気管支鏡検査一覧

症例468

VB#468-フジクラピー150605BS【症例468動画】 ピーちゃん。ポメラニアン 13歳 メス、体重4.06kg。来院経緯と主訴:さづきペット診療室(川崎市)より診療依頼を受けました。1年半前に亜急性気管支炎と診断し治療後、咳なく経過良好であったが、1ヶ月前から間欠的に咳が始まり10日前から急に悪化して終日強い咳となった。2015年6月5日、精査希望のため呼吸器科受診。最終診断は急性/亜急性気管支炎。主訴は急性発咳。既往歴:股関節形成不全症のため歩行障害あり。ソケイヘルニアおよび陰部より持続性粘液(2015.2-、経過観察中)。 問診:1ヶ月前から朝の散歩、興奮時、動き出すときに数回の咳があった。5月27日頃から急に咳が悪化してきた。咳は音量が大きく、持続性、30秒に20回位の速さで生じ、発症から1週間位は終日、断続的に咳が生じていたので、夜間眠れなかった。食欲、元気はあった。1年半前同様、咳発症前から涼しい環境でも持続性パンティングが生じていた。6月2日から2日間抗菌剤(ビクタスSS錠)を投与してから、幾分か咳の程度、頻度が減少してきた。同居犬なし、完全室内飼育、定期予防実施。  診察時徴候:BCS4/5、パンティングが執拗に続き、1分間に10-20回位の頻度で持続性の音調の大きな咳が続く。陰部より持続性分泌物あり。ソケイヘルニアあり。低調スターターを認めることがあった。努力呼吸なし。  臨床検査所見:T:38.8℃。血液ガス分析にて急性呼吸性アルカローシス、中程度低酸素血症、重度のAaDO2開大(pHa 7.52、Paco2 23mmHg, Pao2 61mmHg, [HCO3-]a 18.7mmol/L, BEa -2.0mmol/L, AaDo2 61 mmHg)。CBC/血液化学検査にて白血球数著明な増加(93900/mm3)、ALP>3500U/L。 CRP増加(1.1mg/dl)、X線および透視検査にて、頭部で軟口蓋過剰のため咽頭閉塞あり。胸部にて気管気管支軟化症、後肺野に強い間質影あり。肝腫大および腹腔容積増大により胸膜腔内制限あり。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:肉眼所見にて、喉頭虚脱ないが軟化傾向あり、持続性咳によると考えられ。気管虚脱ないが、気管分岐部前は発赤。左主気管支内に小さな白色粘液があり、RB3とLB2V1に気管支虚脱が認められた。 気管支ブラッシングをLB2V1にて実施したが細菌培養陰性、気管支肺胞洗浄液解析(RB2、10ml×3回、回収率36.7%)にて、性状は半透明だった。総細胞は数著増825/mm3 (正常 84-243/mm3)、細胞分画は、マクロファージ89.7%(正常92.5%)、リンパ球1.0%(正常4.0%)、好中球9.1%(正常2.0%)、好酸球0.2%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)で、腫瘍細胞なく泡沫状マクロファージ主体であり、慢性活動性炎症パターンを示したが、細菌培養陰性であった。  確定診断:急性/亜急性気管支炎。子宮蓄膿症などの子宮疾患が二次的に間質性肺疾患を生じ執拗なパンティングを生じていたと考えられました。 転帰:検査当日、パンティングは継続してみられたが歩行可能であり覚醒良好であったので退院。退院後数日、子宮蓄膿症が判明し、かかりつけ医のさづきペット診療室(川崎市)にて卵巣子宮全摘出術を緊急実施したとのことであった。その後も呼吸症状が継続したが、自宅管理で治療中。