呼吸器 15-b 化膿性心嚢液貯留により呼吸速拍を呈した猫の1例

雑種猫、避妊済メス、5歳7ヶ月。体重4.42kg。昨日外出から帰宅後から元気なく息が荒い、とのことで来院した。膀胱炎の既往あり、室内外を出入り自由、混合ワクチン最終2ヶ月前実施済、同居猫1頭あり。
初診時胸部X線所見。心陰影拡大とスリガラス陰影あり。 第8病日さらに心陰影拡大し、心嚢液貯留が疑われた。 同日血膿様液を154ml抜去し、Pasteurella属を検出した。 退院2ヶ月後の胸部X線所見。心陰影正常で再発していない。
経過:初診時、体温:39.1℃ 心拍数:200/分 呼吸数:68/分。可視粘膜色良好。食欲元気なし。咳なし。聴診にて心音遠く感じられた。心雑音なし。肺音粗励。胸部X線にて心陰影拡大、気管分岐部挙上、肺野スリガラス陰影が認められた。動脈血ガス分析にてpH7.416, Pco2 27.3 mmHg, Po2 96.4mmHgと肺機能は保たれていた。心嚢液貯留と心機能低下による間質性肺水腫を疑い、利尿剤投与を始めた。翌日、スリガラス影は消失した。第8病日、さらに心陰影が拡大していたので、全身麻酔下、気管内挿管下にて心嚢液の試験穿刺を行った。麻酔前のCBC生化学検査ではWBC 11000/μLで左方移動認めず、ALB2.2g/dlと低下していた。伏臥位にて、透視下に22G静脈留置針を用い右第6肋間を穿刺した。計154mlの血膿様液(Ht9%, WBC>99900/μL, TP5.0g/dl)が抜去された。上清は黄色透明で比重1.033、TP5.0と滲出性、沈渣細胞診にて多数の変性好中球がみられた。培養にてPasteurella属の細菌が検出され、ABPC, AMPC, CEZ, EM, GM,AMK, MINO, OFLX, ENX, FOMに感受性を示した。由来は不明だが、化膿性心嚢液が貯留していたことが判明した。入院管理となりABPC20mg/kgとGM5mg/kgの投与を開始した。第12病日再び19mlの血膿様液を抜去したが培養にて菌は検出されなかった。それ以降心嚢液の再貯留を認めなかった。第22病日経過良好のめ退院。自宅ではバイトリル錠25mgを毎日投与してもらった。その後1ヶ月ごとに3ヶ月間継続して胸部X線心陰影を経過観察したが、再発を認めなかった。
コメント:Pasteurella属は猫の口腔内常在菌叢に普通にみられます。初診時、とくに咬傷などはみられませんでしたが、室内外を自由に移動していたということからケンカなどから受けた咬み傷による感染によるものと考えていますが、直接の原因は不明です。
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