気管支鏡検査一覧

症例463

VB#463-ヨシカワウオッカ150509喉頭

【症例463動画】 ウォッカちゃん。オーストラリアン・シェパード 11歳齢 オス 体重19.45kg。 来院経緯と主訴:兵庫県より飼い主様ご希望で受診。主訴は、3年前から夏の睡眠時にパンティングが続き、眠れないということであった。今までいくつかの動物病院を受診しているが原因不明といわれた。2015年5月9日、精査希望のため呼吸器科受診となった。最終診断は、喉頭の異常運動/ Dynamic laryngeal narrowing on expiratiron。 問診:夏の夜に持続性パンティングと呼気性異常呼吸音が生じ睡眠呼吸障害あり。症状は暑い季節の夜のみであったが、昨年より運動後にも同様症状が認められるようになった。昨年から少し運動しただけですぐにハーハー、ゼーゼーいうようになっている。いびきなし。 診察時の徴候:診察台上で起立可能。 その他の臨床検査所見:血液ガス分析で肺機能正常だが急性呼吸性アルローシス(pH 7.52, Pao2 100mmHg, Paco2 21mmHg)、CRP 0.0mg/dl。頭部X線および透視検査にて披裂軟骨の動きは不明瞭、鼻咽頭から口咽頭に閉塞病変の陰影は認められず。胸部x線検査にて後肺野に細網状陰影あり。前部鼻鏡検査にて左右鼻腔内および鼻咽頭内に閉塞病変なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:チオペンタール投与による浅麻酔下(5mg/kg IV)にて覚醒まで喉頭運動をまず確認したところ、呼気時に声門裂に動的狭窄が認められ、可視範囲内の気管気管支樹内に肉眼的異常を認めなかった。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 25mlX3, 回収率42%)も行った。肉眼性状はほぼ透明で、総細胞数増加なし(265/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ97.2%(正常92.5%)、リンパ球0.2%(正常4.0%)、好中球1.8%(正常2.0%)、好酸球0.8%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)を示し特異所見なし。現在、微生物検査中。 最終診断:喉頭の異常運動(「呼気時動的喉頭狭窄」 ”Dynamic laryngeal narrowing on expiration” )。 症例459と同様で現在調査中の喉頭疾患。本症例の場合、この閉塞性喉頭疾患によって高体温となり持続性パンティングが生じたと考えられた。 睡眠時と運動時にこの動的喉頭狭窄が生じるようだがその機序は調査中。 最終治療:1)体温上昇しないように常に通風環境下におく、2)気管支拡張剤を含んだネブライザー療法(生食20ml+メプチン吸入液0.5ml+ボスミン外用液0.5ml、1日2回)。喉頭内転筋の過剰収縮が気管支拡張作用とともに得られるかは不明だが、試してみることにした。 転帰:検査後、抜管後問題なく覚醒。状態良好のため当日退院。現在経過観察中。