呼吸器 1-c 急性呼吸不全が急速に改善した犬の非心原性肺水腫の1例

トイプードル、オス、16歳。体重3.0kg。公園に連れ出し1、2分歩いたあと突然呼吸困難となり起立不能となったとのことで救急外来。
初診時。重度な呼吸困難。著明なチアノーゼ 胸部レントゲン。心基部を限局した肺浸潤影あり。 治療開始2.5時間後。呼吸症状は著しく改善した。 翌日の胸部レントゲン。浸潤影は完全に消失。
経過:受診時にはすでに発症から1時間が経過していた。体温41.6℃、および重度なチアノーゼと頻呼吸(138/分)をともなった努力性呼吸がみられ、起立不能であった。発症直前まで全く問題なかったという。心疾患等の既往もない。胸部レントゲンにて心基部に限局した肺浸潤影が認められたが気管虚脱や心陰影に異常を認めなかった。動脈血ガス分析では、pH 7.181, Pco2 63.8 mm Hg, Po2 30.3 mm Hgと重度な換気障害を伴った致死的な低酸素血症が認められた。急性の気道閉塞と臨床診断した。原因は不明だが、何かが引き金となりびまん性末梢気道収縮が起きていた。徹底した気管支拡張を目的に酸素吸入と、注射および吸入によるステロイド投与を行った。治療開始2.5時間後、体温37.5℃、呼吸数66/分と急性呼吸不全症状は著しく改善し、一般状態は正常になった。翌日、胸部レントゲンにて浸潤影は完全に消失し、血液ガス分析もpH 7.428, Pco2 37.3 mm Hg, Po2 101.5 mm Hgと全く正常となり退院となった。このような発作症状は初めて経験したという。
コメント:急性の気道閉塞が認められたことや気管支拡張・ステロイド薬が著効を示したことから、ヒトの急性喘息発作に症状が似ていると思われました。血液ガスで過換気が認められなかったことから単純な熱中症とも違うようです。このあとこの犬は1年位存命し寿命を全うしたそうですが発作はこの1回のみだったそうです。喘息発作は、アレルギーや、自律神経要因などの非アレルギー性要因によっても起こることがヒトで知られております。もともとこの犬は岐阜の山奥で一生のほとんどを暮らしてきて、この日車で相模原にきたということだそうです。 車中では全く異常なく、こちらに着いて公園で普通に10分ほど歩いていて飼い主の目の前で突然発症したそうです。急性呼吸不全が劇的に回復した非常に貴重な例です。この症例の詳細については、スライドまたは抄録へ。
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