気管支鏡検査一覧

症例478

VB#478, CB, オキリッキー150716BS【症例478動画】 リッキーちゃん。アメリカンショートヘアー 8歳 メス、体重4.66kg。来院経緯と主訴:小林動物病院(平塚市)より診療依頼を受けました。1ヶ月ほど前より吐くような仕草を伴い咳が始まり、動物病院受診にてびまん性胸部異常陰影を指摘され、肺炎と暫定診断され内科治療を行ってきたが改善がみられず、2015年7月16日、精査希望のため呼吸器科受診。最終診断は、気道分泌物過剰を伴った猫の気管支肺疾患。主訴は慢性呼吸困難とびまん性胸部異常陰影。 既往歴:とくになし。 診察時徴候:BCS4/5、努力呼吸あり。Purringが続き、聴診困難。診察後興奮し努力呼吸悪化および頻呼吸(64/分)。カフテスト陰性。  問診:咳は2015年5月の終わり頃から突然始まったように思う。当初より、連日、1日2-3回、食事を与えようとするときによく生じ、一度に5-6回続く。次第に体重が減少し(5.4kg→4.3kg)、6月14日に動物病院受診、びまん性胸部異常影あり1週間入院治療したが異常影は改善せず。その後も状況不変。7月6日、小林動物病院受診。咳、頻呼吸、努力呼吸を示していた。これまで、抗生剤、ステロイド、気管支拡張剤等を使用してきたが症状改善なく、7月10日より在宅酸素療法開始。使用時間は24時間、酸素濃度30%。酸素室内では呼吸安定するが、室内気環境にて、頻呼吸、努力呼吸あり。異嗜の傾向あり、よくビニール片が便中にみられる。同居猫1頭(8歳、ソマリ)あり、受診前はその同居猫と息を切らしながらよく遊んでいた。完全室内飼育、定期予防実施。慢性呼吸困難の飼い主の主観評価はⅡ/Ⅴ。高いところに上ったあとに頻呼吸になる。 臨床検査所見:T:38.5℃、P:126/分、R:44/分。血液ガス分析にて軽度の低酸素血症、換気血流不均等分布あり(pHa7.32、Paco2 35mmHg, Pao2 74mmHg, AaDo2 34mmHg)。CBC/血液化学検査にて白血球数増加(20500/mm3)、BUN軽度増加(34.7mg/dl)。X線および透視検査にて頭部にて構造的および透視で確認できる咽喉頭協調運動に問題なく、胸部にてびまん性不整形肺胞浸潤陰影あり、気管支軟化所見なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて観察開始時に喉頭周囲に多量の泡沫状粘液が喉頭を覆っていた。可視範囲の気道粘膜全体は肥厚していた。気道異物なし。右後葉気管支(RB4)から黄白色粘稠分泌物が深部より湧出あり。気管支ブラッシングをLB2D2(左側不整形浸潤陰影部に相当)にて実施。細胞診にて上皮細胞塊のみで異型細胞やリンパ球や好酸球など特異的炎症細胞なし。微生物検査にて起炎菌は分離されず。その後、RB4にて黄白色粘稠分泌物をブラッシングにて採取し、微生物検査にて2菌種分離(Coagulase negative Staphylococcus 1+, Corynebacterium sp. 1+, ともに感受性あり:CEX, CFPM, IPM, DOXY, MINO, AKK, GM, CP)。  経気管支肺生検をLB2D2(同)にて透視ガイド下に実施。肺組織標本と同時に多量の粘液が採取され、病理組織検査にて非腫瘍性、非好酸球性、非リンパ球介在性疾患であり、気管支腺増生と組織球の顕著な浸潤が認められた。   気管支肺胞洗浄液解析(LB1V1、5ml×3回、回収率68%)では、回収液の性状はうすい白色透明であり、総細胞数はやや増加550/mm3 (正常 84-243/mm3、犬)、細胞分画ではマクロファージ90.5%(正常92.5%)、リンパ球0.0%(正常4.0%)、好中球9.2%(正常2.0%)、好酸球0.0%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)で、腫瘍細胞なく泡沫状マクロファージ主体であり、慢性活動性炎症パターンを示し、微生物検査実施にて細菌培養陰性であった。  確定診断:猫の気管支肺疾患。特異的原因は検出されなかったが末梢気道内に気管支腺増生と粘液貯留あり、慢性呼吸困難の直接の原因と考えられた。 最終治療:在宅酸素療法(FIo2 25%,  1日6時間)、IPV療法(週1回 15分/回。ネブライザ薬剤には生理食塩液10ml+メプチン吸入液0.5ml+ビソルボン吸入液0.5ml、操作圧15psi, wedge圧30cmH2O, パーカッションレベルEasy-MID position)、抗菌剤(CEX 20mg/kg PO 1日2回)、抗炎症量のステロイド療法(プレドニゾロン0.5mg/kg PO 1日1回、長期継続)。 転帰:検査翌日退院。IPV 療法1回目終了後、治療前よりよく動くようになり、積極的に高い所にのぼるようになった。現在、経過観察中。