気管支鏡検査一覧

症例466

VB#466-タマキアンジュ150523BS

【症例466動画】  アンジュちゃん。トイプードル 1歳齢 メス 体重2.86kg。来院経緯と主訴:ガルシア動物病院(東京)より診療依頼を受けました。主訴は、2ヶ月前から安静時、睡眠時、仰向け時にフガーフガーといって呼吸が苦しそうなることがあり、次第に頻度が増加してきた。突然強い咳もすることがある。2015年5月23日、精査希望のため呼吸器科受診となった。最終診断はヒレツ軟骨背側部の咽頭粘膜余剰、慢性喉頭炎、逆くしゃみ。問診:いびきなし。 診察時の徴候:診察時に顎下を軽く圧迫すると低調スターター(ズッという)  その他の臨床検査所見:血液ガス分析で軽度の低酸素血症(Pao2 74mmHg)、CRP 0.0mg/dl。頭部X線および透視検査にて傾眠状態になると正常のトイプードルに比して軟口蓋が厚く咽頭閉塞が生じた。しかし、意識清明下の通常呼吸では咽頭気道は広がり、その較差が大きいように思われた。胸部x線検査にて後肺野に淡いスリガラス状陰影あり。喉頭鏡検査では喉頭蓋と軟口蓋の重なりは正常であり軟口蓋過長を認めなかった。前部鼻鏡検査にて鼻腔内および鼻咽頭内に粘膜病変も閉塞病変なく、咽頭内口は十分開口し鼻咽頭から喉頭は明瞭に認められた。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:軽度の喉頭炎が確認され、可視範囲の気管気管支樹内に問題はなかった。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率53.3%)も行った。肉眼性状はほぼ透明で、総細胞数わずかに増加(285/mm3, 正常84-243/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ95.2%(正常92.5%)、リンパ球2.0%(正常4.0%)、好中球1.5%(正常2.0%)、好酸球1.2%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)を示し特異所見なし。だが、喉頭口に接する咽頭粘膜にヒダ状の余剰部があり、この部分がヒレツ軟骨小角突起に接触していた。内視鏡検査後、喉頭関連性の咳と短時間の逆くしゃみが連続して生じた。  最終診断:ヒレツ軟骨背側部の咽頭粘膜余剰、慢性喉頭炎、逆くしゃみ。軟口蓋は切除する必要はなく、興奮時から入眠時に咽頭粘膜がしわ状になり喉頭に接し咳が生じ、そのとき反動で生じる咽頭閉塞が逆くしゃみを誘発し、症状を増悪させていたと考えられた。幼齢期の逆くしゃみへの感受性増加が本症状の増悪に関わっていると考えられた。 最終治療:1.5歳程度まで成長を待つ、咽頭閉塞を悪化させないよう体重を増やさない。 転帰:検査後、状態良好のため当日退院。現在経過観察中。