呼吸器 13-b 慢性間質性肺炎の治療中に粘液栓による肺浸潤影がみられた猫の1例

雑種猫、オス、21歳。体重3.55kg。慢性間質性肺炎の治療を3年間続けてきたが2ヶ月前より新たに左肺後葉背側部に浸潤影が現れ次第に呼吸状態が悪化してきたので気管支鏡検査を行うことになった。
びまん性網状影に加え後葉中央に浸潤影出現 2ヵ月後の入院時。呼吸が荒く食欲元気なし。 LB2D2より気管支鏡にて経気管支生検 検査後2日目元気になり退院。
経過:3年前呼吸荒いとのことで受診あり、浅速呼吸と胸部レントゲンでのびまん性間質影から慢性間質性肺炎と診断しステロイド治療を続けてきた。しかし嘔吐を機会に呼吸困難が起こったので来院した。努力性呼吸あり血液ガス分析にて低酸素血症(PaO2 69.1mm Hg)を示した。胸部レントゲンではびまん性網状影に加え左後葉中央部に浸潤影が出現していた。感染の可能性ありステロイドを中断し気管支拡張と抗生剤療法に切り替えた。2ヶ月後、呼吸状態は悪化し低酸素血症も進行した(PaO2 51.9mm Hg)。慢性間質性肺炎の再燃の可能性あり、浸潤影の原因解明のため気管支鏡にて気道の観察と浸潤影領域の生検を施行した。気道粘膜全体には異常がみられなかった。生検は透視下にてLB2D2に慎重に鉗子を挿入し行った。3回繰り返した。白色粘液状物が採取されたが細菌・真菌は検出されず、細胞診ではわずかの炎症細胞と気管粘膜上皮のみで腫瘍性変化はみられなかった。浸潤影は粘液栓によるもので、呼吸状態悪化はステロイド中断による間質性肺炎の再燃と考えられた。検査後、粘液栓を取り除いたためか全身状態は良好となり2日目に退院となった。その後、ステロイドと去痰剤投与を始め元気食欲が極めて改善した。
コメント:胸部レントゲン所見から目的気管支があらかじめ決まっていたので検査と処置時間はあわせて45分程度で終了しました。嘔吐と粘液栓との関係は不明です。ただ気管支鏡検査によって無菌であることが判明したことはその後の治療に大変有用でした。このような限局的な異常陰影に対して気管支鏡下生検は威力を発揮するようです。
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