採用情報 リンク集

呼吸器専門の動物病院なら、相模が丘動物病院

FAX診療申込書ダウンロード

↑予約、お問合せは
こちらから

←予約、お問合せは
こちらから

聴診(Auscultation)

2016/07/13

耳で聞く異常呼吸音と聴診器を用いての聴診の2種類を行います。 異常呼吸音(Respiratory noise) 耳で聞こえる異常な呼吸音です。気道の閉塞を反映して生じます。喘鳴音とも言われます。以下のように分類されます。

吸気時連続性

  • スターター(stertor): 鼻腔から鼻咽頭が閉塞しているときに生じます。口を閉じて鳴ります。鼻腔や鼻咽頭前部の骨で囲われているところの閉塞で生じる場合は「スースー」という高調音となり、鼻咽頭後部の軟口蓋と咽頭背側の閉塞で「ズーズー」や「ブーブー」などの低調音となります。強くにおいを嗅いだときや興奮時などにも「ズッズッ」とか「ブッブッ」と異常音が生じることがあり、これもスターターと呼びます。高調の場合、良性鼻腔狭窄、鼻腔内腫瘍、鼻腔内異物、鼻咽頭狭窄、ラトケのう胞、後鼻孔狭窄、後鼻孔部の腫瘍などが疑われます。低調の場合、軟口蓋過長、咽頭腫瘍、咽頭膿瘍、口咽頭粘液嚢胞、咽頭虚脱、構造的咽頭閉塞が疑われます。
  • ストライダー (stridor):喉頭口から胸腔外気道の閉塞で生じます。口を開いて鳴ります。咽頭と喉頭の移行部の閉塞で「ガー」と鳴り、軟口蓋過長、肥満などの構造的咽頭閉塞、喉頭蓋の後傾、喉頭腫瘍、喉頭虚脱が疑われます。喉頭内の固い閉塞で「ヒー」と鳴り、喉頭麻痺、固く大きな喉頭腫瘍、喉頭虚脱が疑われます。気管の閉塞では固い閉塞では「ヒー」と鳴り、頸部気管内に固い腫瘍が閉塞していたり、若齢性の気管虚脱など先天性に固く気管が扁平化していることが疑われます。柔らかい気管の閉塞では「ガー」と鳴り、後天性原発性気管虚脱、柔軟な気管内腫瘍、甲状腺腫瘍などの気管の外方からの圧迫が疑われます。
  • いびき(snore):眠っているときに口を閉じて、鼻咽頭後部の軟口蓋と咽頭背側の閉塞によって生じる「ズーズー」や「ブーブー」という低調音です。睡眠時は生理的に咽頭腔が縮小するので、疾患や構造的に咽頭が狭くなっていると、覚醒時には聞こえない閉塞音が生じるので咽頭閉塞の病態を早期に発見できます。

呼気時連続性

  • 呼気性ストライダー(expiratory stridor): 開口を伴う呼気努力を示し、呼気時に「ヒューヒュー」と高調音と鳴り、苦しそうになっています。胸腔内中枢気道の閉塞によって生じる。気管気管支軟化症、重度の肺気腫、腫瘍や炎症性病変や異物による気管分岐部から主気管支の閉塞などで生じます。
  • 呼気性喘鳴音(wheezing): 胸腔内末梢気道の閉塞によって生じる。呼気努力を伴い、呼気性ストライダーほど苦しそうではないが、「ヒューヒュー」と高調音が呼気時に生じます。気管支拡張症、猫喘息の発作時などに生じます。

断続性

  • ゴロ音、ゼロ音(rattle, rattling):気道分泌の過剰亢進(重症の蓄痰)を意味します。のどでゴロゴロ、ブツブツ、プツプツ鳴っているように聞こえます。吸気も呼気でも聞こえますが、音の発生は不規則です。胸腔内気道で過剰な気道分泌が生じているときは胸郭触診で振動していることが分かります。心原性肺水腫末期、過剰な気道分泌を伴う慢性気管支炎や肺癌などが疑われます。

両相性

  • 両相性ストライダー(Biphasic stridor):吸気時にも呼気時にも認められる連続性異常呼吸音を意味します。喉頭や気管内での固定性狭窄があると生じます。進行した喉頭虚脱、固い喉頭腫瘍、重度の気管虚脱や気管狭窄などがその例です。「ハーヒーハーヒー」「ガーヒーガーヒー」などといい苦しそうにしています。
  • パンティング時に「ハヒハヒハヒハヒ」などと、比較的短い連続性異常呼吸音が両相性に聞こえることがあります。これは喉頭麻痺や喉頭腫瘍を疑う所見です。

著者の私見ですが、人でも成人と小児では喘鳴音の音調が異なり、各喘鳴音の定義のニュアンスが異なるように思います。成人では、ストライダーは高調音と定義されておりますが、小児は強く耳障りな連続性喘鳴音で、高調であったり低調であったりすると定義されております。犬では短頭種などでは咽喉頭領域の閉塞で口を開けて「ガーガー」という喘鳴音は普通にありますが、猫では同じ音を示す喘鳴音はありません。このように、同種間の成熟度や動物種間によって、異常呼吸音の現れ方が微妙に異なるようです。発声機能や咽喉頭の解剖学の違いによると考えられます。犬の「ガーガー」音は、成人のストライダーとも小児の吸気性ストライダーとも音調が異なり、「犬の特有のストライダーの現れ方」です。透視検査と聴診での周波数解析によると、この音は軟口蓋が喉頭口に侵入したり、咽頭背側粘膜がヒレツ軟骨小角突起に接触したりしながら、軟口蓋と咽頭背側粘膜の軟部組織同志が接着して振動する音が混じり、低調音から高調音までが同時に混在して生じています。舌骨装置によって喉頭が頭蓋骨に固定されていないヒトでは、喉頭の前後運動が大きくなり、吸気時に喉頭が咽頭軟部組織に接触するようなことが起こりにくいかもしれません。犬では舌骨装置で喉頭が頭蓋骨に固定され、吸気時でも喉頭が後方に動きにくい構造になっているため、吸気時に咽頭軟部組織が喉頭軟骨に絡みやすいので、このような低調から高調音が混在した音が生じると考えております。ですから、喉頭麻痺や喉頭虚脱で生じる高調吸気性連続性喘鳴音は、単にストライダーと呼ぶ事で抵抗はないのですが、この「ガーガー」音は、荒いストライダー(harsh-sound stridor)と呼ぶのがよいと思います。この「荒いストライダー」が生じているときは、著明な吸気努力があり、苦しそうにしていることが必要条件です。重度気管虚脱では、持続性かつ両相性の荒いストライダーが認められます。 聴診器を用いた聴診 聴診器の膜型を使用します。肺野で肺音、頸部気管で気管音、喉頭で咽喉頭音の順で聴診します。末梢気道および肺実質疾患ではまず呼気性喘鳴音の有無を確認します。吸気性異常呼吸音は上気道疾患です。肺音(lung sounds)は、呼吸音(breath sounds)と副雑音(adventitious lung sounds)に分けて記述します。呼吸音は疾患の有る無しに関わらず正常安静呼吸にて気道内の層流および乱流によって生じる音です。肺野聴診は気道内の共鳴音が胸壁に到達するまでに肺実質内や胸壁内で拡散し減衰するので(フィルター効果)、音量も小さいし高調音もカットされます。呼吸音の評価で重要なのは予期すべき音より大きいか小さいかということです。気道径や肺容積に異常はなくても呼吸数が増加すれば呼吸音は増大します。したがって、呼吸音は聴取しづらいですが日頃より正常の音の強さをよく認識しておく必要があります。呼吸音の強さ(breath sound intensity, BSI)は、0:なし、1:減弱、2:普通、3:増大、の4段階で表記することが推奨されています{Wilkins, 1996 #11145}。スクリーニング時に通常聴取する部位を決めておくと良いと思います。著者は、小型犬では胸郭のもっとも外方に突出した胸郭後部、大型犬では胸郭の前・中・後部です。胸郭後部では正常なら肺胞呼吸音と呼ばれる弱い吸気音のみ聞こえます。呼吸音の消失または減弱は、浅く弱い呼吸、気胸、胸水、気管支の閉塞などで起こります。表8に病態とBSIとの関係を示しました。副雑音は気道内の異常が原因で生じます。図03に示したように、連続音か断続音、高調か低調によって、ウィーズ(wheezes)、ロンカイ(rhonchi)、クラックル(crackles)に分類されます。 図03 呼吸副雑音

クラックルは、ファインクラックル(fine crackles)とコースクラックル(coarse crackles)の二つがあり、前者は呼気時に虚脱していた末梢気道が吸気時に次々と突発的に破裂様の開放を起こして生じ、後者は気道分泌液中での空気のバブリングによって生じます。ファインクラックルは獣医臨床で最も多く聴取される副雑音です。肺線維症や末梢気道病変でよく認められます。吸気時に聴取され、音量が弱く高調な細かい断続性ラ音であり、出現時間が短く、遠くで小さくパチパチと軽くはじけるように聞こえます。よく聴かないと聞こえないこともあります。主に後肺野で聴こえます。同じ部位で聴取を続けていても呼吸毎に音は変化しません。心原性肺水腫では、状態悪化にともないガラガラとなるような強い音に変化します。これがコースクラックルです。コースクラックルは吸気も呼気も不規則に聞こえます。もし、このガラガラ音が耳で聞こえるようになれば、rattleということになります。

最終更新日:2016.7.13