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犬の下気道感染症の1例-会場での討論

Q1:ジステンパーも疑われると思われるが、鼻粘膜細胞の封入体や抗体検査は行ったか?
A1:残念ながら行っていない。もちろん、ジステンパーも念頭に入れ、細菌感染治療を行っていた。抗体検査は行っておいたほうがよかったかもしれない。

Q2:肺炎完治後、ジステンパー症状は何か発症しているか?
A1:治療終了後1年以上経過しているが、現在のところ何も発症していない。

Q3:鼻汁の培養・細菌同定は行っているか?もし行っていたら、BALと同一の菌が検出されていたか?
A3:行っていない。本症例は、肺炎が主症状であるので肺炎自体の原因菌を調査することが最も重要であり、まず肺炎治療を優先と考えた。(Bordetella bronchisepticaは気管支粘膜を標的に増殖する細菌であり、私の経験では鼻汁に本菌が検出されたことはない)。

Q4:退院後、Enrofuroxacin(Baytril)を処方しているが、本薬は幼犬には関節障害が生じることがあるというが、それを承知で処方したのか? なぜ、この薬を処方したのか?
A4:幼犬への処方についてはそのような副作用が生じることがあるかもしれないが、Baytrilは他の抗生剤にくらべ血清から気道への移行性が極めてよく、さらに本薬は殺菌的に作用するので、重度感染症を通院治療で管理することを考えると、致し方ない選択であったとは思われる。早期に治癒させることを最優先と考えた。
Advice:「第3世代以降のセフェム系なら幼犬に対する関節障害がないので、そのような選択肢もあったと思う。」

Q5:治療にネブライゼーションは行わなかったのか?
A5:使用しなかった。気道内分泌物が多い場合、ネブラゼーションは気道内刺激を高め症状を悪化させることがあることから、適切な抗菌剤を全身投与することを治療の主体とした。

Q6:外径3.6mmの細径気管支鏡を用いたとあるが、気管チューブ内に挿入して検査を行ったのか?
A6:いいえ。私は気管チューブを始め挿管して仰臥位保定にし各種モニターを設置し状態が安定したあと、ラリンゲルマスクに挿管しなおし、その回路側にはY字アダプターをとりつけ、側管から酸素投与、まっすぐの管から気管支鏡を挿入し検査しております。気管支鏡周囲とラリンゲルマスクのチューブとの間を濡れたガーゼで閉じれば、酸素のリークなく換気も維持でき安全に検査が実施できます。検査中酸素飽和度が低下すればスコープをただちに抜き、気管支鏡を挿入した口側に栓をし完全にクローズにして、酸素飽和度の回復を待って検査を再開しております。

Q7:本症例では、何番のラリンゲルマスクを用いたのか?
A7:#1です。ラリンゲルマスクは動物の大きさにあわせて変えております。


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