気管支鏡検査一覧

症例438

タカハシピコ141130BS-TI部気管虚脱部症例438動画】 ピコちゃん。トイプードル 10歳齢 メス 体重1.32kg。横浜山手動物医療センター(横浜市)より診療依頼を受けました。症状:慢性発咳。気管虚脱は指摘されていたが、2年前から興奮後の咳がなかなか止まらなくなり次第に苦しそうな咳になってきた。1ヶ月前から夜間にも咳がみられるようになり、内科的なコントロールが困難になってきた。最終診断:原発性気管虚脱グレード3、気管支軟化症。その他の臨床所見:最近の1-2年で体重が1.1kg程度から1.3kgに増えた。カフテスト陽性。聴診にて両側肺野にfine cracklesあり。診察時に痰産生性咳あり。CRP0.95mg/dl。Pao2 73 mmHg, AaDo2 37 mmHg。X線および透視検査で、頭部にて喉頭降下、披裂軟骨背側の咽頭粘膜余剰を構成要因とする構造的咽頭閉塞あり、透視にて深吸気時に喉頭口前部が狭窄し、これと同調して頸部気管の動的虚脱が生じた。しかし、完全な気管閉塞には至らなかった。胸部にて後肺野に間質陰影増加し、透視にて主気管支の動的虚脱は認められなかった。喉頭鏡検査にて披裂軟骨背側の咽頭粘膜余剰が認められ、開口した状態で小角突起の背側端をわずかに覆っていた。 気管支鏡所見:頸部気管はグレード2の扁平化、胸郭前口部気管はグレード3の扁平化あり。気管分岐部付近に白色粘液付着が認められブラッシングを実施した。RB3, RB4, LB2において気管支軟化症あり。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 3ml+5ml+5ml, 回収率43.1%)の細胞診にて、総細胞数増加なく(44/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞分画ではマクロファージ89.5%, リンパ球8.8%, 好中球 1.2%, 好酸球 0.5%, 好塩基球 0.0%であり、非特異的パターンを示した。腫瘍細胞は認められなかった。最終診断:原発性気管虚脱グレード3、気管支軟化症。気管虚脱は内科治療の範囲であり手術や積極療法にただちに取りかかるべきでなく、末梢気道内の粘液停滞が予後を悪化させる問題でありその治療を優先する必要がある。  治療:1)減量(目標体重1.20kg未満)、2)在宅ネブライザー療法(生理食塩液+ゲンタマイシン+メプチン吸入液+ビソルボン吸入液+ボスミン外用液)  転帰:検査翌日元気に退院。2ヶ月後の検診にて、体重は1.24kgに減少し、興奮時に短い咳が生じるが、夜間の苦しいそうな持続性咳は完全に消失し、一般状態も改善し活動的になった。