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間質性肺炎の分類

2016/10/26

間質性肺炎の分類

(この記事は書きかけ中です)

間質性肺疾患(Interstitial lung diseases, ILDs)とは,びまん性肺疾患(Diffuse parenchymal lung diseases, DPLD)の中の主要な疾患群となっており[1]、肺間質の炎症だけでなく線維化の病態も含まれていたので従来よりそのように呼称されていた。しかし、急性から慢性までさまざまな経過をとり、炎症と線維化を区別することも困難であり、病変概念に末梢気道病変を含まざるを得ない場合も生じている。人医で最も新しくは、2002年の米国胸部疾患学会(American Thoracic Society, ATS)と欧州呼吸器学会(European Respiratory Society, ERS)がこの疾患群分類を国際多分野(臨床、画像、病理)における合意を発表した。現在は間質性肺炎という表現に統一し、さらにこの合意では、原因を特定できない「特発性間質性肺炎、Idiopathic Intersititial Pneumonias, IIPs」について以下のように分類することが提唱された[2]。この国際分類を本邦でも受入れているようである。獣医領域ではまだ間質性肺炎の知見集積中であり、ILDsとIIPsの用語の混同がみられ、また間質性肺炎の分類自体もまだ確立されておらず、今後の臨床、病理、画像分野の検討課題と言える。ここでは2002のATS/ERSのIIPsの分類についての合意[1]にもとづいてまず特発性間質性肺炎の分類を示し、その次に原因が特定される間質性肺炎の人の代表疾患[3]をあげ、獣医学との知見の比較を検討してみたい。

特発性間質性肺炎

特発性肺線維症

Idiopathic pulmonary fibrosis: IPF. 慢性かつ進行性の経過をたどり、高度の線維化が進行して不可逆性の蜂巣肺形成を来す原因不明の予後不良の疾患である[3]。

非特異性間質性肺炎

Nonspecific interstitial pneumonia: NSIP. 組織学的にNSIPパターンは肺胞壁の炎症と線維化の時相が比較的均一(temporal uniformity)であるという点で、組織学的に時相の多様性(temporal heterogeneity)を呈するUIPパターンと異なり、肺胞構造の破壊改築がみられる点で、器質化肺炎(OP)とは異なる[3]。そのため当初は病理組織パターンとして認識されていたが、その後臨床画像病理学的疾患概念として位置づけられるようになった[3]。肺胞壁の慢性炎症細胞浸潤が主体の”cellular”タイプ(c-NSIP)と、炎症細胞浸潤と線維化が混在したり、炎症細胞浸潤に乏しく、肺胞壁のコラーゲン沈着が主体である”fibrosing”タイプ(f-NSIP)の2つに細分されている。f-NSIPではc-NSIPに比べるとBAL中の総細胞数、リンパ球数が有意に少なかった[3]。f−NSIPとIPFのBAL所見は細胞数と分画において有意差を認めなかった[3]。

特発性器質化肺炎

Cryptogenic orgnanizing pneumonia: COP. 1983年にDavisonらにより提唱された臨床・病理学的疾患概念であり、1985年にEplerらに提唱されたbronchiolitis obliterans organizing pneumonia (BOOP)と同一の疾患と認識されている。臨床的には市中肺炎様の症状および画像所見を呈するが、抗生物質への反応性は不良で、典型例では画像所見で再発性、遊走性の陰影(50%の症例)を認め、ステロイド剤への反応性が良好な間質性肺炎と特徴づけられる[3]。BALF解析では、細胞数の増加、好中球比率や好酸球比率の増加、泡沫状マクロファージの増加、時にマスト細胞や形質細胞を認めることもある[3]。

急性間質性肺炎

Acute interstitional pneumonia: AIP. 1986年Katzensteinが急速進行性の経過をたどる原因不明の間質性肺炎の開胸肺生検症例の検討から、新たに提唱した臨床病理学的疾患概念である。急性呼吸促迫症候群(atute respiratory distress syndrome: ARDS) と同様の臨床症状と病理所見を呈するが、ARDSと異なり誘因(敗血症、肺感染症、外傷、薬剤、誤嚥など)は認められず, idiopathic ARDSとも呼称される。従来のHamman-Rich症候群は本疾患と同一疾患とされる。病理学的には器質化期のびまん性肺胞障害(diffuse alveolar damage: DAD)と同様の所見を呈する。予後はよくない。BALF解析を含めた含めた報告は少なく、総細胞数の増加と好中球比率の増加が報告されている[3]。BALFは感染症との関連を調べることに有意義と言える。

剥離性間質性肺炎、呼吸細気管支炎に伴う間質性肺疾患

剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia: DIP)は、当初、上皮細胞が剥離していると考えられて命名されたが、その後上皮細胞が剥離したのではなくマクロファージが肺胞腔内に集簇していることが明らかとなった。呼吸細気管支炎に伴う間質性肺疾患(respiratory bronchiolitis associated interstitial lung disease: RB-ILD)は、喫煙者あるいは喫煙歴のある者にみられる臨床的症候群である。DIPとRB-ILDはいずれも喫煙者に認めることが多く、組織学的や画像所見の類似性から両者の関連が議論されている。近年では、DIPはRB−ILDの重症型と考えられている。喫煙者で運動後息切れがあり、RB-ILD症例では肺機能では閉塞性および拘束性パターンのの混在がみられる。DIP症例では、胸部X線検査の診断感度は低いが、両側下肺野優位の辺縁主体のスリガラス状陰影や粒状影を認める。胸部CT検査では全例にスリガラス状陰影を認める。RB-ILDでは胸部X線検査で中枢および末梢気管支肥厚、スリガラス状陰影が認められる。胸部CT検査でも小葉中心性の結節陰影、斑状のスリガラス状陰影が認められる。BALF解析では、喫煙に関連した褐色マクロファージを多数認める[3]。

リンパ球性間質性肺炎

Lymphoid interstitial pneumonia: LIP. 1969年にLiebowとCarringonにより、びまん性にリンパ球が間質に浸潤する疾患として提唱された。ついで、LIPと診断された症例が後にリンパ腫に進行したと報告され、その分類自体を疑問視もされたが、ATS/ERSの共同声明では間質性肺炎の分類に含められた。しかし、過去のLIPと診断された多くの症例では、現在のc-NSIPに分類されることになる。胸部X線所見では網状影、粒状影を認める。胸部CT所見では小葉中心性分布の小結節影、スリガラス状陰影、小葉間隔壁と気管支血管束の肥厚、薄壁嚢胞が報告されている。5%の症例が悪性リンパ腫に移行する[3]。

過敏性肺炎

Hypersensitivity  pneumonitis: HP. 特定の吸入抗原刺激に反応して急性呼吸困難が生じる。HPは免疫学的な機序で起こる原因の明らかな間質性肺炎の代表的疾患である。BALF中リンパ球が著増する特徴的所見を呈し、BALによる診断の有用性が認められている。臨床的には、入院環境では呼吸困難はみられず、帰宅後速やかに呼吸困難が生じる。人では、発症状況により、夏型過敏性肺炎(本邦に特有、夏期に出現するTrichosporon属の真菌に由来する)、鳥飼病、農夫肺、などさまざまな呼称がある。急性型ではBALF中リンパ球比率が60%以上を占める[3]。同時に、感染性疾患との鑑別もBALF検体にて行なえる。

サルコイドーシス

原因不明の全身性肉芽腫形成性疾患であり、胸郭病変が90%以上の症例で認められる。病変局所のマクロファージと活性化Tリンパ球の集積が特徴である。BALF中には、総細胞数の増加、リンパ球比率の増加、CD4/CD8比の上昇が認められる。

膠原病性間質性肺炎

関節リウマチ(RA)、多発性筋炎(PM)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SjS)、混合性結合組織病(MCTD)などの膠原病と言われている免疫介在性疾患においては、肺は主要な罹患臓器で、間質や気道、胸膜および血管に病変を生じる。病変の首座が肺胞壁の場合、膠原病性間質性肺炎(Collagen vascular disease-Interstitial Pneumonia, CVD-IP)と呼ばれる。BALF解析にてCVD-IPを診断することはできないが、SLEやMCTDに伴うびまん性肺胞出血の診断には有用である。

好酸球性肺炎

Eosinophilic pneumonia: EP. 好酸球の肺組織への浸潤を来す疾患の総称。原因としては、アレルギー反応の関与が推定されており、寄生虫、真菌、薬剤、細菌、種々の外来性抗原など多岐にわたる。しかし、約75%の症例は原因不明である[3]。発熱、咳漱、体重減少、肺音でクラックルが通常みられるが、急性好酸球性肺炎ではチアノーゼ、頻呼吸、起座呼吸なども出現し重篤になり予後不良になりうる[3]。BALF解析では好酸球比率の増加が認められる。経気管支肺生検の組織所見が確定診断のためのgold stantadardである。

薬剤性肺炎

種々の薬剤を原因として発症し、細胞傷害型とアレルギー型とに分類されるが、詳細な機序は不明な点が多い。原因薬剤は抗生物質、漢方薬、抗がん剤、分子標的薬、治療用モノクローナル抗体など多岐にわたり、年代の推移とともに注目を集める原因薬は変遷している。HRCTにて小葉間隔壁肥厚を伴うスリガラス状陰影や牽引性気管支拡張を伴う浸潤陰影が共通所見としてみられる。好酸球性肺炎型、びまん性肺胞傷害型、その他の間質性肺炎型と整理し、予後予測に役立てる試みが行なわれている。

じん肺

無機性粉塵の吸入により肺に惹起される、線維増殖性変化を主体とする慢性の間質性肺炎である。石綿肺、珪肺、ベリリウム肺などがある[3]。

その他

特発性肺線維症の急性増悪

特発性肺線維症(IPF)の慢性経過中に新たな肺の浸潤陰影の出現とともに急速な呼吸不全の進行がみられる病態[3]。予後は極めて不良である。

肺胞蛋白症

Pulmonary alveolar proteinosis: PAP. 肺胞および呼吸細気管支内にサイーファクタントが貯留するまれな肺疾患。特発性(自己免疫性)、2次性、先天性に分類される。9割が特発性であり、抗GM―CSF自己抗体が原因物質であることが分かっている。自己抗体は肺胞内のGM-CSF活性を阻害し、肺胞マクロファージの分化障害を誘導して、肺胞内のサーファクタント代謝を障害する。BALFの性状は特徴的な濁った乳白色を呈する。乳白色の成分は肺胞内に蓄積したサーファクタントであり、約80%がリン脂質で、約20%が蛋白成分(SP-A, -B, -C, -D)である。全細胞数は減少、巨大な泡沫状マクロファージ、小型単球様のマクロファージを認め、リンパ球は軽度増加する。サーファクタントはDiff-Quik染色にて好酸性の無構造物質を示す。HE染色で好酸性、PAS染色陽性を示す。

参考文献

1. Nicholson AG, Rice AJ. Interstitial lung diseases. In: Hasleton P, Flieder DB, eds. Spencer’s Pathology of the Lung. Cambridge University Press: 2013:366-408.

2. American Thoracic Society/European Respiratory Society International Multidisciplinary Consensus Classification of the Idiopathic Interstitial Pneumonias. This joint statement of the American Thoracic Society (ATS), and the European Respiratory Society (ERS) was adopted by the ATS board of directors, June 2001 and by the ERS Executive Committee, June 2001. Am J Respr Crit Care Med 2002;165:277-304.

3. 菅守隆, 近藤康博, 谷口博之, et al. 間質性肺炎. In: 日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会, 厚生労働省難治性疾患克服研究事業びまん性肺疾患調査研究班, eds. 気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き2008:54-89.

最終更新日:2016.10.25