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ポスターセッション

胸部レントゲン像における犬の気管支樹の模式化*

城下 幸仁1)、松田 岳人1)、佐藤 陽子1)、柳田 洋介1)

Yukihito SHIROSHITA, Taketo MATSUDA, Yoko SATO, Yosuke YANAGIDA

*Bronchial tree on chest radiograph in dog

1) 相模が丘動物病院 〒228-0001 神奈川県座間市相模が丘6-11-7


胸部X線上における肺野異常影の部位と気管支との位置関係を客観化するために、犬の胸部X線像における気管支樹を模式化し肺野の区画化を試みた。

キーワード:気管支鏡、胸部X線、気管支樹

はじめに

胸部X線上における肺野異常影の部位と気管支との位置関係はいまだ客観化されていない。そこで今回、犬の胸部X線像における気管支樹を模式化し肺野の区画化を試みた。

方法

正常犬3頭(体重6.0-22.6 kg)に対し全身麻酔下気管支鏡検査において仰臥および右横臥保定下にて同定可能な20本の葉・区域気管支1に生検鉗子をできるだけ深部まで挿入し胸部X線撮影を行なった。VDおよびラテラル像上にそれぞれ4本の仮想線を設定し肺野を区画し(図1)、これら仮想線を座標軸にみたて各犬の気管支の走行を再構築した。3頭の中で同一の気管支がVDまたはラテラル像のいずれかで異なる区画を走行したとき、変位ありと定めた。変位のある場合は、気管支樹鋳型標本または解剖学的妥当性を考慮しもっとも可能性の高い気管支走行を示したものを選択し模式図を作成した。各区画を走行する気管支についても調べた。気管支命名法はAmisら2に従った。

結果

図2にVDおよびラテラル像における気管支樹の模式図を示した。RB1, RB3, RB3D1, RB4, RB4D1, LB1, LB2, LB2V2は3頭ともほぼ同一の走行を示し、LB1V1, LB1D1, RB4V1に変位を認めた。その他の気管支については3頭でわずかの走行の違いは認めたが同一の区画内に分布していた。図3に各区画を走行する気管支を示した。

考察

今回、犬の胸部X線像における気管支樹を模式化し肺野の区画化を試みた。これを用いると胸部異常影の部位を気管支の位置と関連づけて客観的に記述することが可能となる。最も主要な区域気管支であるLB1V1に変位が認められた(図4)。樽型に近い胸郭だと気管支がL3よりL2側を走行するようである。

図1 胸部X線VDおよびラテラル像上にそれぞれ4本の仮想線を設定し、VD像ではIからVIまでの6区画、ラテラル像ではL1からL5までの5区画に分けた。IIとVの区画内にはさらに等分する補助線を設けた。

図2 VDおよびラテラル像における犬の気管支樹の模式図。VD像でRB4またはLB2に平行に走行する気管支はその分岐口のみ示した。IIとVの補助線上にはそれぞれRB2とLB1V1が走行した。ラテラル像では上は右肺、下は左肺の気管支を強調している。

図3 VDおよびラテラル像において各区画を走行する気管支。細字の斜字は変位を示す。

図4  LB1V1の変位。3頭とも異なった走行を示し、L2またはL3の区画を走行した。実線は模式図作成に取り入れた気管支の走行を示す。

参考文献

1. 城下幸仁, 松田岳人: 胸部レントゲン像における犬の葉・区域気管支の分布と走行, 第25回動物臨床医学会年次大会プロシーディング No.3, 146-147(2004)
2. Amis TC, McKiernan BC : Systematic identification of endobronchial anatomy during bronchoscopy in the dog, Am J Vet Res , 47, 2649-2657(1986)


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