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犬の気管虚脱Grade?に自力拡張型金属ステントEasy WallstentTMの気管内留置を試みた1例-会場での討論

Q1: 気管虚脱の治療法の選択基準はどのように考えているか? まずは内科療法から入るのが通常であると思うが、ただちにステントを入れる必要があるのか? どこから外科あるいはステント治療が必要となるのか?
A1: 今回の症例はまず消化器内視鏡検査を行うためにすでに全身麻酔をかけており、ただちに食道異物や胃内異物は否定され、そのまま気管支鏡検査を行うことになりました。そこで完全気管虚脱が見つかり緊急処置が必要がありました。虚脱があればただちにステント治療を行うということではありません。私は、気管虚脱はGradeIIIまでは内科療法で維持し、GradeIVに至ったときにステントを考慮すべきであると考えられます。本症例ももし食道異物を疑わなければ覚醒下に保存的に治療し、時期をあらためて再度胸部X線撮影を行い無麻酔下で気道評価し虚脱の程度と範囲を評価したと思います。外科療法の適応に関しは外科医各人で考え方が異なるようであり、GradeIIから行うべきとすることもあるようです。

Q2: このステントの大きさの種類はどのようなものがあるか? コストはどれくらいか?
A2: Full openで、外径12mm、10mm、9mm、長さは30mm, 50mm, 70mmの組み合わせがあります。原材料コストは25万円くらいです。検査、処置を含め治療費は30万円程度です。

Q3: 管外プロテーゼの選択はなかったのか?
A3: もちろんそのような選択枝はあります。ただ、気管虚脱部が長いとらせんプロテーゼを選択せざるを得ないし、そのためには気管の完全剥離が必要となります。らせん管外プロテーゼ設置のため気管完全剥離を行った20例の犬のうち4例が術後3日で気管全層壊死を起こして死亡したという実験データがあります。ですから、この術式は習熟している外科医のみが行うべきであると思います。私は管外プロテーゼ設置の経験がないので、ステント留置を選択しました。

Q4: ネブライザーを行ったとあるが、その薬剤量が一般的に行われている量より少ないように思う。どのような器具を使っているのか?
A4: オーナーにハンドネブライザーを購入してもらい、それを使ってもらっております。薬剤槽には7mlまでしか入りません。薬剤の節約になります。

Q5: もし管外プロテーゼを用いた場合、やはりネブライザー療法は必要か?
A5: 私は管外プロテーゼで治療したことはないのでその必要性は分かりません。今回ネブライザーを行ったのはステントを管内留置したのでその粘液停滞を防止するために行いました。もし、本症例ほど炎症の重度な気管虚脱に対し管外プロテーゼを留置し多数の縫合を気管に施せば気管侵襲は非常に大きくなることが予想されるので、抗生剤やステロイドのネブライザーが必要となるかもしれません。しかしその場合、術後の不安定期を乗り越えられればその継続の必要はなくなると思います。一方、管内ステントであれば継続しなければいけません。


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