気管支鏡検査一覧

症例486

ワタナベリン1508013BS-喉頭の異常運動3ー呼気時動的喉頭狭窄

【症例486動画】 りんちゃん。ラブラドールレトリーバー 13歳 メス、体重33.1kg。 来院経緯と主訴:東京動物医療センター(東京都杉並区)より診療依頼を受けました。主訴はレッチングと運動不耐性。2015年8月13日、精査希望のため呼吸器科受診。最終診断は、喉頭の異常運動(「呼気時動的喉頭狭窄」 ”Dynamic laryngeal narrowing on expiration” )既往歴:尿道憩室(11歳齢時、外科整復)、左後肢の皮膚の粘液腫または粘液肉腫(12歳齢時、外科切除。現在化学療法中)。問診:以前は30-60分間散歩できたが今年から15分歩くとすぐにパンティングが生じ歩くスピードが落ちる。しかし、座り込んだり立ち止まることはない。最後にドッグランに行ったのは7ヶ月前の真冬で10分間は走り続けていたが休憩しながら、その後再び走っていた。坂道を上ることは可だが、3年程前から40-50cmほどの段差を飛び上れなくなった。パンティングから高調ストライダー(ヒーーヒーーいう)を示し動かなくなったりチアノーゼを示したりしたことはない。安静時、睡眠時に呼吸障害なし。 診察時徴候:努力性呼吸なし。嗄声様パンティングが続いていた。 臨床検査所見:血液ガス分析にて問題なし(Pco2 29mmHg, Po2 96mmHg, AaDo2 19 mmHg)、CBC/血液化学検査にて白血球数減少(5500/mm3)、CRP増加なし(0.05mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて喉頭周辺に構造異常なく、披裂軟骨の動きあり、頸部気管にやや扁平化と動的虚脱あり。胸部にて問題なし。喉頭および気管気管支鏡検査所見:呼気時動的喉頭狭窄あり、深呼吸時に披裂軟骨外転あり。浅麻酔下、自発通常呼吸で、披裂軟骨の外転運動はほとんど認められなかったが、喉頭麻痺症例によくみられる吸気時の喉頭口の内転(奇異運動)は全く認められなかった。頸部気管では軽度の膜性壁の伸長が認められたに過ぎず、気管分岐部以降の可視範囲に異常なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2。25ml×3回。回収率66.7%)にて細胞数増加なく、細胞分画ににも異常なく、細菌培養陰性。 確定診断:喉頭の異常運動(「呼気時動的喉頭狭窄」 ”Dynamic laryngeal narrowing on expiration” 、症例459、463と同様)。 最終治療:現在特異的治療がありません。片側披裂軟骨側方化術は喉頭内転運動を強める可能性があり矛盾します。体温を上げないような対症療法(夏期には、冷房、外気温30℃以上の外出制限、通風など)を日頃より行うようにお願いしました。