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Part5 呼吸器疾患各論

C. 気管と気管支

49章 伝染性気管気管支炎

Richard B. Ford

はじめに

伝染性気管気管支炎(Infectious tracheobronchitis, ITB)は、ケンネルコフ、ケナインコフ、犬クルップとも呼ばれ、急性かつ非常に伝染力の強い犬の呼吸器疾患であり、肺炎の兆候を伴わない発作性発咳を特徴とする。伝染病勃発時の感染犬には発熱、食欲減退および元気消失がよくみられる。臨床診断を下すには、複数の犬、とくに咳をしている犬と最近接触があったかを確認することが非常に重要な病歴となる。重度の感染を示した犬は膿性から粘液膿性の鼻汁や眼脂、肺炎、呼吸困難に進行することがあり、死亡することもある。

当初、1900年初期にはイヌ・ジステンパーウイルスに関係するものと考えられてきたが、1970年代になってやっとこの複雑な呼吸器感染の病原論に関する新たな情報が研究され始め、治療やワクチンに著しい改良がみられた。このような医学的進歩にもかかわらず、伝染性気管気管支炎は、保護施設、遮蔽されたケージおよび動物病院にいる犬などには特に感染の機会が高く、いまだに脅威となっている。自然発症は散発的ではあるが、ITBの伝染病勃発は集団飼育されている犬の群の中でもっとも起こりやすい。実際の感染は、細菌またはウイルスなどの病原体のひとつもしくはこれらが混合しておきている。これらの病原体は上気道、気管、気管支、細気管支の上皮または肺間質で増殖できる。気管支敗血症菌、パラインフルエンザウイルスおよびイヌ・アデノウイルス2型が最大の危険因子となる病原体であり、感受性犬に臨床兆候を引き起こす。気管支敗血症菌は、猫とくに子猫でも伝染性呼吸器疾患の病原体となっていることがある。軽症感染の犬なら予後良好で回復が十分見込める。臨床兆候を示した犬の治療には隔離と鎮咳剤や広い抗菌スペクトルの抗生剤の投与が重要となる。呼吸困難や肺炎がなければ入院はかならずしも必要ではない。

今日、伝染性気管支炎に関与する主要なウイルスや細菌に対して認可を得ているワクチンが約11種ある。猫の気管支敗血症菌のワクチンとして認可を得ているのが1種ある。

驚くことではないが、犬も猫も一定のワクチン接種プロトコールが臨床では施行されていない。これは、注射や点鼻タイプなどワクチンが多種類あることにもよるが、入手可能な多価ワクチンに含まれるウイルスや細菌抗原でどれくらいの免疫持続期間(the duration of immunity)があるのかよく分かっていないことにもよる。ITBのワクチン接種は普及しているが、獣医師や飼い主の経験から現在のワクチンでは呼吸器症状を完全には予防しきれないと考えられている。

近年、猫の気管支敗血症菌の生ワクチンが開発されたのを契機に、臨床家たちの間にはそのワクチネーションプロトコールとともに猫での発症自体に疑問があがっている。皮肉なことだが、感染症の発生ではなくワクチンの開発によって猫の呼吸器疾患における気管支敗血症菌の役割に関心が注がれた。気管支敗血症菌は猫の気道に常在しているし下気道疾患症状を示す子猫(またはまれに成猫)より分離もされたが、猫の呼吸器疾患の主因としての気管支敗血症菌の役割はいまだ明らかにはなっていない。危険因子や疾病有病率のデータがないので、猫の気管支敗血症菌のワクチン接種は呼吸器症状(とくに咳)と細菌と関係があると考えられるような集団飼育世帯に対してのみ勧められる。

病因

気管支敗血症菌はITBの単一の原因ではないことを強調すべきである。実際、さまざまな細菌やウイルスが単一あるいは混合して犬のITBに伴うさまざまな症状を引き起こす。

単一の病原体感染、とくにウイルスは、一般に軽症で自己限定性である。しかし臨床では、細菌とウイルスの同時感染がほとんどを占めると思われる。イヌ・パラインフルンザウイルス(Canine parainfluenza virus, CPiV)と気管支敗血症菌の2つがITB症状を示す犬からもっとも普通に分離される病原体である [1-5]。 イヌ・アデノウイルス2型(canine adenovirus-2, CAV-2)、イヌ・ジステンパーウイルス(canine distemper virus, CDV), レオウイルス、そして犬ヘルペスウイルスは全て犬の上気道に感染可能で、突発する咳も起こす。しかし、これらはITBの原因としては気管支敗血症菌やCPiVほど重要ではない [1,4]。

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* PROTEX?-Bb, Intervet, Inc.Millsboro, Del. 

ウイルス

イヌ・パラインフルンザウイルス(CPiV)は、もっとも普通でおそらくもっとも重要なITBの急性発症に関与するウイルスである。CPiVは1本鎖RNAウイルスで世界中に分布している。犬のCPiV感染は典型的には鼻腔と気管に限局する。このウイルスはマクロファージ内では増殖できないからである。CPiVは最初に気管上皮に傷害を引き起こすウイルスと考えられており、その後患者は常在菌である気管支敗血症菌などの細菌の二次感染にかかりやすくなる。犬同士のCPiVの伝染は圧倒的に飛沫感染で起こり、感染するとくしゃみや咳症状が始まる。臨床症状は、突然はじまり、甲高く、警笛様(honking)の咳を特徴とする。これは声帯ひだの腫脹とそれによる発咳時の声門における気流通過障害による。CPiV単独感染犬は通常健常であり、発熱もなく、通常の食欲も維持していることが多い。一般に、感染は短期間である。3から10日間の潜伏期間を経て、典型的には感染後6-8日間咳とウイルス排出が生じる [6]。完全回復すると考えられ、犬のキャリアー状態も進行しないようである

イヌ・アデノウイルス2型(CAV-2)は犬の呼吸器感染症の原因としては多くは報告されていないし、臨床では犬のITBの病因として重要なファクターと考えられていない。犬の呼吸器疾患におけるCAV-2の役割は気管支敗血症菌やCPiVなどの他の呼吸器に感染するウイルスと同時感染している犬でより重要となる。CAV-2感染は感染犬との口鼻接触で起こる。ウイルスは、鼻粘膜、咽頭、扁桃裂、気管、気管支の上皮、および非線毛気管支上皮でも増殖する。典型的には感染は短期間で終わる(short-lived)。感染から9日を過ぎると大抵ウイルスは分離されない [7]。間質性肺炎を示した犬で2型肺胞上皮に感染がみられた例がいくつか確認されている [7]。感染の臨床兆候に咳がある。ITBを起こすような他の病原体との混合感染がなければ感染は一般に軽症である。無症状感染も報告されている。猫でCAV-2感染の報告はない

そのほかのウイルス(例えば、イヌ・ジステンパーウイルスウイルス[CDV]、犬アデノウイルス1型[CAV-1]、およびレオウイルス1、2、3型)は咳をする犬からまれに分離される。CDVはCPiVや気管支敗血症菌と共同して作用するが、ITBの主因と考えられていない。CAV-2, 犬ヘルペスウイルス, およびさまざまなレオウイルスはITBの原因としては重要ではないと考えられている。

気管支敗血症菌

気管支敗血症菌はグラム陰性、好気性短桿菌で、犬ITBを引き起こす主因のひとつと考えられている。CPiVやCAV-2だけでも軽度の感染を起こすが、これら単独のウイルスに感染した犬より気管支敗血症菌と混合感染した犬の方が臨床症状はより重度である。気管支敗血症菌は気道分泌物の飛沫物によって伝染する。細菌は汚染した洗浄水、人間の手、およびさまざまな接触媒体によって伝染する。気管支敗血症菌は宿主防御機構を侵害する内部構造をいくつか持っているので[3,4]、複数の病原体による呼吸器感染をうけた犬においてこの細菌は症状を重症化する因子と考えられている。例えば、線毛は気管支敗血症菌の細胞膜より突出する毛髪様の付属器群で、これは気道内の特定のレセプターを認識する。

これによって気管支敗血症菌は線毛上皮細胞の表面で増殖し、それから細胞外毒素や細胞内毒素を放出し気道上皮の機能を傷害し、宿主の感染防御能力を低下させる [3,5]。 さらに、気管支敗血症菌は細胞外性病原体であるのに、一度宿主細胞に特殊な方法で侵入し細胞内に入るとその細菌は免疫学的防御機構を回避することができ、感染状態やキャリアー状態を持続することになる。最近、気管支敗血症菌の病原論についての研究がまとめられた [3,4]。

マイコプラズマ

マイコプラズマは原核生物で、原形質膜で包まれてはいるが細胞壁がないことで細菌と区別されるさまざまなマイコプラズマのグループがあるが、acholeplasmaやureaplasmaは健常な犬猫の鼻咽頭に発見されているが、ITBの病原論における役割についてはいまだ不明である。犬(M.cynos)や猫(M.felis)の下気道から分離されるマイコプラズマは肺炎に関与していることが多い。マイコプラズマは線毛上皮でも非線毛上皮でも増殖することが知られている。感染は化膿性気管支細気管支炎で特徴づけられる。全身感染はまれであるが、一度気道上皮で増殖すると、数ヶ月にわたり慢性の病原体排出が続く [5]。

臨床徴候

イヌ伝染性気管気管支炎(ITB)の臨床徴候は、吐こうとしたり痰をきったりするような仕草をしばしば伴った発作性の咳を示すがそのほかは健康で元気であるというのが特徴である。喉頭炎を伴って声帯ひだが腫脹し、大きく、高音調の咳になる。これはよくガチョウのなき声とかアザラシのなき声のようなと表現される。吐くような仕草やからせきのあとに粘液の喀出があると飼い主は嘔吐と誤解することがある。食欲減退、発熱、元気消失は伝染病勃発時の犬にみられることがある。臨床症状は感染から3日から10日後に起こることが普通である。多くの臨床例では、直前に他の犬との接触があったり、全身麻酔を受けたり、気管内挿管されたりして症状が始まっている。気管に触れ咳を誘発できるかどうかは犬のITBを確実に診断したり除外したりするにはかならずしも一貫した所見でも特定的な所見でもない。

ITBが勃発した集合犬舎内ではより重度な二次性の呼吸器症候群が観察されている。咳もあるだろうが、主要症状に粘液性から粘液膿性の鼻汁や眼脂をともなう。特に子犬での肺炎は致死的な状況に陥る重症化の要因となりうる。このような症例では、喉頭や気管から単純培養で気管支敗血症菌が分離されている。罹患犬は発熱、元気消失、食欲不振を示すのが典型であり、呼吸窮迫やさらには呼吸困難を示すことさえある。著者は伝染病勃発が一年中いつでもあることを観察している。密集度の高い環境ではその50%以上の犬が罹患するような状況になりうる。子犬はより重度の感染を受けやすく治療されなければ死亡する危険性が高い。

診断

伝染性気管気管支炎は、上述の臨床的診断基準を満たす病歴や身体検査所見に基づいて臨床診断される。さらに、他の犬との接触があったことは(咳がある犬やそうでない犬とでも)診断の手助けとなる。抗生剤・鎮咳剤の経験的療法でただちに効を奏したら単純なITBの診断を支持することになる。このような軽症例ではルーチンで行われる胸部レントゲン、CBCおよび血液生化学検査では診断や予後判定もできない。肺炎を合併し重度な感染を起こした犬では著明な白血球増多や左方移動を伴った炎症パターンがみられることがある。

経気管洗浄・吸引液で好中球性滲出液と細菌を検出できるかもしれないが、ITBの軽症例ではほとんどこのような手段は診断に用いられない。回収液での細菌培養は、細菌感染をともなった肺炎患者では起炎菌を同定するのは有用であろう。また抗生剤の感受性試験はこのような患者の治療方針を決定するのに役に立つ。犬の気道内には多くの常在菌叢があるので、鼻道や口腔から分離された細菌は気管や気管支の情報ではないし、二次感染や日和見感染と一次感染を鑑別することはできない。

軽症のITB罹患犬では、胸部レントゲン写真は著変を示さないことがほとんどである。ITBにともなってみられる犬の呼吸器合併症は、肺過膨張、間質性肺炎、部分的無気肺である [1,3,4]。肺炎を除外するために、全身状態の悪化、発熱、食欲不振を示すITBの犬は全て胸部レントゲンを撮影すべきである。

急性期または回復期の血清中和抗体およびHI抗体価は犬のITBのさまざまなウイルスへ暴露されたかを調べるのに用いることが可能である。しかし、感染は比較的短時間で起こるので、抗体価上昇を検出することは臨床的に困難である。

治療

犬のITBを起こすウイルスや細菌を同定していないときは、臨床症状を示した犬には経験的支持療法を施すのがよい。治療の要は抗生剤の内服投与である。症例によっては、咳止めとして抗炎症剤や鎮咳剤を投与したほうが患者にはよいこともある。肺炎が明らかであれば、短期的な吸入治療も有用であろう。

抗生物質

犬ITBのほとんどの症例では自己限定的であり必ずしも抗生剤治療を必要としない。しかし、臨床では日和見感染を予防するために短期間の経験的抗生剤投与が慣習的によく行われている。ITB兆候を示す犬が細菌性肺炎になりやすいかどうかはいまだ確定的ではない。一方、粘液性および粘液膿性の鼻汁や眼脂があれば抗生剤を投与する必要がある。ドキシサイクリンを5.0-10.0 mg/kg内服、1日1回、最低2週間投与することは、気管支敗血症菌に効果的であるので第1選択となる。しかし、気管支敗血症菌は犬の気道内に3ヶ月間存在可能なので、特に同一環境で感染犬が複数ある場合は、30日間まで投与期間をとるほうがよい。伝染病勃発の広がりに応じて、症状がなくても同一環境での全ての犬に抗生剤を投与するのが臨床上必要とされる。気管支敗血症菌感染の犬猫に対する抗生剤治療について表49-1にまとめた [8,9]。

表49-1 犬猫の気管支敗血症菌感染の治療に推奨される抗生剤

薬剤

投与法

治療期間

備考

ドキシサイクリン

5-10 mg/kg, 内服、1日2

2-4 週間

注意:猫では内服用カプセルで局所性食道炎や食道狭窄をともなうことあり。シロップ薬が入手可能ですすめられる。

アジスロマイシン

5 mg/kg, 内服、3-5日に1回

必要に応じ1-2回繰り返す

カプセルとシロップ薬が入手可能

アモキシシリン

15-20 mg/kg,内服、1日2-3回

2-4週間

エンロフロキサシン

5 mg/kg, 内服、1日1回(犬のみ

3-4週間

注意:エンロフロキサシンは網膜障害と不可逆性失明が猫に生じることあり、猫ではいかなる薬用量でも投与してはならない。

トリメトプリム-スルフォンアミド

30 mg/kg,内服、1日1-2回

3-4週間

城下注)*本文中には1日1回と記述されている。私の使用経験では1日2回の方が安定した効果が得られるように思える。


グルココルチコイド

抗生剤といっしょに短期間グルココルチコイドを投与することは、軽症感染の犬で咳の多い場合に安全で効果的である。しかし、肺炎の可能性のある動物には禁忌である。咳をコントロールするために、プレドニゾロンを抗炎症量(0.25-0.5 mg/kg)で1日1回か2回必要に応じて5日間を上限に投与可能である。犬のITBで推奨されている抗生剤には静菌的なものもあるので、そのときにはグルココルチコイドは5日を越えて投与してはならない。ステロイド投与中断してから少なくとも5から7日間は抗生剤投与を続けるようにしたほうがよい。グルココルチコイドは気道粘膜の炎症に関係した咳を減らすのには有効だが、感染の場合は臨床経過を短縮しない [1]。グルココルチコイドの気管内投与の有用性を証明するケース-コントロール研究はない。

鎮咳薬

鎮咳剤は単独または気管支拡張薬といっしょに犬のITBの治療に用いられてきた。ヒドロコデインやブトルファノールが推奨される。臨床では、一般市販薬の鎮咳剤(例えば、デキストロメトルファン)はITBの咳を止められないと思われるのですすめられない。麻薬性鎮咳剤(例えば、ヒドロコデイン)は咳を抑え鎮静化するが、麻薬性鎮咳剤の高用量を長期投与すると気道分泌物が滞留し細菌のクリアランスが減少することになる。したがって、細菌性肺炎を合併しているITB症例に麻薬性鎮咳剤を投与すべきでない。

気管支拡張薬

気管支炎の犬猫における気管支拡張治療の利点はあきらかでない。細菌やウイルスが気道過敏性や最小気流抵抗(baseline resistance to airflow)を増加させるかどうかは議論中である。気管支拡張剤には2つのカテゴリーがある。メチルキサンチン誘導体とβ2作動薬である。メチルキサンチン気管支拡張薬であるテオフィリンやアミノフィリン(テオフィリインエチレンジアミン)は気道収縮を予防するので呼吸困難をともなう感染症の犬の支持療法に用いられる。しかし、メチルキサンチン気管支拡張薬のみでは犬のITBの咳を有効に制御できない。一般に、メチルキサンチン気管支拡張薬は気管支収縮によって呼吸困難が生じていると考えられる患者に適用が限られる。この種の気管支拡張薬を投与している犬では、胃腸管の運動性亢進(下痢)、頻脈、および過度の興奮がみられることがある。

β2作動薬のテルブタリンとアルブテロールは慢性気管支炎の犬に投与するよいとされている [10]。これらは軽症の気管支炎における肺内の浸潤物を減らすし咳も抑えるという長所がある。投与開始数日間に震戦がみられることがある。猫の気管支敗血症菌の治療での気管支拡張薬の役割はまだ不明なので使用は控えるべきである。

噴霧吸入療法

加温加湿療法に対し、噴霧注入療法はネブライゼーションとも呼ばれ、液状の懸濁液を酸素などのガスとともに流しながら霧化させて行うものである。気管気管支内分泌液の大量蓄積や細菌性気管支肺炎をともなった犬猫のITBに、この噴霧注入療法はもっとも有効である。小型、ディスポーザブル、手持ち式のジェットネブライザー(図49-1)が安価で医用品として手に入りやすい。経験的に、6-10 mlの滅菌生食水を15-20分間、1日1-4回ネブライゼーションすると効果的のようである。生食水を効果的に霧化するためには3-5L/分で酸素を流す必要がある。噴霧注入療法は入院にて呼吸症状を抑えるために必要に応じて1-4日間行うのが一般的である。多くの犬は鼻を覆う顔マスクでの噴霧注入治療が可能であり、大抵すぐにマスクに慣れていく。噴霧注入治療を猫に施す場合、一般的には、霧化状液を通すポートを備えている構造をもつ特殊な入れ物に入れて行う必要がある(図49-2)。


図49−1。携帯用ジェットネブライザー。犬猫の気道感染を管理するときに用いることができる。

図49−2。プラスチック製ガラスでできたネブライザー用チャンバー。呼吸困難をともなった重度気道感染を示した猫の治療に用いる。

粘液溶解剤(例えば、アセチルシステイン)をネブライゼーションしても効果がないし、余計な刺激を与えたり気管収縮を起こりしたりすることがある。グルココルチコイドの溶解剤(例えば、酢酸メチルプレドニゾロンナトリウム)をネブライゼーションするのは獣医学ではいまだ十分に議論されていないが、気道収縮を引き起こして発作性の咳を示すような患者であればステロイドのネブライゼーションで一時的な効果は見込まれるであろう。

抗生剤の内服や注射に反応しない犬には抗生剤をネブライゼーションするとよいかもしない。霧化したカナマイシン、ゲンタマイシン、およびポリミキシンBはそれぞれ気管支敗血症菌に感染した犬の気管や気管支内の菌数を投与中止後3日間まで減らすということが示された [5]。臨床症状が完全になくなるわけではないが、重症度は明らかに減じる。噴霧注入に抗生剤を加えても血中濃度に大きな上昇はみられない。したがって、アミノグリコシド系抗生剤を生食に混じネブライゼーションしても腎毒性のリスクは高くない。

支持療法

軽症の犬のITBでは特に支持療法を必要としない。多くの場合、同居動物へ配慮しつつ外来診療で治療は成功する。しかし、下気道感染症の犬猫では支持療法が効果的であり、急性感染期には十分なカロリーと水分補充が維持できるようにするとよい。脱水した動物にはできれば静脈輸液を行い気道内の水和を保ち過度に粘稠な分泌物が貯留しないようにしておく。可能なら、伝染力の強い犬の入院を避けるために輸液療法は外来治療として行えるとよい。皮下輸液は、どうしても静脈輸液が行えない場合のみに行うべきである。

実証されていない民間療法

犬のITBは上気道疾患の中で非常に高い割合で実際に生じているので、経過を短縮させたり臨床症状を軽減させたりするためにさまざまな新しい治療法が考案されている。以下に示す治療方法はほとんど民間療法的であり、科学的根拠を欠き、現時点では犬のITBの治療法としては推奨されていない。

抗ウイルス療法:犬のITBは少なくとも3つの病原体(例えば、イヌ・パラインフルンザウイルス、イヌ・アデノウイルス2型、イヌ・ジステンパーウイルス)が関与すると考えられているので、ヒトで使用が認められている抗ウイルス薬が感染犬に投与されてきた。

しかし、抗ウイルス薬は非常に特異的であり、一般に特定のウイルスに標的を絞っている。

獣医学では犬のITBに標的を絞った抗ウイルス療法は今のところない。現時点では、犬猫のITBともヒトの抗ウイルス薬は推奨されない。

鼻腔内のワクチン接種:未発表データであり民間療法としてだが、ITBを示した犬に鼻腔内気管支敗血症菌ワクチン単回投与し治療効果を示したという。著者は収容施設内で犬のITBが勃発した例でこの治療法を試してみたが、臨床徴候の重症度を軽減できず経過も短縮できなかった。急性のITBの通常の回復期間を越え咳が慢性化し継続する例でこの治療的ワクチン接種が有効であろうといわれている。現在、この治療法を支持するケース-コントロール研究は行なわれていない。

去痰剤:犬のITBでは気管や気管支内の粘液分泌物を除去する目的でさまざまな一般市販薬の去痰剤が利用されている。生理食塩水、グアイフェネシン、および揮発性油を気化して投与し、粘稠度の低い気管支内粘液の分泌を刺激し、気道分泌物のクリアランスを上げるというものである。しかし、犬のITBの去痰療法はまだ確立されていないし現時点では推奨されていない。一般市販薬として多くの鎮咳薬が入手可能でそれが咳をする犬に投与されることがある。著者の経験からは、これらの薬剤でITBの臨床症状の悪化を改善することはできない。

予防

母子免疫

犬のITBのウイルスに対する母子免疫の効果はさまざまである。CPiVの移行抗体は、6週齢以上の子犬にワクチンを注射した場合、干渉しないようである。CAV-2の移行抗体は感染を防御できないうえに12-16週齢までCAV-2のワクチン接種に干渉するようである [7]。胎盤由来の移行抗体は初乳を摂取していない子犬でも1-4週齢まで免疫効果があるようである。授乳新生仔の初期抗体価(initial titer)のほぼ77%が母体由来であり、そのうちおよそ97%が初乳抗体によるものである。移行抗体は通常12-14週齢でなくなる。気管支敗血症菌については母子免疫の有効性も免疫期間も分かっていない。

自然免疫

CPiVおよびCAV-2感染回復後の免疫期間はいまだよく研究されていない。しかしある報告によると、CPiVの中和抗体はウイルス再暴露を受けていない犬で感染後2年間存在したという [11]。 問題は、気管支敗血症菌感染回復後の免疫期間はどれくらいかとうことであろう。急性感染から回復したら少なくとも6ヶ月間まで犬は感染に抵抗しうるということが確認されている [6]。しかし、感染を強く受けた後の犬における免疫効果の程度は、個体差、感染したウイルスや細菌の数と種類、および再感染の機会などによって異なる。

ワクチン接種

犬の気管支敗血症菌、CAV-2、およびCPiVに対するワクチンで認可を受け市販されているものがいくつかある。現時点では、猫の気管支敗血症菌感染に対するワクチンはひとつだけである。犬のワクチンは点鼻と注射があるが、猫の気管支敗血症菌のワクチンは点鼻投与用のものだけである。犬と猫で使用されるワクチンのタイプを表49-2にまとめた。

表49-2 気管支敗血症菌イヌ・パラインフルエンザウイルス、イヌ・アデノウイルス2型予防のための認可済ワクチン

犬ワクチン

ワクチン

量/投与経路

初回投与時の最小年齢

初回追加接種

気管支敗血症菌
(死菌菌体抗原)

1ml 注射
(SCのみ)

8週齢

2回、2-4週間隔

気管支敗血症菌
(無毒化生菌株)

1ml注射
(SCまたはIM)

規定なし
(8週齢を推奨)

2回、2-4週間隔。4ヶ月齢前に予防注射接種した犬は4ヶ月齢になったとき1回接種する必要あり。

プラス

イヌ・パラインフルエンザウイルス(弱毒化株)

プラス

イヌ・アデノウイルス2型
(弱毒化株)
(犬ジステンパーウイルスも含まれている)

気管支敗血症菌
(無毒化生菌株)

0.4または1.0m(メーカーによる)局所(鼻腔内のみ)

2-3週齢
(メーカーによる)

1回(注;1回目を3-6週齢の間、2回目を6週齢時と規定しているメーカあり)

プラス

イヌ・パラインフルエンザウイルス(弱毒化株)

気管支敗血症菌
(無毒化生菌株)

0.4または1.0ml (メーカーによる)局所(鼻腔内のみ)

3-8週齢
(メーカーによる)

1回

プラス

イヌ・パラインフルエンザウイルス(弱毒化株)

プラス

イヌ・アデノウイルス2型
(弱毒化株)

猫ワクチン

ワクチン

量/投与経路

初回投与時の最小年齢

初回追加接種

気管支敗血症菌
(無毒化生菌株)

0.2ml局所(鼻腔内のみ)

8週齢

1回

IM=筋注; SC=皮下 メーカーに規定された投与経路は厳守である。

点鼻ワクチンは一般に投与しにくいと考えられているが、移行抗体が存在しても局所免疫を起こすことができ、感染のリスクの高い環境下で生活している8週齢以下の若い犬にも免疫効果を上げられるという利点がある。無毒化した気管支敗血症菌の生菌株は局所分泌抗体を刺激すると考えられている。しかしながら、その生菌株ワクチンで刺激された免疫反応の特異性についてほとんど分かっていない。気管支敗血症菌ワクチンの無毒化生菌株は、野外株とは遺伝学的に異なるので、実際の抗原とはレベルが異なるか、免疫学的に異なった反応を示すものとなるかもしれない [3]。

局所または鼻腔内投与されたワクチンの効果についてはよく研究されている。投与経路にかかわらず、ワクチン接種した犬は接種していない犬より、気管支敗血症菌の病原性株の投与後の咳はかなり少なくなる。ワクチン接種は、感染の危険あるいは無症状から軽度の感染への進展を完全に除去するものではない。実験的病原菌投与後にワクチンを接種した動物には発熱、食欲減退、および元気消失が軽度であるがみられた。しかしながら、ワクチン接種の二重接種(つまり同日に気管支敗血症菌の局所的ワクチンと注射ワクチンの両方を投与する)の方が、一方のワクチン単独より免疫効果があるかどうかについては問題となる。近年この件について、子犬に注射(筋肉内)または局所(鼻腔内)経路のいずれか、あるいは両方の経路にワクチンを二重投与して比較した研究が行なわれた [12]。気管支敗血症菌投与後の血清学および臨床症状の反応が評価された [12]。その結果、両方のタイプのワクチンを重複させて投与した方がどちらかの単独投与より免疫効果があると結論された。両方のワクチンを接種された方の犬の上下気道より剖検にて採取された気管支敗血症菌が少ないもしくは全く発育がみられなかったからである。この研究結果から全ての犬に両方の気管支敗血症菌のワクチンを重複させて接種することをルーチン化すべきであると解釈するのは適当ではない。感染の危険のある犬に対してどちらかの経路によるワクチン接種を投与すれば十分であるということを認識することが最も重要である。いつから免疫をするべきかだが、ITBに接触すること(例えば、遮蔽された犬小屋に収容されるとか)が分かっているもしくは可能性がある場合、その少なくとも5日前に予防注射を受けることが勧められる。局所投与のワクチンがもっとも早く免疫効果が現れるとされているが、経鼻投与ワクチンが5日以内に感受性ある犬を免疫できるかはわかっていない。最適な投与経路や接種開始年齢はそのワクチンのメーカーに多分に依存する。一般に、鼻腔内に接種された子犬の場合、2から3週齢位から免疫することができる。気管支敗血症菌の注射ワクチンは移行抗体によって干渉される可能性があるので6週齢以下の子犬に投与すべきではない。注射ワクチン接種なら初回投与は6〜8週齢以上を推奨しているメーカーがほとんどである。すべての犬は3〜4週の間隔をおいて初回投与を2回受けるべきである。16週齢以上の犬なら、気管支敗血症菌感染の危険があればさらに1年に1回の追加接種が勧められる。

ワクチン接種後の免疫期間

気管支敗血症菌の無毒化生ワクチン接種後の最小免疫期間は製品によってかなり異なる。一方、気管支敗血症菌を含むCAV-2およびCPiVのワクチン製剤があり、それは年一回の追加接種(ブースター)が勧められている。実際は、個々の抗原(細菌・ウイルス)は投与経路によって反応がかなり異なるかもしれない。注射または局所投与による気管支敗血症菌ワクチン接種後の最大免疫期間についての研究はいまだない。同様に、CPiVあるいはCAV-2の局所投与後の最大免疫持続期間も分かっていない。多価ワクチンは現在年1回のブースター接種が推奨されているが、これは多くのITBワクチンが注射投与による弱毒化生ウイルスワクチンと組み合わせた細菌ワクチンであるため、適当ではないように思える。

一般に成犬では、弱毒化生CPiVあるいはCAV-2ワクチン接種による最小免疫期間は3年であると予想される。一方、注射や鼻腔内投与による気管支敗血症菌ワクチン接種では免疫期間はそれより短いと思われる。ワクチンで使用されている菌株や投与経路によるが3か月から10か月と推測される。鼻腔内投与による気管支敗血症菌ワクチン接種の免疫期間は一般に12か月未満であると考えられるので、暴露を受ける可能性のある犬(例えば犬舎に収容されたり、船に乗ったり、ショーに参加したりなど)で6ヵ月以内に予防注射を受けていなければ、少なくともその5日前にブースターのワクチン接種を受けることが推奨される。

ワクチンの副作用

百日咳(Bordetella pertussis)の予防注射をうけた人の幼児にはワクチン有害反応や発症がみられたため、標準の市販の百日咳ワクチン製剤の安全性および効能について疑問視されてきている。そのため、高度に精製された抗原でつくられた新しい無細胞の百日咳ワクチン製剤が開発された。これら新しいワクチン製剤は効果および安全性とも標準の百日咳細菌ワクチンより優れていることが研究で示された。百日咳(B. pertussis)および気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)は同属関係にあるので、犬においても同様の改善が考慮される。

犬では、ITB注射ワクチン接種後に、時に肉芽腫形成をともなって注射部位の局所刺激が見られるという副作用の報告がある程度である。しかし犬ではワクチン接種後の肉芽腫形成が腫瘍に進行したという報告はない。犬猫の局所(鼻腔内)投与で承認されているワクチンは無毒化気管支敗血症菌を含み、ワクチン接種後にくしゃみ、鼻汁および(または)咳を伴うことがある。接種後の兆候は一般に2〜5日の期間をおいて発現する。まれに、抗生物質の投与が必要なほど接種後の兆候が重度であったり持続したりすることがある。臨床徴候が重度であれば、抗菌剤を7日間内服投与すべきである。ワクチン接種時に抗生物質が処方されている犬には、鼻腔内ワクチン投与は一般に勧められない。抗生物質が処方されている時にワクチンを投与すると、気管支敗血症菌を免疫できる量が著しく減少してしまうかもしれない。

伝染病勃発時の管理

濃密に収容される犬(例えば商用犬舎、保護施設、ドッグショー)や、特に新しい動物が頻繁に導入されるような環境下での犬は、犬のITBに関連する病原体に暴露される危険性がかなり高い。ワクチン接種は感染の症状を最小限にするので重要だが、症状の進行や感染の広がりを完全に止めるものでない。犬舎や保護施設に収容されている犬たちにITBの臨床徴候が進行している場合、それらは隔離すべきである。収容施設を完全に定期洗浄(次亜塩素酸ナトリウム、クロルヘキシジンあるいはベンザルコニウム溶液を使用して)することはITBの広がりを封じ込めるのに有用である。犬舎および保護施設などの設備は、毎時12〜20回の空気交換を行えるような十分な換気をする必要がある。

感染初期に犬舎内のすべての犬へ鼻腔内ワクチンを同時に投与すれば、起こりつつある伝染病勃発を阻止できるという論拠はない。全ての感染症のワクチン接種がすでに行われている犬群ならITB発生は減少していく。しかしワクチン接種と病原体暴露が同日に生じている可能性がある場合、型通りで広範囲の鼻腔内ワクチン接種を行っても伝染病勃発を防ぐことはできないであろう。更に、ワクチン接種後の咳嗽あるいは鼻汁があれば、それら以外症状がなくても閉鎖された設備から移動しないほうがよい。ワクチン接種に加えて、適切な収容設備、適切な清掃および十分な換気は、犬が混み合った環境内に収容される場合は常にITBの勃発を防ぐうえで重要な要因となる。しかしながら、犬舎/保護施設環境に対しては、少なくとも気管支敗血症菌およびCPiVの2種を含むワクチン製剤を鼻腔内投与で接種することが一般的に推奨されている。

伝染病が勃発してしまったら、4週間その設備内外への犬の移動を制限することは感受性犬への微生物の広がりを抑える最もコスト効率の良い手段かもしれない。

十分な清掃に加えて、設備内の犬の全てにITBの臨床徴候のあるなしにかかわらず抗生物質を投与することは気管支敗血症菌感染の症状の管理に重要かもしれない。

公衆衛生関連

犬の気管支敗血症菌が人に感染する可能性が調べられてきた [1,13]。人への気管支敗血症菌感染は子供や免疫抑制状態にある成人に起こりやすい [14]。感染はまれだがもっとも大きな感染のリスクがあるのは、アルコール性栄養失調、悪液質、長期的なグルココルチコイド療法、HIV感染併発、脾摘および妊娠などの免疫抑制状態にある人たちである [13]。当然、気管切開や気管内チューブ挿管を受けた人たちも感染のリスクにある。すでに呼吸病(例えば慢性気管支炎と肺炎)に罹患している人はさらにより大きなリスクにひんしているかもしれない。人への気管支敗血症菌感染は様々な家畜や野生動物種との接触で起きてきたが、一般に犬との接触歴に基づいて犬から人への伝播が推定される。しかし、犬から人への伝播はほとんど確認されていない。

今日のアメリカで暮らす免疫不全状態にある成人の40%程度の人がペットを飼っていると推測されている。免疫不全状態の人々のおける気管支敗血症菌関連の呼吸器感染症の発病率が一般住民と比べ著しくより高いことが予想されるが、このことを示唆する報告はない。特に密集した犬との接触(例えば犬舎とペットシェルター)がなければ、子供や免疫不全状態の成人がペットによる気管支敗血症の感染を受けるリスクは小さいと考えねばならない。

ネコの気管支敗血症菌感染

ネコの気管支敗血症菌に対する局所投与(鼻腔内)ワクチンの登場によって、気管支敗血症菌が関与したネコの呼吸器感染症の有病率や予防注射の必要性について近年関心が注がれるようになった。しかしながら、猫の気管支敗血症感染の臨床徴候および病原論についての論文は少ない[15-21]。感染が確認された猫では咳を主訴にする場合がほとんどである。犬と異なり、猫の咳には独特の音調もないし異常に大きな音もない。年齢と囲い飼いは感染の重要な危険因子となりうる。気管支敗血症菌による重度な呼吸器感染症の報告は複数で囲い飼いされた子ネコ(6ヵ月齢未満)であることがほとんどである。

しかしながら、感染の危険因子および猫全体での発病率について記した文献はわずかしかない。気管支敗血症菌感染の発病率は、呼吸器疾患の病歴がある多頭飼育世帯の中の猫で高いようだが、猫全体での有病率は分かっていない。血清学的には、猫の多頭飼育世帯では30%から85%もの抗体陽性率になったと調査されている [15]。パルス・フィールド・ゲル電気泳動によって130以上の気管支敗血症菌株が猫から分離された [22]。 多頭飼猫は、近似または同一の菌株およびサブタイプを保有していることが分かった。キャリアー猫と感染症状を示した猫から分離された菌の電気泳動パターンに差がなかったという事実は、感染は日和見的である可能性を意味している。更に、ある特有の分離菌が疾病を起こすのは、おそらく宿主要因か、多頭飼やストレスのような環境要因に関連している可能性がある [22]。

しかしながら、猫の気管支敗血症菌抗体陽性とは感染症の起炎菌を裏付けるものではないことに注意することが重要である。更に、気管支敗血症菌は、健康な猫の口腔内常在菌のひとつかもしれない。詳細な研究がなされるまでは、猫の気管支敗血症菌ワクチンの推奨投与法を作るのは困難であろう。米国ネコ臨床医学会の推奨に従えば、気管支敗血症菌のワクチン接種がすべての猫で必要ではないことが示されている[23]。 一般にワクチンの使用は、猫の下気道感染症が気管支敗血症菌で起きていると考えられるような多頭飼世帯か保護施設に限られる。犬と同様に、ワクチン接種後の一過性のくしゃみや咳は、猫でもワクチン接種後24時間以内にみられることがある。

引用文献

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23. 2000 Report of the American Association of Feline Practitioners and Academy of Feline Medicine Advisory Panel of Feline Vaccines, Nashville , 2000, AAFP/AFM.


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