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Q1: 限局性肺病変なのになぜ呼吸困難を示したのか?
A1: 粘液栓により生じた病変は限局性でありましたが、基礎に慢性間質性肺炎というびまん性肺疾患が存在していたからです。呼吸困難の原因はステロイド中断によって生じた慢性間質性肺炎の再燃が主因と考えられます。

Q2: ならばなぜ粘液栓を除去しただけで2日後に呼吸症状が改善したのか?
A2: 内視鏡処置後、院内で採取した標本を非感染性の粘液主体と簡易診断しており、粘液栓と暫定診断を下しておりました。その時点で、検査直後より慢性間質性肺炎治療としてのステロイド再開可能と判断し投与を始めました。検査後2日で呼吸症状が改善したのは、ステロイドの反応ということもあると考えられます。

Q3: 粘液除去の処置に用いた道具について詳しく教えてください。
A3: 内視鏡処置具の生検鉗子です。気管支鏡内にある1.2mmのチャネル孔を通じ手元から挿入し、先端が小さなカップ状のフィラリア鉗子のようになっていて内視鏡外で開いたり閉じたりできます。今回は粘液でしたので、はさんで引っ張り出すというような感覚で3回繰り返しました。

Q4: これだけの低酸素血症にどのような麻酔方法を施したのか? また、全身麻酔下に気管支鏡検査が実施可能と判断した根拠は何か?
A4: 特別な麻酔方法は施しておりません。通常の鎮静・導入にて気管内挿管後、100%酸素投与下に吸入麻酔で仰臥保定をとり、ラリンゲルマスクに交換し、Y字アダプターで一方より酸素、一方より気管支鏡を挿入して検査を行っています。Spo2が90以下に低下したらスコープを一度抜き、回路をクローズして酸素投与し、Spo2が96-97程度まで回復したら再びスコープを挿入して検査を再開します。この症例では、基礎疾患が慢性間質性肺炎であり低酸素血症の機序が拡散障害であり、気道閉塞性疾患ではないので100%酸素投与はむしろ肺機能を確実にサポートすることができると判断しました。重度の気管支肺炎や喘息症状を伴い検査前に高炭酸ガス血症を示したり、Paco2が45mm Hg以上を示すような重度の換気障害をすでに示していたりするような症例では気管支鏡検査の適応を慎重に判断する必要があると考えます。


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