外科 13 プラスチック製の吸盤を誤食し腸閉塞を起こし執拗な嘔吐症状を示したドーベルマンの1例

ドーベルマン、メス、4歳1ヶ月。体重30.0kg。昨夜から下痢・嘔吐が続く、とのことで来院。
上腹部X線所見。吸盤状の異物あり。 術中所見。腸管に対し垂直に固い円盤状異物が嵌入し、腸管が擦り切れそうになっていた。 腸切開し、異物を取り出した。 腸管閉鎖後。
経過:初診時、糞便検査の直接法にて虫卵や異常な菌を認めず、CBCおよび血液生化学検査にても高脂血症(TCHO >450mg/dl, TG 147mg/dl)以外、異常を認めなかった。整腸剤と制吐剤で様子観察したが、翌日やはり下痢・嘔吐が続き、全く食欲元気がなくなった。上腹部を触診したが圧痛は認められなかった。上腹部の透視下観察にて前方からのガスが一度停滞する部分がありそこに円盤状の異物がみられ、X線にて小腸領域に直径40mm×高さ20mmの吸盤状の異物が見つけられた。再度、問診を行なったところ、以前吸盤を食べたかもしれないとのことだった。入院にて2日間状態観察したが、やはり異物は移動せず、開腹手術にて取り出すこととなった。仰臥位、上腹部正中切開にて、異物を含む小腸を腹腔外に出した。吸盤状異物は腸管長軸に対し垂直に位置しちょうど吸盤の外縁が透けてみえるほど腸管壁が緊張していた。しかし、腸管壁に壊死や変色はみられず、異物嵌入部の尾側方で腸切開し異物を取り出した。異物は固くなった黒いプラスチックの吸盤で、直径35mm×高さ25mmだった。異物除去後、1層のGambee縫合の単純結節縫合で腸管閉鎖し、閉腹して手術を終了した。術翌日より食欲あり、下痢・嘔吐は消失した。術後5日目で状態良好のため退院した。
コメント:まさに固くなった吸盤の縁が腸管壁を擦りきるくらいになっていました。腸管破裂したら急性腹膜炎になっていたところです。観察期間は1日でもよかったかもしれません。後日談ですが、この犬はこのあとまた哺乳瓶の乳首部分を誤食し、下痢・嘔吐症状を呈し、再度開腹手術を行いました。
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