猫の鼻咽頭狭窄-2

プロフィールと来院経緯:雑種猫、メス、3歳8カ月齢。体重4.10kg。「1年前よりヒューヒュー笛の鳴るような音がして苦しそうな呼吸が続いている。内科療法を続けているが治らない」とのことで、福島市のひまわり動物病院 卯野先生から紹介。

初診時頭部レントゲン所見 吸気時 後部鼻鏡検査所見
写真1 初診時頭部レントゲン所見。吸気時。鼻咽頭後部1/3が狭窄。 写真2 同じく、呼気時。軟口蓋の背側変位あり。 写真3 後部鼻鏡検査所見。鼻咽頭内に膜様狭窄部あり。
バルーン拡張術中 狭窄部が開存 バルーン拡張後の後部鼻鏡所見
写真4 バルーン拡張術中。狭窄部を残してバルーンが拡張中。 写真5 同。さらに加圧しバルーンを最大拡張させ狭窄部が開存した。 写真6 バルーン拡張後の後部鼻鏡所見。鼻咽頭狭窄部は開存した。
問診:1年前より高音調のstertor(口を閉じて鼻腔から咽頭気道狭窄によって生じる喘鳴音、ズーズーとかヒューヒュー鳴る音)、吸気努力、いびきあり。食欲あり。室内多頭飼育。混合ワクチン未接種。1歳8ヵ月齢時に避妊手術実施。前医にて鼻腔カテーテル挿入試験を行ったところ、7Frカテーテルが外鼻孔から8cmのところで止まったとのことであった。その部位は鼻咽頭内に相当する。 初診時検査所見:体重4.10kg。持続性stertor、吸気努力、呼気時頬部拡張(expiratory cheek puff)を示し、咽喉頭聴診にて吸気時高音調の喘鳴音が聴取された。CBCおよび血液化学検査で白血球数5000/mm3と正常より減少していたがその他は正常範囲であった。動脈血ガス分析でpH 7.42, Pco2 33mmHg, Po2 80mmHg, AaDo2 27mmHgと軽度の低酸素血症を示した。胸部X線では軽度の肺過膨張がみられた。頭部X線lateral像吸気で、鼻咽頭前部約2/3が拡張し後部約1/3が狭小化し(写真1)、呼気で軟口蓋の背側変位と口腔内に呼気ガス貯留がみられた(写真2)。鼻咽頭狭窄を疑い、全身麻酔下にて、外径4.0mmの気管支鏡を用い後部鼻鏡検査を行い、膜様狭窄部を確認した(写真3)。 治療と経過:バルーン径12mmx40mmの7Fr血管拡張用バルーンカテーテルを用い鼻咽頭狭窄に対しバルーン拡張術を行った(写真4、5)。この処置を3回繰り返し鼻咽頭は開存した(写真6)。翌日よりstertorは消失した。抗生剤とステロイドを注射と吸入を毎日行って管理した。10日後、再発症状なかったが確認のため再度鼻鏡検査を行った。再狭窄はわずかであったが長期安定化のため拡張を再度行った。その日とくに問題もなく退院となった。ネブライゼーション(生理食塩液50ml+GM0.5ml+デキサメタゾン0.5ml+アドレナリン0.5ml)1日1回を指示した。しかし、猫が神経質で用心深く自宅で処置困難となった。最後の処置から2カ月後にオーナーに電話で問診したところ、わずかにstertorあるが、処置前に比べればほとんど気にならないとのことだった。
コメント:いわゆる瘢痕性の鼻咽頭狭窄の例です。犬より猫によくみられます。猫の上気道感染症後に突然発症、内科療法に反応しない慢性非進行性stertor症状、鼻汁は少ない、などの特徴があります。

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