Blog-Dr城下の呼吸器雑記帳

Ⅱ型呼吸不全の症例で高濃度酸素吸入により意識障害や呼吸困難を引き起こすのはなぜ?

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慢性高炭酸ガス血症を引き起こす呼吸器疾患は、同時に低酸素血症も生じています。これは、肺胞気式 PAo2=FIo2-Pao2/R (R:呼吸商)でも説明されますが、このような状況になる疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)です。COPDでは数ヶ月または数年の経過で慢性化すると、Pao2のレベルが50-60mmHgとなりますが、代償性機構によって適応し日常生活しています。換気調整は通常、延髄にある中枢化学受容体によって血中のPaoc2とpHによってゆっくり制御されています。しかし、Pao2のセンサーはありません。血中の血液ガスのモニターは、頸動脈小体や大動脈小体の末梢化学受容体でも、換気量を調整しています。こちらでは、急激な大きなpH, Pco2, Po2の変動に速く反応し、呼吸中枢に情報を伝達し、素早くフィードバック反応し、日々の換気量の微調整を行なっています。Pao2 50-60mgの低酸素血症が慢性化すると、換気調整はPaco2でなく、Pao2によってコントロールされるようになり、中枢化学受容体主体の換気調整から、強く速い末梢化学受容体優勢の管理となります。重度のCOPDではこのように日常的に末梢化学受容体で換気調整されているので、急激な高濃度酸素を投与すると、化学受容体がすぐに反応し、フィードバック機構によりただちに換気抑制になります。そのため呼吸停止したり、高炭酸ガス血症が急激に増悪し、脳圧亢進、意識障害、呼吸困難感の増加し努力呼吸が生じます。末梢化学受容体のPao2に対する反応は、Pao2 50mmHg以下になると急速に感受性が増加することが知られております。詳細は、以下を参照してください。
城下幸仁:特集 犬の呼吸器症状の検査・診断・呼吸管理-末梢気道および肺実質の疾患-「犬の末梢気道および肺実質領域の疾患」、CLINIC NOTE 11(12), 10ー23, 2015