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問診

2015/11/10

呼吸器では性別で発症傾向が異なる疾患は少なく、重要なのは犬種と年齢です。まずよく遭遇する呼吸器疾患の犬種好発傾向を表01にまとめました。

表01 呼吸器疾患と犬種好発傾向

疾患 好発犬種
気管虚脱 ヨーキー、チワワ、ポメラニアン
短頭種気道症候群 ブルドッグ、パグ、ペキニーズ、狆、フレンチブルドッグ、ボストンテリア
後天性特発性喉頭麻痺 ラブラドール、ゴールデンレトリーバー、セッター種などの大型犬

呼吸器診療では、主訴は上気道症状、咳、呼吸困難、胸部異常陰影の4つに集約されます。どのような主訴でも、問診で最初にしっかり正確に聞くべき重要なことは、「いつからか?」ということです。肺疾患なら48時間以内の急性呼吸困難なのか、それ以上の経過を示す慢性呼吸困難なのか、または2ヶ月以上続く慢性発咳なのか、ということになります。問診では、症状が呼吸器区分のどこに由来するかよく話を聞き吟味しましょう。各区分別に典型的な症状や徴候を表02に示しました。飼主が訴えなくても私たちの方から確認すべきことを聞き出しておきます。

表02 各3区分の特徴的な症状や徴候

上気道 中枢気道 末梢気道および肺実質
吸気性異常呼吸音 持続性咳 運動不耐性
 ストライダーやスターター  音量が大きい 頻呼吸
いびき  咳の契機は興奮時や鳴いた後 安静時もチアノーゼ
睡眠時無呼吸  安静時や睡眠時には生じない 努力呼吸
鼻汁/くしゃみ  動き回りながら咳をする 呼気努力
摂食障害・飲水障害  一回の咳時間は短い(約0.5-1秒/回) 呼気性喘鳴(Wheezing)
嗄声  終日続くことがある
ギャギング・レッチング  Terminal retchを伴うとは限らない 慢性発咳(2ヶ月以上続く)
喉頭性咳  音量が小さく、高調
 強く、持続せずに数回のみ 連続性異常呼吸音  痰産生性または湿咳
 喉になにか引っかかった仕草  咳イベントはTerminal retchで終わる
 Terminal retchあり  咳は安静時に生じ、日中散歩時には少ない
興奮時関連の失神・チアノーゼ  持続性だが、一回の咳時間は長い(約2-3秒/回)
 夜間睡眠時生じることあり
 咳時は喉が切れるようにつらそうで動けない
 一般状態悪化も伴っていることが多い

呼吸困難は訴えても咳の有無は訴えないことがよくあります。さらに、問診の過程(図01)で肺疾患が疑われたら、表03の必須事項を確認します。呼吸数は、緊張や不安などにも影響されるので診察台上より、自宅での暑熱環境のない安静時呼吸数(resting respiratory rate, RRR)や睡眠時呼吸数(sleeping respiratory rate, SRR)を基準にするとよいです。安静時呼吸数の評価を表04に示しました。正常は40回/分以下です。頻呼吸(tachypnea)は過度の呼吸数増加を意味しますが、具体的な数の定義化は困難です。犬では自宅でのRRRやSRRで100回/分以上が相当すると思います。

肺疾患では運動不耐性が認められます。人では慢性呼吸不全患者には生活支障度評価にHugh-Jones分類がよく用いられます。同様に、慢性心不全にはNYHA分類があります。獣医療ではHugh-Jones分類に相当する評価法がみあたらず、治療効果の評価や症例間比較に基準なく不便です。当院呼吸器科では、Hugh-Jones分類を改良した呼吸症状を示す運動不耐性の主観評価(表05)を問診時に飼主に聞いており、状態評価に用いております。 問診の過程

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図01 問診の過程

 

表03 末梢気道および肺実質疾患が疑われた場合の問診必須事項

発症から受診までの期間
咳の有無
安静時呼吸数(とくに睡眠時呼吸数)
活動性レベル*

*表05参照

 

表04 安静時呼吸数の評価

安静時呼吸数 評価
<40回/分 正常範囲
40-60回/分 軽度の呼吸数増加
60-100回/分 中等度の呼吸数増加
>100回/分 頻呼吸(Tachypnea)

 

表05 運動不耐性の評価

  A. 状態 B. 活動性*
同年齢の動物と同様に活動でき、小走り、歩行、階段昇降、高所移動も健常動物並にできる 発症前の90%以上
同年齢の健常動物と同様に歩行できるが、走らない。小走りですぐに息切れする。または階段や高所を健常動物並に上下できない 発症前の80%
健常動物並に活動できず、自分のペースなら20分以上歩いたり、10分以上遊び続けることができる 発症前の50-70%
10分以上歩き続けられない。5分以上遊べない。 発症前の30-40%
動くたびに息が荒くなる。1日中ほとんど動かない。排泄や食事の際にも呼吸が荒くなる。 発症前の10%以下

* 原則的にAで評価するが、整形外科疾患など他に基礎疾患を有するためAを利用しにくい場合、Bを利用する。

 

咳の問診

咳は主訴として多く、飼主が心配になる症状です。人では咳はまず持続期間で、急性咳漱(3週間以内)、遷延性咳漱(3-8週間以内)、慢性咳漱(8週間以上)に分け、各咳漱分類に鑑別疾患リストが用意されています。重要な考え方は、急性咳漱はほぼ100%感染によるものであり、逆に慢性咳漱では感染は主たる原因ではないということです。獣医学でも、咳は、急性発咳と2ヶ月以上の慢性発咳に分けられています{Rozanski, 2004 #11143}。急性発咳は、期間の定義はないですが、2週間で特異的治療せずに多くは治癒します。2-8週続く咳は症状が強いですが、中枢気道性由来の非感染性疾患が多く適切な診断と治療でほぼ完治できることが多いです。すでに2ヶ月以上続く咳は心拡大や肺疾患が関与し根治は難しいですが原因を究明し緩和することを目指します。そこで、獣医臨床でも、急性発咳(2週間以内)、遷延性発咳(2-8週間以内)、慢性発咳(2ヶ月以上)に分類するとよいと考えています(図02)。次に咳の程度は、連日発症か否か、1日何回咳イベントがあるか、1回の咳イベントにどれくらいの回数や時間続くか、という3段階で問診を行います。そして、咳の性質について、咳の契機、好発時間帯、咳の音量、1回の咳時間、室内外どちらが多いか、terminal retch(咳イベントの最後に開口し「カーッ」といって強く痰を喀出する仕草)を伴うか、などを確認し、喉頭性、中枢気道性、末梢気道性かを鑑別します。表06に咳の問診事項をまとめました。肺疾患性なら、湿咳で細菌性気管支肺炎、痰産生性咳(productive cough)で好酸球性肺疾患、慢性気管支炎、心拡大による気管支軟化症を疑います。

図02 咳の持続期間と感染戸の関係 図02 咳の持続期間と感染との関連

 

表06 咳の問診

咳の程度
1. 連日か 連日でない 連日
2. 咳イベント数/日 0-1 1-3 3-10 10-20 >20
3. 持続時間/咳イベント <15秒 15-30秒 30-60秒 1-2分 >2分
咳の性格
分類 代表疾患
 咳の契機 安静時 末梢気道性 慢性気管支炎、気管気管支軟化症、心拡大による気管支軟化症、急性気管支炎
興奮時 中枢気道性 軽度の気管虚脱、伝染性気管気管支炎、急性気管気管支炎
飲水関連 喉頭性、中枢気道性 咽喉頭炎、気管虚脱
起臥時など体動関連 中枢気道性、末梢気道性 気管気管支軟化症、左心房拡大による左主気管支の圧迫
 好発時間帯 夜間 末梢気道性、中枢気道性 慢性気管支炎、気管気管支軟化症、心拡大による気管支軟化症、急性気管支炎
朝方 末梢気道性 慢性気管支炎、気管気管支軟化症、心拡大による気管支軟化症
日中運動時 中枢気道性 軽度の気管虚脱、左心房拡大による左主気管支の圧迫
 咳の音量・音調 音量大 喉頭性、中枢気道性 咽喉頭炎、後鼻漏、軽度の気管虚脱、伝染性気管気管支炎、急性気管気管支炎
音量小 末梢気道性 気管気管支軟化症、急性気管支炎、細菌性気管支肺炎
高調 末梢気道性 気管気管支軟化症、急性気管支炎
 室内発症 室内時悪化 末梢気道性 慢性気管支炎
 terminal retch 必ずあり 末梢気道性、喉頭性 慢性気管支炎、気管気管支軟化症、心拡大による気管支軟化症、急性気管支炎、咽喉頭炎
常にはない 中枢気道性 軽度の気管虚脱、左心房拡大による左主気管支の圧迫

最終更新日:2015.11.10