気管内異物

プロフィールと来院経緯:
雑種猫、メス、7歳齢。体重2.90kg。「3週間前に突然呼吸困難になった。前医にて気管内腫瘍の可能性ありと言われた。当院で気管支鏡下に診断と手術をしてほしい」とのことで茅ヶ崎より来院。
初診時。胸部]線所見。胸部気管内に塊状陰影あり。 内視鏡にて、黄色調の表面が凹凸不整の異物確認
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気管支鏡下に摘出した異物。最大径10mm。栽培用の「オアシス」の一部? 摘出後の気管内所見。ポリープ残存所見なし。
経過:
初診時、胸式努力呼吸あり。呼気努力もみとめられた。
聴診にて胸部気管部位に小さいwheezeあり。3週間前の発症時には咳が2-3日続いたが、それ以降咳はない。1週間前より食欲廃絶し体重が0.6kg(約20%)減少していた。
動脈血ガス分析にて、pH 7.34, Pco2 54 mmHg, Po2 78 mmHg, [HCO3-]28.4mmol/L, AaDo2 12mmHgと典型的な肺胞低換気所見あり、胸部]線では肺過膨張がみとめられた。
中枢気道閉塞を解除すれば速やかに正常肺機能に回復することが見込まれた。
胸部気管のほぼ中央に腹側に基部を有する6mm ×10mmの塊病変がみられた。
腫瘍または異物の双方の可能性を考慮し、気管支鏡検査を実施した。[動画はこちら]該当部位に、気道断面積の92%を塞ぐ、黄色調で、表面が凹凸不整の異物が確認された。
まずブラシで可動性を慎重に確認した。
異物は固く大きいので生検鉗子では把持できなかった。
結局キュレットを用いて回収した。異物は、大きさ10mm×7mm×4mm、黒色から白色の、直径0.1mm大の小胞状空洞が集合し、比較的固いが、大きさの割には軽い破片であった。軽石よりは軽く、植物を鉢栽培するときに使用される「オアシス」の一部と思われた。
近所の庭先にそのようなものがあったかもしれないとのことだった。ブラシ擦過検体からの微生物検査にてBacillus sp.が検出された。多くの抗生剤に感受性を示した。2日後、血ガスはpH 7.42, Pco2 32 mmHg, Po2 99 mmHg, [HCO3-]20.4mmol/L, AaDo2 15と正常化、胸部X線でも肺過膨張所見は消失し、胸部気道内塊状陰影も消失し、一般状態も回復したので退院とした。
コメント:
Bacillus 属の菌は土壌中に一般的に存在している細菌です。土壌と関連ある異物と思われます。
誤嚥があったかもしれない時期はちょうど大地震があったときと重なっていました。
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