呼吸器 8-a 重度の呼吸困難を主訴に来院し、気管支鏡にてGradeIVの気管虚脱と判明し、緊急に自作シリコンステントにて気管拡張を行い救命したヨーキーの1例

ヨーキー、オス、13歳4ヶ月。体重2.90kg。「昨日暑い中2時間くらい散歩してから一晩中ゲーゲーいっている。熱射病かもしれない」とのことで来院。
受診時。重度の呼吸困難。首を伸ばして両前足を立てている。 ステント設置前。胸部気管が扁平化。左には気管チューブがみえる。 ステント設置3日後。胸部気管がステントにて開大している。 6日後。呼吸は安静となり、じっと立てるようにはなった。この日に退院。
経過:8月初旬の猛暑時に来院。受診時、体温40.3℃。パンティングとチアノーゼを示す喘鳴症状がみられた。ただちに流水で体を冷やし30分後に35.8℃まで体温が下がったが、喘鳴・呼吸困難症状が続いた。心疾患の既往はなく気管虚脱が疑われた。酸素室中でも呼吸困難を示した。緊急にシリコンチューブにて気道拡張用ステントを作成し、100%酸素吸入全身麻酔下においてステント挿入による気管拡張術を行った。透視下にて胸部気管の扁平化を確認しその部位にステントを設置した。その後、気管支鏡でステント後方の気道に問題ないことを確認した。翌日、呼吸は安静化し夕方には自分で食事を食べるようになった。しかし体を動かすと喘鳴が始まった。6日後には立っても呼吸が安静でいられるようになり退院となった。
コメント:正常の気管は掃除機のホースのように「軟骨輪」がたくさん連なって管腔が潰れないようになっていますが、気管虚脱の状態ではその軟骨が柔らかくなってしまって、最悪の場合この例にようになってしまいます。気道内ステントは今私が研究中の治療法のひとつです。外科手術も行われていますが、現時点では緊急非難処置としてはステントが有用と考えられています。
相模が丘動物病院のホームページ|メール
Copyright (C) 2011 Sagamigaoka Animal Clinic All Rights Reserved.