症例一覧

喉頭麻痺 ●

犬の症例紹介咳|犬呼吸が苦しそう(咳あり)|犬呼吸が苦しそう(咳なし)|犬呼吸が深く大きい|犬犬の喉頭の病気

(現在、書きかけ中)

類義語・同義語・関連語・検索キーワード
病態
原因
診断
治療
予後

臨床徴候と検査所見

  1.  固有喉頭筋群に分布する末梢神経の障害によって披裂軟骨と声帯ヒダの正常な外転や内転ができなくなっている状態のことをいう。とくに背側輪状披裂筋に分布する反回喉頭神経の変性によって声門裂が吸気時に外転して喉頭気道を広げることができなることが犬では問題となる。
  2. 先天性喉頭麻痺、後天性喉頭麻痺、後天性特発性喉頭麻痺の3つのタイプがあり、一般に「喉頭麻痺」と言われているのは、後天性特発性喉頭麻痺である。
  3. 後天性特発性喉頭麻痺は、ラブラドールレトリーバーおよびその他のレトリーバー種、セッター、アフガン・ハウンド、セントバーナードなどの大型犬の7-12歳齢で好発する。
  4. 症状は、嗄声、興奮時ストライダー(ゼーゼー、ヒーヒーいう)を伴った吸気努力、運動不耐を示す。運動や暑熱環境下に暴露されないかぎり重篤な臨床徴候は示さない。ギャギング(ゲーゲー言う症状)、レッチング(悪心を伴う空嘔吐)、単発性咳(喉に何かからまったような強い数回の咳)、咽頭液の喀出(白いトトロイモ状の濃厚な分泌物の吐き出す)などもみられることがある。一部の例で空気嚥下に伴い、嘔吐や吐出がみられる。ストライダー時には高率に高体温が生じ、熱中症の症状が現れる。
  5. 症状は進行性であり、とくに夏期に顕著となる。重症の喉頭麻痺ほど、ストライダー時に開口しなくなり、異常呼吸音は高音調(1000Hz以上)、音量は小さく(60dB以下)、1秒程度の長い持続時間を示す。
  6. 後天性喉頭麻痺は、反回神経の経路である前胸部や頚部の外傷や外科手術後に継発したり、甲状腺機能低下症の一症状として現れたりする。そのため、犬でも猫でも様々な種類で起こりうる。症状は後天性特発性喉頭麻痺と同様である。
  7. 先天性喉頭麻痺は、ブービエ・デ・フランダース、シベリアン・ハスキー、ダルメシアン、ロットワイラー、イングリッシュ・ブルテリア、ラブラドール・レトリーバー、イングリッシュ・セッターの幼齢期から1歳齢未満で生じ、ポリニューロパシーによる四肢の歩行障害や食道拡張症を伴い、2年以内に死亡すると言われている。
  8. 重度の喉頭麻痺症例では安静時でも動脈血酸素分圧が低下している。
  9. 浅麻酔下での内視鏡検査にて吸気時に披裂軟骨小角突起の外転がみられない、または、吸気時に声門裂が内転し呼気時に外転する奇異運動が認められる。
  10. 近年、後天性特発性喉頭麻痺は、緩徐に進行する全身性末梢神経障害の一症状であるということが証明された。そのため、喉頭麻痺に伴い、次第に神経筋疾患、運動失調、筋萎縮、後肢麻痺あるいは前庭障害などの神経症状が出現する。とくに食道機能不全は後天性特発性喉頭麻痺の発症時から潜在していると考えられている。特発性食道拡張症にまで至っている場合、喉頭麻痺との相互作用の結果、誤嚥性肺炎を生じやすい。これら全身性末梢神経障害の程度をよく把握することは、喉頭麻痺の外科療法とされている片側披裂軟骨側方化術後の効果や合併症やQOLへ与える影響を考える上で不可欠であり、全身症状も考慮して手術適応を慎重に検討しなければいけない。
  11. ストライダー発症時は、密閉した空間にいれば解放された場所に移動する、風にあてる、日陰や木陰など気温の低いところに移動する、水をかける、冷たい水をのませる、砕いた氷をたべさせる、など体温を急速に下げる処置をできる限り行う。肥満でなく、いびきがなければ、冷温処置と合わせ鎮静剤(アセプロマジン0.05-0.1mg/kg SC)と酸素投与(1-2L/分)を行うと有効である。

当院呼吸器科診断基準

  • 嗄声、興奮時ストライダー、興奮時チアノーゼや失神、熱中症歴などの症状がある(必須)
  • チオペンタール2.5-5.0mg/kgIVによる浅麻酔下(眼瞼反射かつ喉頭反射あり)の喉頭鏡検査にて喉頭にマス病変や虚脱などの器質的異常がみられず、吸気時に披裂軟骨小角突起の外転がみられない、または、吸気時に声門裂が内転し呼気時に外転する奇異運動が認める(必須)
  • 積極的治療の第一選択は片側披裂軟骨側方化術である。当院での本手術適応基準の考え方は以下のとおりである

 

  • グループA:片側披裂軟骨側方化術適応。以下条件を全て満たした場合、術後良好な症状改善と安定したQOL改善が見込まれる。
      1. 3ヶ月以内に興奮時に重度ストライダーやチアノーゼの経験がある。またはそのため救急受診が必要となった。
      2. 年齢10歳以下
      3. 階段の上り下りが自由に問題なく可能。診察台上にてしっかり起立することができる。
      4. 動脈血酸素分圧が85mmHg以上
      5. 胸部X線検査にて浸潤影や間質影が認められない。
      6. 吐出やgaggingなど食道機能低下所見が全く認められない。
  • グループB: 以下の場合は手術適応を個別に慎重に検討する必要がある。
      1. 3ヶ月以内に興奮時に重度ストライダーやチアノーゼの経験がある。またはそのため救急受診が必要となった。
      2. グループAの2-6の基準のうち該当しない項目が2つ以下
  • グループC: 以下の場合は手術は推奨されない。陰圧性肺水腫合併が疑われる場合は術後1-2週間ほど冷温(20-25度)、酸素濃度(25-30%)管理可能なICU管理を要する。
      1. 3ヶ月以内に興奮時に重度ストライダーやチアノーゼの経験がある。またはそのため救急受診が必要となった。
      2. グループAの2-6の基準のうち該当しない項目が3つある
  • グループD: 非適応。以下のうち4つ以上当てはまる場合は、術後起立不能や誤嚥性肺炎を引き起こす可能性が高く、術後QOL維持を保証できない。
      1. 半年以上前から興奮時に重度ストライダーやチアノーゼを毎月1回以上繰り返している。
      2. 年齢12歳以上
      3. 階段の上り下りや段差をスムーズに動けない。診察台上にて後肢がふるえ起立できない。
      4. 動脈血酸素分圧70mmHg未満
      5. 胸部X線検査にて浸潤影や間質影あり
      6. 吐出やgaggingが日常的にみられる
      7. 安静時も呼吸が早い
      8. 一日を通じて横になっている時間が多い
      9. 誤嚥性肺炎歴がある
  • 片側披裂軟骨側方化術の実施が好ましくない場合、第二選択治療として永久気管切開術を行う。以下のような場合になる。永久気管切開術後は完全室内管理が必要となる。

喉頭麻痺によるストライダーの症状を繰り返しており、

    1. 誤嚥性肺炎歴がある。
    2. 胸部X線所見にて食道拡張があり、吐出やgaggingが日常的にみられる。
    3. すでに歩行困難、横臥状態にある。
  • 後天性喉頭麻痺の場合
      •  - 喉頭麻痺診断+甲状腺機能低下症→手術選択ではなく、一時的気管切開+甲状腺ホルモン置換療法
      •  - 喉頭麻痺診断+外傷や経胸部外科手術後→まず温存対処。そして原因対処。
  • 先天性喉頭麻痺の場合
      •  - 末梢神経障害による食道機能不全がすでに合併している危険性が高いので永久気管切開術を選択する。

喉頭麻痺の詳細について

症例

確定診断症例数 27例(-150819)

症例① フラッドコーテッド・レトリーバー メス 6歳、片側披裂軟骨側方化術

症例②③④ ②Mダックスフンド オス 1歳、③ フラッドコーテッド・レトリーバー メス 6歳、 ④シェルティ オス 11歳

症例5 ラブラドール・レトリーバー メス 12歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例419)、片側披裂軟骨側方化術

症例6 雑種犬(体重17.40kg) オス 12歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例428)、甲状腺癌による後天性喉頭麻痺

症例7 ゴールデン・レトリーバー オス 10歳(気管支鏡検査アーカイブ 症例440)、片側披裂軟骨側方化術

症例8 ラブラドール・レトリーバー オス 12歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例443)、片側披裂軟骨側方化術

症例9 ラブラドール・レトリーバー メス 11歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例448)、片側披裂軟骨側方化術

症例10 スタンダード・プードル オス 11歳  (気管支鏡検査アーカイブ 症例452、 気管支鏡検査アーカイブ 症例473)、片側披裂軟骨側方化術

症例11 ゴールデン・レトリーバー オス 13歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例453 気管支鏡検査アーカイブ 症例408)、片側披裂軟骨側方化術

症例12 ラブラドール・レトリーバー メス 12歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例456)、片側披裂軟骨側方化術

症例13 ヨークシャーテリア メス 8歳  (気管支鏡検査アーカイブ 症例474気管支鏡検査アーカイブ 症例479)、片側披裂軟骨側方化術

症例14 ラブラドール・レトリーバー オス 12歳  (気管支鏡検査アーカイブ 症例481)、片側喉頭麻痺のため温存療法

症例15 ラブラドール・レトリーバー オス 15歳  (気管支鏡検査アーカイブ 症例482)、片側披裂軟骨側方化術

症例16 ボーダーコリー メス 13歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例541)、片側披裂軟骨側方化術