内視鏡 2-d ヘリコバクター感染症の犬の1例

チワワ、メス、2歳1ヶ月。体重2.20kg。10日間食欲減退し、毎日のように頻回の嘔吐あり、とのことで来院。
消化管バリウム陽性造影。8時間後でも胃内にバリウム滞留していた。 幽門部内視鏡所見。粘膜に点状出血が認められた。 胃粘膜組織所見(×600)陰窩内の一部にらせん状菌が認められた。 左組織写真の矢印部拡大。ヘリコバクター属の菌と考えられた。
経過:T:39.0℃、P:184、R:12。腹圧痛なし。CBCおよび血液生化学検査にて異常なし。消化管バリウム陽性造影にて8時間経過後も胃内にバリウムが滞留し、幽門通過障害が疑われた。上部消化器内視鏡検査にて、胃内異物なく、幽門管内に通過障害を引き起こす病変なかったが、幽門部やその他胃粘膜上に多数の点状出血が認められた。幽門部粘膜の生検を行なった。病理組織検査では、胃粘膜の炎症は軽度であったが、粘膜表層の被覆上皮が形成する陰窩内の一部にらせん状菌が少数認められた。ヘリコバクター感染症と考えられた。一般には犬の場合、ヘリコバクター菌は幽門より上の胃底部に多くみられるので、かなり多量の感染があることが疑われた。診断後、アモキシシリン、シメチジン、メトロニダゾールの3種類の投薬を5週間継続し、症状は消失した。
コメント:ヒトでいうヘリコバクターピロリ菌感染に相当するものです。犬では同属の菌はみられますが、ピロリ菌はほとんどありません。菌の存在と病原性との関連は議論されておりますが、本例ではヘリコバクター感染症の治療を行い、症状消失がみられました。この治療は胃内のヘリコバクターを撲滅することはできないようなのですが、それによると考えれられる消化器症状は改善できるようです。
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