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喉頭虚脱 ●

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英名表記:Laryngeal collapse

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短頭種気道症候群、片側披裂軟骨側方化術、永久気管開口術、喉頭小嚢外転、

Brachycephalic Airway SyndromeBAS)、combined presentation of laryngeal paralysis and laryngeal collapse LPLC)、Folded flap palatoplasty

病態

上気道閉塞による持続的かつ過剰な陰圧が負荷されることにより喉頭構成組織に変性性変化が生じ、声門裂の狭窄、閉塞を起こした状態である1。病因となる上気道閉塞が持続すると、披裂軟骨に不可逆性変化をきたしてしまい、最終的には呼吸困難、窒息に至る2

原因と発症傾向

喉頭外傷、気道外科手術後、持続性上気道閉塞1,2に続発するが、特に短頭種気道症候群(BAS)に起因するものが代表的である3(図1)。外鼻孔狭窄、軟口蓋過長や気管虚脱、気管低形成により吸気圧が上がり、声門に過剰な陰圧がかかり続けることにより、披裂軟骨が内転、虚脱を起こす。短頭犬種であるイングリッシュ・ブルドッグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストンテリア、パグ、ペキニーズ、ボクサーに多くみられる4-6 若齢で発症することが多く、喉頭虚脱と診断された46%は2歳未満でおきていたという7。非短頭犬種の小型犬にみられる、喉頭虚脱と後天性特発性喉頭麻痺の併発(LPLC)ではヨークシャテリアでの発症が多く、発症中央値も9歳と高齢であった8。ノーウィッチテリアやイングリッシュブルテリアでは、喉頭虚脱に相似する先天的な喉頭の構造異常が示唆されている9,10。猫における喉頭疾患では35頭中、喉頭麻痺14頭、腫瘍10頭(リンパ腫4、扁平上皮癌4、腺癌1、独立円形細胞腫瘍1)、炎症6頭、分類不能5頭(喉頭嚢胞1、声帯肥厚による喉頭狭窄2、喉頭浮腫2)と報告があり11、喉頭虚脱に関しての報告はない。

 

図1 短頭種気道症候群が喉頭虚脱を起こす理由。左はスターター・ストライダーなどの上気道症状を示すフレンチブルの頭部X線写真。右は白い四角内を拡大して模式化した。正常犬なら軟口蓋過長なく、咽頭内に陰圧は生じないが、短頭種気道症候群では軟口蓋過長や肥厚があるために咽頭内に強い陰圧が生じ、喉頭虚脱が次第に進行する。

診断

喉頭虚脱は内視鏡検査にて診断される。

1)好発犬種、両相性ストライダーなど喉頭虚脱の典型的な臨床徴候

2)頭頸部X線検査や透視検査にて喉頭陰影増加や異常な喉頭運動を確認する

3)内視鏡検査

診断のレベルは、

確定(Definite): 1)〜3)全てを満たす、疑い(Possible):1)と2)を満たす、可能性あり(Probable):1)のみ

臨床徴候

BAS関連症状であり、軽度であれば、安静時には無症状なこともあるが、重度な場合、幼小時からいびき、スターター、睡眠時無呼吸がみられ、興奮、緊張や暑熱環境時で強い両相性ストライダーを起こす。ゼロゼロ音(動画1)、進行性の運動不耐、レッチング、ギャギング、頻繁な咽頭液の喀出、喉頭性咳、嗄声、失神が認められる。喉頭麻痺や軽度のBASと異なり、安静時呼吸でも吸気努力や高音調喘鳴音が認められる。喉頭聴診所見(図2,3)は、喉頭虚脱診断の高い特異度を示すが、感度は低く聴診で吸気性異常呼吸音が認められなくても否定はできない12。喉頭聴診所見で多くの喉頭虚脱は識別可能と報告されている(図2,3)。進行性で、気候により症状の重症度に変化があり、一般的には夏に悪化することが多く、熱中症を起こし、緊急処置が必要になることもある。BAS症例の53.1%(34/64)に喉頭虚脱がみとめられ、さらにそのうち呼吸困難を呈する重度な喉頭虚脱は全体の11%(7/64)であったと報告されている6

 

動画1 喉頭虚脱ステージ3と診断したブルドッグ、8ヶ月齢で認められたゼロゼロ音(動画提供:犬・猫の呼吸器科)

 

図2 喉頭麻痺と確定診断した犬の喉頭で聴取した聴診音を視覚化した。500-750HZの高音調の狭窄音が規則的に発現した(文献14)。5例の喉頭麻痺で同様の所見を示した。

 

図3 喉頭虚脱と確定診断した犬の喉頭聴診音を視覚化した。500-750Hzの高調な狭窄音が持続時間が長く、かつ不規則に出現した(文献14)。5頭の喉頭虚脱犬で同様の傾向を示した。

血液検査所見

特異的所見を示さないことが多いが、誤嚥性肺炎や甲状腺機能低下症を伴っている場合、特徴所見がみとめられることがある。

動脈血ガス分析所見

調査中

画像検査所見

頭頸部X線検査

喉頭虚脱ではラテラル像にて喉頭軟部組織陰影が亢進する13

胸部X線検査

他疾患との鑑別、巨大食道症、誤嚥性肺炎、陰圧性肺水腫などの予後不良性の合併症の確認のために行う。

透視検査
より動的な咽頭気道の形態的、機能的評価が可能である。吸気時に異常呼吸音を伴って喉頭の後方への移動、頸部気管の動的虚脱がみられる14(動画2)。

動画2 喉頭虚脱ステージ3と確定診断したパグ、6歳の透視検査所見。吸気時に著しい喉頭の後退が認められる(動画提供:犬・猫の呼吸器科)。

CT検査

無麻酔、無鎮静下で行い、上気道閉塞がある犬17頭中9頭で喉頭虚脱のLeonardのグレーディング分類が可能であった13。さら喉頭鏡検査7例および剖検所見2例で確認し、77.8%(7/9)でそれは一致した13

内視鏡検査

最終診断は、浅麻酔下内視鏡検査により喉頭を観察し確定する。正常喉頭運動では、吸気時に披裂軟骨が左右対称性に外転し、呼気時に一定の声門裂間隙を残して内側に戻る(図4)。麻酔薬の影響で喉頭運動が抑制され、声帯ヒダに動きがみられない場合があるため、顎反射を残す程度の最低限の浅麻酔下での観察、評価が推奨される15,16。麻酔薬はアルファキサロン、チオペンタール、プロポフォール等の使用報告が多い17-19。喉頭虚脱は三段階に病期分類されている20。ステージ1では喉頭腔に両側喉頭小嚢が反転する(図5)。ステージ2では喉頭小嚢反転を伴い、両側の小角結節が喉頭腔に向け内転する(図6)。ステージ3では楔状結節が虚脱し正中で重なり、背側声門裂が消失する(図7)。短頭種気道症候群で生じる重度喉頭虚脱では増量した咽頭粘液が喉頭虚脱部を前後する様子をみることがある(動画3)。LPLCは、この病期分類に従わず、喉頭小嚢反転を伴わずに小角結節が喉頭腔正中で重なり、吸気時に声門裂の外転が認められない8(図8)。症例の呼吸状態によっては、検査のための麻酔からの覚醒が困難な場合もあるため、診断後、そのまま外科治療へ移行できる準備も必要である。

図4 声門裂は甲状軟骨内に、披裂軟骨小角結節、披裂軟骨楔状結節、喉頭蓋、声帯ヒダより形成されている。声帯ひだと甲状軟骨間のスペースには外側喉頭室(喉頭小嚢)と呼ばれる声門裂側に開口する小さな嚢状組織がある。喉頭は吸気時に声門裂を広げ、呼気時には内側位に戻る(文献14)。

 

図5 喉頭虚脱ステージ1。上が腹側、下が背側。反転喉頭小嚢がみられるが、披裂軟骨小角突起の内側変位はみられない(画像提供:犬・猫の呼吸器科)。

 

 

 

図6 喉頭虚脱ステージ2。左は模式図で、右は喉頭鏡所見。同様に上が腹側、下が背側。喉頭小嚢反転を伴って、両側の披裂軟骨小角結節が剛性を失い、喉頭腔に向けやや内転し一部または全体が接着する(文献14)

 

図7 喉頭虚脱ステージ3.上が腹側、下が背側。小角結節(a)は接着し、両側楔状結節(b)は軟化して正中位で折り重なり、声門裂の腹側も閉塞する。喉頭の完全虚脱に至る。ステージ3の状況は不可逆性変化と考えられている(文献14)。

 

動画3 喉頭虚脱ステージ3と診断したブルドッグ、8ヶ月齢の喉頭鏡所見。増量した咽頭粘液が喉頭虚脱部を前後する様子が認められる(動画提供:犬・猫の呼吸器科)。

 

図8 喉頭麻痺と喉頭虚脱同時発症タイプ(LPLC)と診断したヨーキー、17歳の喉頭鏡所見。上が腹側、下が背側。Leonardのステージ分類の原理に従わず、喉頭小嚢反転が認められずに披裂軟骨小角結節の接着がみられた(画像提供:犬・猫の呼吸器科)。

治療

(1)初期対処

上気道閉塞により呼吸困難を呈す重症例では診断のための検査より、状態の安定化を優先し、冷却、酸素投与、抗炎症量のステロイド剤や鎮静剤投与等の緊急治療が必要な場合がある。初期治療に反応が乏しい場合、気管挿管や気管切開による気道確保が必要になる。

(2)内科療法

興奮や緊張、暑熱環境を避け、体重管理をすることにより症状の軽減を目指す。喉頭虚脱では上気道閉塞に起因する過剰陰圧により、気道線毛上皮障害と分泌腺上皮の異形成から咽頭粘液の過剰貯留が起きる21。また消化器においても、裂孔ヘルニアや胃食道逆流などが引き起こされ、結果として誤嚥性肺炎から気道への増悪因子になりうる7。そのため、粘液溶解剤内服やネブライザー治療、制吐剤や制酸剤内服が必要になる。

(3)外科療法

喉頭虚脱の外科治療は、その病因となっている上気道閉塞を解除することが根本であり、外鼻孔狭窄整復、軟口蓋切除、喉頭小嚢切除、扁桃切除などが行われる22。喉頭周囲組織に不可逆性変化が生じている重症例では、気道の開通性を確保するための整復として、声帯部分切除、喉頭部分切除が行われてきたが、その治療成績は、周術期死亡率が50%と極めて悪い23。しかし近年では、喉頭虚脱の重症度は予後に関連しないとする報告もあり6,24、軟口蓋過長におけるFolded flap palatoplasty(FFP)25、外鼻孔狭窄におけるnasal vestibuloplasty26、laser-assisted turbinectomy (LATE)27など新しい術式が試行されており、従来の術式に比較し、良好な成績が報告されている25,28

披裂軟骨と輪状軟骨を固定する片側披裂軟骨側方化術に加え、披裂軟骨と甲状軟骨の固定を併用した術式がステージ2以上の重度喉頭麻痺症例の83%(10/12)において良好な成績が得られたが21、致命的合併症を生じたなど否定的な報告もある3

披裂軟骨の固定術を含め他の術式による改善が得られない症例に対し、救命治療として永久気管開口術が推奨されている。術後の誤嚥性肺炎、気管開口部の狭窄などの合併症は80%で発生し、生存期間中央値は100日だが、術後20週までに死亡した症例を除くと、生存日数は1982日であり、33%の症例は5年以上の生存をみとめ、長期予後が得られている3,29

気管開口部は気道分泌物で閉塞しやすいので、衛生管理、加湿、加温管理が重要である。気道粘膜は術後16週までに、正常な組織状態まで回復するので30、その期間の消炎、去痰治療が推奨される。

予後

予後要注意である(Guarded)である。従来は不可逆性に進行した喉頭虚脱は予後が悪いとされていたが、近年では重症度の高さは外科治療成績に関連しないとも報告されている6,25。一方で、重度な喉頭虚脱に披裂軟骨固定による喉頭腔の拡張などの外科的整復には致命的な結果に陥ることも報告され3,6,21,25、救命の観点から永久気管開口術を選択することもあり、周術期の気管開口部閉塞を防げれば、長期予後を期待できる報告が多い3,29-31

未解決の問題、特記事項

LPLCタイプに対する片側披裂軟骨側方化術、その他喉頭外科、および永久気管切開術の適応基準や術後誤嚥性肺炎の発症率についていまだ十分な報告がない。重度喉頭虚脱を術前に把握し、適切な術前インフォメーションする手順の確立が望まれる。

引用文献

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(犬・猫の呼吸器臨床研究会 上大岡キルシェ動物病院 山下智之)

当院呼吸器科の見解と処置

臨床徴候と検査所見

慢性上気道閉塞に継発し、喉頭内に生じる持続性陰圧によって喉頭軟骨の剛性が減少し声門裂が狭窄、閉塞する状態のことをいう。短頭種気道症候群の重症例や進行例でよく認められる(Monnet, 2003)。ステージ1(反転喉頭小嚢のみ)、ステージ2(左右の披裂軟骨小角突起の接着)、ステージ3(左右の披裂軟骨楔状突起の会合)のグレード分類があり、特にステージ3は非可逆的変化と考えられている(城下幸仁, 2012)。フレンチブルでよく経験するが、透視検査で非動的咽頭閉塞を示す重度喉頭虚脱において「ヒューヒュー」などの単音性の高調音を発する吸気性ストライダーをよく経験する。しかし、その場合開口は著明でない。

診断:聴診にて咽喉頭に両相性高調連続音あり、全身麻酔下に肉眼視および喉頭鏡検査にて確定診断する。

治療:従来の上気道整復術(外鼻孔狭窄整復術、軟口蓋切除術、喉頭小嚢切除術)が基本となるが、重症例では永久気管切開術が適応となる(城下幸仁, 2012 )。披裂軟骨尾側固定術(White, 2012)が試みられているが、安定した転帰は得られていない。ステージ3に至っても従来の上気道整復術で対応できる場合があり(Torrez, 2006)、永久気管切開術選択の基準は確立されていない。著者は、術前の透視検査にて呼気時動的咽頭閉塞や非動的咽頭閉塞が認められた場合、永久気管切開術の候補と考えている(城下幸仁, 2016)。

当院呼吸器科診断基準
  1. 視診および聴診にて、吸気時高調異常呼吸音と吸気努力が持続的または頻繁にあり(必須)。
  2. 咽喉頭聴診にて、比較的不規則な吸気時高調気道狭窄音あり(必須)。
  3. 喉頭鏡または喉頭気管鏡検査にて、吸気時に両側披裂軟骨小角突起が接着し固定(ステージ2)、あるいは両側披裂軟骨楔状突起が接着し固定し反転喉頭小嚢あり(ステージ3)、を認める(必須)。
  4. 喉頭鏡または喉頭気管鏡検査にて、披裂軟骨の接着なく反転喉頭小嚢のみ認めた場合(ステージ1)は「反転喉頭小嚢」と診断し、喉頭虚脱と診断しない。

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症例

確定診断症例数 49例(-171031)

症例①② ①フレンチブル オス 1歳、②ヨーキー メス  17歳

症例③(動画あり)フレンチブル メス 7歳

症例④(動画あり)パグ メス 9歳

症例⑤(動画あり)狆 メス 4歳

症例⑥ パグ メス 9歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例442

症例⑦ トイプードル オス 8歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例444

症例⑧ フレンチブル メス 6歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例446

症例⑨ ラブラドール・レトリーバー メス 11歳 (気管支鏡検査アーカイブ 症例448

症例⑩ パグ メス 6歳 (喉頭および気管気管支鏡検査アーカイブ 症例620

症例11 ブルドッグ オス 8ヶ月齢 (喉頭および気管気管支鏡検査アーカイブ 症例603