予防できる犬の感染症


1. フィラリア症
フィラリアは蚊からうつります。蚊が犬の血を吸う時にフィラリアの子虫が体内に入り、成長して細長いそうめん状の虫が心臓や肺動脈に寄生します(右写真)。感染すると数年の経過で咳、運動不耐(動くのいやがること)、腹水などが起こり、次第に衰弱していきます。大量寄生では突然卒倒して死亡することがあります。治療は心臓から虫を取り出したり、駆虫薬投与法がありますがいずれも非常に危険な処置となります。しかし月1回の薬投与で予防が可能です。

2. ノミ、ダニ
ともにペットの血を吸いながら皮膚に寄生します。ノミは一日中皮膚の表面を走っているのでとてもかゆいです。犬に寄生したノミは人にもうつりノミに咬まれた跡はなかなか消えないしやはりとてもかゆいです。ダニは耳、目の縁、指の間などにしっかりかみついて寄生します。たくさん血を吸うとおおきなほくろのようになります。よくみると8本の足がもそもそ動いているので分かります。月1回の薬投与でほぼ100%予防できます。

3. 伝染病
1)狂犬病
狂犬病ウイルスによって引き起こされる脳炎です。ほとんど全てのほ乳類がこのウイルスに感染して発症し確実に死亡します。もちろんヒトにも感染するので大変恐ろしい病気です。よく「日本にはないから」と楽観的に考えられる方がいますが、世界で狂犬病がないのは日本、オーストラリア、イギリス、北欧くらいです(右図)。今世界が狭くなり、海外からヒトが感染して持ち込んだり、さまざまな輸入動物から持ち込まれたりする可能性が高まっており、いつ日本で発生するか分かりません。ワクチン接種は狂犬病予防法により義務化されています。

2)パルボウイルス感染症
頻回の嘔吐と下痢を主徴とし血液中の白血球が減少します。とくに1歳未満の子犬では急激に症状が進行しタール状水様便と著明な白血球減少を示し脱水と免疫力の低下により発症から数日で死亡します。子犬の伝染病ではもっとも恐ろしいものです。現在は2カ月齢および3カ月齢時に5種または8種の混合ワクチンを接種して予防できます。

3)ジステンパー
ジステンパーウイルスによって起こります。気道から侵入し1週間以内に体中のリンパ球やマクロファージに感染します。そのため免疫抑制状態となり細菌の2次感染を起こします。発熱、元気消失に始まり、膿性鼻汁、咳、下痢が2-4週間続いたあと、痙攣発作などの神経症状が現れ30-50%が死亡すると言われています。5種または8種の混合ワクチンに含まれています。

4)犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス1型に起因します。ウイルスは口から入り全身のリンパ節を経由しておもに肝臓と血管内皮細胞に感染します。発熱、扁桃腫大、腹痛/嘔吐下痢のような胃腸炎症状をともなう肝障害、出血傾向(血が止りまりにくい)、角膜浮腫(blue eye)などの眼症状が出ます。急性発症して数時間で死亡することもあります。5種または8種の混合ワクチンに含まれています。

5)ケンネルコフ
短く乾いた発作性の咳が突然発現し、数日から数週間持続します。激しい伝染性を示し伝染性気管気管支炎ともいいます。一般に症状は軽微ですが完全に咳がなくなるまで数カ月かかることあります。複数の病原体が関与して症状を示すと考えられていますが、主にBordetella bronchisepticaという細菌、およびパラインフルエンザウイルス、犬アデノウイルス2型というウイルスの3つの単一または複合感染です。後者2つのウイルスについては5種または8種の混合ワクチンに含まれています。

6)レプトスピラ感染症
レプトスピラカニコーラとレプトスピライクテロヘモラージの2つの血清型で起きる細菌感染症です。特にネズミなどのゲッ歯類が病原巣になり粘膜や皮膚の擦傷から感染し、前者は尿毒症、後者は黄疸および血液凝固障害を起こします。どちらも急性感染で、発熱、嘔吐、出血の症状を示し死亡することがあります。8種混合ワクチンに含まれています。

7) コロナウイルス感染症
パルボウイルス感染症同様、ウイルス性胃腸炎の病原のひとつとされています。パルボに比べ腸炎症状は致死的でなく白血球の減少はみられません。しかし、下痢で動物病院に来院した犬の16%はコロナウイルスに関与していたとのデータもあり十分予防の価値があります。近年できた8種混合ワクチンに含まれています。

心臓内のフィラリア
ダニ

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