相模が丘動物病院のホームページ|メール

中枢気道壁が組織崩壊し嚢胞状拡張を伴い喀血を呈した猫の1例

城下 幸仁1)、松田 岳人1)、金井 孝夫2)
1)相模が丘動物病院、2)東女医大実験動物施設

【はじめに】腫瘍、細菌・真菌かつ寄生虫感染の関与もなく原因不明の中枢気道壁の組織崩壊により喀血が生じた猫の1例を報告する。

【症例】雑種猫、4歳、雌。室内飼育、混合ワクチン毎年接種、既往症なし。2〜3ヶ月前からの喀血を主訴に来院。体重6.40 kg、発熱なく食欲元気あり。胸部X線で肺門部近くの実質内に3箇所の限界不明瞭の肥厚壁を有する空洞病変あり。PaO2 87.2 mm Hgと軽度低下。気管支鏡検査でX線所見に対応する右中葉と左前葉前後部の気管支入口部に多量の出血および粘膜の凹凸不整/浮腫/発赤あり、吸引血液には細菌真菌は検出されなかった。第26病日、出血の多い左前肺葉を切除し病理検査に供した。

【病理所見】肉眼的には摘出肺葉の肺門部気管支領域に母指等大の軟凝血塊を入れた嚢胞状物があり、組織学的にその気管支壁には組織崩壊した出血性変化がみられ、壁粘膜から全層わたり全周性に高度なリンパ球浸潤、また形質細胞も多数みられた。同病変は中枢気管支にほぼ限局していた。細菌、真菌検出のためのギムザ、PAS、結核菌染色はいずれも陰性だった。

【臨床経過】術後PaO2は108.7 mm Hgと改善。プレドニゾロン1.25-2.0 mg/kg PO q24hにて胸部X線の右中葉嚢胞壁の肥厚は消退した。その後、気管支鏡検査にて左主気管支にも背側方への進行性拡大を確認するも、307病日経過した現在まで臨床症状はない。

【考察】本症の喀血はなんらかの理由により中枢気道壁の組織崩壊が生じたものと考えられたが、獣医学、医学領域にこのような病変を示す疾患の報告なく稀有な例と考えられた。病理所見より腫瘍、細菌(結核を含む)・真菌感染症、寄生虫、肉芽腫形成疾患はみられず、自己免疫性疾患や何らかのアレルギーの関与が考えられた。


相模が丘動物病院のホームページ|メール
Copyright (C) 2011 Sagamigaoka Animal Clinic All Rights Reserved.