気管支鏡検査一覧

症例448

ニシナハナ150226BS 喉頭-側方化術前

症例448動画】  ハナちゃん。ラブラドールレトリーバー 11歳 メス 31.65kg。湖南動物病院(山梨県)より診療依頼を受けました。症状:2ヶ月前から興奮時ストライダーあり、次第に頻度程度増加。来院の4-5日前から散歩に出るとすぐにストライダーを発症しチアノーゼになる。最終診断は、喉頭虚脱を伴った喉頭麻痺。その他の臨床所見:若齢時より隣の部屋にいても聞こえる大きないびきあり(レベル4/5)。安静時呼吸数40回/分以下。昨年夏(半年前)より後肢にわずかにナックリングの徴候がみられ始めていた。診察台上で起立可だが両後肢ふるえあり。大腿筋量十分。Pco2 35mmHg、Pao2 84mmHg、CRP 0.55mg/dl。透視検査にて喉頭領域の透過性低下および動的頸部気管虚脱、胸部X線検査にて肺野ほぼ問題なし。喉頭気管気管支鏡所見:披裂軟骨楔状突起および小角突起部分の接着および発赤浮腫あり、チオペンタール浅麻酔下に吸気時に声門裂開口が認められず、深呼吸時に声門裂が閉鎖したまま大きく喉頭全体が後退した。軽度の反転喉頭小嚢が認められたが、喉頭内に腫瘍性病変は確認されなかった。気管気管支樹に異常なし。 最終診断:喉頭虚脱を伴った後天性特発性喉頭麻痺。 治療:片側披裂軟骨側方化術。披裂軟骨は軟化し牽引糸の強い張力に耐えられなかったので、緩く輪状軟骨に縫合固定し、甲状軟骨-披裂軟骨縫合を追加した。術中内視鏡観察にて、声門裂をやや開口できた。転帰:抜管後ただちに持続性ストライダーが発症したので急遽、一時的気管切開術を追加実施した。若齢時よりいびきがあり、睡眠時に機能的咽頭閉塞が生じているのかもしれない。また、術後喉頭粘膜腫脹がみられたのでこの腫脹を消失させることも、気切チューブ抜管に必要な条件となる。術後3時間、嗄声様パンティングが続いた。その後1日2回喉頭浮腫治療のためネブライザー療法を実施した。術後6日目に気切チューブ閉塞試験にてかなり興奮してもストライダーが生じないことが判明したので抜管した。術後経過中、散歩では積極的に走り、いくら走ってもストライダーにならなかった。階段の上り下りも可能であり、やはりストライダーにならなかった。術後11日目に抜糸を行ったが、頸部皮膚のたるみがとても多かったことと気管切開も行ったためか、頸部外側の術創が開き、局所麻酔にて再縫合した。術後14日目に呼吸状態良好のため退院。その後自宅で頸部圧迫包帯の交換とネブライザー療法を継続した。帰宅後も毎日散歩で元気に歩くようになり、呼吸困難にならなくなった。かかりつけ医にて無事抜糸を終了し、術後2ヶ月を経過し、散歩は朝夕20分位、嗄声様パンティング(ゼエゼエ)あるがやはりチアノーゼにならず、さらに歩きたがるとのことだった。