題なし、歩様問題なし、階段上り下りは問題なし、診察台上で後肢震えなく動き回れる、胸部X線検査にて肺野透過性正常、Pao2 96mmHg, CRP 0.00mg/dl。気管支鏡所見:喉頭内に塊状病変なし。浅麻酔下に吸気時に両側披裂軟骨外転なし。最終診断:後天性特発性喉頭麻痺。治療:片側披裂軟骨側方化術。転帰:術翌日より元気に歩行していた。2週間後、5分程度走り続けても、階段を上り下りしても高調ストライダー(ヒーーヒーー)は生じなくなり、完治して退院。

 

フジオカトコ141205BS-気管分岐部呼気 症例439 トコちゃん。トイプードル 14歳齢 メス 体重3.54kg。赤坂動物病院(東京都)より診療依頼を受けました。症状:慢性発咳。3年前から次第に咳が増加。朝寝起きと睡眠時に痰産生咳が多い。 その他の臨床所見:安静呼吸時に努力性呼吸あり。カフテスト陰性。胸部タッピングにて咳誘発あり。聴診にて両側肺野にfine cracklesあり。診察時に痰産生性咳あり。CRP0.10mg/dl。重度な高炭酸ガス血症(Paco2 47 mmHg)および低酸素血症(Paco2 62 mmHg)、AaDo2 31 mmHg。X線および透視検査で、頭部にて構造的咽頭閉塞なく、胸部にて後肺野に間質陰影増加し、透視にて気管支軟化を伴った気管支拡張あり。 気管支鏡所見:胸腔内気道は広範に著しい呼気時虚脱が認められた。虚脱は伸長した膜性壁が気道内に陥入して生じる「三日月型」タイプであった。RB4内に粘稠喀痰が付着し気管支ブラッシングを行った。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX2, 回収率40%)を行った。回収液に白色粘液小塊が多数認められた。総細胞数は増加(832/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ78.9%, リンパ球1.3%, 好中球 17.9%, 好酸球 1.8%, 好塩基球 0.0%であり、泡沫状マクロファージ主体の慢性活動性炎症パターンを示した。腫瘍細胞は認められなかった。ブラッシング、BALFとも細菌は陰性であった。  最終診断:気管気管支軟化症を伴った慢性気管支炎。 治療:1)在宅ネブライザー療法(生理食塩液+メプチン吸入液+ビソルボン吸入液+ボスミン外用液)、2)気管支拡張薬(ベラチン0.05mg/kg po q12h)、3)粘液溶解剤(ビソルボン錠4mg  1日2回1錠ずつ)。 転帰:検査翌日元気に退院。経過観察中。

 

タカハシピコ141130BS-TI部気管虚脱部症例438 ピコちゃん。トイプードル 10歳齢 メス 体重1.32kg。横浜山手動物医療センター(横浜市)より診療依頼を受けました。症状:慢性発咳。気管虚脱は指摘されていたが、2年前から興奮後の咳がなかなか止まらなくなり次第に苦しそうな咳になってきた。1ヶ月前から夜間にも咳がみられるようになり、内科的なコントロールが困難になってきた。 その他の臨床所見:最近の1-2年で体重が1.1kg程度から1.3kgに増えた。カフテスト陽性。聴診にて両側肺野にfine cracklesあり。診察時に痰産生性咳あり。CRP0.95mg/dl。Pao2 73 mmHg, AaDo2 37 mmHg。X線および透視検査で、頭部にて喉頭降下、披裂軟骨背側の咽頭粘膜余剰を構成要因とする構造的咽頭閉塞あり、透視にて深吸気時に喉頭口前部が狭窄し、これと同調して頸部気管の動的虚脱が生じた。しかし、完全な気管閉塞には至らなかった。胸部にて後肺野に間質陰影増加し、透視にて主気管支の動的虚脱は認められなかった。喉頭鏡検査にて披裂軟骨背側の咽頭粘膜余剰が認められ、開口した状態で小角突起の背側端をわずかに覆っていた。 気管支鏡所見:頸部気管はグレード2の扁平化、胸郭前口部気管はグレード3の扁平化あり。気管分岐部付近に白色粘液付着が認められブラッシングを実施した。RB3, RB4, LB2において気管支軟化症あり。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 3ml+5ml+5ml, 回収率43.1%)の細胞診にて、総細胞数増加なく(44/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ89.5%, リンパ球8.8%, 好中球 1.2%, 好酸球 0.5%, 好塩基球 0.0%であり、非特異的パターンを示した。腫瘍細胞は認められなかった。  最終診断:原発性気管虚脱グレード3、気管支軟化症。気管虚脱は内科治療の範囲であり手術や積極療法にただちに取りかかるべきでなく、末梢気道内の粘液停滞が予後を悪化させる問題でありその治療を優先する必要がある。  治療:1)減量(目標体重1.20kg未満)、2)在宅ネブライザー療法(生理食塩液+ゲンタマイシン+メプチン吸入液+ビソルボン吸入液+ボスミン外用液)  転帰:検査翌日元気に退院。2ヶ月後の検診にて、体重は1.24kgに減少し、興奮時に短い咳が生じるが、夜間の苦しいそうな持続性咳は完全に消失し、一般状態も改善し活動的になった。

 

マサキポッキー141128BS-喉頭虚脱症例437 ポッキーちゃん。チワワ 10歳齢 オス 体重4.32kg。ブン動物病院(埼玉県)より診療依頼を受けました。てんかん様発作あり埼玉動物医療センター神経科にて継続受診していた。症状:2014年5月より夜間に睡眠時に発作が毎日生じ、1ヶ月前から睡眠時無呼吸発作が1日20-30回生じるようになった。その他の臨床所見:幼少時より大きないびきあり。重度の肥満(BCS5/5)。CRP1.25mg/dl。Pao2 55 mmHg, Paco2 46 mmHg。X線および透視検査で、頭部にて喉頭降下、咽頭周囲軟部組織過剰、全周性軟口蓋過剰、舌根の口咽頭への後退を構成要因とする構造的咽頭閉塞あり鼻咽頭は呼吸相にかかわらず常に閉塞。胸部にて後肺野を中心にびまん性間質陰影あり。 気管支鏡所見:喉頭虚脱あり。スコープ挿入にて気道内に膜性壁侵入が著明で気管気管支軟化症の現象になった。RB2にて気管支ブラッシングを実施し細菌陰性。 最終診断:睡眠時無呼吸症、喉頭虚脱、咽頭虚脱、陰圧性肺水腫(これら総じて「咽頭気道閉塞症候群ステージⅢa+b」)。  治療:緊急気管切開術およびICU管理(温度23℃、湿度70%、酸素濃度25%)。 転帰:術後、睡眠可能となった。日毎に全身状態は改善。肺機能改善を確認後、永久気管切開術実施予定。現在入院中。

 

ウメザワボンボン141127喉頭-挿管前所見症例436 ボンボンちゃん。フレンチブルドッグ 10ヶ月齢 オス 体重13.2kg。おくつ動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。 症状:飼い始めより大きないびき、興奮時スターター。その他の臨床所見:外鼻孔狭窄あり、診察時に耳障りな低調スターターが頻繁にみられた。診察台上でストライダーは生じなかった。Pao2 78 mmHg, Paco2 39 mmHg, 頭部X線および透視検査にてスタータと同期し動的咽頭虚脱あり。鼻鏡検査にて鼻腔狭窄なし、鼻咽頭粘膜に小さなポリープ状病変あり現在病理組織検査中。 気管支鏡所見:軽度の反転喉頭小嚢、気管低形成および気道系の狭窄。 最終診断:短頭種気道症候群、特に外鼻孔狭窄。  治療:外鼻孔狭窄整復術、軟口蓋切除術および喉頭小嚢切除術  転帰:術後経過良好。スターターはほぼ消失した。

 

サトウチビ141125BS-LB2D2ブラッシング症例435 チビちゃん。トイプードル 10歳 オス 5.30kg. おざわ動物病院(相模原市)より診療依頼を受けました。 症状:2年ほど前から体重増加とともに痰産生性咳が始まり次第に悪化し、1ヶ月ほど前から毎日朝方寝起きを中心にとても苦しそうな咳が3分位続いている。咳は1日10回位。一連の咳の最後に痰を強く喀出するような仕草で終わる(terminal retch)。幼少時よりいびきあり、1年前から睡眠時に突然開口し呼吸が荒くなったり、睡眠時無呼吸もみることがある。その他の臨床所見:低調スターターあり。咽喉頭にて強い気道狭窄音、カフテスト陰性だが胸部タッピングにて咳誘発あり。頭部X線写真にて喉頭降下と咽頭周囲軟部組織過剰を示す構造的咽頭閉塞あり。胸部X線写真にて肺野にスリガラス状陰影/肝腫大による胃軸変位/腹腔内容増加により横隔膜前縁が前方に変位あり。Pao2 78 mmHg、CRP 0.35 mg/dl。 気管支鏡検査所見:喉頭虚脱、気道内全体は発赤、気管分岐部以降に気管気管支軟化症所見(80%のcarina collapse)、RB3の完全虚脱、その他左右後葉気管支領域に多発性気管支軟化症あり。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率43.3%)の細胞診にて、総細胞数は増加(359/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ96.5%, リンパ球0.0%, 好中球 3.5%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%であり、特異的炎症は認められない慢性炎症パターンを示した。背景に細かい線維状物が多く認められた。腫瘍細胞は認められなかった。気管支肺胞洗浄液およびLB2D2内の粘液ブラッシング標本とも微生物検査にてEnterococcus faeciumが1+検出され、FOMに感受性を示した。最終診断:慢性気管支炎および咽頭気道閉塞症候群ステージ2。 治療:減量-20%(5.30→4.24kg)、FOMを2週間投与。 転帰:検査翌日退院。かかりつけ医にて経過観察中。

 

Veterinary Bronchoscopy#434, Two months after Case#422, Removement of granulation tissues in the tracheal stent, ID6262, ムクノキシロ141123BS-症例434 シロちゃん。雑種猫 11歳 メス 5.10kg。症例422の2ヶ月後。気管内ステント留置後7ヶ月目、4ヶ月前よりステント内肉芽組織の治療継続中。症状:咳は1日数回あるが元気食欲あり。その他の臨床所見:受診時一般状態良好。貧血(PCV25%)、血小板減少(8.4万/mm3)。胸部X線検査にてステント留置状態良好。 気管支鏡所見:肉芽組織はほぼ消失。気管ステント内ブラッシング実施し、微生物検査にてα-StreptococcusおよびStaphylococcus intermediusがともに1+検出され、ともに感受性を示したのはCPとFOMであり、これまでネブライザー療法に使用してきたGMに耐性を示した。最終診断:ステント内反応性肉芽組織ほぼ消失。治療:APCにて少量の残存肉芽を焼灼し、ステント前部の気管最狭窄部のステント内面より隆起した粘膜肥厚部にも実施。ネブライザー療法の抗生剤をGMからCPに変更。 転帰:即日退院可。自宅で引き続きネブライザー療法を継続。

 

Veterinary Bronchoscopy#433, Primary Tracheal Collapse, Five months after tracheal stent placement in#390, Chihuahua 11y M, コシフラン症例433 フランちゃん。チワワ 11歳 オス 2.66kg. 症例399の4ヶ月後。2014.6.21 に重度原発性気管虚脱のため気管内ステント留置。5ヶ月目の経過観察。慢性心不全合併。症状:1ヶ月ほど前、同居メスの発情でかなり興奮し、そのあとから一度落ち着いた咳がまた少し多くなっている。咳はterminal retchを伴う。その他の臨床所見:診察時数回続く軽い乾いた咳あり。胸部X線検査にてステント留置状態良好。VHS 12.0。 気管支鏡検査所見:ステント端部および内部に肉芽組織なし。少量の粘液停滞あり、ブラッシング標本にて微生物検査にてNeisseria spが1+検出され、これまでネブライザー療法で使用してきたGMに耐性を示し、FOMに感受性を示した。左主気管支が4ヶ月前より狭窄していた。 最終診断:心拡大による左主気管支の圧迫  治療:同居メス犬の発情が一過性に心臓拡大を起こしたかもしれないのでかかりつけ医にて循環器評価を受けるよう指示。在宅ネブライザー療法は抗生剤をGMからFOMに変更。 転帰:経過観察中。

 

ヨシダティンク141121PRS01症例432 ティンクちゃん。ウエスティ11歳 メス 7.32kg. みきペットクリニック(横浜市)より診療依頼を受けました。 症状:1ヶ月ほど前より短頭種のようにブヒブヒ言うようになり、2週間前から逆くしゃみが1日2回あり、ときおり苦しそうにしている。その他の臨床所見:頭部X線写真にて鼻咽頭腔やや狭窄あり。胸部X線写真にて気管扁平化を疑う所見およびびまん性間質影あり。Pao2 77 mmHg、CRP 0.0 mg/dl。鼻鏡検査にて鼻咽頭に異物や隆起病変ないが発赤と易出血性、鼻腔内では腹鼻甲介尾側部粘膜に発赤と易出血性あり、粘膜生検にて軽度炎症のみ、ブラッシングも実施したが細菌陰性。細胞診では上皮細胞塊のみで特異的炎症細胞は認められず。 気管支鏡検査所見:気管虚脱なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率50.0%)の細胞診にて、総細胞数は増加(529/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ98.2%, リンパ球0.5%, 好中球 1.2%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%であり、慢性炎症パターンを示した。腫瘍細胞は認められなかった。微生物検査にて細菌陰性。 最終診断:急性鼻炎/鼻咽頭炎。 治療:ネブライザー療法 転帰:検査翌日退院。在宅ネブライザー療法にて経過観察中。治療開始約2週間後、苦しそうな呼吸はなくなってきたとのことであった。

 

VB431−タナカラブ141108BS症例431 ラブちゃん。Mダックスフンド 9歳 メス 5.34kg。モリヤ動物病院(町田市)より診療依頼を受けました。 症状:8ヶ月続く難治性慢性鼻汁/くしゃみ。数日に1回、粘稠な鼻汁が出る。4ヶ月前から単発性咳も続いている。1ヶ月前に乳腺癌の摘出(片側全摘出術)を受け、その後の胸部X線検査にて左後肺野腹側に直径7mmの境界明瞭な結節影を指摘された。 その他の臨床所見:胸部X線写真にてびまん性間質陰影、Pao2 77 mmHg、CRP 0.55 mg/dl、後部鼻鏡検査にて右後鼻孔部に灰色粘稠粘液が停滞し、鼻咽頭背壁に高さ約5mmのポリープ状病変が認められたが非腫瘍性と病理組織診断された。前部鼻鏡検査にて左腹鼻甲介の過剰な発達で鼻道狭窄、両側腹鼻甲介表面に粘稠粘液が多量に停滞(微生物検査にて細菌陰性)、腹鼻甲介尾側部粘膜は発赤腫脹し粘膜面凹凸不整あり粘膜生検とブラッシングを行った。細胞診では上皮細胞塊のみでリンパ球など特異的炎症細胞認められなかったが、病理組織検査では局所的に軽度のリンパ球や形質細胞が少量認められた。 気管支鏡検査所見:喉頭痙攣、気管の中等度発赤、気管内粘液停滞あり。結節影に関するLB2V3を介して経気管支肺生検実施したが病理組織検査にて非腫瘍性と診断された。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率74.3%)の細胞診にて、総細胞数は増加(299/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ66.5%, リンパ球4.0%, 好中球 29.0%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.5%であり、マクロファージは大きく泡沫状のもので占められ、慢性活動性炎症パターンを示した。腫瘍細胞は認められなかった。微生物検査にて細菌陰性。最終診断:慢性特発性鼻炎。 治療:在宅ネブライザー療法(生理食塩液20ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5mlを1日2回)。 転帰:検査後入院。翌日鼻出血は完全に消失したことを確認し退院。現在、経過観察中。

 

VB430−ヨシイアズキ150118喉頭観察-PO2m症例430 アズキちゃん。ポメラニアン 5歳齢 メス 体重2.0kg。田口動物病院(埼玉県)より診療依頼を受けました。症状:9月10日よりペットホテルより帰宅後、興奮後ストライダーが止まらない。咳もある。 その他の臨床所見:問診にて幼少時より興奮しやすい性格であったとのことであった。白血球数増加(20500/mm3)、CRP0.0mg/dl、透視検査にてストライダーの喘鳴音に同期して喉頭蓋が後方に倒れ喉頭を閉塞し、そのとき動的頸部気管虚脱が生じていた。安静呼吸時の頭部Xpにて喉頭の降下および舌根の口咽頭への後退が認められ構造的咽頭気道閉塞が認められた。  気管支鏡検査所見:喉頭麻痺や喉頭虚脱やポリープ状病変などの閉塞性喉頭疾患なし。頸部気管虚脱なし。軽度の左主気管支狭窄あり。その他異常なし。  最終診断:喉頭蓋の後傾(Epiglottic retroversion)。 治療:喉頭蓋を舌根に外科的に固定。一時的気管切開実施。 転帰:術後ただちにストライダーは消失。固定した喉頭蓋が舌根に固着安定するまで入院にて完全安静管理とした。しかし術後5日目に固定糸が断裂し再発した。その3日後に新術式の喉頭蓋部分切除術を試行した。術後15時間でペースト状フード摂食と飲水で誤嚥なく、ストライダーもみられなかった。再手術後2日目、やはり誤嚥なく、元気に走り回ってもストライダーは生じなかった。その後入院にて症状観察を継続したが日を追う毎に活動的になり、俊敏に動き、よく吠えるようになってきたので、再手術の13日後に完治と判断し退院した。

 

症例429 ヒヨリちゃん。マルチーズ 10歳齢 メス 体重3.54kg。セラピスト動物病院(町田市)より診療依頼を受けました。 症状:急性発咳(10日前より、一度に2分以上続く音量の大きな持続性咳と痰産生咳が1日に10-20回以上あり、夜間睡眠できない)。その他の臨床所見:食欲あり、1年前より僧帽弁閉鎖不全症の治療中、とくに左心房拡大あり、中程度低酸素血症(Pao2 69mmHg)、CRP 0.0mg/dl。 気管支鏡検査所見:肉眼的に気管分岐部周辺の発赤と粘膜面の凹凸不整、気道異物なし、RB2,RB3,RB4の気管支虚脱、左主気管支の狭窄あり。気管ブラッシング標本細胞診にて好中球主体の急性炎症所見。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 5mlX3, 回収率44.0%)の細胞診にて、総細胞数は増加(270/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ51.2%, リンパ球1.0%, 好中球 47.2%, 好酸球 0.2%, 好塩基球 0.0%, 腫瘍細胞みられず、慢性活動性炎症パターンを示した。ブラッシング標本および気管支肺胞洗浄液にともに細菌は検出されなかった。 最終診断:急性気管気管支炎(回復期)、心臓拡大による多発性気管支軟化症と左主気管支の圧迫。急性発咳は前者によるが後者は誘因と遷延化に関わっていると思われた。治療:抗生剤中止。循環器の精査を指示。転帰:検査後、回復良好のため当日退院。経過観察中。

 

症例428 ナッシュちゃん。雑種犬  12歳齢 メス 体重17.40kg。セラピスト動物病院(町田市)より診療依頼を受けました。 症状:6ヶ月前より嗄声、2ヶ月前より運動時や興奮時にストライダーが悪化し苦しそうな呼吸をする。プレドニゾロン1mg/kg 1日1回投与にて呼吸症状は緩和する。 その他の臨床所見:頭部X線検査にて喉頭部に軟部組織濃度のマス陰影あり、Pao2 67 mmHg、CRP 0.05 mg/dl、喉頭周囲皮下組織に帯状に弾力ある隆起あり、気管切開を試みたが気管周囲結合組織や皮筋に血管が豊富に分布し止血難のため断念し、周囲皮筋および脂肪下の喉頭周囲の赤色腫大組織を生検し、1週間後に甲状腺癌と病理診断された。 気管支鏡所見:著明な喉頭浮腫、吸気時声門裂外転なし、楔状結節が常時接着、反転喉頭小嚢、上部気管の著明な充血あり。喉頭小角突起腫脹部の一部を生検し、浮腫を伴った軽度の炎症と病理診断された。 最終診断:喉頭周囲を取り囲むように甲状腺癌が生じ、二次的に喉頭麻痺+喉頭炎+喉頭虚脱+気管炎が認められた。 治療:検査時に喉頭小嚢切除術。 転帰:検査および術後状態良好。ストライダーは軽減した。現在、麻布大学放射線科にて放射線治療を実施中。呼吸状態は安定しているとのことだった。

 

症例427 モコちゃん。マルチーズ 11歳齢 メス 体重3.80kg。中田動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。初診は症例376、3ヶ月後は症例389、今回はさらに3ヶ月後の気管支鏡検査。2014.3.23に6ヶ月続く難治性慢性発咳を主訴に来院。初診時に好酸球性気管支肺症+気道細菌感染と診断し、プレドニゾロン0.25-1.0mg/kg PO q24h、感受性あるERFX 5mg/kg PO q24hやDOXY 7mg/kg PO q12h、ルンワン粒1日2回1/2錠ずつ内服を継続していた。 症状:咳はかなり緩和したが、消失しきらない。 その他の臨床所見:一般状態良好。胸部X線検査所見にて3ヶ月前より間質影がやや増加し、RB2基部に一致する部位に結節状陰影あり。待合室中で興奮し咳あり、Pao2 72 mmHg、CRP 0.05 mg/dl。 気管支鏡所見:気管分岐部や主気管支粘膜面に粗造感あり、右主気管支とLB1入口部に直径1-3mmのポリープ病変が再び生じていた。LB2とLB1V1内に黄色粘稠分泌物蓄積あり、ブラッシングと吸引を行った。ブラッシング細胞診では好酸球はみられなかった。 RB1, RB2, LB1は管外性圧迫によって閉塞。外径2.5mmの極細気管支鏡にてRB2内を探索したが結節陰影に相当するものはみられず、内部は浮腫著明。ポリープ病変の生検材料は、好酸球、好中球、形質細胞などの炎症細胞浸潤を伴う肉芽組織と病理診断された。微生物検査ではLB1とLB2のブラッシングには細菌は検出されなかった。最後にLB1V1にてBAL施行し、細胞診にて今までと同様に、好中球優勢の慢性活動性炎症パターンが認められた(好中球75.2%, マクロファージ24.2%, 好酸球0.1%)。BALF中にBordetella bronchiseptica+1が検出された。今回検出された細菌は3ヶ月間投与していたDOXYに耐性を示し、ERFXに感受性を示した。 最終診断:慢性好酸球性気管支肺症により気管支炎症は消失しておらず、6ヶ月間経過した現在も気道内にBordetella bronchisepticaが滞留していた。 治療:プレドニゾロン0.25 mg/kg PO q24h、ERFX 5mg/kg PO q12h、ルンワン粒1日2回1/2錠ずつ内服を開始し、1ヶ月ごとに定期検診。 転帰:検査後咳はみられず当日退院可能。経過観察中。

 

症例426 ソイちゃん。フレンチブルドッグ 7ヶ月齢 オス 体重8.55kg。ナチュラ動物病院(座間市)より診療依頼を受けました。 症状:大きないびき、1ヶ月前に睡眠時に呼吸が止まりそうなり苦しそうになったことがあった。その他の臨床所見:診察時に低調スターターが頻繁にみられた。診察台上でストライダーは生じなかった。Pao2  81 mmHg, Paco2  39 mmHg,  頭部X線および透視検査にて軟口蓋過剰および過長あり。鼻鏡検査にて後鼻孔構造に問題なし。 気管支鏡所見:反転喉頭小嚢なし、喉頭虚脱なし、気管気管支樹以降に問題なし。 最終診断:短頭種気道症候群代償期  治療:軟口蓋切除術  転帰:術後翌日に気管切開チューブ抜去、2日目に退院し経過良好。

 

症例425 ラウルちゃん。Mダックスフンド 11歳 オス 4.78kg。夕やけの丘動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。症状:慢性発咳および急性肺炎。短く、強い喉頭由来の単発性咳が主体で2年前より増加し、咳が止まりにくくなってきた。急性肺炎は来院10日前に突然、発熱、頻呼吸および元気食欲消失の症状から始まった。その他の臨床所見:飼い主は非喫煙者、喉頭由来と思われる異常呼吸音が興奮時にときどきあり、胸部X線写真にて左前肺野に境界不明瞭な浸潤影、Pao2 80 mmHg、CRP 0.95 mg/dl、喉頭鏡検査にて喉頭の発赤腫脹および表在血管の明瞭化。 気管支鏡検査所見:喉頭痙攣、気管のほぼ全長にわたり発赤、気道異物や粘液貯留なし、LB1ブラッシング実施、微生物検査実施中。浸潤影に関連する肺野での気管支肺胞洗浄液解析(LB1V1, 10mlX3, 回収率33.3%)の細胞診にて、総細胞数は増加(488/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ60.2%, リンパ球2.1%, 好中球 37.7%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%であり、マクロファージは大きく泡沫状のもので占められ、慢性活動性炎症パターンを示した。これは誤嚥性肺炎でよくみられるBAL細胞診パターンである。微生物検査中。最終診断:慢性喉頭炎および気管炎。急性肺炎は慢性喉頭炎に関連する不顕性誤嚥によって生じたと考えられた。 治療:自宅での環境要因の再検討し原因と考えられる刺激性吸引物の除去。去痰剤の継続投与。喉頭炎の原因が不明で進行性なら在宅ネブライザー療法を提案。 転帰:経過観察中。

 

症例424 シナちゃん。雑種猫 14歳 メス 3.06kg。山口獣医科病院(大和市)より緊急転送。症状:4日前より急に元気食欲消失、飲水も不可、嗄声、1日20回以上レッチング(のどに何かひっかかり吐くような仕草、空嘔吐)、時折開口呼吸しながら横臥状態となり、内科療法を続けても症状が進行した。受診時発熱(39.5℃)あり。その他の臨床所見:室内外出入りあり、予防注射接種歴なし。胸部X線検査にて肺過膨張あるが血液ガス正常(Paco2 28mmHg, Pao2 94mmHg, AaDo2 23mmHg)なので肺気腫ではないと考えられた。もう一頭の同居猫が3週間前に急性感染症(発熱、嘔吐、食欲低下)に罹患し1-2週間ほど入院治療を行っていた。1ヶ月前より2-3回続く軽い咳あり。気管支鏡所見:喉頭口全周の発赤と浮腫。披裂軟骨の外転運動は良好。喉頭ブラッシングにて細菌陰性、喉頭粘膜生検にて非腫瘍性だが、壊死を伴う炎症性病変と病理診断された。最終診断:急性喉頭炎。治療:入院治療。胃ろうチューブ設置にて非経口的に栄養投与、ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml/回 1日2回)継続。転帰:現在入院治療中。非経口栄養投与およびネブライザー療法の治療開始4日目で自力摂食可能となり、声や全身状態も改善してきた。

 

症例423 メルちゃん。ペルシャ 6ヶ月齢 メス 2.44kg。飼い主希望で受診。症状:自宅で生活し始めて1ヶ月位から浅速呼吸、興奮時開口呼吸あり、抗生剤やステロイド投与でも症状改善せず4ヶ月が経過し、次第に進行している。安静時は元気食欲あり問題なし。その他の臨床所見:Pao2 86mmHg。胸部X線検査にて肺野にびまん性スリガラス状陰影、頭部X線検査にて軟口蓋過長による咽頭閉塞あり。GPT 369U/L, ALP 654U/L。気管支鏡所見:喉頭鏡にて軟口蓋過長あり、気管支鏡では喉頭から気管気管支樹にかけ肉眼的に異常なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 5mlX3, 回収率66.7%)の細胞診にて、総細胞数は増加(695/mm3, 正常140-342/mm3)、細胞分画ではマクロファージ87.5%, リンパ球0.8%, 好中球 4.0%, 好酸球 7.8%, 好塩基球 0.0%であり慢性炎症パターンを示した。細菌は検出されなかった。最終診断:原因を特定できない慢性の間質性肺炎および軟口蓋過長症。環境由来の刺激性吸引物質やトキソプラズマ症の関連が示唆された。軟口蓋過長も開口呼吸に関わっているかもしれない。治療:室内の刺激性吸引物質と考えられるものの使用中止、食事内容の変更、ストレスを避け十分な栄養と休養、肺血栓塞栓症予防(ルンワン粒 1日2回1/4錠づつ)。転帰:経過観察中。

 

Veterinary Bronchoscopy#422, One month after BS in #406, DSH Cat 11y F, ID6262, ムクノキシロ140928BS症例422 シロちゃん。雑種猫 11歳 メス 4.92kg。症例407の1.5ヶ月後。症状:咳は1日数回軽くあるのみで2-3回続いてすぐに終わる。元気食欲あり。その他の臨床所見:受診時一般状態良好。 気管支鏡所見:肉芽の数および大きさの減少。気管ステント内ブラッシング標本にて細菌陰性。最終診断:ステント内反応性肉芽組織あり。治療:APCおよびホットバイオプシーにて肉芽の減量と切除。転帰:即日退院可。自宅で引き続きネブライザー療法を継続(症例434につづく)。

 

 

症例421 シナモンちゃん。チンチラシルバー 10歳 オス 3.96kg。兵藤動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。 症状:1週間前より突然声が出なくなり、ドライフードを食べなくなり、時折開口呼吸し、昨夜は開口呼吸しながら横臥状態となり苦しそうだった。その他の臨床所見:1日中レッチングを繰り返している。気管支鏡所見:喉頭口全周の発赤と著しい浮腫。披裂軟骨の外転運動は良好。喉頭ブラッシングにてHaemophilus parainfluenzae +1検出し、ABPC, GM, CP, FOMに感受性あり, ERFXに耐性あり。喉頭粘膜生検にて腫瘍病変なく好中球の著明な浸潤のみ。最終診断:急性喉頭炎。治療:入院とし、ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml/回 1日2回)、流動食のみ投与を3日間続け、食欲に問題ないことを確認し退院とし、在宅ネブライザー療法(同内容)実施。転帰:退院時、一般状態良好。自宅でネブライザー療法を2週間継続し、レッチングは消失し、経口摂食は可能となり、活動的となった。その後、嗄声が軽度再発したがさらに1週間ネブライザーを継続し完治した。

 

症例420 フーイちゃん。ヨーキー 9歳 メス 3.3kg。2年前に重度喘鳴を示し横浜夜間動物病院に受診し重度気管虚脱と診断され緊急に可及的経鼻気管かテーテルを設置し、翌日おだ動物病院(横浜市)より緊急転送。症状:嗄声様にパンティングあるが一般状態良好。その他の臨床所見:Pao2 86mmHg, CRP 0.10mg/dl。気管支鏡所見:喉頭虚脱あるいは喉頭軟化症、ステント前端に小さな肉芽形成あり背側膜性壁と接触、気管ステント内の粘液停滞はわずかのみ。最終診断:喉頭虚脱およびステント前端肉芽形成。治療:肉芽に対しアルゴンプラズマ凝固を実施。喉頭虚脱には覚醒過程においてスコープを喉頭内に残し披裂軟骨外転を確認後、スコープを抜去。自宅にて生理食塩液+ボスミン0.5ml+ビソルボン0.5mlを組成とするネブライザー療法を1日3回実施。転帰:自宅で状態良好に維持。

 

症例419 チャッピーちゃん。ラブラドールレトリーバー 12歳 メス 23.0kg。アニマルウェルネスセンター(東京都西東京市)より診療依頼を受けました。 症状:興奮時ストライダーおよびチアノーゼ発症一度あり。その他の臨床所見:安静時問題なし、胸部X線検査にて肺野透過性正常、Pao2 86mmHg, CRP 0.90mg/dl。気管支鏡所見:吸気時に両側披裂軟骨外転なく、ときに吸気時に声門裂が接着した。最終診断:後天性特発性喉頭麻痺。治療:片側披裂軟骨側方化術および一時的気管切開術。転帰:術後経過良好。術後2日目に気管切開チューブ抜去。入院中、散歩で30分間程度早歩きしたり、軽く走ったり、階段の上がり下りでも、高調ストライダー(ヒーーヒーー)みられず。経過良好のため、2週間後退院。

 

症例418  ビョウちゃん。雑種猫 11歳 メス。症例401の8週間後。喘鳴と開口呼吸が再発し、埼玉動物医療センター(埼玉県)に緊急入院し、酸素療法にて呼吸安定。4日後、呼吸器科転送。症状:連続性気道狭窄音、努力性呼吸あり。その他の臨床所見:摂食しない、胸部X線検査にて胸郭前口部の気管周囲に直径3cm程度の塊病変が明瞭にみえ、左右肺尖部に浸潤影あり。気管支鏡検査所見:気管ステント内中央部に気道の約95%を閉塞する長さ12mmの白色隆起病変あり。気管壁からステントのメッシュ状の壁を越えて内部に侵入していた。その前後の気管ステント内に問題なし。最終診断:気管ステント内の限局性隆起病変による気管閉塞(病理検査にて炎症性ポリープと診断)。治療:バルーン拡張術、APC、ホットバイオプシー鉗子、サクションカテーテルを組み合わせてステント内隆起病変を切除した。引き続き、気管周囲の塊病変に対しFNA実施(病理検査にて非腫瘍性)。転帰:術直後より著明に喘鳴改善。翌日には食欲旺盛。3日後退院。病理検査にて非腫瘍性、炎症性ポリープと診断され、気管外病変は陳旧性膿瘍であり、気管内部に向け強い浸潤性炎症を伴っていると考えているが、具体的な疾患名診断には至らず、ステロイド抗炎症量および抗生剤投与継続にて様子観察。しかし、3週間後、今回の気管内ポリープ病変の組織標本を他の病理検査機関に再検査を依頼したところ、「リンパ腫」と診断された。臨床経過からリンパ腫の診断が妥当と思われた。現在、埼玉動物医療センター様にて化学療法第4週目にあり、治療開始時よりリンパ腫は60%縮小し、元気、食欲、呼吸状態に問題なく、良好に経過。

 

症例417 エルフちゃん。フレンチブルドッグ 2歳 メス 5.85kg。かとうどうぶつ病院(埼玉県)より診療依頼を受けました。症状:1ヶ月前よりチアノーゼを4回起こしている。閉口時高調ストライダーあり、息ができなくなる。現在、自宅で数歩動くと立ち止まる。その他の臨床所見:幼少時より非常に大きないびきあり、外鼻孔狭窄なし、軽度の低酸素血症(Pao2 73mmHg)および高炭酸ガス血症(Paco2 42 mmHg)、頭部X線検査にて軟口蓋過長と舌根後退による構造的咽頭閉塞、小角結節部の腫脹、透視にて吸気毎に高調気道狭窄音を伴い喉頭が大きく後退あり。気管支鏡検査所見:左右小角結節の接着および反転喉頭小嚢、声門裂の外転運動あり、小角突起および楔状突起の腫脹あり。最終診断:喉頭虚脱ステージ2(leonardの分類に従う)。治療:一時的気管切開、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術、術後気管切開チューブ設置。転帰:術後2日目で気管切開チューブ抜去可能。ネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml/回 1日2回)を5日間続け、3時間自由に活動し続けてもストライダーが生じないことを確認して退院。在宅ネブライザー療法継続し、術後1ヶ月後再診時にて、とても元気になり家中を同居犬と駆け回っているとのこと。院内でも全速力で駆け回り続けてもストライダーは生じなかった。頭部X線および透視検査にて咽頭気道が開存し、動脈血ガス分析にて換気状態が改善していることを確認した(Paco2 42 mmHg → 38 mmHg)。

 

症例416 モアちゃん。雑種犬(ヨーキーXチワワ)9歳齢 メス 5.30kg。小林動物病院(平塚市)より診療依頼を受けました。 症状:急性発咳(10日前より、一度に2分以上続く音量の大きな持続性咳と痰産生咳が1日に20回以上あり、夜間睡眠できない)と元気食欲低下。その他の臨床所見:性格上内服困難、軽度の低酸素血症(Pao2 78mmHg)、CRP 0.55mg/dl、透視にて咳時に気管屈曲あり、頭部X線にて軟口蓋過長と咽頭周囲軟部組織過剰による構造的咽頭閉塞あり。気管支鏡検査所見:肉眼的に喉頭の発赤、気管中央部の発赤と粘膜面の凹凸不整、気管支粘膜全体的に浮腫あり、気道異物なし、気道内分泌物やや増加。気管ブラッシング標本にBordetella brochiseptica +1検出し、ABPC, AMPC, CFPM, OPM, OFLX, ERFX, DOXY, AMK, GM, CPに感受性、CEZ, CEX, FOMに耐性を示した。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率52.7%)の細胞診にて、総細胞数は増加(515/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ38.5%, リンパ球0.2%, 好中球 61.3%, 好酸球 0.0%, 好塩基球 0.0%, 腫瘍細胞みられず、マクロファージはすべて泡沫状であり、慢性活動性炎症パターンを示し、微生物検査では気管ブラッシング標本と同様にBordetella brochiseptica +1検出し、同様の感受性と耐性を示した。最終診断:Bordetella brochiseptica感染による急性気管気管支炎。治療:入院にて酸素療法とネブライザー療法(生食20ml+ゲンタマイシン0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml/回 1日2回)を5日間、のち一般室にて同内容ネブライザー療法1日間。退院後、かかりつけ医にてネブライザー療法(同)とバイトリル(ERFX) 5mg/kg  SCを1日1回通院治療にて治療継続。転帰:入院中に食欲元気回復、退院後1週間で咳は夜間のみで次第に減少し順調に回復傾向。

 

VB415-ツカダケイト140904BS-右主気管支内異物-1症例415 ケイトちゃん。ジャーマンシェパード 6ヶ月齢 メス 25.30kg。  どうぶつの総合病院救急救命科(埼玉県)より緊急転送。症状:受診前日の朝、庭のナツメの実(直径28mm)を誤食後、チアノーゼとなり意識消失。その後意識は回復したが、レッチング症状が続いた。夜間救急病院受診にて気道異物と診断された。  その他の臨床所見:来院時の一般状態は維持。  気管支鏡検査所見:右主気管支の入口部にナツメの実と思われる異物が嵌入し、左主気管支を圧迫していた。  最終診断:気道異物。  治療:気管支鏡下に異物を回収し(キュレットを用い右主気管支から気管にかき出し、気管内でバスケット鉗子で把持し摘出)、抗生剤(パセトシン場錠250mg 1日2回1錠)と気管支拡張剤(テオドール錠200mg 1日2回1錠)を1週間分処方。  転帰:処置当日に退院。1週間後電話連絡にて翌日から咳なく一般状態は良好に経過していたとのことだった。

 

症例414 ナナちゃん。ジャックラッセル 8歳 メス。8ヶ月前に重度ストライダーを示し、ふく動物病院(東京都国立市)より緊急転送。CTや内視鏡検査により良性喉頭腫瘍が疑われていた。当院にて緊急気管切開を実施し、喉頭鏡にて喉頭前部と喉頭内を閉塞するマス病変を確認し生検。引き続き喉頭切開を行い外科的減容積術と切除面表層にアルゴンプラズマ凝固(APC)を行った。術後、呼吸症状は著明に改善した。病理組織検査にて横紋筋種(良性)と診断された。8日後、喉頭前部の残存部にさらに減容積術とAPCを追加した。今回、検診にて受診。症状:わずかにストライダーを示す程度。その他の臨床所見:特になし。気管支鏡検査所見:両側喉頭小角結節に小隆起病変あり、声門裂中央で接着していた。左側は赤色柔軟、右側は白色硬結を示しそれぞれ生検を行った。右側梨状陥凹部に表面平滑な結節病変が声門裂外側を占め喉頭横紋筋種の残存部と考えられた。喉頭内面に腫瘍残存部はなく平滑、気管切開部内面にも肉芽形成なく良好な状態であった。腫瘍は良性であったことから腫瘍残存部可視部にAPC処置を追加しさらに減容積を行った。最終診断:左側の隆起病変は炎症性肉芽組織、右側は粘膜下に軟骨化生巣を含む組織であり、ともに腫瘍性病変ではなかった。治療:無処置で経過観察 転帰:処置後特に問題なく状態良好。

 

症例413 ミールちゃん。Mダックスフンド 13歳 メス。もも動物クリニック(横浜市)より診療依頼を受けました。症状:急性呼吸困難(浅速呼吸)。その他の臨床所見:発症時および翌日に嘔吐あり、胸部X線写真にてびまん性間質陰影、Pao2 71 mmHg、CRP 1.10 mg/dl、咳なし。気管支鏡検査所見:観察範囲に著変なし、RB4V1ブラッシングにて細菌陰性、間質陰影に関連するRB3D1のBALF細胞診にて特異的炎症像なく慢性活動性炎症のみ。最終診断:軽度の急性間質性肺炎-原因不明だが何らかの血中の中毒性物質または免疫介在性要因関連が疑われる。治療:酸素療法のみにて経過観察。転帰:発症から5日目に症状安定し室内気でも呼吸困難なく退院。しかし退院後すぐに浅速呼吸再発。翌日、再入院。胸部X線検査にてびまん性間質影、重度低酸素血症(Pao2  55mmHg)、CRP 1.25mg/dlを示しICU管理となった。プレドニゾロン1mg/kg SCおよびヘパリン 100U/kg SC 1日1回にて間質性肺炎の管理を試み、翌日より症状消失。次第に回復し、6日後に胸部X線検査にてびまん性間質影消失、Pao2 66mmHgを示し退院。プレドニゾロン錠5mg 1日1回1錠ずつ、ルンワン粒1日2回1錠ずつ内服を処方。退院後1週間経過しても呼吸困難発症せず安定。最終退院から17日後、もも動物クリニックにて、呼吸困難は全くみられず、食欲元気あり、肺野間質影は完全消失、CRP0.0mg/dlと経過良好とのこと。プレドニゾロンを1日おきにして経過観察中。

 

症例412 チロルちゃん。雑種猫 7歳 メス。あんどう動物病院(東京都)より診療依頼を受けました。症状:慢性発咳、急性スターター。その他の臨床所見:胸部X線写真にて左肺野に直径2.5cmの境界明瞭な結節影あり、Pao2 95 mmHg、鼻鏡検査にて後鼻孔を閉塞する柔軟なマス病変あり病理組織検査にてB細胞型悪性リンパ腫と診断、ブラッシング細胞診にて大リンパ球優勢。気管支鏡検査所見:気管中央に隆起病変、LB1V1が管外性圧迫により閉塞し気管支ブラッシング細胞診にて大リンパ球優勢、RB2のBALF細胞診にて慢性炎症像のみ。最終診断:B細胞型悪性リンパ腫(鼻腔および肺結節病変)。治療:初診より16日目より、あんどう動物病院にて化学療法開始。転帰:治療開始6日目で肺結節陰影は縮小し、スターター症状もなく経過良好。

 

症例411 チョコちゃん。ラブラドールレトリーバー 11歳 オス。湘南動物愛護病院(茅ヶ崎市)より診療依頼を受けました。 症状:慢性発咳(4ヶ月間)。その他の臨床所見:胸部X線写真にて多発性粒状陰影および右中肺野に結節影あり、Pao2 66 mmHg。気管支鏡検査所見:RB4およびLB2粘膜面に広範に凹凸不整隆起病変あり-生検にて特異的炎症なく非腫瘍性変化、結節影部位と一致するRB2深部に白色ポリープ状病変あり-生検にて腺癌と診断。最終診断:慢性気管支炎および肺腺癌。治療:肺機能低下を示す重度慢性気管支炎合併のため肺葉切除術非適応なので肺腺癌についてはAPCなどの局所療法か腫瘍科相談。慢性気管支炎に対しては去痰剤および気管支拡張剤、適度な運動推奨。転帰:現在かかりつけ医にてフォロー中。

 

症例410 レンちゃん。Mダックスフンド 8歳 オス。夕やけの丘動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。 症状:肺炎症状を繰り返す、1日5-6回の痰産生咳あり。その他の臨床所見:最近数年間咳と呼吸困難にて年10回以上入退院を繰り返している、4年前に特発性巨大食道症の疑いありと診断されている、胸部X線写真にて軽度の気管支パターン、Pao2 72 mmHg。気管支鏡検査所見:右主気管支内に黄色粘稠分泌物停滞しブラッシングおよびBALFにて大腸菌+1検出されMINO, CP, FOM, AMKに感受性あり。BALF細胞診では最終診断:反復された誤嚥性肺炎。食道機能低下または検出できない嚥下障害がある可能性あり。予後:このままではあと1-2年で重度の不可逆性の気管支拡張症に陥り痰産生咳は常在化し、生活の質は極めて悪化する可能性が高い。感受性ある抗生剤の選択は必須だが誤嚥を繰り返せば結局は急性呼吸困難症状は再発し重度の気管支拡張症に至ってしまう。誤嚥から肺を防護するために永久気管切開術か喉頭気管分離術が必要となるかもしれない。転帰:現在飼い主様は治療法検討中。

 

症例409 リコちゃん。マルチーズ 8歳 メス。末吉動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。 症状:咳。その他の臨床所見:右中肺野に一過性無気肺形成、胸部X線検査にて左心房拡大。気管支鏡検査所見:RB2入口部閉塞、左主気管支狭窄、RB4の気管支軟化所見。最終診断:左心房拡大による左主気管支圧迫性狭窄および気管支軟化症。治療:温存療法にて経過観察し循環器医に循環器評価依頼。 転帰:退院後、循環器科評価にて中程度MRと診断。現在自宅看護にてフォロー中。

 

症例408 ジュリーちゃん。ゴールデンレトリーバー 12歳 オス。症状:ストライダーおよびチアノーゼ歴あり。気管支鏡検査所見:浅麻酔下に両側披裂軟骨小角結節の外転みられず。最終診断:後天性特発性喉頭麻痺。治療:温存療法(麻酔後起立困難あり全身性神経筋疾患は進行していると判断された)。 転帰:検査後1週間、運動失調あり。

 

Veterinary Bronchoscopy#407, Four weeks after BS in#394, Resection of reactive granulatiton tissue in Stent-DSH Cat, 11y, F-ID6262ムクノキシロ140810BS症例407 シロちゃん。雑種猫 11歳  メス。症例395の4週間後。在宅ネブライザー療法を1日1−2回継続した。症状:咳は減少。外に出て遊んでくるほど元気になっている。 気管支鏡検査所見:膿性粘液は著明に減少しステントのメッシュがよくみえるようになった。気管ステント内の反応性肉芽組織減少し、ステントの後方に4つの肉芽のみ残るのみとなった。 最終診断:ステント内粘液停滞減少、ステント内肉芽減少。 治療:気管支鏡下アルゴンプラブマ凝固(APC)およびマイトマイシンC塗布にてさらに肉芽消失を図った。 転帰:即日退院可能。在宅ネブライザー療法を継続した(症例422に続く)。

 

 

症例406 パティちゃん。フラットコーテッドレトリーバー 8歳 メス。金城動物病院(相模原市)より診療依頼を受けました。 症状:持続性パンティングと発熱。その他の臨床所見:幼少時に右大動脈弓遺残症整復術歴あり食道狭窄と気管狭窄あり、耳道内組織球性肉腫切除歴あり、胸部X線検査にて右後肺野に巨大マス陰影あり、経胸壁エコー検査にて混合エコー、エコーガイド下生検にて無菌性の粘稠な粘液膿性分泌液。気管支鏡所見:気管狭窄、右主気管支閉塞、気管および気管支ブラッシング・気管支肺胞洗浄液にて細菌陰性。最終診断:肺組織球性肉腫。治療:温存的にステロイドによる抗炎症療法。 転帰:発熱は持続しているが持続性パンティングは緩和され一般状態は改善した。

 

症例405 ルイちゃん。ワワ 11歳 オス。代々木公園前動物病院(東京都)より診療依頼を受けました。症状:咳。気管支鏡所見:気管虚脱グレード3。その他の臨床所見:BCS4/5、頭部X線検査にて構造的咽頭閉塞。最終診断:気管虚脱グレード3および咽頭気道閉塞症候群ステージ2。治療:-10%の減量。転帰:現在かかりつけ医にてフォロー中。

 

症例404 デンデンちゃん。ヨーキー 8歳 オス。湘南動物愛護病院(茅ヶ崎市)より診療依頼を受けました。症状:睡眠時無呼吸発作頻発。気管支鏡所見:喉頭虚脱、気管虚脱なく肉眼的に異常なし。その他の臨床所見:幼少時より大きないびきあり、横臥で低調スターター出現、頭部X線検査にて呼吸相にかかわらず常に重度な咽頭閉塞、鼻鏡にて直径4mm程度の塊状異物。最終診断:鼻腔内異物および咽頭虚脱(咽頭気道閉塞症候群ステージⅢa)。治療:鼻鏡下異物除去および永久気管切開術。転帰:術後睡眠時無呼吸消失し、14日後退院。自宅にて活動性は著明に改善した。現在も良好に経過中。

 

症例403 リキちゃん。マルチーズ 11歳 オス。みかん動物病院(秦野市)および麻布大学循環器科(相模原市)と共同診療。症例396の2週間後、症状:咳。気管支鏡所見:気管支ステントの後方移動および左主気管支の虚脱。その他の臨床所見:左心房突出著明な僧帽弁閉鎖不全治療中。最終診断:左主気管支の虚脱。治療:気管支ステント留置(気管支鏡下手術)。転帰:咳ほぼ消失。即日退院。現在、咳が再び始まっているが肺機能は正常に回復した。

 

症例402 ルイちゃん。マルチーズ 14歳 オス。症状:3週間前からの呼吸困難、吸気努力。気管支鏡所見:喉頭麻痺。その他の臨床所見:甲状腺機能低下(T4 0.6μg/dl)、慢性心不全治療中。最終診断:二次性喉頭麻痺。治療:一時的気管切開術+甲状腺ホルモン置換療法。転帰:術後吸気努力消失、一般状態改善。

 

症例401 ビョウちゃん。雑種猫 11歳 メス。埼玉動物医療センター(埼玉県)より診療依頼を受けました。症状:重度喘鳴。気管支鏡所見:気管内隆起病変による気管閉塞。その他の臨床所見:特になし。最終診断:気管の良性狭窄(病理検査にて非腫瘍性)。治療:気管内ステント留置(気管鏡下手術)。転帰:術後劇的に呼吸困難改善、3日後退院。病理組織検査の再検査にてリンパ腫であったことが判明。気管周囲リンパ節が気管壁を浸潤、穿孔したと考えられた。2014.10.28現在、埼玉動物医療センターにて加療中。

 

症例400 モモちゃん。ブルドッグ 1歳 メス。ファミリー動物病院(東京都多摩市)より診療依頼を受けました。症状:興奮時ストライダーを頻繁に生じ、チアノーゼ歴あり。気管支鏡所見:喉頭虚脱ステージ2および喉頭周囲粘膜過剰。その他の臨床所見:特になし。最終診断:短頭種気道症候群および喉頭虚脱ステージ2。治療:一時的気管切開術、軟口蓋切除術+腹鼻道バルーン拡張術+喉頭周囲粘膜切除+喉頭小嚢切除術。転帰:翌日、極めて状態良好で興奮してもストライダーは激減し、気管切開チューブを抜去し退院。転帰:退院後1週間、自宅にてストライダーは著明に減少し活動性増加。術後1ヶ月検診にて、自宅ではストライダーはほとんど起こらなくなり、30分以上歩いても全く心配にならなくなったとのこと。頭部X線および透視検査にて術前に比べ咽喉頭領域のX線透過性が改善していた。

 

症例399 フランちゃん。fチワワ 11歳 オス。症例391の1ヶ月後。症状:原発性気管虚脱に対し気管内ステント留置後咳が続く。その他の臨床所見:僧帽弁閉鎖不全治療中。気管支鏡所見:気管炎、多発性気管支軟化症。治療:無駄吠えをなくし、在宅ネブライザー療法(抗生剤+粘液溶解剤+気管支拡張剤+ステロイド)。転帰:現在呼吸器科にてフォロー中

 

症例398 りこちゃん。マルチーズ 8歳 メス。末吉動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。症状:睡眠時無呼吸が2週間続く。気管支鏡所見:左房拡大による左主気管支の軽度圧迫、気管虚脱なくその他肉眼的に問題なし。その他の臨床所見:鼻鏡検査にて後鼻孔および鼻咽頭に異常なし。最終診断:咽頭虚脱(咽頭気道閉塞症候群ステージⅢa)。治療:永久気管切開術。転帰:術後3日間、急性炎症所見が続いたが、その後回復し、1週間後極めて一般状態改善。

 

症例397 ギンガちゃん。柴犬 4歳 オス。EVINA犬猫病院(海老名市)より診療依頼を受けました。症状:1ヶ月間乾性発咳が続く。気管支鏡所見:原発性気管虚脱グレード2。その他の臨床所見:BCS4/5、アトピー性皮膚炎。最終診断:気管虚脱グレード2。治療:減量。転帰:現在かかりつけ医にてフォロー中。

 

症例396 りきちゃん。マルチーズ 11歳 オス。みかん動物病院(秦野市)および麻布大学循環器科(相模原市)と共同診療。33ヶ月前に左心房拡大による左主気管支圧迫により気管支ステント留置。症状:強い咳が3ヶ月間続く。気管支鏡所見:気管粘膜多発性粟粒状病変、左主気管支虚脱、気管支ステントの後方移動、ステント後部内部に反応性肉芽あり。その他の臨床所見:特になし。最終診断:気管の慢性炎症および左主気管支虚脱。治療:2週間後に十分な長さの気管支ステントを留置予定 転帰:検査当日退院可だったが、4-5日間強い咳が続いていた。

 

#395--Three months after tracheal stent placement in Case#382-DSH Cat 10y F-ID6262-ムクノキシロ140713BS-1症例395 シロちゃん。雑種猫 10歳 メス、症例382の3ヶ月後。症状:1日数回、発作的に強い咳が生じる。咳時以外は問題なく生活。気管支鏡所見:ステント前部領域に肉芽状結節病変、ステント後部領域に多発性反応性肉芽あり。ブラッシング標本にてPasteurella multocidaが分離された。その他の臨床所見:特になし。最終診断:ステント内反応性肉芽。治療:気管鏡下に肉芽部分にアルゴンプラズマ凝固処置(気管支鏡下手術)。分離された菌に有効な抗生剤を含むネブライザー療法を在宅にて開始した。転帰:数日後に咳は著明に減少。1ヶ月後再処置(症例407へ続く)。

 

 

症例394 ランちゃん。チワワ 11歳 メス。田口動物病院(埼玉県)より診療依頼。症状: その他の臨床所見: 気管支鏡所見: 最終診断: 治療: 転帰:

 

症例393 ポッキーちゃん。ヨーキー 6歳 オス、症状:レッチングを伴う強い急性単発性発咳が続き夜眠れない。その他の臨床所見: 気管支鏡所見:

 

症例392 ゴクウちゃん。雑種猫 20歳 オス、症例384の7週間後。

 

症例391 フランちゃん。チワワ 11歳 オス。つきみ野松崎動物病院(大和市)より診療依頼。症状:

 

症例390 モコちゃん。マルチーズ 11歳 メス。中田動物病院(横浜市)より診療依頼。

 

症例389 モモちゃん。フレンチブル 6歳  メス。湘南動物愛護病院(茅ヶ崎市)より診療依頼。

 

症例388 ココアちゃん。ヨーキー 12歳 オス。川瀬獣医科病院(東京都)より診療依頼。

 

症例387 パインちゃん。ポメラニアン 10歳 オス。ACプラザ苅谷動物病院日光街道病院(東京都)より診療依頼。

 

症例386 メイちゃん。メインクーン 7歳 メス。モリヤ動物病院(東京都町田市)より診療依頼。

 

症例385 ゴクウちゃん。雑種猫 20歳 オス。パル動物病院 裾野センター病院(静岡県)より診療依頼。

 

症例384 ブーシーちゃん。フレンチブル 8歳 メス。にゅうた動物病院(相模原市)より診療依頼。

 

症例383 キャンディちゃん。Mダックス 10歳 メス。EVINA犬猫病院(海老名市)より診療依頼。

 

382-Stridor-DSH-Cat-10y-F-Subglottic-Stenosis-and-Tracheal-Collapse-ID6262症例382 シロちゃん。雑種猫 10歳 メス。4ヶ月前にER練馬センター(東京都)より診療依頼あり、当初、声門下狭窄と限局性頸部気管虚脱のため喘鳴を示していた。その時は緊急処置としてシリコンTチューブを気管虚脱部に留置し気道を確保して呼吸状態を安定させた。安静管理を徹底し、気管虚脱部の組織が安定してころを見計らって第42病日にシリコンTチューブを抜去し、同時に声門下狭窄部を管状切除し喉頭気管再建術を行った。第59病日に気管支鏡検査にて声門下狭窄部は術前の2.7倍に広がり、呼吸の安定をみたので退院となった。しかし、今回再び興奮時に喘鳴になったとのことで再受診があった。症状:興奮時に息が苦しそうになる。 その他の臨床所見:透視検査にて前回気管虚脱部位が再虚脱していた。 喉頭および気管気管支鏡所見:声門下狭窄部もやや再狭窄傾向があり、気管虚脱が同部位で再発していた。 最終診断:限局性気管虚脱。気管部位の再度の管状切除は術後の緊張管理は困難でありリスクが高いと判断された。  治療:気管虚脱部と声門下狭窄部をカバーする領域に気管内ステント留置を行った。  転帰:術後ただちに喘鳴は消失した。喉頭に近い部分を含む気管内ステント留置は報告も前例もなく、定期的に内視鏡検査を行うことになった。

 

症例381 ランちゃん。Mダックス 11歳 オス。

 

症例380 ケンちゃん。コーギー 13歳 オス。あんどう動物病院(東京都)より診療依頼。

 

症例379

 

症例378

 

症例377