気管支鏡検査一覧

症例460

披裂軟骨背側の咽頭粘膜余剰

【症例460動画】 デニーロちゃん。トイプードル 12歳 オス 5.48kg。来院経緯と主訴:成城こばやし動物病院(東京都世田谷区)より診療依頼を受けました。主訴は、2年間続く慢性咳漱。咳は連日、1日20回以上あり。気管虚脱の疑いがあるとのことだった。2015年4月27日、精査希望のため呼吸器科受診となった。最終診断は咽頭気道閉塞症候群ステージ2。 既往歴:特になし。 問診:夜間や安静時に咳はない。アレルギー検査陽性。抗菌剤、プレドニゾロン、気管支拡張剤等を投与してきたが、改善がなかった。 診察時の徴候:軽度肥満(BCS4/5)。Gagging(空嘔吐あり)。リードを引いたとき、抱き上げたときに4-5回続く咳がみられる。一般状態は良好。 その他の臨床検査所見:CRP0.15mg/dl。軽度低酸素血症(Pao2 77 mmHg)、換気正常(Paco2 35mmHg)、AaDo2の開大(32mmHg)。X線および透視検査で構造的咽頭閉塞(舌根の口咽頭への後退:長い矢印、咽頭周囲軟部組織増加:短い矢印2本)、動的頸部気管虚脱、後肺野に間質影増加。 喉頭鏡および気管気管支鏡所見:喉頭発赤、披裂軟骨小角突起背側を覆うように咽頭粘膜余剰ヒダあり。気管全長にかけ膜性壁伸長と軽度気管虚脱、気管分岐部以降に虚脱等肉眼的異常なし。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 10mlX3, 回収率27.7%)も行った。総細胞数増加なし(90/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ98.0%(正常92.5%)、リンパ球1.5%(正常4.0%)、好中球0.2%(正常2.0%)、好酸球0.2%(正常0.4%)、好塩基球0.0%(正常0%)。ほぼすべてが泡沫状マクロファージ。慢性炎症パターン。微生物検査にてAcinetobacter baumannii 1+を分離し、CEX, OFLX, ERFX, AMK, GM, FOMに感受性を示した。日和見感染と思われた。 最終診断:気管虚脱グレード3、咽頭気道閉塞症候群、慢性喉頭炎、気道感染あり。 治療:体重減量(-10%)、ERFX5mg/kg PO 14日間。 転帰:検査後回復良好、翌日退院。現在経過観察中。