呼吸器 1-h 気管分岐部を閉塞する気道内腫瘍により重度の喘鳴症状を呈し、気管支鏡下部分切除で改善した猫の1例

雑種猫、避妊済雌、9歳5カ月齢。室内飼育、混合ワクチン毎年接種。3ヶ月間の慢性発咳と喘鳴のため近医で治療していたが、呼吸困難が悪化し麻布大学を受診した。胸部X線写真にて左第7から13肋骨骨折および左肺硬化像が認められた。肋骨骨折は長期間の努力呼吸のため生じたと考えられた。喘鳴の原因を特定できなかったが緊急気管切開にて劇的に呼吸症状が改善した。その後永久気管ろうを造設し吸引やネブライザー治療を続け、一般状態および胸部X線写真で左肺の透過性が改善し2週間後退院となった。しかしさらに3週間後、喘鳴が悪化し当院に来院した。

初診時。喘鳴による著しい呼吸困難で起立不能であった。 同胸部X線写真。心基部を拡大。気管分岐部を塞ぐマス陰影あり。 同気管支鏡所見。左は処置前、右は処置後。右主気管支側が開存した。 気管支鏡処置直後。呼吸困難は消失し、翌日退院した。
経過:来院時、削痩、著明な喘鳴、横臥状態を呈していた。Spo2 75%。胸部X線写真所見:気管分岐部直前に気管を閉塞するmass陰影あり。気管内腫瘍または気道異物と暫定診断し、気管支鏡検査を、可能な範囲で処置も行う前提で緊急実施した。左主気管支から気管分岐部にかけ増殖した広基性の粘膜主体型のポリープ状病変があり気道をほぼ閉塞していた。そこで可及的に気管支鏡下にスネア型異物鉗子を用い部分切除し、右主気管支へ気道を開存させた。気管支鏡下処置にてただちに喘鳴は著明に改善し翌日退院した。後日、病理検査で腺癌と判明した。
コメント:気管支鏡は検査のみならず、このような気道内のマス病変に対する緊急処置が可能です。迅速に病変にアプローチでき、診断と処置を同時期に低侵襲で行えます。この症例も翌日退院可能でした。
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