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気管支鏡検査にて喉頭小嚢外反と診断したパグの1例-会場での討論

Q1:「頭を下げて固くなる」という初期症状と軟口蓋過長との関連はあったということか? また、最初の気管支鏡検査や喉頭小嚢切除術の際の気管チューブ挿管時に軟口蓋過長を認めたか?

A1:この初期症状はそもそも上気道閉塞の長期化の結果生じた咽頭拡張筋の代償不全を示したものと考えているので、軟口蓋過長が上気道閉塞の一因である限り、当然、関連はあるものと思われます。しかし、最初の気管支鏡検査や喉頭小嚢切除時の挿管時には、たとえば挿管困難や軟口蓋組織が喉頭蓋上に入り込むような明らかな軟口蓋過長所見はありませんでした。 「軟口蓋過長」という状況はありませんでしたが、頚部X線ラテラル像にて、軟口蓋組織の著しい肥厚のため咽頭鼻部の気道が狭窄しており、これは上気道閉塞症状を説明する一因であると考えております。ですから、最後に行った軟口蓋切除術というのは、軟口蓋過長であるから行ったわけではなく、咽頭の気道を拡張させるために軟口蓋の軟部組織の減量を行ったというのが正確な言い方になると思います。これは、軟口蓋の咽頭鼻部側の余分な軟部組織を口腔側にできるだけ牽引し、咽頭鼻部側の粘膜切除線と口腔側粘膜切除線をしっかり縫合して行いました。

Q2:軟口蓋切除術までの経過が非常に長いと思う。喉頭小嚢外反が2次的に生じたものならばなぜ同時に軟口蓋切除術を喉頭小嚢切除術と同時に行わなかったのか? 飼い主との話合いはどのようになっていたのか?

A2:まず、喉頭小嚢外反症例を私自身経験したことはなく、3度目に気管支鏡検査にてやっと病態を理解できたという経緯があります。当初の喉頭浮腫の原因解明にもアレルギー性要因の検討を行ったり、炎症性喉頭ポリープという病理診断にも最終診断を迷わされました。呼吸症状がstridorという喉頭から気管の上気道閉塞症状を示していたことや、私自身喉頭小嚢切除術がはじめての経験であったことから、術中・術後の状態を十分予測できなったことにより、まず小嚢切除のみ手術を実施し、術後呼吸症状をみて必要なら軟口蓋切除術を行うということにしました。前に述べたように軟口蓋過長の所見も明らかでなかったことも2期的に手術を行った理由でもあります。

Q3:私の経験では喉頭浮腫を伴った短頭種症候群の軟口蓋切除術の術後経過が非常によくなかった。演者は喉頭浮腫に対する処置などについてはどう考えているか? 演者の経験ではどうか?

A3:本症例に限って言えば、文献によると喉頭小嚢外反がある場合、喉頭内で常に空気の乱流が生じそれが喉頭粘膜に刺激を与え、本症例のような浮腫がよくみられるようです。ですから、このような場合は喉頭小嚢切除が浮腫軽減の根本療法であると考えられます。でも本症では短期間でしたがステロイドが初期に反応を示しました。最終的には外科整復を実施しなければいけないとは思いますが、少しでも安定した状況で外科手術に臨めるように術前ステロイド投与を行っておくと、原因の如何にかかわらず、喉頭浮腫を軽減できるかもしれません。喉頭浮腫と術後の予後との関連については、私は詳細な知識もなく、お話できるほど経験はありません。

Q4:気管支鏡検査で喉頭を観察しているが、このようなリスクを伴うと考えられる症例にどのような方法で行ったのか? 使用したスコープは何か?

A4:抄録に記述いたしましたが、ラリンゲルマスクにY字アダプターを接続し、一方は検査中の酸素投与、他方は気管支鏡を挿入するルートに使用します。こうすれば全身麻酔下で呼吸能が低下した状態でも酸素下を保ちつつ、自発呼吸での動的状態を気管支鏡で観察することができます。気管支鏡検査は、少なからず常にリスクを負いながら行うことになりますので、安全面には最大限の工夫と配慮をすることが必要です。使用したスコープは、外径6.0mmのオリンパス製動物用ビデオスコープです。

Q5:喉頭小嚢外反は術後再発はあり得るのか?

A4:現在術後6ヶ月を経過しておりますが、stridor症状の再発をみておりません。再発率の文献記載はありませんでした。


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