呼吸器 8-g 犬の原発性気管虚脱GradeIV | |||
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プロフィールと来院経緯:ヨーキー、オス、2歳6ヶ月齢。体重1.72kg。「3週間前より気管虚脱のため呼吸困難あり、3日前より夜間眠れないほど呼吸困難が続いた」とのことで来院。くすの木動物病院(東京)藤井先生より紹介。 |
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写真1 初診時喘鳴症状。起立不能。 | 写真2 胸部X線lateral像‐吸気。 胸郭前口部の気管の扁平化していた。 |
写真3 胸部X線lateral像‐呼気。 呼気時も胸郭前口部の気管の扁平化していた |
写真4 気管サイジング。 胸郭前口部の気管が前後気管に比べ過剰に拡張していた。 |
写真5 初診時気管支鏡所見。 気管は完全に扁平化し、粘膜は発赤・腫脹していた。 |
写真6 同気管支鏡所見。 Tチューブ留置後。気管は開存し安定した。 |
写真7 Tチューブ留置直後の胸部X線所見。 適切な部位に留置された。 |
写真8 第27病日、気管内ステント留置直後の気管支鏡所見。 メッシュが明らかにみえる。 |
写真9 気管内ステント留置翌日の胸部X線所見。気管径に応じ最大サイズのステントを2本留置した。1本目は喉頭直下にまで先端部分を位置させることができた。 | 写真10 気管内ステント留置の3日後、特に問題なく退院。 | 写真11 第127病日の気管支鏡所見。メッシュは上皮化されステントは気管に一体化していた。 | 写真12 第412病日の胸部X線所見。ステント移動なし。全く咳なく、一般状態良好に維持。 |
診察、検査、治療および経過 | |||
経過:初診時、ガチョウの鳴き声様の持続性発咳と喘鳴が止まらず呼吸困難を示し起立不能。頚部気管の聴診で高音調の狭窄音が聴取された。動脈血ガス分析では、pH 7.39, Pco2 32 mm Hg, Po2 82 mm Hgと肺機能は正常であった。したがって気管虚脱を疑い、ただちにICUにて冷温酸素管理開始した。8時間経過しても喘鳴症状は落ち着かずプレドニゾロン1mg/kg SCおよびアセプロマジン1mg/kg SC投与したさらに4時間様子観察したがそれでも呼吸状態不安定であった。そこで、気管内ステント留置を最終治療に見据え、この日気管支鏡検査を行った。気管虚脱GradeIVと診断し、気管サイジング後、緊急処置として気管内にTチューブ留置を行った。ネブライザー療法などのTチューブ管理を続け、8日後経過良好のため退院。在宅ネブライザー療法を続けた。気管サイジングの結果、頚部から胸郭前口部の気管の拡張が体格の割には著しく、ステントメーカーのInfiniti medical(米)とも協議し2本のステントを留置することになった。第28病日、状態良好にて気管内ステント留置を行った。経過良好のため、2日後退院。在宅ネブライザー療法を続けた。第127病日、咳や喘鳴は全くみられず、気管支鏡検査を行ったところ、ステントのメッシュが不明瞭になり上皮化され、ステントは気管に一体化していた。その後、3−6ヵ月ごとに気管支鏡検査で内部観察を続けているが問題なく、最近では412病日に胸部X線にてステントの移動などは生じておらず、咳なく一般状態はすこぶる良好であった。 | |||
コメント:気管内ステント留置は、適切なステントサイズの決定と正確な位置に留置することが最も重要です。個々の症例にあったステントを正確に決定するためには気管サイジングと、経験が必要です。本症例は、体重がわずか2kgに満たない極小犬でしたが最大サイズのステントが必要と判断され、それが適切であったため留置後良好な経過をとることができました。 |
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