猫の気管内異物-2

プロフィールと来院経緯:雑種猫、メス、13歳。体重3.22kg。「2日前にアジの骨を食べてからゼーゼーいいながら突然呼吸困難になった。次第に元気がなくなってきた。近医にて治療困難と言われた。発症以来眠っていない。」とのことで来院。

初診時頭部レントゲン所見 吸気時 後部鼻鏡検査所見
写真1 初診時胸部X線所見。胸部気管内異物、縦隔気腫、肺過膨張所見がみられた。 写真2 気管支鏡所見。胸部気管内に魚の骨の一部と思われる異物がみられた。

写真3 突起部分を把持鉗子で把持し、そのまま気管支鏡観察下に慎重に摘出した。
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バルーン拡張術中 狭窄部が開存 バルーン拡張後の後部鼻鏡所見
写真4 異物摘出後の気管支鏡所見。気管から気管分岐部さらにその深部に裂傷部位はみつからなかった。 写真5 摘出した気管内異物。魚骨の一部と思われた。突起部分が前方の気管壁に引っ掛かっていた。 写真6 術後2日目の胸部X線所見。気管内異物はみられず、縦隔気腫も消失した。
経過:初診時、体温低下(37.1℃)、胸式吸気努力あり。呼気努力もみられた。肺野聴診にて弱いwheezesを聴取した。
衰弱傾向、皮膚脱水、皮下気腫がみとめられた。動脈血ガス分析にて、pH7.30, Pco2 44 mmHg, Po2 88 mmHg, AaDO2 12mmHgと肺胞低換気所見を示し、胸部X線では胸部気管内に異物、縦隔気腫、肺過膨張がみられた(写真1)。気管内異物による中枢気道閉塞と診断され、肺機能は正常であるため異物が除去されれば全身状態は改善すると考えられた。
ただちに気管支鏡検査を行い[動画はこちら]、胸部気管内に魚骨と思われる異物を確認し(写真2)、把持鉗子にて把持可能であったのでそのまま気管支鏡観察下に慎重に摘出した(写真3)。摘出後、再度気管支鏡にて気管支粘膜全体にわたり観察したが、穿孔や裂傷部位は見当たらなかった(写真4)。異物のあった胸部気管内の喀痰をブラッシングして微生物検査に供したが細菌は検出されなかった。異物は魚骨の一部であった(写真5)。2日後、発熱を伴い自己免疫性溶血性貧血が生じたがステロイド! 与と使用してきた全ての薬剤を中止して、5時間後には一般状態は回復した。5日後に胸部X線検査にて、異物陰影、縦隔気腫、肺過膨張所見はともに消失し(写真6)、動脈血ガス分析にてpH7.41, Pco2 30 mmHg, Po2 99 mmHg, AaDO2 16mmHgと肺胞低換気所見も改善し、一 般状態も安定したので退院となった。
コメント:猫の気管内異物を気管支鏡にて迅速かつ安全に摘出しました。気管支鏡にて猫の気管内異物を問題なく摘出した例は海外にも報告なく、貴重な症例です。

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