気管支鏡検査一覧

症例459

エバラハナ150425BS-呼気時声門裂狭窄症例459動画】 ハナちゃん。ラブラドールレトリーバー 10歳 メス 26.35kg。来院経緯と主訴:プリモ動物病院相模原中央(相模原市)より診療依頼を受けました。主訴は激しい運動後の呼吸困難。2015年4月25日、精査加療希望のため呼吸器科受診となった。最終診断は喉頭の異常運動/Dynamic laryngeal narrowing on expiration。既往歴:特になし。 問診:4ヶ月前から嗄声と喉頭性発咳がみられるようになり、猫を追いかけようとした後に突然呼吸困難となった。のどが詰まったような苦しい症状を示した。これまでに4回生じ、次第に呼吸困難時間が延長し最近では15分続いた。いびきなし。診察台上で起立可能だが後肢は震えた。  診察時の徴候:受診時パンティングが続くが、様々な検査を行っても高調ストライダー(ヒーーヒーー)を示すことはなかった。聴診で咽喉頭部に最強の高低調混在音あり。 その他の臨床検査所見:Pao2 92mmHg, CRP 0.15mg/dl。頭部X線および透視検査にて披裂軟骨の動きは不明瞭。胸部x線検査にて肺野異常なし。 喉頭および気管気管支鏡検査所見:チオペンタール浅麻酔下(5mg/kg IV)にて両側披裂軟骨小角結節の外転がみられず、呼気時に声門裂腹側にて動的狭窄あり。可視範囲内の気管気管支樹内に肉眼的異常を認めなかった。診断:喉頭麻痺があるが、通常みられない喉頭の異常運動がみられた。声門裂狭窄は生じておりこれが運動後の呼吸困難の原因と考えられた。 治療:後天性特発性喉頭麻痺の術式に準じ左側披裂軟骨側方化術を行った。側方化術後の喉頭観察(イソフルラン1%、プロポフォールCRI0.2-0.4mg/kg/minにて維持麻酔)にて右側披裂軟骨の外転が運動がみられ、術前確認されたときより強い呼気時声門裂の動的狭窄が生じた。最終診断:喉頭の異常運動(動的喉頭狭窄? Dynamic laryngeal narrowing?)。 転帰:気管チューブ抜管後、静かに覚醒し上気道閉塞は生じなかった。術後3日間入院にて安静管理とし、散歩でもとくに呼吸困難は生じなかった。ところが、3日目の退院時に飼い主にあったとたん急に驚き、うれしくなって興奮し、「のどが詰まったような」症状が生じた。しかし、チアノーゼまでには至らなかった。声門裂を側方に開口するよう固定しているのでそれが喉頭閉塞を阻止していると考えられた。その後自宅で4日間リラックスして過ごし、その間は、毎日3kmの散歩を2回行い特に心配になるような呼吸状態にはならなかったとという。現在、呼吸の自律神経性調節異常などの面から調査中。緊急時には、効果のほどは不明だが、喉頭固有筋の過剰収縮に対し、気管支拡張薬のMDI(サルタノールインヘラー)を開口呼吸時の口腔内に1スプレー噴射するよう指示しているが、まだ使用経験はないとのことだった。