気管支鏡検査一覧

症例454

VB#454-マエノイチゴ150409BS-RB3D1の粘液貯留

症例454動画】 いちごちゃん。コーギー 11歳 メス。アニマルメディカルセンター(埼玉県吉川市)より診療依頼を受けました。主訴は7年間続く慢性咳漱と運動後喘鳴。 2015年4月6日、精査希望のため呼吸器科受診。 症状:幼齢時に重症肺炎、4歳齢時より運動時後喘鳴や咳が始まり、6歳齢時に運動不耐が悪化した。その後小康状態であったが1週間ほど前から咳が増加してきた。受診時、運動時に痰産生咳と呼気性喘鳴をしきりに繰り返していた。呼気努力あり。一般状態は良好。最終診断はびまん性気管支拡張症。その他の臨床所見:CRP0.45mg/dl。中等度低酸素血症(Pao2 69 mmHg)、換気正常(Paco2 34mmHg)。X線および透視検査で多発性に軟化をともなった気管支拡張あり、後肺野には吸気時に約3cmまで拡大する囊状拡張病変があった。 気管支鏡所見:喉頭は発赤。末梢気道域全体に褐色粘稠分泌物が貯留しており、全ての葉気管支は拡張していた。とくに副葉気管支は囊状拡張し、近傍の区域気管支(RB3D1)に褐色粘稠粘液が充満していたので気管支ブラッシングを行った。気管支肺胞洗浄液解析(RB2, 20mlX2, 回収率25%)を行った。細胞に乏しく(9/mm3, 正常82-286/mm3)、細胞診にて細胞分画ではマクロファージ26.0%, リンパ球0.0%, 好中球 72.0%, 好酸球 2.0%, 好塩基球 0.0%であり、腫瘍細胞は認められなかった。細胞診では、BALFおよびブラッシングとも特異性炎症は認められなかった。微生物検査にてBALF中に起炎菌が認められなかったが、気管支ブラッシングにてG群Streptococcus 1+を分離し、GMを除くほぼ全ての抗菌剤に感受性を示した  最終診断:びまん性気管支拡張症。比較的若年齢で発症しているので先天性要因もあるかもしれない。長期管理が必要と考えられる。  最終治療:長期在宅ネブライザー療法(生食20ml+ビソルボン吸入液0.5ml+メプチン0.5ml+クロロマイセチン局所溶液0.5ml、1日2回)、気管支拡張薬(ネオフィリン錠100mg 1日2回1錠 内服)、去痰剤(ビソルボン錠 1日2回 1錠 内服)、バイトリル(ERFX)5mg/kg PO 1日1回、14日間。  転帰:気管支鏡検査後、中程度の腎機能異常とCRP増加(8.1mg/dl)あり。5日間の入院経過観察を行ったがそれらに対し著明な改善がみられなかった。次第に下痢が生じたり元気消退してきた。これまで手作り食を与えてきたということで、入院ストレスや食事があわないことによる体調不良と判断し退院とした。帰宅後、ただちに元気回復し、排便も正常となった。退院後2週間が経過し、かかりつけ医にて通院にて治療し、次第に腎機能は回復してきた(BUN 53→30mg/dl、Cre3.3→2.4mg/dl、CRP0.84mg/dl)。一般状態は良好とのことであった。