気管支鏡検査一覧

症例471

#471, Laryngeal Collapse, Pag 6y F, ID6403 ハリムラアンコ150611【症例471動画】 あんこちゃん。パグ 6歳 メス、体重6.60kg。5.55kg。 来院経緯と主訴:まつもと動物病院(東京)より診療依頼を受けました。幼少時からいびきが大きく、散歩時にすぐに音量の大きなストライダーを示す。2015年3月26日、精査希望のため呼吸器科受診。最終診断は喉頭虚脱ステージ3。主訴は運動後重度ストライダー。 既往歴:頸部皮膚の化膿性肉芽腫(2015.3.7-加療中)。 問診:いびきは1歳未満より床越し(2階から1階)で聞こえる位大きい(レベル5/5)。いびきの大きさは変わっていない。日中傾眠あり。寝起きは悪く、睡眠時無呼吸を1日1回程度確認される。散歩ではすぐにパンティングやストライダーを示し座り込む。場所が変わるとすぐに開口しストライダーが始まる。鼻汁、くしゃみ、咳なし。これまで食欲元気が2日以上減退したことはない。同居犬1頭(雑種)あるが呼吸問題なし、完全室内飼育、定期予防実施。 診察時徴候:BCS5/5、猪首。一般状態は良好。来院時、持続性ストライダー。外部冷却で開口呼吸がおさまった。安静呼吸で持続性吸気努力あり。立位安静時のSpo2 98%。聴診にて咽喉頭部で最強の、低高調混在の音量の大きな気道狭窄音があり。 臨床検査所見:T:38.1℃、P:128分、R:40/分。血液ガス分析にて軽度の換気血流比不均等のみで著変なし(pHa7.38、Paco2 39mmHg, Pao2 80mmHg, AaDo2 27 mmHg)。CBC/血液化学検査にてWBC増加(20900/mm3)、CRP増加(2.20mg/dl)。X線および透視検査にて、頭部で吸気時咽頭閉塞、咽頭周囲軟部組織増加、喉頭降下、吸気時に高調気道狭窄音を伴った著明な喉頭後退運動、喉頭陰影増加あり。胸部で、心陰影拡大、気管虚脱/気管支軟化症なく、肺野透過性良好。 暫定診断および処置:重度短頭種気道症候群であり、重度喉頭虚脱を引き起こしている可能性が高い。外科手術が適応だが、できるだけ安全かつ効果的な手術実施のためにまず体重を5.5kgまで減量させて咽頭開存を図ってから、外科的上気道整復を図る。 経過:2015年6月11日、初診から3ヶ月経過し体重が5.50kgまでに減量に成功した。いびきやストライダーは減少し、透視検査でも咽頭閉塞が軽減した。次の段階の内視鏡検査および外科的上気道整復を実施することになった。 鼻鏡検査所見:鼻甲介骨形成異常による閉塞なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:喉頭鏡検査にて、軟口蓋過長、反転喉頭小嚢、披裂軟骨小角突起の接着を確認したがわずかに喉頭口に間隙が認められた。気管気管支鏡検査時には、披裂軟骨小角突起を被う余剰咽頭粘膜ヒダを確認した。気管径が小さいと感じた以外に肉眼的に異常なし。  確定診断:喉頭虚脱ステージ3および重度短頭種気道症候群   最終治療:一時的気管切開下に外鼻孔狭窄整復術、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術。  転帰:経過良好。2日後、気管切開チューブを抜去できた。術後4日目、廊下を走ってもストライダーが全く生じなくなり、経過良好のため退院。自宅にて、喉頭虚脱治療として在宅ネブライザー療法を継続することになった。