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猫の気管支喘息と診断した3例-会場での討論

Q1: 3例とも、胸部X線写真所見で明らかな異常はないにもかかわらず、比較的喘息症状が明らかであった。診断はX線画像より症状主体と考えるべきなのか? X線所見で異常がみられた場合、病態がかなり進行してしまっているということか?
A1: 症状主体というより、そもそも胸部X線写真は猫喘息を積極的に診断できる検査ではないと考えています。X線所見で所見がなくとも、症状に猫喘息特有の症状が認められれば、診断を除外できないということになります。X線所見での異常とは、気管支壁の肥厚像や肺気腫所見などを指すと思いますが、もしそのような所見を伴い臨床症状を示せば、気道の器質変化が進行していることが示唆されるので、進行症例といえます。しかし、X線画像のみで猫喘息を証明することにはならないのは同様です。

Q2: 猫喘息の治療におけるアレルゲン検査の意義はどれくらいのものと考えているか?とくに食餌アレルギーとの関係はどうなのか?
A2: 猫喘息とアレルゲンもしくは非特異的アレルゲンの関係はいまだ明らかとなっていません。そのため現時点では、猫喘息に対するアレルゲン検査の意義・有用性を議論できません。しかし、症例1の経験から、アレルゲン検査に基づき食餌のアレルゲン除去を行った結果、喘息症状が消失したわけです。ですから、これから例数を重ねて猫喘息治療におけるアレルゲン検査の意義を確認する段階だと思います。それを飼い主にインフォームすれば、積極的に行ったほうがよいと考えています。(他パネラーの藤田先生:最近、スギ花粉吸入で実験的猫喘息の病態が生じたとの研究結果を聞いております。)

Q3: 減感作療法はどうか? シクロスポリン投与はどうか?
A3: 減感作療法について私は経験がありません。ヒト気管支喘息でもメインの治療ではないのでは? シクロスポリンはヘルパーT細胞活性を抑制するので、結局好酸球数や活性を抑制することができるという点において有効かもしれません。しかし、使用経験はありません。

Q4: ドロップアウトしないような飼い主教育について教えてください。
A4: 喘息は、症状のあるなしにかかわらず、抗炎症治療を継続していないと、気道閉塞の器質変化が確実に進行していきます。気がついたときには気道がつぶれ息ができなくなるというわけです。その点を特に強調しております。

Q5: 末梢血中の好酸球数の診断における評価についてどのように考えているか?
A5: 先ず末梢血中好酸球数の増加が気道疾患によるものかどうか判定するため、皮膚・消化器・寄生虫疾患を除外する必要があります。末梢血好酸球数が多いほど、猫喘息の病態は悪化しているとのデータがありますが、一方で今回の症例2のように末梢血好酸球数は正常範囲か少ないにもかかわらず、非常に経過の長い重度な喘息症状が現れている場合もあります。末梢血好酸球に増加がない場合でも猫喘息の病態は否定できません。病態の進展が何か異なる状況を引き起こしているかもしれません。

Q6: ステロイド以外の投薬の仕方について教えてください。
A6: 私は内服で去痰薬を使い効果を実感しております。ステロイドのみより反応がよいと思います。症例1や3のように気道内には粘液が大量にみられ粘液栓を形成することがあります。粘液溶解と線毛運動促進機能改善作用を期待しております。

Q7: ベコタイドはパウダータイプでなかったか?
A7: MDIタイプもあるようです。


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