気管支鏡検査一覧

症例480

VB#479, EBP, M Duchs 5y F, カワグチマロン150719BS

【症例480動画】 マロンちゃん。ミニチュアダックスフンド 5歳 メス、5.6kg。 来院経緯と主訴:兵藤動物病院(横浜市)より診療依頼を受けました。主訴は難治性の慢性発咳。2014年12月より咳が続き、様々な内科療法に反応しない。2015年7月19日、精査希望のため呼吸器科受診。最終診断は慢性喉頭炎と慢性好酸球性気管支肺症。既往歴:僧帽弁閉鎖不全疑い(2014-、ACEI投与中)。 問診:咳は、連日、1日10-20回、興奮時に多く一度に20-30秒程度続き、最後に痰を吐き出す仕草(terminal retch)がみられる。安静時にもたまに生じることがある。寝起きや夜間に咳はほとんどない。興奮後、喘鳴(ゼーゼーいう)を示し立ち止まって苦しそうに座り込むことがあり。白い粘稠な液(咽頭液)の喀出がよくみとめられた。嗄声なし。体重が昨年4.9kgであったが、現在5.7kgにまで増えた。オーナー喫煙あるが、室内で換気扇のもとで喫煙している。4歳齢の同居犬(Mダックス,4歳)あり、今でもいっしょに遊び、走る。完全室内飼育、定期予防実施。慢性呼吸困難の生活支障度はⅠ。 診察時徴候:BCS4/5。来院時興奮して、「シャーシャー」という連続性異常呼吸音が続き、乾咳が断続的に続いた。嗄声なし。閉口安静時に呼気努力あり。カフテスト陰性。胸部タッピングにて咳誘発なし。閉口時の肺野聴診にて弱いクラックルあり。 臨床検査所見:、T:38.1℃、P:118/分、R:90/分。血液ガス分析にて軽度の換気血流比不均等を伴う軽度低酸素血症(pH7.39、Pco2 32mmHg, Po2 79mmHg, AaDo2 32 mmHg)。 CBC/血液化学検査にて正常範囲だが末梢血好酸球数4.5%(639/mm3)、CRP増加なし(0.15mg/dl)、X線および透視検査にて頭部にて構造的および透視で確認できる咽喉頭協調運動に問題なし。胸部にて肺野透過性良好であり、明瞭ではないが気管支パターンがあり、透視にて気管支虚脱あり。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて喉頭は発赤し、接触刺激に過敏に反応し喉頭痙攣あり。気管粘膜は全体的に発赤していた。気管気管支樹内の可視範囲に粘稠な黄白色の小粘液塊が散見された。気管ブラッシングにて気管内の小粘液塊に対し実施。細胞診にて多数の好中球と好酸球も散見された。微生物検査にて起炎菌は分離されなかった。気管支肺胞洗浄液解析(BALF解析、RB2、10ml×3回、回収率48%)にて性状は白色小粘液片を含む白色透明。総細胞数は著明に増加1226/mm3 (正常 84-243/mm3)、細胞分画ではマクロファージ26.2%(正常92.5%)、リンパ球2.8%(正常4.0%)、好中球67.4%(正常2.0%)、好酸球3.5%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)。腫瘍細胞なし。マクロファージは巨大化した泡沫状が優勢。慢性活動性炎症パターン。微生物検査にて起炎菌は分離されなかった。ステロイドを含む内科療法があった経緯を考慮すると、好酸球性肺疾患が基礎にあったことが考えられた。  確定診断:慢性喉頭炎と慢性好酸球性気管支肺症。 最終治療:ステロイド抗炎症量を長期継続。 転帰:現在経過観察中。